第3060話 はるかな過去編 ――お宝――
『時空流異門』。めったに起きる事のない時と空間の異常現象。そんな現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代。それも魔族達の暗躍により戦国乱世と呼ばれる時代に突入してしまっていた時代に飛ばされてしまったソラや瞬達。そんな彼らは後にこの時代を終わらせる事になる八英傑と呼ばれる八人の英雄の一人として名を残すこの時代のカイトや、その配下の騎士達と遭遇する。
そうして彼らの支援を受けながら元の世界に戻るべく冒険者としての活動を開始させる一同であったが、その前にひとまずは足場を固めるべく資金集めに奔走する事になる。というわけで王都の冒険者を統括するおやっさんと相談し、一同は迷宮の攻略に赴く事になったのであるが、それもついにボスの討伐まで終わらせていた。
「はぁ……これは小鳥遊が居た方が良さそうかもしれんな」
「あー……確かに由利の攻撃なら渦やら柱やら貫いて攻撃出来ますしね……」
道中はかなりの物量で押される事も多いので厳しいかもしれないが、最後のボスだけを鑑みればあの堅牢な鎧さえ打ち破れればなんとかはなりそうではあった。が、やはり柱や引き寄せに関しては厄介で、距離を取って戦う方法が一つは欲しい所であった。と、そんな事を話し合う二人にイミナが口を挟む。
「まぁ、それらに関しては一旦拠点に戻ってから考えれば良い話だろう。ひとまずは脱出してしまおう」
「そうっすね」
兎にも角にもこれで全部攻略と言っても良いのだ。ならば後は宝物庫から宝物を回収して、外に出るだけであった。というわけで一同は疲れた身体を頑張って動かして、最後の宝物庫へと入っていく。
「3つ、か」
「中央のは明らか豪華そうっすね……なんか箱そのものがすげぇ高そう」
「流石に箱は持ち帰れないだろう……持ち帰っても、という所でもあるしな」
「いや、どうっしょ。貴族とか欲しがりそうじゃないっすか?」
「何を入れるんだ?」
「さぁ……」
瞬の問いかけに対して、ソラは少しだけ困った様に笑って首を振る。どうやら彼自身も本当に欲しいと言われるとは思っていない様子だった。というわけでそんな雑談を話しながらも、ソラは中央の宝箱へと近付く。残る二つはそれぞれ瞬とイミナ、セレスティアの二人組だ。
「……これは……まじで?」
「『リバース・ライト』……ではないか。俺が先に見付けた柄だけの剣に似ているな」
「なるほど……でもどんなんっしょ。最後にあるぐらいだから、相当良いものだとは思うんっすけど……」
「わからん……セレスティア」
「あ、はい……少し借りて良いですか?」
迷宮の性質上、最後の宝物庫には罠が仕掛けられている事がない。なので手に入れたアイテムがトラップで痛い目に遭う、という可能性は無いので安心して使う事が出来た。というわけでソラもセレスティアも特に気にせず、一番豪華な宝箱の中に入っていた柄を受け渡す。
「……普通の剣……ですね。刀身が魔力で構築されている魔刃だ、という以外は……」
「ふむ……確かに良い品だとは思うんだが……この前の『復元の光』ほどの物珍しさはないというか、高そうには思えんのだが……」
「なにかはあるかもしれないですね……鑑定士の方なら、なにかわかるかもしれませんね」
おそらく単なるこれだけではないのだろう。瞬もセレスティアも浮かび上がる刀身を見ながら、そう思う。そうして、残る二つの宝箱も中を回収――それぞれなにかの魔導具らしかったが鑑定しない事にはわからなかった――し、一同は王都近郊の迷宮を脱出するのだった。
さて迷宮を脱出した一同であるが、そんな一同が出た場所はなにかの建物の中だった。
「お……昨日入ってた冒険者さん達か……ふーん。若いからどんなもんだと思ってたけど。存外やるじゃないか」
「え? あ、ここは……」
「あんたらが入った河川の管理事務所の一角だ。あそこから入った奴らは全員ここから出てくる感じになってるみたいでね。で、国が管理している関係上けが人とかを放置しておくことも出来ないから、出口には人が立ってるってわけ」
「なるほど……ありがとうございます」
ソラは自身の困惑した様子を見て教えてくれた衛兵に、一つ感謝を口にして頭を下げる。やはり難易度の高い迷宮だ。怪我をして出てくる冒険者は少なくなく、国が管理しているという体面上すぐに助けられる様にしてくれているとの事であった。
存外やる、という言葉はほぼ目立った怪我もなく出てこれていたからであった。というわけでやはり感謝されれば嬉しいのか顔を綻ばせる衛兵がソラへと問いかける。
「良いよ……で、どうだった?」
「まぁ……初挑戦だったんで色々苦労はしましたけど。なんとかって感じっすね」
「初めてで苦労した、でなんとかできるなら十分じゃないか。俺が見てる限りでも大怪我を負って逃げ帰った、って冒険者は月に一度は見る。収穫が良かった事を祈るよ」
「ありがとうございます」
「ああ……ああ、そうだ。突破出来たなら管理事務所……すまん。迷宮の管理事務所がこの扉の奥にあるから、そっちに向かってくれ。脱出した事を記録しとかないと駄目なんでな。後はそっちで諸々の説明を受けると良い」
「はい」
入る時にも記録を取られていた以上、出た事も記録しておかねばならないのだろう。ソラは衛兵の言葉に納得する。というわけで、一同は連れ立って河川ではなく迷宮の管理事務所とやらに顔を出す。そこでは先に外でなにかのボードゲームを興じていた老人の一人が待っていてくれていた。そんな彼は一同を見て、驚いたような顔を浮かべる。
「おや……昨日の冒険者さんかい。なんだ。結構迂闊だから駄目かもなー、とか話してたんだが。無事出れたのか」
「あ、あはは……すんません」
「いやいや。こっちこそすまないね、侮って……ほら、これに記名して」
「はい」
ソラは老人の事務員に言われるがまま、出場記録に記名する。こちらは記名だけで良かったようで、これで完了となった。
「はい。これで出た事も確認と……ああ、そうだ。ここを突破したなら、これを渡さないとな」
「これは?」
「王都の鑑定士の紹介状だ。ここのことを理解している専属の鑑定士……みたいなものか。下手にここの事を話されるわけにもいかないからね。ここのアイテムの鑑定はこのリストの中からで頼むよ」
「あ、わかりました」
どうせちょうど鑑定士はどうしようか、と考えていた所なのだ。ソラは渡りに船とばかりに渡された紹介状とリストを受け取る。そうして、一同は少しだけ駆け足で河川の管理事務所を後にして王都へと戻っていくのだった。
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