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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3058話 はるかな過去編 ――対大鎧――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間の異常現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代。それも戦国乱世と呼ばれていた時代へと飛ばされてしまったソラや瞬達。そんな彼らは後の時代にこの戦国乱世を終わらせたと言われる八英傑の一角にしてとある王国の騎士団長でもあったこの時代のカイトや、その配下の騎士達と遭遇する。

 そうしてそんな彼らの支援を受けながら冒険者としての活動を繰り広げていたソラ達であったが、そんな彼らはひとまず今後の活動に備え活動資金を調達するべく王都近郊にある迷宮(ダンジョン)の攻略に臨み、最後のボスである巨大な鎧の魔物との交戦に及んでいた。


「「「……」」」


 どう出る。のっそりとした動きで動き出した大鎧の魔物を見ながら、一同は敵の出方を伺う。今はまだのっそりとした動きだが、この迷宮(ダンジョン)のボスなのだ。見たままで判断するのはあまりに危険だった。そしてそれは当然といえば当然で、一同の判断は正解だった。


「「「!?」」」


 消えた。一同が一瞬そう思うほどの速度で、大鎧の魔物が動く。これに一番最初に反応したのは防御にその持てるスペックを全振りしておいたソラだった。


「くぅっ!」


 がぁん。今まで迷宮(ダンジョン)での攻防戦で一番の大音が鳴り響き、ソラが苦悶の表情を浮かべる。


「っ、すまない!」

「大丈夫っす! なんとか!」


 防ぐ事に集中しないとこれからはヤバそう。ソラは苦悶の表情を浮かべながら、そう思う。威力であれば道中の魔物のどれとも比べ物にならないほどの威力だったようだ。しっかりと受け止めていたにも関わらず、彼は僅かに後ろに押し込まれていた。


「でも、すんません! こいつは多分俺以外防御無理っす! 防御に集中します!」

「それで良い! っ!」


 また消えた。イミナはそんな光景に僅かに目を見開く。が、今度は誰もがしっかり速度を認識していたが故に、急な加速と理解するには十分だった。


「させません!」


 イミナの前に再度移動した大鎧の魔物に対して、今度はセレスティアが割って入り打ち上げるような切り上げで大剣の軌道を逸らす。そうして彼女が攻撃を逸した瞬間を見定めて、イミナと瞬が同時に雷を纏って消えた。


「瞬!」

「了解!」


 紫電の速度で移動しながら、二人が一瞬で意見を統一させる。そうしてイミナが大鎧の魔物の眼の前へと顕現する。


「はぁ! っ」


 乗ったか。跳び上がって顔面に殴り掛かるような姿勢を取るイミナは打ち上げられた大剣を斜め上から振り下ろすような軌道で自身を狙ってくるのを見て、内心でほくそ笑む。そうして殴り掛かるような姿勢のイミナが消えたと同時に、今度は大鎧の魔物の背に向けて瞬が槍を叩き込んだ。


「おぉ! っぅ!」


 短い雄叫びと共に刺突を繰り出した瞬であったが、流石にボスとして配置されるほどの魔物だ。直撃はさせられても速度を重視した一撃では僅かにその表面に傷を作る程度で、内部までは浸透させられなかったようだ。とはいえ、その程度はこの領域の魔物を相手にする上で不思議のない事で、瞬も僅かに驚きはしたものの即座に距離を取る。


「っと……」


 危なかった。自身の居た場所を薙ぎ払う様に振るわれた大剣で生じた風に前髪を揺らし、瞬はソラの言う通りこの大鎧の魔物の一撃が決して受けてはならない事を理解する。その一撃に乗っていた魔力は自身の防御力を上回ると理解するのに十分だったのだ。と、そんな彼は改めて攻撃しようとした所で、再度大鎧の魔物の方が消えた。


「残念だが、初手以外にそう食らわんよ!」


 自身の背後に回り込んでいた大鎧の魔物に対して、瞬は前に出るような形で跳び上がってその斬撃を回避。そのまま反転し、ぐっと足に力を込める。


「おぉおおお!」


 再度雄叫びと共に、瞬が大鎧の魔物に向けて肉薄。薙ぎ払ったばかりで動きを止める大鎧の胴体に向けて、真正面から刺突を放つ。が、どうやら相手も十分な防御力を持っていたらしい。力の乗った刺突でも、先程より深いキズが付く程度で内部までは届かなかった。とはいえ、流石に瞬の一撃だ。怯ませる程度の力はあったようだ。そこに、大鎧の真後ろにセレスティアが背後に回り込んでいた。


「はぁあああああ!」


 まるでダメ押しの様に。セレスティアが大剣を大上段から振り下ろす。そしてその意図を瞬は理解し、ぐっと足に力を込める。が、その次の瞬間だ。少し離れて二人の連携を見ていたソラとイミナの二人が同時になにかに気が付いた。


「先輩!」

「セレスティア様!」


 二人が同時に声を上げて、それぞれ声を掛けた方――単に近かったからだが――に向けてそれぞれタックル――ただし抱きとめるような形でのだが――と拳の風圧により大鎧の魔物から距離を取らせる。そして、その直後だ。吹き飛ばされた二人がその意図を聞くよりも前に、目を見開いてその理由を理解する事になった。


「何!?」

「ありがとうございます!」


 これはあのまま攻撃していればマズかった。二人は大鎧の周囲を封鎖する様に立ち昇った巨大な火柱に目を見開く。そんな光景を見ながら、瞬はソラに問いかける。


「すまん……なぜわかったんだ?」

「ああ、ちょっと離れた所から成り行き見てたんっすけど、偶然あの宝石だか魔石だかが真っ赤に輝くのが見えて。あ、これやばそ、と思ったって感じっすね。そしたら案の定ってわけで」

「なるほど……」


 どうやらやはりあの大鎧の魔物の装飾は単なる美術品としてのものではなく、きちんとした戦闘の意味があるものだったらしい。瞬はソラの言葉を聞いて、大鎧の魔物の各所に見える魔石が赤く輝いているのを見る。


「やはり一筋縄ではいかんか」

「まぁ、ボスなんで」

「それはそうか」


 何を当たり前な事を言ったのだろう。瞬はソラの指摘に思わず吹き出す。言わずもがな、ここまでも何度も苦戦は強いられたのだ。そんな迷宮(ダンジョン)のボスとして配置されているのである。楽に勝てる相手なわけがなかった。


「防御も堅牢。速度も十分。攻撃力は下手をするとセレスティア並……俺ももう少し本気でやった方が良いかな」


 どうせここが最後なのだし、これ以上温存する意味はないか。瞬はそう判断する。そうして、迷宮(ダンジョン)最後の戦いは第二幕へと及んでいくのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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