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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3055話 はるかな過去編 ――変貌――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間の現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは後の時代で八英傑と呼ばれる事になる八人の英雄の一人として名を残す事になるかつてのカイトや、その配下の騎士達と遭遇する。

 そうして彼らの支援を受けながら冒険者としての活動を開始させるわけであるが、そんな一同は一旦は資金集めとして迷宮(ダンジョン)攻略に赴く事になっていた。


「ふぅ……おあ?」


 一息つくか。そんな様子でソラが腰を下ろしたと同時だ。周囲の様子が一変していく。そうして現れたのは、廃墟の如き建物の跡だ。


「「「……」」」


 一気におどろおどろしくなったな。一同は二つの鎧を倒すと同時に変貌した周辺に、思わず呆気にとられる。そうして、思ったままをソラが口にした。


「……まーじで一変しちまいやがりましたね」

「あ、あぁ……ここまで変わるとある種面白いまであるな……うん。完全にボロボロだ」

「うわ……」


 触れるだけで崩れ落ちた木片――脚があったので大本は大きなテーブルだったと思われる――を見て、ソラが顔を顰める。先程までの豪華な王宮はどこへ、と思うほどの一変っぷりだった。


「石畳も……ボロボロっすね。おまけになんか変なモヤまで覆ってるし……まぁ、思いっきり暴れられるって感じなんで良いんっすけど」

「……気にしてたのか?」

「そりゃまぁ……え? 先輩気にしないんっすか?」

「しないだろう」

「そ、そっすか」


 相変わらず根は真面目だな。瞬は自身の返答に少しだけ恥ずかしげなソラにそう笑う。と、そうして改めて周囲の偵察を行うわけであるが、目新しい発見としては大きな扉――こちらも勿論ボロボロだが――があったぐらいだろう。そんな大扉の前に、イミナが立ってドアノブに手を伸ばす。


「ふむ……回るし動くか」

「行きます?」

「行くしか無い……だろうが」


 確かにもう少し探索したいといえば探索したいところではある。イミナはソラの問いかけにどうするか少しだけ頭を悩ませる。とはいえ崩れた本棚の中には先にはあった本は一冊もなかったし、さっと見たところでは戸棚の中にも役立ちそうな魔導具などは一つもなさそうではあった。


「うん。探して使う時間より、今までに浪費した時間の方が重要そうだ。行くか」

「うっす」


 確かに先のループ部屋で時間をかなり浪費してしまった。この迷宮(ダンジョン)が時間の進みが遅いかどうかはわからないが、体力の消耗やこのまま居座った場合に現れるであろう魔物との交戦などを鑑み、先に進む事を選択したようだ。というわけで先に進む一同であるが、やはり次の部屋も完全に崩壊してしまっている様子だった。


「……あれは見てくれだけ、って所っすかね」

「みたいだな……なんというか、こうなってしまうと喩え作り物としても物悲しいものだな」

「なんとなくわかります」


 先程まで何時間も豪華な部屋を見てきたのだ。それが崩壊して何百年も経過したような様子を見せられると、少しだけ物悲しい様子を感じられた。と、そんな物憂げな二人に、セレスティアが告げた。


「……それは良いですが、どうやらここからは普通に魔物が出てくるみたいですよ」

「「……」」


 みたいだな。セレスティアの言葉に二人は僅かに身を固くする。その直後だ。足元を覆っていた薄暗いモヤが一点に収束していく。そうして収束したモヤが爆ぜたかと思うと、その中心から四体の鎧――ただし廃墟に見合うボロボロなものだが――が現れる。


「一人一つ……で大丈夫そうか?」

「先よりは弱い……と思いたいですね」

「そう願いたいな」


 少しだけ楽しげな瞬の返答に、イミナもまた闘士としての楽しげな笑みを浮かべながら同意する。そうして、四体の鎧が動き出す事で交戦に入った。


(動きは遅い……さて、力は)


 こればかりは受けてみないとわからないな。瞬は此処から先の長丁場を考え、情報を手に入れる事を優先したようだ。こういった体感だけはどうしても自身で経験しなければわからない所があるため、自分で受けてみる事にしたらしい。


「が、その前に!」


 雷を纏って、瞬が消える。そうして現れるのは、自身が交戦すると見定めたオンボロの鎧だ。そうして敢えて真正面に肉薄した瞬はかなり手加減しながら槍で薙ぎ払う。


「ふっ」


 ぎぃん、と音が鳴り響き、オンボロの鎧がこれまた同じく刀身がボロボロに朽ち果てた剣で槍を弾く。


(やはり先の鎧よりはかなり弱いな……前にリジェ達が言っていた門番が居るパターンの迷宮(ダンジョン)……なのかもしれないな)


 門番が居るパターンの迷宮(ダンジョン)迷宮(ダンジョン)の中には最奥のボス以外にも入る前に腕試しの様に門番が居る場合があり、その場合は門番は中の大半の雑魚敵よりも強いとの事であった。そしてそれを思い出した瞬はカウンターの様に放たれるオンボロの鎧の攻撃を受け止める。


(やはり攻撃力そのものは先の鎧より悪い……さっきのあの二つが門番だとすると、今後もあれと戦った後に本番になる可能性が高そうか。そこは注意しておく必要があるか……気になるとするとこの中に中身があるのか、という所だが……)


 どうするか。瞬は次の一手を考える。そうして今度は次の一撃が振るわれると同時に、雷を纏ってオンボロの鎧の背後に回り込んだ。


「ふっ!」


 がらんっ。瞬が叩きつけた攻撃がオンボロの鎧を打ち貫き、そのまま崩れた石畳をも貫通して下の地面へと突き刺さる。これに瞬は僅かに驚きながらも、あっけなさを覚えていた。


「中は空か……まぁ、こんな所か」


 元々ボロボロだったし、こんなものなのだろう。瞬は案外簡単に貫けてしまったオンボロの鎧に対してそう感想を抱く。とはいえ、そんな彼も流石にここがそこまで簡単とは思っていなかったが故に、次の攻撃は普通に避けられた。


「っと……流石にそこまで簡単には倒れてくれないか」


 胴体の中心に穴を空けたわけであるが、それでもオンボロの鎧は平然と動いて瞬へと後ろ手に剣戟を放つ。そんな攻撃を瞬はバックステップで回避して、彼は改めてオンボロの鎧の様子を確認する。


(中身は空……動きは遅くもないが、早くもない。さて……)


 胴体は致命打にならないらしい。瞬はそう判断し、更に考察を重ねる。


(こういう場合、安牌は頭か。突いてみるか、打ち据えてみるか……まぁ、安牌な手を取るか)


 地面に着地した一瞬。瞬は次の一手を定めると、上から振り下ろす様に槍をオンボロの鎧の頭部へと叩きつける。すると当然だが脆くなっている兜は砕け散って、その中からなにか黒い球体も一緒に砕け散るのを瞬は見た。


「……コア、か」


 黒い球体が砕け散ると共に崩れ落ちる様に部品単位でバラバラに散らばる鎧の各部を見て、瞬は今しがた破壊したのがコアだったのだと理解した。そうして彼が討伐を終えるとほぼ同時に、他の面々も討伐を終えていたようだ。


「先輩も……終わりっすね」

「ああ……そっちもか。さっきのヤツよりは弱かったな」

「まぁ、あの領域が量産されてたらキツいっすし。多分門番的なヤツだったんでしょ」

「だろう……そうなると、今後は最初にあの領域と戦わないといけない、と考えないといけないわけだが……まぁ、なんとかはなりそうか」

「っすね」


 とりあえず先の鎧には勝てたし、今の雑魚にも勝てている。なのでここから進むには十分な実力があると考えて良さそうだった。というわけで、ここからは一同いつ敵が現れても良い様に警戒しつつ、先へと進んでいくのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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