表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3070/3939

第3053話 はるかな過去編 ――謎解き――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間の異常現象に巻き込まれ、過去の時代のセレスティア達の世界へと飛ばされてしまったソラや瞬達。そんな彼らは後に八英傑と呼ばれる事になる八人の英雄の一人にして中心人物として名を残すこの時代のカイトや、その配下の騎士達と遭遇する。

 そうしてそんな彼らの支援を受けながら元の時代へ戻るべく冒険者としての活動を開始させる一同であったが、今は一旦拠点の防備を高めるため資金集めに奔走する事になり、王都近郊の迷宮(ダンジョン)攻略に臨んでいた。


「「「……」」」


 やはり四迷宮より難易度が高いと言われているだけの事はあるだろう。基本は魔物との戦いが多かった四迷宮に対して、王都近郊の迷宮(ダンジョン)は入ってすぐ延々とループし続ける部屋というトラップに出くわす事になっていた。というわけでその原因を探るべく調査を続けていた一同であるが、ほぼほぼ梨の礫だった。


「このデカい絵画の裏になにかあるかなー、とか思ってみたんですけど。なーんも無いっすね」

「だな……忍者屋敷だとこういった掛け軸とかの裏に扉があったり壁がくるりと回転したりするのが定番なんだが」

「忍者屋敷、っていうか王宮の一室って感じですからねー」

「だな」


 そうあってくれれば少し面白いのだが。少年っぽく笑うソラに瞬もまた同じような顔で笑う。とはいえ、全ての壁を調べても全ての絵画の裏を調べても何もなく、というところであった。


「そっちはどうだった?」

「こっちも駄目ですね……そっちは?」

「こっちも同じくだ」

「そうっすか……」


 イミナの言葉に、ソラはがっくりと肩を落とす。ちなみに、この探索の間に一度部屋を逆走してみているのであるが、入ってきた入り口さえ消えてしまっていた。

 一応探索の間に戸棚の中に『帰還の宝玉』という脱出用アイテムを見つけ回収してはいるので最悪は起きないのだが、兎にも角にも先へは進めなかった。というわけで一通り部屋を調べ尽くしたわけで、ソラがふとした事を口にする。


「この石畳の下に地下に続く階段が隠れてる、とかですかね」

「ふむ……確かにそれはあるかもしれん……」


 こんこんっ。イミナは一面を覆い尽くす石畳を叩いてみて反応を確かめる。が、まぁそう簡単に正解にたどり着けるわけもない。


「駄目だな。正解であっても少なくともここじゃあないだろう」

「ですか……ああ、後は戸棚の裏とか本棚の本がスイッチになってるとか……そんなパターンとかもありますかね。後は本の中になにかが隠されているとか……」

「なるほど……考えればまだまだ可能性はありそうだな」


 兎にも角にも考えられるパターンを全て試していくしかない。ソラの言葉にイミナは改めて探索不足になっている部分を理解する。というわけで改めて一同は今まで見ていなかった本の中や棚の裏などを確認していく。


「……あ」

「どうしました?」

「赤い宝石が……」

「ふむ……」


 声を上げたのはセレスティアだ。彼女はイミナと共に本棚の本を一つ一つ取り出しては振って中になにか隠されていないか確かめていたのだが、その中の一冊の中から小さな赤い宝石が出てきたのである。そうして本からこぼれ落ちた赤い宝石をイミナが拾い上げる。


「報酬なのか、それともここから脱出するためのアイテムなのか……」

「調べない事にはどうしようもないですね」

「ですね……とりあえず失くさない様に小さめの袋に入れておきましょう。セレスティア様。そちらの本は?」

「えっと……他と同じく中身は何も書いてないですね。題名は……赤い眼の女」

「いつもの題名のみのパターンですか」


 本棚に収められていた本なのであるが、これは大半が題名のみで中身は一切記されていないものだった。その題名も例えば今セレスティアが口にしたなんとかの男やなんとかの女、など単純なものが大半で規則性もあまり見受けられなかった。


「並びも……何かがあるようには思えませんね」

「一応、写真だけ撮っておきます」

「あ、お願いします」


 どうせこういう内容は覚えたところで限界があるのだ。なのでイミナは写真を撮る事にしたようで、それを見たセレスティアが一歩下がって邪魔にならないようにする。そうして邪魔にならない様にした後、イミナが本棚の写真を撮影。更に探していくのであるが、この本棚にはこれ以外何もなかった。


「ここはこれだけ……ですね。宝石が見付かっただけ御の字ですか」

「ですね……ソラさん。そちらは?」

『え、あ……こっちはまだ駄目だな。戸棚の中とかにスイッチとか無いかな、って見ても居るけど……うん。これも外れ。で、こっちの部屋のは全部終了。石畳も駄目そうっすか?』

『駄目だな。一つ一つ叩いてみても反応はない』

「そうですか……次の部屋に移動しましょう」


 これでこの部屋は全て探索し終えた形なので、次の部屋に向かう事にする。そうして次の部屋を探すもやはり何もなく、更にその次の部屋に移動。そこでセレスティアが再度発見した。


「あ」

「次はなにか?」

「今度は青い宝石が……」

「ふむ……やはり何かの攻略の糸口になっている可能性が高そうですね」


 先程と同じく本棚の本を振って確かめていたセレスティアなのであるが、今度は青い本から青い宝石がこぼれ落ちたらしい。再度それをイミナが拾い上げ、先の赤い宝石とはまた別の袋に入れておく。


「今度の題名は?」

「青い眼の男……ですね。一応これも持っていきましょう」

「そうですね……ああ、こっちの本棚も撮影しておきます」

「わかりました」


 少なくとも脱出の糸口の可能性は高そうなのだ。イミナとセレスティアは再度本の確保と本棚の撮影を行っておく。というわけで、二つのヒントから一同は本や宝石に何かしらの脱出の糸口があるのではと判断。今度はそれを手がかりとして、脱出の手がかりを探す事にする。


「……この青い眼の男や赤い眼の女になにか意味があると思うのですが」

「青い眼の男とか赤い眼の女……ここまでの絵画にそういうのありましたっけ」

「俺は見ていないな……そっちは?」

「こちらも見ていないな……」


 見付かった本が何も意味がないとは思えない。そう思う一同はその意味がなになのかを探る。そうして再度部屋を行き来して今まで見付けた絵画や旗にそのどちらかに該当しそうなものが無いかを探していくのであるが、これに関しては梨の礫であった。


「駄目っぽいな」

「駄目そう、っすね……うーん」


 瞬の言葉に応ずるソラであるが、その顔はやはり険しかった。まぁ、戦いならどんとこいであるが、こういった謎解きになると途端弱くなるのは冒険者の性だ。それが長続きすると引き換えして別の罠に引っかかる事を期待する冒険者も少なくなかったのだから、こうやって真面目に挑んでいるだけまだマシだったろう。


「だーめっすね。なーんも……あれ?」

「どうした?」

「まさかこの鎧が、とかって無いっすよね」

「鎧……ああ、あれか」


 二人が見ていたのは、黒い男性用の鎧と白い女性用の鎧だ。ここまでの部屋で色々な形の鎧があったわけであるが、その中でもひときわ美麗だったのがこの二つだった。そんな鎧に近付く二人に、イミナが気が付いたようだ。


「どうした?」

「ああ、いえ……この鎧とか違うかなー、って」

「ふむ……試してみるか?」

「まぁ、何もしないよりは良いんじゃないか、とは思います」


 イミナの問いかけに、ソラは少し苦笑気味に同意する。当たるも八卦当たらぬも八卦。そんな様子だった。というわけで、ソラはイミナから青い宝石が入った袋を受け取り、一方のイミナが赤い宝石を取り出す。そうして二人は一度だけ顔を見合わせ、同意する。


「じゃあ、やるぞ」

「うっす」


 かちっ。かちっ。二人は宝石を鎧の眼の部分にはめ込んでみる。そしてどうやら、これが正解だったらしい。二つの鎧に魔力が急速に収束するのを一同は見る。


「良し。正解……だが!」

「やばそうっすね!」


 魔力の収束と共に感じる嫌な気配に、イミナもソラも声を荒らげて戦闘態勢を整える。そうして、一同は王宮の迷宮(ダンジョン)に潜入から数時間で初の戦闘に及ぶ事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ