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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3041話 はるかな過去編 ――要請――

 『時空流異門』と呼ばれる時空間に作用する異常現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラや瞬達。そんな彼らは元の時代へ戻るべく冒険者としての活動を再開させるわけであるが、その前段階として資金調達に奔走する事になる。

 というわけで迷宮(ダンジョン)にて資金調達を行うべくその攻略に赴いていた瞬とリィルが王都へと帰還。入れ替わりでソラ達が出発。瞬は王都に残り拠点の防衛とおやっさんとの打ち合わせを行っていた。


「ほぉ! もう攻略してきやがったか。伊達にカイトの小僧が目を掛けてるわけじゃねぇ、ってわけか」

「まぁ……確かに少しきつかったですけどなんとか大丈夫でした」

「そうか……なら、王都の迷宮(ダンジョン)に関して情報を開示してやるか……そういや、ソラ達は?」

「ああ、ソラ達は他の迷宮(ダンジョン)へ。結局行ってみないとどれが効率が良いか、なんてわからないですからね」

「ほー……」


 こいつら、やっぱり普通の小僧共とは色々な意味での鍛えられ方が違うな。おやっさんは瞬の言葉に少しだけ感心した様に目を見開く。


「なるほどな。確かに何事にも相性ってのはあるもんだ。王都の迷宮(ダンジョン)は確かに手に入る物はでかいが、出ていくのもデカい。属性の相性も無いからな。それならいっそ、ってのは考えられるだろう……ま、お前さんらの場合は王都に拠点があるからそこら気にせず王都の方が良いかもだがな」

「そうですね。一応はそう考えていますが……こればかりはやってみないと、ですし」

「そうだな……で、まずはこいつか」

「これは?」


 おやっさんが瞬に手渡したのは、何やら色々と刻まれた金属片だ。それに小首を傾げる瞬に、おやっさんが教えてくれた。


「そいつが王都の迷宮(ダンジョン)に入るための鍵だ。そいつが無い限り、王都の迷宮(ダンジョン)を封じてる扉が開かない様になってるんだよ……まぁ、それでもどこからともなく入るヤツが居るんだけどな」

「鍵……通行許可証みたいなものですけど」

「ああ。こいつ、見た目に反して中に魔石が仕込まれててな。そいつをかざすと封印が解ける、って寸法だ。だから外だけ真似ても意味がないんだよ」

「へー……」


 確かに一見して魔石が取り付けられていればそれも解析して、と考える者も多いだろう。だが中に仕込まれているのなら入ろうとして発覚する事の方が多い。そうしてそうこうしている間に、付近に待機している兵士達が捕縛という流れらしかった。


「てなわけで、見張りの兵士達は何も言わずそいつを見たら通してはくれる。通してはな」

「でも通った先で封印が解けないとなって、ってわけですか」

「そういうこった……な? 面白い考えだろ?」

「ま、まぁ……」


 こうやって話して貰っているからわかろうものであるが、話されていなければ精巧に偽物を作ったのに何故か入れない、と困惑する事になるのだ。とはいえ、そんな話を聞いた瞬が少し疑問を呈する。


「でもこれだけやってもまだ忍び込まれるんですか?」

「あの迷宮(ダンジョン)は中心部から出入り口が発生するタイプの迷宮(ダンジョン)でな。時々把握してない出入り口が出てきちまうんだよ。国が管理してるのは常設のヤツだな」

「なるほど……それはどうにも出来ませんね」

「ああ。一応、巡回の兵士達が一番先に見つけられる事のが多いから滅多な事は起きないし、冒険者の奴らが見つけても基本的には俺の所に報告がすぐに上がってくるしな」


 やはり冒険者の中にはこういった情報を買い取って貰う事で生活している者も少なくないらしい。そしてそれは王国の上層部も理解しており、情報に賞金を掛けることで報告を促していた。

 というわけで敏い者は敢えて危険性の高い迷宮(ダンジョン)に入って稼ぐより報告して王国から報奨を貰う方が良いと報告してくれる事が多いそうであった。というわけで王都の迷宮(ダンジョン)に入る手続きなどの話をした後。最後に、とおやっさんが一枚の地図を手渡した。


「ほら。こいつが王都の迷宮(ダンジョン)までの道のりを記した地図だ」

「……近いですね。これで見付からない物なんですか?」

「あははは。まぁ、普通にゃ単なる事務所にしか見えねえんだよ。上水道を管理するな」

「え? あ……そう言えば近くに川が……」

「おう。この王都に水を供給する川があって、その管理事務所に偽装してる、ってわけだ……行ったら驚くと思うぜ?」

「はぁ……」


 何が驚くんだろうか。瞬はおやっさんの言葉にそう思いながら小首を傾げる。というわけで色々と話をしていると、唐突に支部長室の扉が開かれる。


「おやっさん! 軍からの緊急要請です!」

「何!? 何があった!」

「北東の第二砦に奇襲!」

「北東の第二砦!? なんであそこに!? 北の要塞から直接は行けないだろうが!?」

「わかりませんよ!」

「まぁ、わかるがな!」


 それならなぜ聞いたんだ。瞬はおやっさんの言葉にそう思う。ちなみになぜわかるか、というとこういう事は何度も起きているからだ。そしてそういう場合の原因は決まって、どこかの役人が不正を働いてという事がほとんどだった。


「カイトの小僧共は!?」

「居たらウチに連絡なんて来ません!」

「だわな!」


 何を当たり前な事を。そんな協会の職員の言葉におやっさんが豪快に笑い飛ばす。まぁ、こんなご時世だ。当たり前の様にカイト達はこの大陸全土を所狭しと渡り歩いていたため、王都に居ない時間は多かった。


「出れるヤツ全員に声を掛けろ! 第二砦を抜かれたら後は王都まで一直線! 最悪はどこかに転移ポイントを作られて魔族共がなだれ込んで来る! それだけは防がにゃならん!」

「もうすでに緊急招集掛けてます!」

「よっしゃ! 俺も装備整えてすぐに出る! 流石に今回は俺も出にゃやばい! 王国軍にもそう伝えろ!」

「了解!」


 矢継ぎ早に飛ばされるおやっさんの指示に、協会の職員が二つ返事で頷いて足早に仕事に取り掛かる。そうして出ようとした所で、おやっさんが立ち止まった。


「瞬。お前さんも頼めるか?」

「俺もですか? 大丈夫です」


 一瞬だけ逡巡したものの、瞬はここで第二砦が落ちたらまずいのなら見過ごす事は出来ないと即断。協力の要請に対して二つ返事で了承を示す。


「すまん。第二砦まで通られてるのは非常にマズくてな……ここが抜かれると洒落にならん」

「そんな所なんですか?」

「ああ……詳しくは道中で話す。一時間以内に準備を整えて戻ってくれ。俺も他の奴らもそこまで準備を整えて集合。すぐに出られる様に王国軍とも連携を取る」

「わかりました」


 状況の説明や地理やらの話については道中でも出来るのだ。ならばそうするだけだった。というわけで、瞬は急遽おやっさん達と共に北東の第二砦とやらの救援に向かう事になるのだった。




 さて一旦ホームに戻って事の次第を告げて出発の準備を整えた瞬であるが、そんな彼は出てから三十分で再び協会に戻ってきていた。


「瞬!? お前さん、早いな!? まだ出てから三十分も経ってないぞ!?」

「これでも色々とやらされてますから」

「そうか……」


 どうやら本当にカイトが目にかけているだけの事はあるらしい。おやっさんは完全武装でやってきた瞬に驚いた様子ながらも、内心で評価を上方修正する。

 なお、瞬がここまで早いのは別に彼に限った話ではなく、冒険部では大半が早く用意を整えられる様に訓練されている。何故かというと単純で、即応部隊の事があるからだ。


「まぁ、良い。早けりゃ早いほどよい……リィルのお嬢ちゃんは?」

「ホームを空には出来ないので……」

「そうか……まぁ良い。兎にも角にも助かる」

「いえ……で、ここからの流れは?」

「今王国軍の奴らが飛竜の荷車を用意してくれている。それで一気に第二砦まで移動する……高速船だ。半日……いや、飛ばせば数時間あればなんとか行ける」

「今からだと……最速で夕方ぐらい、ですか」

「ああ……それぐらいになりそうだな」


 瞬がおやっさんに帰還と迷宮(ダンジョン)の攻略の報告を行ったのが朝の9時。そこから二十分ほど話し合い、それから一時間後が集合時間なので出発は10時30分ごろになる見込みだった。そこから半日なので、到着は彼らの話す通り夕方から夜になる見込みだった。それを理解し、瞬が顔を顰める。


「夜戦にならないなら良いんですが……」

「厳しいかもしれんな……厄介だが……それを見越しての強襲だろう」


 報告やらの時間を鑑みるに、襲撃そのものが行われたのは下手をすると夜明け前だろう。奇襲と考えて良いだろう。


「耐えられそうですか?」

「北東第二砦は堅牢で、率いている隊長は俺も知ってる。良い腕の持ち主だ。奇襲を受けても速攻を仕掛けられにゃ、なんとかはなる……まぁ、それも敵の状況次第、って所だが」


 どこまで本気で攻めてくるかがわからないとなんとも言えない。おやっさんは敵の動きを考えながら、瞬の問いかけに苦い顔だ。そんな彼であったが、すぐに気を取り直して話を戻す。


「ああ、そうだ。それはそれとしてだ。とりあえずまだ時間がある。今のウチに第二砦について詳しく話しておくか……まずシンフォニア王国じゃ王都に近い順に砦は番号が割り振られてる。一応名前もあるっちゃあるが……こっちのが手っ取り早いから俺達は番号で呼んでる。間違えちまうからしっかりとした場だと名前で呼んでるがな」

「……第二という事は二番目近い所ですか?」

「まぁな……だがわかろうものだが、砦ってのは一直線に並んでるわけじゃない。だから第一から第五までは抜けられると王都まで直行。もしくは重要な拠点……魔力の集積地まで直行だ。どれも落ちたら終わりだ」


 こんこんこん。おやっさんは協会に貸与されている地図に記された砦を指し示しながら、瞬へと説明する。これに、瞬がふと気になる事を口にした。


「もしかしてシンフォニア王国の砦は地脈の流れを遮る様に設けられているんですか? 魔力の集積地を取り囲む様に……」

「良い所に気が付いたな……ああ。そうやって王都付近に直接転移されない様にしてる、ってわけだ。だがそれもあくまでも地脈を通じての転移を防いでるだけで、出口を作られちまったら意味がない」


 だからなんとしても北東の第二砦の陥落を防がにゃならん。おやっさんは瞬へとこの戦いの意義を語る。と、そうこうしているとどうやら集合時間のリミットになったらしい。


「おやっさん! とりあえず第一便に乗れるヤツ全員、準備完了です! 王国軍もいつでも良いって今報告が!」

「おし! てめぇら! 気合い入れて行くぞ! 北東の第二砦が抜かれると俺らもおちおち寝ちゃいられねぇ! カイトの小僧共も居ねぇが、居ねぇからって魔族共に好きにさせんじゃねぇぞ!」

「「「おぉおおおお!」」」


 おやっさんの号令に、冒険者達が鬨の声を上げて呼応する。そうして、瞬を含めた冒険者達を乗せた飛竜達は王都を旅立っていくのだった。

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