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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3040話 はるかな過去編 ――風の舞う地――

 『時空流異門』に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは後の時代に八英傑と呼ばれる英雄の一人にして中心人物の一人と呼ばれる事になるこの時代のカイトや、その配下の騎士達と会合を果たす事になっていた。

 そうして元の時代へ戻るべく冒険者としての活動を開始させた彼らであったが、その最中。ふとした事から一旦自分達の足場を固めるべく迷宮(ダンジョン)へ赴く事になっていた。というわけで、先行した瞬とリィルとの入れ替わりで出発したソラ達。そんな彼らはひとまずは同じ馬車に乗っていたわけであるが、道中で本来のマクダウェル領へ向かう馬車に乗り換えたセレスティア、イミナの両名と別れる事になっていた。


「……」

「どうしたのー?」

「んー……なんてか。風の魔力が結構濃くなってきたなー、って」


 由利の問いかけに、ソラはどこか鼻を鳴らす様に答える。元々風迅卿と呼ばれる騎士の治める地というのだ。風属性の魔力の濃度が濃くなっても不思議はなかった。そうして一度口に出してから、彼はもう一度周囲の魔力を吸収する様に目を閉じる。


「……うん。やっぱ風の魔力の濃度がかなり濃い」

「ふーん……」


 そうなんだ。由利はソラの言葉に目を閉じてそう思う。彼女自身も周囲の魔力を確認しようとした、というわけである。が、そんな彼女がどこか困ったような顔を浮かべる。


「んー」

「どした?」

「なんか邪魔されてるっぽいー」

「邪魔? ああ、これか」


 由利の視線の先はソラの懐だ。そこにあるのは考えるまでもなく<<地母儀典(キュベレイ)>>で、得意な属性同士で共鳴に似た状況が起きていたのかもしれなかった。というわけで、そんな視線の先に気付いたソラに由利が問いかける。


「読まなくて良いのー?」

「あー……あはは。そうだよな。うん。時間あるから読んでおく」


 由利の言葉に、ソラは少しだけ苦笑気味に頷いた。やはり教練をしてくれる相手が誰もいなくなってしまったからか、魔導書の解析や実践は若干足踏みが多かった。というわけでそれを見抜かれていた事にソラは少し恥ずかしげに、しょうがないので気合を入れて<<地母儀典(キュベレイ)>>を取り出す。


(うーん……防御系の魔術とか(スキル)もそうだけど、魔術も練習しないと今後多分キツイよなぁ……)


 なにせ今の自分達には魔術師が居ないのだ。そうなると物理攻撃が通用しない、もしくは効果の薄い相手が現れた時に苦戦する事は明白だった。というわけでやらねばならない事はわかっていたわけであるが、やはり状況が彼に二の足を踏ませていた。


(やっぱなんとかなんないかな……)


 魔術を誰にも教えてもらわず独学で、しかも専用の施設などもなくというのは普通に危険だし、やるべきではない。それはソラも<<地母儀典(キュベレイ)>>を手にした時に最初に教えられていた事だ。


(というか、一番の問題は実践が出来ないって事だよな。思えば冒険部ってホント恵まれた環境だったんだなぁ……)


 当たり前の様にそれを教授していたので気付かなかったが、本来は冒険部のような堅牢な練習用の空間を常備しているギルドというのは滅多に無いのだ。が、それで冒険者のしごとが満足に出来るわけがない。なのでカイトが用意していた、というわけである。


(……今度エルフの都に行った時、道中でノワールさんに聞いてみるか……)


 彼女は魔女だし、カイトの仲間なので相談には乗ってくれるかもしれないな。ソラは教えてくれなくても最低限実践出来る方法や何か自分が教えを乞える相手を紹介してくれないか、と思ったようだ。

 というわけで彼は今後の魔術の練習に関してを考えながら、<<地母儀典(キュベレイ)>>の解析を進めながら馬車に揺られてゆくのだった。





 さてソラと由利が馬車に揺られて王都を出発して二日。セレスティア達と別れた翌日だ。その日の昼を少し過ぎた頃に、二人を乗せた馬車はエドウィン家が統治する街『エドウィン』へと到着していた。


「へー……王都やマクダウェル領とは随分印象が違うなー」

「木が多いねー」

「なー」


 馬車から降り立った由利の言葉にソラもまた呑気な顔で頷いた。二人は知る由もないが、スカーレット家の領地との最大の違いと言えるのはこの木造建築の多さという所だろう。町並みにしても樹木が多く、どこかエルフ達の街の印象が見受けられた。


「なんかエルフ達の街みたいな感じだよな」

「ねー……実際多い?」

「あー……確かに多いな……」


 エルフ達の街に似た印象があった二人であるが、実際行き交う人の中には普通より多くのエルフ達が見受けられた。ちなみに、この時解説する者が居ないので二人は知る由もないのであるが、元々エドウィン家はエルフの血筋でありマクダウェル家とつながりが深いのは元々エルフ達の都に近い所にマクダウェル領があったためというわけであったりする。というわけで、エルフの街の印象が強いのも道理なのであった。


「あ、とりあえず宿の確保をしてその後は色々と手続きやって、だな」

「んー」


 兎にも角にも宿屋の確保をしておかない事にはどうにもならないし、その宿屋も通信網がある程度発達したエネフィアや地球の様に王都から代行を依頼出来るわけではない。ここで情報を集めて、宿を確保する必要があった。とはいえ、ここで役立つのはやはりカイトが教えてくれた情報だった。


「えっと……基本は大通りに面した宿屋が良いんだったっけ……」


 大通りに面した宿屋は基本不正が起きたらすぐにバレるから比較的安全だぞ。ソラはカイトのそんな言葉を思い出す。無論その分価格は高いが、そこは必要経費と瞬同様にソラも割り切っていた。というわけで、二人はこの日は一日宿屋の手配や明日からの色々な手配に備えて一日ゆっくりとすることになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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