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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3031話 はるかな過去編 ――別行動――

 『時空流異門』と呼ばれる異なる時。異なる空間へと飛ばされてしまう非常に稀な現象。それに巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代。それもよりによって戦国乱世と呼ばれた時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは後にこの時代を終わらせたとされる八人の英傑達の一角にして勇者と呼ばれたこの時代のカイトやその仲間達と会合。元の時代へ戻るべく、冒険者としての活動を開始させる。

 そんな中、ソラ達はカイトが貴族達から狙われる存在である事を理解すると、大精霊達の支援を受けるために彼と足並みを揃えるしかなかったため、一旦元の時代へ戻るための活動を停止させて足場を固めるべく奔走していた。というわけで、おやっさんから迷宮(ダンジョン)の情報を手に入れたソラは改めて瞬と合流。次の金策について話を交わしていた。


「なるほど……王都付近にも迷宮(ダンジョン)があるのか」

「まぁ……つってもこっちは四騎士達の実家が管理してる迷宮(ダンジョン)のどれかを攻略出来たら教えてやる、って話っすけど」

「属性に特化した迷宮(ダンジョン)か……相性が良いのを挑むべき……だろうな」

「そうっすね……先輩になるとマクダウェル家の『雷の迷宮』かスカーレット家の『炎の迷宮』。俺だと『風の迷宮』……ですね」

「小鳥遊もそっち側になるか」

「そうっすね」


 由利の得意とする土属性は一般的に風属性と相性が良いとされている。これは補完関係にあるというわけではないのだが、通じにくいという意味で相性が良い。風属性そのものを得意とするソラと組んで行動するのが最良ではあっただろう。


「となると……別行動にした方が良さそうか」

「ええ……流石に得意属性でもない迷宮(ダンジョン)に挑んだら痛い目に遭うだけでしょう。おやっさんもどうかなー、って感じでしたし」

「ふむ……中々に難しそうか」


 単純な戦闘力であれば自分達に勝るとも劣らないおやっさんが王都の迷宮(ダンジョン)は四騎士の管理する迷宮(ダンジョン)を攻略してこない限り教えない、というのだ。四迷宮は勿論として、王都の迷宮(ダンジョン)の難易度も察せられた。


「……良し。それだったら今日の依頼は簡単な物にしておいて、とりあえず各地へ向かう情報を手に入れるか」

「それが良いと思います……間違いなく簡単じゃないでしょうし」


 先程の話でおやっさんは簡単な物から順番に教えてやる、と言っていたのだ。その最後の方であった事を考えれば、四迷宮は決して簡単なものとは思えなかった。行き道もそうであるが、攻略情報も然りで調べておかねばならなそうであった。というわけで、二人は今日の依頼は日銭を稼ぐ程度の簡単な物にしておいて、戻ってセレスティアらに相談を持ちかける事にするのだった。




 さてソラと瞬が簡単な依頼を請け負ってすぐ。今後の活動方針を定めたソラ達はというと、四騎士の事ならばとイミナとセレスティアから話を聞く事になっていた。


「なるほど……伝説の四迷宮か」

「で、伝説ですか」

「ああ。私達の時代では……詳しくはわからないんだが廃城の賢者……ああ、カイト様が封じられたんだ。それで今では学生達から伝説の、と言われる様になったんだ」


 どうやら後の時代にはこの四迷宮はカイトが封じる事になったらしい。それがなぜかは当人に聞かねばわからない事だが、そういうわけならと瞬も察する。


「では入った事は?」

「無いに決まっている。まぁ……そういっても。恥ずかしい話だが、例年何人かの学生が勝手に入って先生方にご迷惑をお掛けしているとは聞いている。私はそうではないぞ?」

「わかってます……とはいえ、入れるということは出れるという事でもある、という事ですね」

「ああ……といっても、学園の先生方には私より強い方も何人も在籍されている。なにせカイト様が選りすぐった教員だからな……いや、選りすぐったわけではないか」

「イミナさん以上……」


 カイトの所に集まった教員だ、と言われればなんとも納得するしかないのであるが、イミナの実力を知っていればこそ瞬は思わず頬を引き攣らせる。と、そんなイミナに続けてセレスティアが口を開いた。


「とはいえ……学生達には相当に厳しい場ではあったのでしょう。そんな所に挑むぐらいなのですから、誰も彼もが腕に覚えがある実力者ではあったのですが……教員が軽い説教に留める程度には、自分達が何もわかっていなかったと思い知らされる環境だったそうです」

「環境?」

「えーっと……私達の時に入ったのは」

「確か『雷の迷宮』ですね」


 セレスティアの問いかけを受けて、イミナが自分達の時代に馬鹿をした学生が入った迷宮(ダンジョン)を口にする。まぁ、なぜこんな事をイミナとセレスティアが知っていたかというと、『雷の迷宮』はマクダウェル家の管轄だからだ。なので筋として、彼女の所――正確には次期当主である彼女の兄――にも一報が入ってきたのである。


「ああ、そうでした。その出てきた者が言うに、常に雷鳴が轟き雷が降り注いでいたそうです」

「俺にとっては良さそうだが……」

「私にとっても、良い場だ。確かに四騎士の実家が管理するには良い場所ではあるだろう」


 だろうな。イミナの言葉に瞬も納得する。四騎士達はそれぞれ祖先が冠した名に由来する属性を得意としている。そしてマクダウェル家が得意とするのは雷属性。チネに雷が降り注いでいたという『雷の迷宮』は相性が良いと言って間違いなかった。と、そんな会話をしているとソラがふと思い出す。


「あれ? でも確かカイトが封じた、って話じゃなかったでしたっけ」

「ああ、それか……流石に数百年が経過して封印が解けたというか、弱まってしまったみたいでな。地脈の影響などもあったらしいが。そこらの詳しくは私達も知らないんだが……数十年前に馬鹿な冒険者が封印を解いたらしい。一応その者たちは捕らえられ、処罰されたらしいが」

「ただもう四迷宮も人里から離れていたので、再封印を行うではなく放置とされてしまったようです。一応、管理はまだされていますが……」

「四騎士も中央に移動しているから、おざなりになってしまっている……という所か」


 なんとかしなければならないのだろうが、如何せん情勢がな。セレスティアの言葉に続けたイミナが少しだけ恥ずかしげな、それでいて苦い様子でため息を吐いた。

 まぁ、彼女らの世代ではすでに魔族の再侵略が起きているのだ。すでに人が立ち寄らない迷宮(ダンジョン)の管理に人員を割ける余裕はない、というわけだろう。


「まぁ、良い。とはいってもそこに向かう方法については私も聞いている。一部であれば、私も知っている。一族の話、としてな」

「教えて貰って良いですか?」

「勿論だ……それに何より」

「何より?」

「私としても渡りに船だ。一度は行ってみたいと思っていたんだ……が、流石にカイト様が封じられた迷宮(ダンジョン)にマクダウェル家の私が勝手に入るわけにも、と臍を噛んでいてな」


 瞬の問いかけに、イミナは少しだけ嬉しそうに答える。やはり四騎士達も修行に使ったと言われる迷宮(ダンジョン)だ。行ってみたい、という気持ちはあったらしい。というわけで、それから少しの間一同は四迷宮について話し合って、軽く依頼を攻略してこの日を終わらせるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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