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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3030話 はるかな過去編 ――迷宮――

 『時空流異門』と呼ばれる時間と空間を飛び越えてしまう非常に稀な現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは後の世に八英傑の一角にして中心人物と言われる事になるカイトや、その仲間達との会合を果たす事になっていた。

 そうして元の時代に戻るべく冒険者としての活動を開始させる事になるのであるが、時乃の導きに従って残る八英傑と出会うべく動くよりも前に、足場を固める事に奔走する事になっていた。というわけで、ソラは瞬が持ち帰った見積書を参考に冒険者を取りまとめるおやっさんに再度相談に乗ってもらっていた。


「なるほど。迷宮(ダンジョン)ね……碌なもんがねぇからあんま話は出ねぇわけだが」

「碌なもんがねぇ?」

「ああ。金って意味での実入りは良いんだがなぁ……だがそれが話をこじらせちまってな。毎年毎年金に困ったり、一攫千金を夢見たりするバカな小僧共が突っ込んで戻ってきやしやがらねぇ」

「あー……」


 冒険者のどこにでもある話だ。冒険者は出ていくお金も大きいが、上手く立ち回れば一攫千金は決して夢ではない。なので毎年何人もの冒険者が一攫千金を夢見て高額な依頼や危険な迷宮(ダンジョン)に挑んでは命を落としていた。


「その様子だとお前らも流石に知ってるか……ま、だからあんまオススメは出来ねぇが……その顔をするならわかった上で聞いてるって感じか」

「一応、これでも何個か迷宮(ダンジョン)は踏破してきてるんで」

「なるほどな……まぁ、そうだなぁ……お前らが行けそうな迷宮(ダンジョン)か。あ、そうだ」

「なんすか?」


 なにかあったかな。そんな様子で思い出そうとしたおやっさんが唐突に顔を上げたのを受けて、ソラが小首を傾げる。これに、おやっさんが口を開いた。


「この話は基本は俺以外にはすんな。基本、ウチの支部は迷宮(ダンジョン)の話は禁止にしてる」

「バカが突っ込むから?」

「そういうことだな。俺がここの支部長になるまでの死亡率で一番高かったのが懸賞金の掛けられた魔物の討伐。その次が迷宮(ダンジョン)だ。流石に懸賞金はしゃーねぇが、迷宮(ダンジョン)に関しちゃこいつは大丈夫だろう、って判断したヤツに俺が直々に教えてる。お前らも中じゃしてくれんなよ」


 それでも他の支部で情報を手に入れたバカが例年何人か突っ込んで死んでるんだから始末に負えねぇ。おやっさんはため息を吐きながら、ソラへと語る。そうして数分。おやっさんは支部長のみが保有する冊子を取り出して、中から幾つかの迷宮(ダンジョン)の情報を提示してくれた。


「難易度の低い順で良いか?」

「あ、お願いします」

「良し……あ、ここから話すのは王都からあんまり遠くない物限定な。それは前提として聞いておいてくれ。まずロウリー子爵の所にある迷宮(ダンジョン)。こいつは利点としちゃロウリー子爵のお膝元の街『ロウリー』から数時間で往復出来るから、割とあの街は冒険者で賑わってるな」


 他に何があるかな。おやっさんは少しだけ楽しげに迷宮(ダンジョン)の情報を読み込んでいく。そうして数個聞いた所で、彼が唐突に顔を顰めた。


「ああ、次は……あ、こいつは駄目だ……次だな」

「なんかあるんすか?」

「あー、いや、まぁ、今更の話っちゃ今更の話だが……カイトを妬んでる貴族共の領地にも迷宮(ダンジョン)は何個もあってな……あいつに好意的な貴族の所なら問題は無いだろうが……」

「それの方が少ない、と」

「そういうこっったな」


 あれも駄目これも駄目。おやっさんはカイトと敵対的な貴族と噂される貴族の領地にある迷宮(ダンジョン)を弾いていく。そしてその上である程度の実入りが見込める様にせねばならないのだ。色々と考える事は多かった。と、そうして何ページも飛ばしていくおやっさんであるが、ある所で手を止めた。


「……ああ、こいつは良いな。若干厳しい所もあるだろうが……いや、適性やら相性やらを考えりゃ丁度良い範囲かもな」

「どれです?」

「四騎士達の実家が確保してる四迷宮……『炎の迷宮』『氷の迷宮』『風の迷宮』『雷の迷宮』。それら四つだ。この四つは他の迷宮(ダンジョン)同様に貴族が抑えてる所だが……」


 貴族が抑えている迷宮(ダンジョン)。これは貴族達が出入りを管理している迷宮(ダンジョン)で、エネフィアでもこの世界でも一般的なものであった。とはいえ、この四つの迷宮(ダンジョン)はその中でも異質な物ではあったらしい。


迷宮(ダンジョン)の中でもこの四つは買い取りまでしてくれてる非常に稀な所でな。出入りの監視をやってるのは珍しくもないんだが……」

「へー。買い取りも」

「あんま驚かねぇんだな」

「そういう所、聞いた事はあったんで」


 ソラが思い出していたのはソーラ達と出会った街の事だ。あそこでも迷宮(ダンジョン)から出てきた冒険者相手に鑑定や買い取りをしてくれていたのを思い出したのである。


「そうか……まぁ、この時代だ。大量生産の粗悪な剣や鎧より、迷宮(ダンジョン)から回収された物の方が性能が良いってのはあるからな。軍にしたって迷宮(ダンジョン)から出てきたのを買い取った方が良いってのはある。更には四騎士達が治めてるから、そこで良い功績を残せば軍に取り立てて貰えたりもする。一攫千金を狙うにしても何にしても、良い所なんだ」

「あ、なるほど……」

「そっちは見えてなかったか……実際、今の時代だ。腕の良い戦士ってのは欲しいからな。腕の良い戦士達も自分の腕をアピール出来る良い場だ。だから最後まで踏破出来れば、四騎士の実家から金一封が出たりもする。覚えといた方が良いぞ」

「へー……」


 やはりこの時代だからこその所は色々とあるんだろう。ソラはおやっさんの言葉にそう思う。とはいえ、これについてはソラは気にしない話であったし、おやっさんとしても興味はないだろうなと理解していたようだ。


「ああ、それはともかく。取り立ててもらえる云々についてはどうでも良い事だろう。お前さんらにゃ……後は……ああ、こいつが一番危険だが同時に実入りも一番良い。何より近い」

「近い?」

「ああ……王都から最も近い迷宮(ダンジョン)だ……が、よくカイトの所の小僧共が入ったりしてるぐらいの難易度だから、下手を打つとマジで死ぬ……ここだけの話。ウチが迷宮(ダンジョン)の話を禁止しているのも、王都から一番近い迷宮(ダンジョン)がこの危険な所だから、ってのもあってな。実はウチの手合が輪番で密かに出入りしないか見張ってる所でもあるんだ」


 僅かに眉をひそめるソラに、おやっさんが声のトーンを落としながら教えてくれる。迷宮(ダンジョン)の危険度を人類が制御出来るわけではない以上、仕方がないだろう。というわけでため息を吐いたおやっさんであったが、すぐに気を取り直す。


「ああ、すまん。とはいえ、ここの実入りは本当に良い。かくいう俺もストレスが溜まったら潜ってるが……良いぞ、ここは。敵もそこそこ強いから、思う存分に戦えるしな」

「あ、あははは……でもおやっさんでそれってことはやっぱ難易度は言う通り、って事なんっすよね?」

「そうだな……ただし、安定して踏破出来るなら実入りは抜群。しかも王都に近いから、旅費とかも不要……お前さんらにゃ一番良い所だろう」

「確かに……」


 危険性は一番高いものの、同時にそうであるがゆえに報酬も一番良い所らしい。それは考えるべき所であるが、危険性の高さは気になる所であった。


「あ、そうだ。このどれかに持ち込み不可とかってあります?」

「持ち込み不可? また高難易度な迷宮(ダンジョン)を知ってるんだな……いや、このどれもが持ち込み可能な迷宮(ダンジョン)だから安心しろ」

「そうっすか……うっす。ありがとうございます。それだったら妥当なのは四騎士の実家? ってのが抑えてる迷宮(ダンジョン)で実力を測ってみて、んで大丈夫そうだったら王都に戻ってきてって所ですかね」

「ふーむ……なるほどな。それが良いかもしれん。そうだ。それならあの四迷宮の注意点やらをメモっておいてやる。それも踏まえて考えろ。その上で、王都の迷宮(ダンジョン)に挑むのならあそこの詳細を教えてやる」


 おやっさんとしてもどうやら王都に近い迷宮(ダンジョン)の場所やらを教えてやっても良いがどうしたものか、と悩んでいた所だったようだ。ソラの申し出からこれら四迷宮のどれかの踏破を証明として提示したなら、という事にしたらしい。というわけで、これにソラも一つ頭を下げた。


「ありがとうございます……あ、そうだ。四騎士達の実家って遠いんですか?」

「いや、どれもこれもが本来は王都の最後の守りを任されている所だからな。全部が数日で……四騎士達なら数時間も掛からず往復出来る距離にある。出てもそんな時間は掛からないだろう」

「了解っす」


 王都をそんな不在にしなくて良いなら安心だ。ソラはおやっさんからの言葉に再度礼を述べる。そうして、ソラはおやっさんから四騎士達の実家が管理しているという四つの迷宮(ダンジョン)の情報を手に、瞬と合流するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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