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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3027話 はるかな過去編 ――助言――

 『時空流異門』。それはある対象が異なる時間軸。異なる空間へと飛ばされてしまうという非常に稀な現象。それに巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の世界に飛ばされてしまったソラ達であったが、そんな彼らはセレスティア達の時代には八英傑と呼ばれる英雄の一人として名を残す事になるカイトや、その仲間達と会合する。

 彼らとの会合を経て再び冒険者としての活動を開始させる事にした一同であったが、その最中。ふとしたことからカイトを訪ねる事になったソラと瞬の二人は、カイトの率いる騎士団の最高幹部である四騎士達。そして彼の主人にして後の妻となるヒメア・セレスティア・シンフォニア第二王女と会合する事になっていた。


「……」


 駄目だ。まーったくわかんない。ソラはヒメアの語る防御系の様々な話を聞きながら、ただひたすらに舌を巻く。ヒメアは攻撃系の魔術を実験的になら使えはするが実用的に使えるわけではない。となると自然、実用的に使用可能な防御系や補助系の魔術に特化していたのであった。


「というわけで、貴方の障壁には無駄もムラも多いの。ムラが出るぐらいならいっそその部分はゼロにしてしまって、他の所を厚くした方がよほど効果的よ」

「は、はぁ……」


 ムラが出ているって、どういう事なのだろう。ソラは自身の障壁を展開しながらそう思う。とはいえ、こんな説明だけで全てが理解出来るとはヒメアもまた思っていなかったようだ。


「ああ、わからないのも無理はないわ。でもこれならわかりやすいでしょ」

「……え?」


 ヒメアの人差し指の緩やかな刺突によりあっさりと抜かれた自身の障壁に、ソラは思わず目を見開く。普通ならあるはずの障壁が破られた時のバックロードもない。破られた当人であるソラでさえ、まるで何が起きたかがわかっていない様子であった。


「貴方の障壁のムラ……そこに一点集中で穴を開けてやったのよ。その部分は無意識的なムラだから、貴方もわかっていない。だから今みたいに一番薄い所とかになると、貴方自身が破られた事にさえ気付けない。バックロードが無視出来るほどになるから」

「……」


 これほどまでに論より証拠は無いだろう。ソラは一撃かつ一瞬で、それも自身にさえ対応が出来ない領域で破られた障壁にただただ納得するしかない。とはいえ、それならどうすれば良いのか。それこそが重要である事を二人は理解していた。


「あの……無意識なのだったら、どうすれば良いんですか?」

「無意識を意識しよう、としても難しいわね。だって意識した時点でその部分の厚みは増加するんだから」

「じゃあ無理、と?」

「なわけないでしょう。他の人に見てもらうなり、外の流れから僅かな差異を見付けたり……取れる方法はいくらでもあるわ……まぁ、他人に頼む場合は貴方が展開している障壁の数に応じて相当苦労する事になるだろうから、頼まない事をおすすめするわね……私はカイトにやらせてるけど」

「お、おぉう……」


 流石はお姫様。世界最強の勇者にワガママを言えますか。ソラはそう思うのであるが、実際には惚れた弱みもあるし、主従関係もある。何より王族の第二王女だ。彼女の護衛が主任務であるカイトが彼女の守りに関わる事で拒絶する事が出来るわけもなかった。

 まぁ、しれでにこれ幸いと数万単位の障壁をチェックさせているのは、やはりヒメア自身がカイトと少しでも長く居たいと考えればこそなのかもしれなかった。というわけでこちらはこちらで防御系の助言を受ける一方。瞬はというと、クロードと話し合っていた。


「なるほど……そういう事も出来るんですね」

「ああ……だからこうやって雷を帯びると磁石みたいにナイフを自由自在に動かせるんだ」

「磁石みたいに……」


 なるほど。クロードは瞬の語る科学の知識を聞きながら、得心した様に頷く。どうやら思い当たる節が幾つかあったらしい。一応彼としても雷に関わる事と幾つか調べていて、磁石の話も研究はしていたそうだ。そこから星が磁力を帯びている事なども知っていたりするのであるが、やはり如何せん時代柄そこまで詳しい科学の知識があるわけではなかったようだ。


「ああ、ごめんなさい。話の腰を折りましたね……それで相談は?」

「まずこの効率化と、まぁ……なんというか。このナイフを使ったやり方を第二王女殿下との戦いでしなかったのには理由があってな」

「理由が?」

「この使い方だとナイフに磁力を帯びさせるまでは良いんだ。そこまでなら大したダメージにはならないからな……だがこういう魔術的な刻印を刻み込んだりするやり方になると……」

「なるほど。刀身へのダメージが避けられず完全に使い捨てになってしまう、と」


 とどのつまり予算の問題か。クロードは現金な話だとは思うものの、瞬達の現状から笑い話にならない問題だということもまた理解していた。


「ああ……それで何か良い手は無いか、とな。刻む事そのものに関しては練習すればもっと早く出来るが、それ以外はどうにもならんからな」

「確かに、使い捨てのナイフとはいえ何百本も使い捨てると少し高い金額ですからね……」

「す、少しか……」


 流石はシンフォニア王国でも有数の歴史を持つ騎士の名家。もし瞬が冒険部に居たとて二の足を踏んだだろうほどの金額を少しと言うクロードに、思わず頬を引き攣らせていた。


「……まぁ、あまりこういった事は勧められないのですが」

「なにかあるのか?」

「使い捨てのナイフの原料を自分で取りに行って、鍛冶師に作ってもらうことです。使い捨てのナイフだと鋳造がほとんど。鍛造よりは費用は抑えられるでしょう。鍛冶師の方々も多忙なのであまり勧めたくはないのですが……」

「なるほど……」


 確かに原料を自分で手に入れる事が出来れば、費用は比較的安価に抑えられるかもしれない。瞬はクロードの言葉にそれが可能かどうかを考える。と、そんな彼にクロードは第二案を提示する。


「後は……こちらは出来る方がさほどいらっしゃらないし、依頼するにしても費用としては高く付くのでおすすめはしませんが……」

「一応、参考に教えてくれ」

「錬金術を使うやり方ですね。原料になる鉄鉱石などから自身で錬成してしまう、というやり方です……これはある程度の錬金術の薫陶が必要ですから……」

「錬金術か。なるほどな」

「出来るんですか?」


 それは良いかもしれない。自身の想像に反して好感触な様子の瞬に、クロードが驚いた様子で問いかける。これに、瞬は若干苦笑する。


「基礎の基礎は学んだんだ。どうやら地球の文明と錬金術は相性が良いらしくてな……三柴先生並、とまでは行かなくても基礎の解析と分解、再構築が一通り出来る様にぐらいはなっている……まぁ、出来るのは本当に簡単な基礎的なものだから、今の俺だとナイフも出来ない可能性が高いがな」

「それでも基礎があれば十分ですよ。錬金術を在野で出来る方はあまりいらっしゃらないので……」


 少しだけ恥ずかしげに笑う瞬に、クロードは少しだけ驚きながら実情を口にする。これに、瞬は首を傾げた。


「そうなのか? なぜだ」

「……まぁ、あまりこういう事を言いたくはないのですが、錬金術師の方の多くには軍やそれに近い立場に就いて頂いています。砦の修繕などには非常に重宝しますから……」

「ああ、なるほど……」


 その多くが国家に召し抱えられてしまったがゆえに、一般からは程遠いものになってしまったというわけか。瞬は少しだけ申し訳無さそうなクロードの様子でそれを察する。そしてそれが正解であった。

 とはいえ、今回必要な腕前はそんな砦のような大規模な物を修繕出来るほどではない。粗悪でも良い簡素なナイフを生成するだけで良いのだ。


「まぁ、流石に俺達にそこまでの腕はない。そこまで極める事もしないだろうしな」

「そうですね……ご自身で出来るのなら、それに越したことはないかと。時間も手間も掛かってしまいますが……」

「それでも、云十万もお金を掛けるよりずっと良い。特に今はな」


 追々その余裕が出てきたら考えても良いかもしれないが、今はホームの改修に備えて資金を貯めている所だ。時間が掛かる事を承知でも、錬金術を使ってナイフを調達する事を考えた方が良かった。


「それに錬金術で砦が修繕出来るのなら、多少の修繕も出来るかもしれないからな。少し勉強しておくのも良いさ」

「そうですか……まぁ、そっちはそれで良いですか?」

「ああ。ありがとう」


 とりあえず使い捨てナイフの調達については目処が立てられた。瞬はクロードの問いかけに一つ頷く。そうして、二人は次の話に焦点を当てた。


「で、次はこの方法の改良ですね……使い捨てナイフの強度などにも依存しそうですが」

「そうだな……それはあると思う」

「となると……手としては短時間にして火力を増すなど幾つかありますね」

「ふむ……」


 どういうやり方が出来るだろう。瞬はクロードの助言を聞きながら、自分が求めるもの。自分が出来そうなものを考えていく。そうして、この後ソラと瞬の二人はそれぞれの分野を得意とする者たちからの助言を受ける事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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