第3026話 はるかな過去編 ――助言――
『時空流異門』に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代。それも魔族達の暗躍によって戦国乱世と呼ばれる時代に突入した時代へと飛ばされてしまったソラ達。
そんな彼らは後にこの時代を終わらせる八英傑の一角と呼ばれる事になるこの時代のカイトや、彼の親友にして唯一無二の好敵手であるレックス・レジディア。カイトの率いる騎士団の騎士達との会合を経て、改めて元の時代へ戻るべく冒険者としての活動を開始する。
そうして活動を開始したわけであるが、色々と気になった事からカイトに相談をしようとした事をきっかけとして、彼の主人にして後に妻となるヒメア・セレスティア・シンフォニアや彼の率いる騎士団の最高幹部である四騎士達との間で話し合いを持つ事になっていた。
「で、悪かったわね。急に戦えなんて」
「あ、いえ……」
元々初めて見た時もそんな様子はあったが、どうやらヒメアは王女様でありながらかなりサバサバした雰囲気もあったようだ。ソラも瞬も若干困惑ながらも王女としての仮面を取り払えばそういう人物が居ても不思議はないだろうと思う事にする。と、そんなヒメアにグレイスが問いかける。
「で、姫様。ご納得しましたか?」
「まぁ、良いとしておきましょう……後は実際に死地に出てそうなるか、ぐらいでしょうけど……」
「彼らが死地に出るなら、結局はという所でしょう」
「でしょうね。あいつは本当に……怪我した後に誰が看病してると思ってんのよ……そこがあいつらしいんだけど」
あ、これは多分惚気とかそういう部類なんだろう。ソラもカイトも口ではグチグチと文句を言いながらもすごい嬉しそうな顔で話すヒメアにそう思う。と、そんな彼女にソラが問いかける。
「そうだ……一つ良いですか?」
「ん? 何?」
「攻撃がこっちに通用しない? なんてかそんな事を途中で仰っしゃられてたと思うんですけど、それってどういう事なんですか?」
確かにソラ達としても強大な圧ととてつもない戦闘力にひるみはしたものの、実際に戦ってみると本当に攻撃はこちらに届かないのだ。勿論彼女の防御性能の高さからこちらの攻撃も一切通用しないわけであるが、そんなものは彼女の能力によるものとソラ達には思えた。帳尻が合っていない様に思えたのである。
「ああ、それ……ライム」
「ん」
「「え?」」
一切の問答無用にヒメアへと投げ放たれたナイフに、ソラも瞬も目を丸くする。が、本当に驚くべきはここからだった。
「「は?」」
「こんな感じで私が攻撃を防がないでも勝手に攻撃が曲がっちゃうのよ。まぁ、私が防がないと防がないで他の人に攻撃が飛んじゃうから防ぐんだけどね」
「「……」」
なんだ、今のは。一直線に飛んでいたナイフが唐突に、勿論何ら操作した様子もなく明後日の方向へと軌道を変えたのだ。そんな事象にソラも瞬もただただ困惑するしかなかった。
「勿論、今みたいに殺意なくでもなく戦場でも一緒。危険だからやったことはないけれど、私なら魔王の攻撃でも通用させないでしょうね」
「もっぱら、シンフォニア王国が初手で封印されたのは姫様が居るからでは、というのが我々の間で語られる話だ。彼女単独だが如何なる攻撃も通用しないのだからな。それでいてこちらの回復に関しても抜群の適性をお持ちだ。厄介この上ないだろう?」
「それは……もう厄介という言葉を思いっきり超えてますね……」
確かに相手への攻撃も出来ないが、こちらにも攻撃が届かないのだ。だがそれなら彼女自身は他のサポートに回れば良いだけの話で、こちらには攻撃性能であれば最強と言えるカイトが居る。彼とセットで運用すれば、最強の矛と盾の出来上がりであった。それを理解したソラの言葉に、グレイスが笑った。
「だろう? だからシンフォニア王国にとって最強の布陣というのは姫様とウチの団長の組み合わせだ。まぁ、姫様に最前線に出て頂くなぞ滅多な事であってはならんことだが……」
「本当ならもっと前に出たいんだけど……流石に駄目なのよね……」
「あー……」
未来のカイトであれば立場なぞ踏み倒して最前線に出てくるわけであるが、あれをやった後は当然待つのはお説教だ。というわけでヒメアがそういう事をするわけもなかった。
「ま、良いわ。それはそれとして……あんた」
「は、はい!」
「何、あの障壁の使い方。全然なってないわね」
「す、すんません……」
急に睨まれてすくみあがったソラであったが、やはり待っていたのはお説教だった。特に防御系の魔術や障壁、結界の使い方であれば彼なぞ目でもない領域の使い手であるヒメアだ。一家言どころか幾つも説教が存在しても不思議はなかった。
「障壁に無駄が多すぎる。何、あの常時全面に展開してるの。障壁は相手の攻撃に対して適切な形状を選択する事が重要なの。あんな全面に球体とか半球状で展開してれば無駄が多すぎるでしょう」
「いえ、でも攻撃が波及してくることを考えると、球体が一番良いんじゃ……」
「面攻撃にはね。でも面の攻撃でもあんな無駄に全部に展開する必要はない。例えばこんな形で網目にする事でも十分に大丈夫なの」
「網目?」
え、網目に見えないんですけど。ソラは自分と同じく球形に展開されている様に思える障壁に、思わず困惑を隠せなかった。
「しっかり見てみなさい。よーく見ると網目になってるでしょう」
「……えぇ……」
「諦めろ。姫様は防御系に関しては天才的だ」
「それしか出来ないからそれを極めるしかなかった、とも言えるのよね」
「そうだな……が、それ故に姫様の防御術は我らの領域を大きく超えている……まぁ、得られるものはある……だろう」
困惑し絶句するソラに対して、グレイスとライムが半笑いで慰めを送る。一応彼女らにはヒメアの展開した障壁が網目になっている事は見て取れたらしいが、それをソラ達に再現させるのは厳しい事も理解していた。勿論、それはヒメアもそうで、とどのつまり練習しろという事であった。そうして、それからはしばらくの間ソラはヒメアから障壁の使い方やらを学んでいく事になるのだった。
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