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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第3001話 はるかな過去 ――契約者――

 『時空流異門』と呼ばれる現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らはこの時代にて騎士であったカイトやその義理の弟達と会合を果たしていた。

 彼らとの会合を経て改めて元の時代に戻るべく冒険者としての活動を開始させたソラ達であったが、その最中。カイトからの要請により黒き森を訪ねる事になっていた。というわけで、黒き森の神殿にて一泊する事になっていた彼らは回復薬を作る魔道具を手に入れた後。エルフ達が有する図書館にて契約者についてを調べていた。


「そういえば……今更だが。契約者についてなんて何も調べてこなかったな、俺達は」

「ん? あー……そういや、そうっすね。何も調べてなかったと言えば、調べてなかったっすね……」


 瞬のつぶやきに、ソラもまたそういえばと応ずる。ここに来て契約者について調べるようになって今更であるが、カイトという契約者の実例があるにも関わらず、否。なればこそ上層部は誰も調べていなかったように思えたのだ。が、それも仕方がないだろう。


「でもしょうがないんじゃないっすかね。調べても……調べた以上を知ってるヤツが近くに居たんですし」

「それは……そうか。確かにあいつの場合、調べた以上の事を知ってるか」

「視線を向けられてもオレは知らんぞ。オレは契約者でもなんでもないからな」


 瞬の視線を受け、カイトが笑って肩を竦める。このカイトは勇者であっても、無双の力を有していようと彼らが知る勇者カイトではないのだ。そんな彼を見て、瞬がふと問いかける。


「そういえば……疑問なんだが。一つ良いか?」

「なんだ?」

「どうしてお前は契約者にならないんだ? お前ほどの」

「ん? 契約者にならないのか、か……」


 言われてみれば確かに契約者になろうと考えた事はなかったかもしれない。瞬の問いかけにカイトは今までの自分の足跡を思い出し、そう思う。そうして考えてみて、カイトは答えを出した。


「なるつもりがなかったから……?」

「そうなのか? だがお前が契約者になれば……いや、お前とレックスさんがなれば十分にその大魔王? とやらに勝てるんじゃないのか?」

「どうだろうなぁ……まだ相まみえてもいない相手に対して勝てる勝てない、というのも変だが。契約者ってのがどんなものかオレは詳しくないんだが、そんな便利なものなのか?」

「む……」


 確かに契約者がどういう力なのか、と問われてわからないからこそ、瞬もソラもカイトを見たのだ。彼こそが誰よりも契約者について詳しい存在であればこそである。そしてその彼の知識がないからこそ、ここで地道に調べている。聞かれても答えようがなかった。というわけで、そんな瞬の様子にカイトが笑う。


「わからない、だろ? 得体の知れない、とは言わんが簡単に取れるのかどうかもわからない力を当てにして痛い目に遭うぐらいなら、地道に頑張った方が良い。そりゃ、もし異変が起きてそれが魔族共のものでもなんでもない、天変地異とかなら大精霊様のお力をお借りするのも手だろうけどな……いや、それが第一案になるか。オレらが求めているのはそういった世界の異変を正す力ではなく、戦う力だ」

「ふむ……」


 確かに言われてみればもっともな答えだ。瞬はカイトの指摘にどうしても戦う力としての契約者の力に目が向いていた事を自省する。と、そんな彼に今度はソラが口を開いた。


「でもお前、契約者の力を使ったら普段以上に強いとか言ってたけど」

「そりゃ……戦う力としても使えるだろうからな。歴史的にも厄災種相手に契約者が戦った事はあると聞いている」

「ならなった方が良いんじゃないのか?」

「いや、無理言うなよ……そもそもどうやって契約者になるんだ? オレが知ってるのは聖域を見つけ出して試練を受ける、ってだけだぞ。スイレリアさんならもっと詳しく知ってるかもしれんが。だが彼女自身、風の契約者とは会った事がないって話だ」


 一応、契約者になろうと何人もの英傑と言える戦士が挑んだ事はあるらしいがな。カイトはスイレリアから聞いた話として、そう語る。というわけで、そんな彼が逆に問いかけた。


「逆にお前らの方が詳しいんじゃないのか? 未来のオレが全部の大精霊様と契約したっていうならな」

「それがなぁ……今のお前らだと無理だから語らない、ってよ」

「だろうよ。そう簡単になれるものじゃないだろう」


 当たり前な話過ぎる。カイトはソラの言葉にそう返す。というわけで諦めて地道に調べていく事にする一同であったが、そこでソラが見たのはあまりに多い契約者による厄災の解決率だった。


(ってか、当たり前なのかもしれないけど……天変地異とか厄災種の討伐率高すぎだろ……ほぼ全部契約者つってもおかしくないじゃねぇの、これ……)


 そりゃ歴史に名を残してもおかしくないだろう。ソラは記される事件の数々を読みながら、そう思う。


(魔力のバランス異常に対して均衡を取り戻す……大海震? なんだそりゃ。その対応……? 空破断層? だからなんなんだよ! その天変地異の詳細を教えてくれ!)


 兎にも角にも契約者達が中心となって天変地異を解決していったらしいのだが、その天変地異がどういった物なのかは殆ど記されていなかったらしい。ソラが内心で声を荒げる。まぁ、もし書かれていても彼らにはどれもこれもが関係なかったので特に意味はなかっただろう。とはいえ、改めて調べてみて彼は一つ思う。


(でも……圧倒的に武勲より天変地異への対応がメインだよな……もしかしてカイトがおかしいのか?)


 カイトで語られるのはやはり大戦の最中での活躍だ。が、そんな彼が天変地異に対応したという話はあまり聞かず、彼がおかしいのではとソラが思っても無理はない。

 とはいえ、これは仕方がない側面はあった。やはり彼が言われるのは勇者カイトとしての側面だ。一番大きい物が魔王ティステニアの討伐である以上、武勲が中心になって語られてしまうのである。

 しかも彼自身が冒険者としての側面もあったので、好き勝手に動き回って魔物を倒しに行くのだ。結果、天変地異への対応より格段に武勲が多くなってしまうのであった。


(ま、まぁ……それはそうとして。でもやっぱ大精霊達って世界のシステムを司ってるってのはマジなんだな……)


 こうして改めてカイト以外の契約者について調べてみれば、契約者の力というものは天変地異の解決に役立っているというのがソラの得た印象だった。無論それでも戦いに役立っている事もあったが、その大半が厄災種。人から見れば天変地異と同等の扱いがされる存在ばかりだ。これも言ってしまえば天災と大差なかった。というわけでそんな過去の活躍を調べるソラであったが、一応手助けするかと一緒に本を読んでいたカイトが口を開いた。


「そういえば……ふと思ったんだが」

「「ん?」」

「どうして未来のオレは契約者になろうとしたんだ?」

「いや……なろうとしてなったんじゃないらしい。結果としてなっていた、という所だというのがお前の言葉だった」

「なろうとしてなっていた?」


 どういうことだ。瞬の問いかけに対して、カイトは訝しげに問いかける。これに瞬はどうせ転生で失われるのだし隠す必要はないか、と明かす。


「いや、何か……なんだったか。船が沈没して海底の洞窟に叩き込まれたらそこが聖域だった、とか……後は……火山に出向いたら偶然そこが聖域だったとか……当人が知らず突破してた事が多いらしい」

「そ、そんななのか、契約者の試練って」

「あ、あぁ……だから俺達もそこまで難しい物じゃないのではないか、と思っているんだが……」

「うーん……」


 契約者になれた者の少なさからカイトというか一般的な思考では契約者になるにはとんでもない試練が課されるのではと思っていたわけであるが、実際にはそうではないのかもしれない。瞬の問いかけにカイトはそう思う。


「あー……そうだ。そういえばなんか聞いた事はあったな。試練は人によって異なる、とかは……」

「それはカイトから聞いてる。人によって……挑戦する者によって異なると」

「そうなのか?」

「ああ」

「そ、そうなのか……」


 これは完全に眉唾な話として伝えられている事だったんだが。カイトは瞬が何を不思議な事を、と言わんばかりの様子で頷いた事に思わず呆気にとられる。とはいえ、これは一つの事実を如実に示していた。


「そんなこの世界にも契約者の試練の情報ってないのか? カイトとかは時々暇つぶしに再戦してた、とか大精霊達もそれで調子乗ってやらかした事あるー、とか笑ってたけど」

「……待て。オレは大精霊様と日常的に話してるのか?」

「俺たちは日常的じゃないけど……お前は時々大精霊相手にうるさいとか言ってるな。結構騒がしいらしい」

「何なんだ、未来のオレは……」


 そんな存在、神殿の大神官達でさえ知らないぞ。カイトはソラから語られた自身の異常性が思った以上であった事に絶句する。とはいえこれほどの事だというのは、ソラ達にはわからぬ事だった。


「そ、そんななのか? お前と居ると感覚がバグってるからな……」

「大精霊様がお言葉を下さった、ってなって神官たちが疑ってたし、エルフの元老院だって疑いまくってる。それぐらいには有り得ない事なんだ……というか、これならもう未来のオレでも持ってきた方が楽じゃねぇのかね……」

「それが出来るならやってるんじゃね?」

「あはは。ごもっとも」


 自身が中継機となれる以上、未来の自分を一時的に上書きするぐらいは出来るのでは。そう思ったカイトであったが、ソラの指摘に笑って頷く。そもそも声を届けるのでさえ精一杯なのだ。出来るわけもなかった。というわけで、未来からの助力を諦めた一同は改めて契約者についての情報を収集する事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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