表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3017/3939

第3000話 はるかな過去編 ――都にて――

 『時空流異門』という現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らはというと、過去の世界のカイトやその義理の弟、その時代の彼の仲間達との会合を果たしていた。

 というわけでそんな彼らとの会合を経て改めて元の時代へ戻るべく冒険者としての活動を開始させた一同であったが、カイトからの要請を受けて彼と共に黒き森へと赴くと、そこで黒き森を拠点とするエルフ達と会合を得ていた。


「なるほど……そういうわけだったのですか」

「信じるのですか? このような眉唾な話を」

「確かに普通であれば信じるに足る話ではありませんが……まぁ、勇者殿であればそういった事象が起きていても不思議はない。何よりそちらの方がまだ信じるに足るでしょう」

「それは……」


 スイレリアは側近の問いかけに対して、困ったように笑いながらそう告げる。結論として、セレスティアが語った内容は大半が納得されたらしい。というわけで、そんな彼女が何よりもの証拠を口にした。


「何より、レジディアの姫で『夢幻鉱(むげんこう)』を使える存在……シンフォニアの血を引くと考えた方が納得はし易い。となるとそれは未来の存在と考えた方が良いでしょう」

「「……」」


 確かに。スイレリアに仕える二人の側近は彼女の言葉が道理と見て、口を閉ざす。そうして側近達を納得させた後、スイレリアがカイトを見た。


「にしても……稀有な存在とは思っていましたが。まさかそこまで稀有な存在となるとは」

「私も未来の自分の事なので何も言えませんが……そこまで稀有でしょうか」

「稀有ですね。少なくとも、我らの綴る歴史上でも単独で複数の契約を果たした例はない。世界の危機に一つのパーティという形でいくつもの大精霊様と契約を果たした事はあるにせよ、です」


 エネフィアから何度となく言われていた事であったが、どうやらこの世界でも一人で複数の大精霊と契約を果たした存在というのは存在していないらしい。未来においてすべての大精霊と契約を果たしたが故に大精霊達の通信の中継機となっているらしいカイトを見て、スイレリアが笑う。


「とはいえ……勇者殿やレックス殿下であれば、それも不可思議ではない。そう思えるのは、やはり貴方達だからでしょうか」

「はぁ……」

「ふふ……とはいえ、わかりました。確かにそういうことであれば、我ら風の神殿の神官とて協力は惜しみません。元老院にはこちらから掛け合いましょう」

「「ありがとうございます」」


 大精霊の指示が間違いないというのだ。となれば、エルフ達はそれに素直に従ってセレスティア達に協力するというだけであった。というわけで礼を述べるセレスティアに、スイレリアが問いかける。


「それで、これからはどうされるおつもりですか?」

「ひとまず大精霊様を訪ねようかと。この世界において八英傑……カイト様を筆頭にした八人の英雄を訪ねるようにはお言葉を頂いておりますが、それにしても情報が足りない。大精霊様曰く、どうにも我らと接触するためには何かが安定していないとの事でしたから」

「なるほど。であれば、こちらから大精霊様の聖域を訪ねた方が良いと」

「はい。外が安定せずとも、聖域であれば安定するのではと」


 確かに道理ではあるだろう。スイレリアはセレスティアの言葉に納得を得る。そもそもカイトの時というかこの世界全体の時を止めたのも、調律がうまくいかないがゆえにだ。そして長時間話せないのもそれ故なのだ。となれば、安定するだろう場所へ向かおうというのは至って自然な発想だろう。というわけで、それらを鑑みたスイレリアが一度だけ目を閉じる。


「確かに……そうですね。大精霊様に一方的にご尽力頂くというのは我らとしてもあまり良い顔は出来ない。本来であれば、聖域への入場なぞ滅多な事では認められませんが……」

「可能でしょうか?」

「流石に私の一存ではなんとも。ですがこの都への通行許可証と合わせ、元老院に掛け合う必要は認められるでしょう。そしておそらく、この次第を鑑みれば許可は下りる。無論、容易くは参りませんが」


 現状は言ってしまえば大精霊達が世界の調律を行い、なんとかセレスティア達を元の時代へと戻せないかやっている所なのだ。大精霊達側が尽力してくれているのにも関わらず人側が何もしない、というのは大精霊の眷属を自負するエルフ達には許容できる事ではなかった。


「ありがとうございます」

「いえ……ですがそれ以外の所はわかっているのですか?」

「残念ながら……それを調べるためもあり、都への通行許可を頂きたかったのです」

「なるほど……確かに大精霊様や契約者達の逸話や伝説を調べるのであればこの都以上の所はないでしょう。そちらについては私の一存でどうにかなる範疇。早速許可を下ろしましょう」


 後にセレスティアが語る所によると、エルフ達が保有する図書館は神殿が管轄しているらしい。なのでそこの最高責任者であるスイレリアが許可を下せば、そちらに関しては自由に立ち入れるらしかった。というわけで、スイレリアの配慮にセレスティアが再度頭を下げる。


「ありがとうございます」

「構いません……ただ貴女もわかっているとは思いますが、元老院の説得は時間が掛かるでしょう。ひと月か、ふた月か……もっとかもしれません」

「承知の上です。その間は図書館で調べたり、日々の糧を得たりと我らもせねばなりませんし。無論、八英傑の方々の所を訪ねたりもせねばなりません」


 エルフ達に頼んで時間が掛かる事なぞエネフィアでさえ常識なのだ。それがもっとも保守的と言われるハイ・エルフの元老院であれば何をか言わんやだ。

 逆にセレスティアからすれば一年掛かる、と言われても驚きはなかった。それでも、数ヶ月で終わるだろうというのはやはり大精霊が絡んでいるからだろう。


「確かにそうですね……やる事は思った以上に多そうですか。そうだ。勇者殿。本日はこれよりどうされるおつもりですか?」

「とりあえず、彼らの話次第と考えておりました。早々に終わるのであればノワールの館へ戻り、終わらぬのであれば懇意にしている宿屋に声を掛けようと」

「それでしたら、神殿の客間をお使いください。話を聞くに、調べ物をした方が良いでしょうから」

「ご配慮、痛み入ります」


 スイレリアの配慮に、カイトは一つ頭を下げる。そうして、それから暫くの間は一同はスイレリアからいくつかの助言を貰い神殿を後にするのだった。




 さて神殿を後にした一同であるが、向かう先は魔道具を取り扱っている店だ。こちらに関しては元々カイトが紹介状を書いていた――その彼も同行しているが――し、何より買ったからとすぐに移送手配が出来るわけでもない。時間が掛かる事も往々に考えられたので今日中に手配をしてしまおう、と思ったのである。


「なるほど……色々な機能があるんですね」

「ええ。冷やすだけでも水冷式、空冷式……温めるにしても直接火で温めるだけでなく湯煎方式。それ以外にも循環させる必要のある物なのか、撹拌させ続けねばならないのか……その撹拌の時には空気を混ぜ込む必要があるのか、ないのか。それら一つが狂えば薬も毒薬に変わる。逆もまた然り」


 ソラは魔道具店の店員の言葉を聞きながら、色々と考えねばならなそうだと気を引き締める。店員も言っているが、毒と薬は紙一重だ。調合を間違えるだけで命取りになる薬草なぞ、ソラが知るだけでも枚挙にいとまがないほどだ。そこらも踏まえて、しっかり何を買うか考えねばならなかった。


「うーん……やっぱり買うなら最高級品のが良いんだろうけど……」


 これは未来のカイトもそうであったのだが、どうやら彼は必要な物に対しての費用はケチらないらしい。なので今回ソラ達には調合に必要な道具の調達に関する費用は一切気にするな、と告げていた。無論だからといって気にしないわけにはいかないというのがソラの心情ではあった。というわけで、そんな彼はイミナに問いかける。


「イミナさん。そういえば軍というか学校? で薬草の調合とかも勉強はされたんですよね?」

「ん? ああ。それは勿論な。当然だが軍人が怪我をしない事の方がない。流石に医療班希望ではなかったので専門的な医学の知識はないが……最低限の回復薬の調合は必須技術として教え込まれる。まぁ、言ってしまえば止血などと同様だ」

「っすよね……」


 カイトが冒険部に指導しているように、エネフィアのマクダウェル公爵軍もこの世界のマクダウェル軍も回復薬の精製に関しての基礎的な知識は習得させていた。というわけで彼は重ねて問いかける。


「何が良いとか何はやめておいた方が良いとか、何かありますか? 俺らどうしてもカイトがそこら全部やってくれてたんで……」

「あー……そうか。そちらの場合、医療班もかなり高度な物が整っていたな……」


 これを聞いた時、素直に流石は伝説の英雄だと感嘆したものだが。イミナはそれを思い出しながら、しかしそうであればこそソラ達が回復薬の精製に関して知識はさして有していない事を理解する。


「そうだな。色々とあるが……あまり時間の掛かる物はやめておいた方が良い。いや、それも良いのか?」

「? 何かあるんっすか?」

「ああ……いや、ナナミが手伝ってくれるのなら、彼女に長時間の精製の作業を任せるのもありかと思ってな。やはり効果の高い回復薬だとどうしても精製に時間が掛かるんだ。その分、効果を濃縮させなければならないからな」

「あー……確かにそういえば前にちらっと回復薬を更に凝縮させて効果の高い回復薬を作る事も出来る、的な事を聞いた事もありますね……」


 あの時は話半分だったから殆ど覚えていないけど。ソラはイミナの言葉にかつてリーシャからちらりと聞いた話を思い出し、納得する。そんな彼にイミナも一つ頷いた。


「そうだ。効果の高い薬草が手に入らなくても、それを行う事で効果の高い回復薬を手に入れる事は出来るかもしれん。そう考えてな」

「なるほど……確かにそれは手かもしれないっすね……」


 どうしたものか。ソラはイミナの助言に対して少しだけ考える。そうして、彼が一つ頷いた。


「……そうっすね。それは一つ手かもしれないっすね……あんま高度なものになると困るかもしれないっすけど」

「ああ。高度な物を任せるには色々と知識が必要はなる。それを考えれば、どこかで回復薬の調合に関する書物の一つでも入手できれば、とは思うが」

「まぁ……どっちにしろ原料が簡単に手に入るか、って所もありますけどね」

「それはそうだな……まぁ、とはいえ。長時間の精製が可能な道具を考慮に入れるのはありだろう」

「そうっすね。となると……」


 どれにするべきだろうか。ソラはイミナの助言を受け、改めて回復薬を生成するための道具の選定に戻る。そうしてこの日はこの後、時間を掛けて回復薬の精製を行うための魔道具を見繕う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ