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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2996話 はるかな過去編 ――黒き森の夜――

 『時空流異門』という現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代。それも戦国乱世の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らであったが、この時代にて騎士として活躍していたカイトやその義理の弟であるクロード・マクダウェルらと会合を果たす事になっていた。

 というわけでそんな彼らは元の時代に戻るべく冒険者としての活動を開始させるわけであるが、その最中。カイトからの要請により、彼と共に黒き森に住まう魔女ノワールの元へ荷物を護送する任務を請け負う事になり、彼女の元を訪ねていた。


「てなわけで、これが都への通行許可証だ」

「正確には紹介状だがね。僕の一筆があれば、それでも間違いではないが。正式な通行許可証に関しては都の役所で受け取ってくれ。一回入る分には兄さんが居れば大丈夫だろうけどね」


 何度目かになるが、サルファはハイ・エルフの王族に当たる人物だ。そしてカイトと同じ八英傑でもあるため、その一筆は非常に強い力を持つらしかった。というわけで、紹介状兼通行許可証を受け取ったソラが礼を口にする。


「そうなんっすか……ありがとうございます」

「ああ……まぁ、必要な物資と情報に関しては自分達で調達してくれ。僕が出来るのはあくまで通行許可を出すまでだ」

「そうだな……流石にオレも大図書館での調べ物に関しては手助け出来ない。それについては自分達でなんとかしてくれ」

「わかってる。流石にそこまで力を借りるわけにもな」


 カイトの言葉に対して、ソラは一つ頷いて紹介状を懐にしまう。というわけでおおよその話が終わったのか、カイトは一つ頷いた。


「よし……じゃあ、後は頼む。さっきの話については適時やり取りをしつつ、進めていこう」

「はい……僕の方は暫くこちらに詰めて、ノワールの解析を手伝おうと思います」

「そうしてくれ。まぁ、この森でお前が不足を取る事は無いだろうし、魔族共もこの森の奥までバレずに潜り込む事は出来ないだろうが。色々と気を付けてな」


 先にソラ達にも言われていたが、この黒き森はエルフ達の住処だ。故に森に入った時点でエルフ達の監視網に引っ掛かっているわけで、サルファの不意を打つ事は容易ではなかった。それは周知の事実でしかないのだが、それでも心配の言葉を述べるカイトにサルファは一つ頭を下げた。


「ありがとうございます。でも心配には及びませんよ。この森で僕に敵う相手は兄さんかレックスさんぐらいでしょうからね」

「そもそもお兄さん達の場合、森を吹き飛ばせますからね」

「あははは。まぁな」


 八英傑の中で直接的な戦闘を担うのはカイトとレックスなのであるが、それは他の六人に戦闘に対する適正が無いというわけではない。単にこの二人がぶっ飛びすぎていて比較にならないだけで、サルファもノワールも並の戦士なぞ目でもない領域の猛者なのであった。というわけでそこらの雑談に一区切りを付けると、カイトは改めて実務的な話に戻る。


「ま、それはそうとして……ソラ達の持ってきた色々とに関してはどれぐらいで準備が整いそうだ?」

「そうですね……今日はもう無理だから……明日……もちょっと厳しそう……明後日の昼ぐらい、ですね」

「となると都に行けるのは最速明後日の夕方ぐらいか。とはいえ、昼過ぎに出ても厳しいし……となると四日後の朝出発、昼前後到着って所かな。それで良いか?」

「あ、おう。大丈夫。そもそもこの森のヤバさは大体わかってきたし。道案内が無いとヤバそうだ」


 カイトの問いかけに、ソラは一度だけ窓の外を見て了承を示す。そもそもこの館に到着した時点で夕刻だ。今はすでに夜に差し掛かっており、今日これから都に向かう事は出来そうにない事は明白だ。

 となると明日以降であるが、この森でここからどう動けば都に行けるかは彼にわからなかった。そして何より、あれだけの暗さだ。下手に迷えば命取りになる以上、待つしかなかった。


「そうだな……そういえば二人は都には行った事無いのか?」

「ありますが……すいません。常にエルフ達の道案内がありましたので、正直に言えば自力で都に到達出来る自信は私には。イミナは?」

「私も正直無いですね……この森は人を迷わせる力もある。専用の道具があれば、話は別ですが……」

「専用の道具か。未来にはそんなものもあるのか……いや、普通に考えりゃ無い方がおかしいか」


 どうやらこの時代にはエルフ達の都まで迷わず向かえるコンパスに類する道具はなかったらしい。なのでほぼほぼ自力でたどり着かねばならないわけであるが、不便だろう。なので無い方がおかしいというカイトの意見は正しいが、これにサルファが口を挟んだ。


「あまりいたずらに来られても迷惑なので、これで良いですよ。必要な相手には我々が出向き、案内しますし。作れますけどね」

「あ、やれるはやれるのか」

「多分、未来で作ったのは平和になった上で必要になったからでしょうが……渡しているのは王家の使者などだけでしょうね」

「ご明察です」


 そもそもセレスティアはカイト達を筆頭にした八英傑の武器を司る巫女達で、イミナはその巫女に仕える騎士だ。立場としては王族を守護する近衛兵にも匹敵しており、後に詳しく聞いたサルファもそれなら渡していても不思議はないと言わしめる立場だった。


「だろうね……まぁ、必要なら作るし、必要でなければ作らない。今は特に魔族達の事を考えれば、誰かに預けて奪われるぐらいなら作らない方が良いでしょう。安心して預けられるのは兄さん達かレックスさんぐらいですが……必要ないでしょう?」

「まー、必要無いな」


 エルフ達の都の場所が露呈していない、というのは人類側にとって一つのアドバンテージだ。それを考えれば下手に道案内出来る魔道具を作ってしまって、攻め込まれるのはカイトとしても良くはなかった。というわけで魔道具については今後も暫くは作らない事を明言したサルファはソラ達に告げた。


「そういうわけだから今後も基本的には我々の案内がなければ都までは行けないものと思ってくれ。まぁ、通行許可証を森の入り口で提示すれば都のエルフがすぐに来る。案内に不足は無いだろう」

「はぁ……」


 通行許可証というのだからてっきり書面か何かかと思っていたソラであったが、サルファの言葉からどうやらそうではなさそうだと考える。


「ま、そんな感じか……じゃ、とりあえずお前らの道具の修繕に必要なだけの情報が整うまで暫くこの館で待機ってことで。ノワ、客室借りるぞ」

「あ、はい。流石にあっちは片付いてるので大丈夫ですよ」

「それを言わないといけないと自覚してるなら、掃除しないといけない自覚も持とうよ……」

「あ、あはは……」


 サルファのツッコミに、ノワールが照れたように笑う。というわけで、一同はそれから二日、自分達の武器や防具、魔道具の修繕に必要な情報が整うまでノワールの館に泊まらせて貰う事になるのだった。




 さて一同が泊まらせて貰う事になったその夜。ノワールの言葉通り片付いていた――勿論他と比較すれば片付いていたというわけではない――客室に泊まる事になったソラ達であるが、外を見て改めて夜に行動するべきではないと理解する事になっていた。


「これはなんというか……正直に言えば怖いな」

「そうっすね……てか、これでここら一帯は明るい方なんだよな?」

「そうだな……まだ月明かりも入ってきているだけ良い。森の中だと月明かりも星明かりも届かん真っ暗闇。ランタンの灯火でお互いの位置を理解するしかない……ないんだが、それもそれで厄介でな」

「どういうことなんだ? いや、あれしか頼りがない時点で厄介というのもわかるが」


 それはあえて言えば当たり前で、今更改めて言われるまでのことでもない。困ったように笑うカイトの言葉に、瞬が小首を傾げて問いかける。というわけで、そんな彼の疑問にカイトはセレスティア達を見た。


「二人はこの森にも来ていたという事だったな。この森の夜の話は聞いたか?」

「ええ……夜に決して動かない方が良い理由は身に沁みて理解しています。エルフ達でさえ、この森で夜の行軍は避ける。行えない、かもしれませんが」


 カイトの問いかけに、イミナは僅かな畏怖を滲ませながら頷いた。これにカイトもまた頷く。


「そうだな……実はこの森の夜にはランタンの灯火に似た輝きを発する現象が起きるんだ。だから夜に動きその現象と仲間を見間違えた瞬間……」

「道に迷って……か」

「そういうことだな。魔族達さえこの森に踏み入れない理由の一つだ。そこらもあって、決して夜は動いちゃならないんだ。動いて逸れたらもう戻れない、と考えた方が良い」


 ただでさえ暗いのに、そこに来て迷わせる自然現象まで発生するというのだ。まかり間違っても夜に動くべきではない。カイトの言葉を全員が胸に刻む。と、そんな彼に瞬がふと気になった事を問いかけた。


「そうだ……そういえばこの森で夜を明かす場合、焚き火とかは大丈夫なのか?」

「焚き火も厳しいな……ここに来るまでに見せたが、この森は基本光を吸収しちまう。なんで暖を取る事は出来ても、明るくはならないんだ」

「そ、それはまたなんとも……というか、それだと逆に危険なのか」

「ああ。だから基本的には明るい間に専用のテントを立てて、その中で一夜を明かす。焚き火をするにしてもその中で、になるな」

「テントの中で焚き火……出来るのか?」

「やめておいた方が良いな。どうしてもやるなら、って話だ」


 瞬の問いかけに対して、カイトは苦笑気味にこれはあくまでもそういう場合はであっておすすめは出来ない事を明言する。というわけで、そんな彼が続けた。


「ま、それがわかっているから基本的にはこの森に来る時には専用の道具を一式揃えるのが一般的だそうだ」

「一般的? 他人事みたいだな」

「オレらは必要無いからだよ。オレやクロードは一日あればこの館にたどり着けるからな。森の中で一夜を明かす、ってのがまずない」

「あー……」


 最初の時点で言われていたが、カイトもクロードも荷物などがなければノワールの館まで一日で抜けられるそうなのだ。ここが森のどのあたりかは瞬にはわからなかったが、深部である事は間違いなさそうなのだ。確かに一夜を明かす道具が必要になりそうではなかった。


「とはいえ、今後ここか都に来るなら一夜を明かす準備は必要だろう。そこらを教えておくから、後はなんとかしてくれ」

「わかった」


 先の話はあくまでもカイト達この時代の頂点に位置する者たちの話だ。それには遠く及ばない瞬らは一般的な方法を取るしかなかった。というわけで、ソラも瞬もこの後は数日掛けてこの森での行動の基礎をカイトから学ぶ事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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