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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2974話 はるかな過去編 ――帰り道――

 『時空流異門』という現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代に飛ばされてしまったソラや瞬達。そんな彼らは騎士として活躍していたこの時代のカイトや、その親友にして唯一の好敵手と言われるレックス・レジディア。カイトを兄と慕うサルファというハイ・エルフの王族、こちらはカイトの義理の弟であるクロード・マクダウェルらとの会合を果たしていた。

 そうしてカイトの仲間達との会合を経てなんとかこの世界にも存在していた冒険者としての活動をスタートさせた一同であったのだが、ひとまずは人員を二手に分けて情報収集と依頼の攻略を行う事になっていた。

 というわけで、ソラが情報収集。由利とナナミの二人――セレスティアはこちらの手伝い――が干し肉等の保存食の準備に取り掛かる一方、依頼に出ていた瞬はレックスとじゃれ合い王都から一日の距離まで移動していたカイトと偶然遭遇。エドナを呼んだ彼と共に、馬で移動していた。


「なんというか……悪いな。馬を見付けてもらって」

「ああ、良いって良いって。馬なんて幾ら居ても足りないからな」


 瞬の感謝に対して、カイトは笑って首を振る。当然であるが徒歩で出た以上、瞬達が馬を持っているわけがない。なのでエドナを呼んだカイトがついでに、と周囲に居た馬を三匹確保してきたのである。ここらはやはり騎士としての教育を受けていたからなのか、かなり慣れた手際だった。


「にしても……なんというかそうしていると本当に騎士に見えるな」

「騎士なんだが?」

「あはは。わかっている……が、俺達の知るお前は騎士より領主だったからな」

「らしいなぁ……」


 瞬の言葉にカイトは困ったように笑う。未来かつ転生した先の自分だとはわかっているが、それでも自身が領主として多くの民を治めている姿は想像出来なかったらしい。と、そんな彼にイミナが問いかける。


「御身は領地の領有を断られていたのでしたか? 一説には受け取りはしたがご母堂様に管理を依頼していたとも伺っておりますが……」

「それか……それはまぁ、そう伝わってしまっても仕方がないか」


 イミナの問いかけにカイトはこれまた困ったように笑う。とはいえ、こちらに関しては仕方がないと思う事ではあったらしい。


「いや、それに関しては父さん……先のマクダウェル卿に授けられた領地で、オレは代理で受け取ったに過ぎない。死んでしまってたからな」

「そんな事があるのか?」

「ああ……先の襲撃に際して、父さんや騎士団が陛下を命を賭して守られた事への褒美だ。その遺族を食べさせるための、と言っても良い。だから管理は母さんがしているんだ。オレもクロードも騎士としての仕事もあるしな」

「なるほど……」


 瞬が話を聞く限り、この時代のカイトの養父である先代のマクダウェル卿とやらは奇襲を受けたアルヴァや諸国の王様達を逃がすべく足止めを担って亡くなったらしい。

 そしてアルヴァにしてみれば幼少期より共に過ごした正しく腹心中の腹心だった。その息子二人も活躍こそしているがまだ若く、養育やら彼の活躍に報いる事など色々を考えた場合、領地を与え生活を保証というのは筋は通っているだろう。というわけでアルヴァの采配に道理を見た瞬に、カイトは頷いた。


「ま、そういうわけでな……王都からさほど遠くない、大きくはないが寡婦が暮らしていくには十分過ぎるほどの領地がある。今度黒き森に行く際に立ち寄るつもりではあるから、その時に案内するよ」

「その際はぜひ……ぜひ見てみたいです」

「ああ、そうか。君はマクダウェル家か。そうだな。それについては少し教えて欲しい所ではあるな。未来のマクダウェル領ってのがどんな所なのか」


 一瞬忘れてしまっていたが、イミナは確かマクダウェル家の騎士だったな。カイトは彼女が身を乗り出してまで興味を示した事を訝しむも、同じマクダウェル家であるなら当然だろうと思ったようだ。とはいえ、そう簡単な事でもなかったらしい。


「いえ……すいません。多分ここらの事は詳しくはわからないかと」

「そうなのか?」

「ええ……色々とあり」

「そうか……」


 それは残念だ。イミナの言葉にカイトは詳しくはわからないものの、今のマクダウェル領とは別の所にマクダウェル家は移り住んでいたと理解。少しだけ悲しげに肩を落とす。やはり愛着はあったらしい。というわけで、彼は少し残念そうながら、それならと瞬とリィルに話を振る。


「そうだ……マクダウェル領で少し気になったんだが」

「なんでしょう」

「その未来のオレ? が領有してるっていうもう一つのマクダウェル領? それってどんな所なんだ?」

「どんな……一言で言うのなら大都市……でしょうか」

「大都市?」


 嘘だろう。カイトは今の自身――正確にはマクダウェル家――が領有している領地を知っていればこそ、大都市というリィルの評価に仰天していた。が、これにリィルはあるがままを答えるしかない。


「ええ……世界一の大都市です。誇張表現でもなんでもなく」

「嘘だろ……ナニモンなんだよ、オレ……それ回せてるの?」

「ええ……私が知る限り、ほぼほぼ問題なく。しいて問題を上げるのなら忙し過ぎるぐらい……でしょうか」

「おいおい……」


 別に忙しい事は立場を考えれば仕方がないと納得も出来るが、逆説的に言えばそれしかないぐらいには見事に領地の運営をしていたらしい。それを悟ったカイトは盛大に顔を顰めていた。

 そんな彼であったが、これ以上はあまり考えない事にしたかった――領主の才能を持つとレックス達が知るとそうしようとしてくるらしい――ようだ。唐突に話題を変えた。


「あ、そうだ……話は変わるんだが、瞬。お前、面白い戦い方をするな」

「ん? 面白い?」

「ああ……ウチの騎士団にも何人かは魔力で武器を作れるが……槍を魔力で編んでいるのか。勿論、切り札となる本物も持っている様子だが」

「ああ、これか」


 そうか。てっきりカイトはわかっているものだと思っていたが、この時代のカイトが知るわけもないか。瞬はカイトの反応に自分が誤解していた事を理解する。そうして、彼はカイトの言葉に応ずるように魔力で槍を編み出してみせる。


「どうしても元々が槍投げの選手だったからな」

「選手?」

「陸上競技……と言ってわかるかわからないが。スポーツとしての槍投げがあったんだ」

「へー……良い世界だな」


 槍投げというとカイトの認識では戦いの技法の一つでしかないが、未来のとある世界ではそれさえスポーツになる事があるらしい。そんな世界をどこか羨むように、感心したようにカイトは笑う。


「ああ……だがそれ故にどうしても槍投げの技術が離れなくてな。そうなると槍を魔力で編まないと使い捨てる事になってしまうからな」

「ああ、なるほど。そりゃそうだ……でも凄いな。オレは出来ないからな」

「出来ないのか?」

「え? あ、あぁ……出来ないが」


 大いに仰天した様子の瞬に対して、そんな彼の様子にカイトは目を丸くして仰天を露わにする。


「そうなのか……実はこの力はお前が得意としているもので、かく言う俺もお前から教えてもらったんだ」

「オレが?」

「ああ……お前は……双剣なのか? それとも片方は予備か?」

「ああ、これか」


 瞬の問いかけに、カイトは腰に帯びた双剣を見る。それは鞘を見る限り少し小さめの片手剣程度の大きさで、片手で取り回すには丁度よい大きさだろう。が、それは未来で彼が大剣と大太刀を片手で扱っている事を知っていれば違和感となっていた。


「こいつはオレが唯一拾われる前から持っていたものでな……イミナ。君はこれを知っているか?」

「勿論です。セレスティア様はその封印を司る巫女でしたので」

「封印? どういうことだ?」

「あ……申し訳ありません。封印と言っても御身らがされたものです。それそのものには封印はないかと」

「ふーん……まぁ、こいつは強大な力を持っているからな……オレが死ぬ時にでも封印を掛けておいたかな……」


 それは有り得そうだ。カイトは自身の持つ双剣が単なる双剣ではない事を知っていれば――と言ってもこの時代の彼はその詳細は知らないが――こそ、自分達が死ぬ際に封印を掛けていても不思議はないと思ったようだ。というわけで深くは気にしない事にした彼は、少しだけいたずらっぽく笑った。


「ま、良いや……とりあえずこいつは見たままじゃない。ま、もし機会があるなら、どこかで見れるかもな」

「見せてはくれないのか」

「お楽しみは取っておくもんだぜ?」

「あはは」


 やはり別人であろうと、こういった性根の部分はよく似ているな。瞬は子供っぽさを残したままのカイトに、ある種の安堵を懐きながら笑う。そうしてその後はマクダウェル家の事や武術の事等を話し合いながら、王都へと戻っていくのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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