表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2986/3942

第2968話 遥かな過去編 ――仕事開始――

 『時空流異門』という時と空間の異常に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らはこの時代においては勇者でありながら騎士として生きていたカイトや、その親友にして唯一の好敵手であるレックス・レジディアというセレスティアのご先祖様。カイトの義理の弟にしてこちらはイミナのご先祖様であるクロード・マクダウェルといった騎士達と会合を果たす事になっていた。

 そんな彼らとの出会いを経てとりあえず元の世界に戻れるまでこの世界で生き抜く事になった彼らであったが、とりあえずはこの世界にも存在していた冒険者として登録。日々の糧を稼ぐ手段を手に入れていた。

 というわけで、冒険者としての初依頼から一週間程度。様々な物資の調達もある程度完了した事もあり、一同は少し大きな仕事を請け負う事にしていた。


「そういえばイミナさんはここらの地理には明るいんですか?」

「む? そうだな……まぁ、明るいといえば明るいか」


 瞬の問いかけに、イミナは少しだけ考えるような素振りで頷いた。先に言われている事だが、イミナとセレスティアの両名は未来においては遷都により王都から学園都市へと姿を変えたこの地で学んでいた。なので地元とは言えないが、同時に数年間ここで過ごした事は事実だった。というわけで、そんな彼女が続けた。


「先にこの地が後に遷都により王都から学園都市に姿を変えるというのは話したな?」

「ええ。そこに、カイトが居を構えていたとか」

「ああ……廃城の賢者。シンフォニア王国中興の祖を養育された国父。その彼が当時の陛下の依頼により貴族達の子息の教育を行った事が始まりで、今では多くの名家の子息が代々ここで学ぶのが通例とされている。マクダウェル家はまぁ……流石にカイト様の設立された学園に通わないわけにはな」


 何度となく言われている事であるが、カイトはマクダウェル家と血の繋がりこそないが後の世には偉大な騎士の一人として伝えられている。

 その彼が――マクダウェル家の事も記憶から摩耗していたが――設立した学園なのだ。廃城の賢者が勇者カイトであると判明して以降マクダウェル家の子孫達はこぞってそこに通う事を希望しており、イミナも少し恥ずかしげではあったがそうだったようだ。


「セレスティア様はレジディア王家に連なる方だが……後にレックス様がレジディア王家の者も学園都市に通うようにご助言されていてな。今でもレジディア王家、シンフォニア王家の子息達も学園都市にて数年学ぶ事が通例とされている」

「なるほど……ということはセレスティアも地理には?」

「ああ、いや……セレスティア様は私ほどではないな。私は騎士としての実地研修で色々周辺を回ったが……あの方は巫女だ。立場上で軍事訓練もされているが、どちらかというと儀式等の方に力を割かれていた。それが役目だしな」


 イミナの仕事はセレスティアの護衛だ。そしてセレスティアは巫女。本来は戦う立場にはないのであるが、イミナ達の時代では魔族の侵攻が確認された段階で巫女も前線に出て最低限身を守れる力が要求されるようになった。が、あくまで主体は巫女の仕事だ。訓練内容が全く異なるのは当然だった。というわけで苦笑を交え説明したイミナが告げる。


「というわけで、基本的にここらの事は私に聞いて貰えれば良い。変わっている部分もある様子ではあるが……おおよその地理は変わらないだろう」

「わかりました……で、どれが良いですかね?」

「それだな……」


 瞬の問いかけに対して、イミナは協会の掲示板を見て僅かに首を捻る。今回は先とは違い、きちんと仕事として依頼を請け負うつもりだ。なのでこの世界出身かつ王都周辺の地理に明るいイミナに助言を頼んだのである。というわけで、改めて掲示板を確認するイミナは色々と確認する。


「ふむ……やはり討伐系や薬草類の採取系が多いな。時代か」

「なんでしょうか」

「だろう……あくまで推測にしかならないが」


 今の時勢柄、けが人は多い事は想像に難くない。なので薬草はどれだけあっても足りないだろうし、軍や騎士団が魔族や他国の侵略に備えなければならない関係で魔物の討伐にも手が足りないらしく、魔物の討伐依頼はかなり多かった。と、そんな依頼書を見る瞬であったが、ふと気が付いた。


「あれ……そういえば盗賊関連の依頼が無いですね。時勢柄あるかなと思ったのですが」

「む? そういえば……そうだな。いや、流石にカイト様やら四騎士の方々がほぼ常駐されているような状況なのに盗賊なぞのさばれるわけもないか」

「ああ、なるほど……」


 確かに言われてみればそれはそうだ。瞬はこの時代では騎士であるカイトが盗賊を見過ごすはずがない、と判断。それこそ手が足りない場合は自身が出てでも討伐しているだろうと考えたようだ。

 そして実際、盗賊に関しては騎士として見過ごすわけにはならないと即座に討伐されているらしかった。というわけで、それを改めて理解した瞬が問いかける。


「とはいえ、そうなるとどうします?」

「ふむ……そうだな。ここは薬草の採取の仕事が良いと思うが。討伐系はどうしても危険性が高い。初仕事といえば初仕事なのだから、簡単な方にしておくべきだろう。それに何より、薬草の群生地等を理解しておけばいざという時に役に立つ。まぁ、この場所なら私もわかるが」

「そうなんですか?」

「薬草の群生地は軍事的に重要な場所の一つだからな。年に数度は見て回っていた」


 それなら道案内等にも困らなそうか。瞬はイミナの言葉にそう思う。というわけで、瞬はイミナの助言に従ってここから徒歩で片道一日の距離にあるという薬草の群生地で薬草を手に入れる仕事を請け負う事にする。


「これをお願いします」

「はい……回収用のカプセルは大丈夫ですか?」

「あ……そうか。それも要りましたね」

「あはは……それではお貸ししますので、少々お待ち下さい」

「ありがとうございます」


 今後は薬草の保管容器も自前でいくらか持っておく必要がありそうか。瞬はいつもなら冒険部で備品として用意されているので準備を忘れていた事を思い出す。

 とはいえ、自前で保管容器を持っていない冒険者は少なくないらしい。協会で普通に貸し出してくれるらしかった。というわけで協会の事務員が備品を用意してくれるのを待つ彼に、イミナが少ししまったなという様子で口を開いた。


「そうか……しまったな。確かに回収用の保存容器は必須だった」

「そうですね……ウチはカイトが色々と最初の段階で用意してくれていたので、ついうっかり持っていけば良いような認識になっていました」

「私も似たようなものだ」


 今更であるが、セレスティアと共に転移した護衛の女性騎士はイミナだけではない。十数人で転移しており、今回の『時空流異門』に巻き込まれたのがこの二人だけというに過ぎない。

 彼女らの側にもまた備品等を管理している人物がおり、イミナもセレスティアもその彼女に任せっきりだった結果そこらの備品に抜けが生じてしまっていたようだ。というわけで二人して苦笑する。


「暫くは依頼をこなしながら色々足りないものをその都度洗い出すしかなさそうですね」

「そうだな……これは備品管理をしてくれているヤツに頭が上がらなくなりそうだ」

「あはは。全くです」


 基本瞬にせよイミナにせよ、依頼を受諾した後は全体的な統括は行うが備品のチェックや足りない物、必要な物に関しては冒険部であればソーニャや椿が手配してくれている。

 なので必要になっても用意されているのが基本だったのだが、それが彼女らのおかげであると身にしみて理解したようだ。というわけで、そんな笑い話を繰り広げながら待つこと十数分。いくつかの保存容器を持って先の事務員が戻ってきた。


「こちらが保存容器になります。こちらに入れて回収をお願いします」

「ありがとうございます……他に何か指定はありますか?」

「いえ、特殊な薬草の場合は依頼書に回収方法の指定等が書かれていますが、今回の薬草にはそういった指定はありません。まぁ、おやっさんから聞いた貴方の実力なら十分問題なく行って帰ってこれると思いますよ」

「ありがとうございます」


 元々瞬としてもイミナとしても問題無いだろう依頼を選んで受けていた。そしてどうやら、その見立ては正しかったようだ。事務員もまた問題無いだろうと太鼓判を押してくれる。というわけで、瞬はイミナの助言を参考にこの世界での活動をスタートさせる事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 廃城の賢者がカイトって知られてないんじゃないですか。 グラトニーとの戦いの後にそう話していた気がします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ