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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2959話 遥かな過去編 ――若き騎士達――

 時の異常現象により、セレスティア達の世界の過去の時代に飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは当時を騎士として生きていたというカイトやその親友にして唯一の好敵手と言われるレックス・レジディアというセレスティアのご先祖様と会合を果たすと、ひとまずの保護を受けると共に自分達の本来居るべき世界と時代に戻るべく、この世界にも存在していた冒険者としての活動を開始する。

 というわけで活動を開始する前に王都の東にある草原にてこの世界の魔物の実力を測っていたわけであるが、そこに偶然訓練に出てきたカイトの弟――勿論この時代のだが――であり四騎士と謳われる若き騎士クロード・マクダウェルと会合を果たし、そこで少しの歓談を得る事になっていた。


「あはは……なるほど。そこらは兄さんらしくもありますね……でもそうですか。あのまま兄さんが旅人を続けていれば、ですか……」


 考えた事もなかった。クロードは一同の語るカイトを聞きながら、そうであったならどうなっていただろうかと考える。そうして思ったのは、そうなる事は決してないだろうという事だった。


「……どうなんでしょう。兄さんの事です。こちらの兄さんの場合、そうはしなかった、でしょう」

「そこらは明白な差かもな」

「そうですね」


 未来のカイトは立場を得てもなお旅をする事を心待ちにしていたし、隙きあらばどこかに出掛けようとしている。が、こちらのカイトも城下町に顔を出しはするが、やはり立場を考え城下町がせいぜいだった。


「まぁ、それに何より……あはは。姫様が逃さな……いえ。出て行く事を良しとはしなかったでしょう」

「今逃さないって言おうとしなかった?」

「気の所為です」


 ソラの言葉にクロードは少しだけおどけたように笑う。なお、ソラも瞬もクロードが年は貴方達の方が上なのだから、となるべく砕けた口調でと頼んだためラフな口調に戻っていた。


「それはそれとしても……契約をしている姫様からは逃げられないでしょうし、サルファの魔眼からも逃げられない。ふふ。思えば出奔なんて出来そうにないですね。あ、でももし姫様と駆け落ちするなら、皆手伝うかもしれませんけどね」

「あはは……って、えぇ!?」


 良いのか、それで。楽しげに笑うクロードに、一瞬同じ様に笑ったソラが仰天する。が、そんな自身を楽しげに見るクロードを見て、ソラはこれが冗談と理解する。


「って、冗談かよ……」

「ええ。そうはなりませんし、させませんから。皆で頑張って外堀、埋めてますからね」

「お、おぉ……」


 どうやらこの世界のカイトも周囲にとても好かれているらしい。楽しげなクロードから、一同はそれを理解する。というわけでこの世界でもカイトは立場や些細な違いこそあれ大差はない事を理解し合う両者であったが、その瞬間。爆音が轟いて、テントが大きくたなびいた。


「なんだ!?」

「魔族か!?」

「ああ、いえ……はぁ。すいません。どうやらまたあの二人が喧嘩というか模擬戦をしているんでしょう」

「も、模擬戦? これでか?」


 外で響くドカンドカンという爆音と何度もたなびくテントの裾に、瞬が大きく顔を顰める。これに、クロードはため息混じりに頷いた。


「ええ。まぁ、未来でも兄さんと関わられているならわかると思いますが、ウチはこんなものです」

「「「……」」」


 何なんだ、この言いようもない納得感は。一同はカイトが率いている部隊だ、という一言だけで片付く話に対してそう思う。そしてそれに、クロードもそうだろうとため息を吐いた。


「そうでしょう……なんか安心しました。未来でも兄さんは兄さんですし、その周囲に集うのも僕らみたいな人達で。会えたら仲良く出来そうです」

「「「あ、あはは……」」」


 やはり彼はカイトの率いる部隊の中でも幹部と言われるだけの胆力があるらしい。全員がそう思うほどに、この爆音と爆風の中でもクロードは涼しい顔だった。そんな彼に、ソラは一応念のために問いかけておく。


「でも……これ良いのか? 相当派手にやってるっぽいけど」

「ほっとけば相打ちで勝手に終わりますよ。あの二人の実力って完全に伯仲しているので」

「お、おぉ……」

「とはいえ……そうですね。流石に今日は話にならない。止めておきますか……何より訓練前ですし」


 いつもの事なので放置で良いかな。そう思っていたらしいクロードであったが、同時にこれから訓練なのに訓練前から疲れさせると今度は自分の監督責任が、とも思ったようだ。彼が椅子から立ち上がった。


「あれ? クロード。客、おかえりか?」

「ああ、いえ。単にうるさいので止めるか、と」

「あぁ、あいつらか」


 外に出た所で若い騎士に声を掛けられたクロードであるが、二人して爆音の現場である二人の若い騎士が戦う所を見る。これに、彼の後に続いていた瞬達が目を丸くする。

 というのも、空中で二人の若い騎士が炎と氷を纏いながら戦っていたからだ。爆発はそれらが交わり起きていたものだった。


「あれは……アルとルー?」

「ああ、そういえば二人とは挨拶を交わしていたんでしたか……」

「いや、まぁ……そうではあるんだが」


 この二人が未来において再度カイトに仕えていると説明するべきなのだろうか。瞬はどういうべきか考える。と、そんな彼であったが、悩んでいる時間はなかったようだ。その次の瞬間。紫電を纏ってクロードが消えた。


「二人共、そこまでです」

「クロード」

「クロード卿」

「団長が来る前にボロボロだとまた笑われますよ。後、お二人の場合はルクスさんが笑いながらお説教に入られるかと」

「「げっ……」」


 完全に忘れていた。二人の騎士は兄のにこやかながらも凄まじい圧を思い出し、顔を僅かに青くする。


「で、今回はどうしたんですか?」

「どうした、とは?」

「いえ……何が喧嘩の原因なのかと」

「「?」」


 クロードの問いかけに対して、アルもルーファウスもきょとんとした様子で子首を傾げる。これに、クロードは盛大にため息を吐いた。


「特に意味もなくバカスカ爆発を起こしてたんですか……」

「む……すまなかった。会話の邪魔になるほど大きくやってたつもりはなかったのだが」

「ごめん。少し力んでたかも」

「はぁ……」


 この二人は相変わらず過ぎる。クロードは自身とそう年の変わらない二人にそう思う。


「まぁ、良いです。取り敢えずもう模擬戦は終了で」

「そうしよ……う……」

「どうしたの?」

「……」


 クロードの指示に応ずる形で模擬戦を終わらせようとしたルーファウスであったが、そんな彼の顔が先程より真っ青に染まる。そしてそんな彼の表情で、一足遅れてアルもまた原因に気が付いた。


「二人共、訓練前から精が出ますね。城下町まで爆音が響いてましたよ」

「「……」」


 これは完全に想定していなかった。後ろから響く長兄の声に、二人の若い騎士は返す言葉がなかった。というわけで後でお説教が確定した二人に対して、クロードは我関せずと同じく四騎士の一角であるルクスに問いかける。


「ルクスさん。どうされたんですか? えらく早いですが」

「ああ、団長がイミナさん達に話があったので一緒に出たんですよ……そしたら城下町でも聞こえる爆音が」

「それで」


 これは二人にとっては運がなかったな。クロードはここ暫くカイトがソラ達を気にかけていた事を知っていればこそ、こうなる事も有り得ただろうと納得する。と、そんな事を言っていると当の本人もやってきていたようだ。


「あはは。今日も今日とて派手にやらかしたみたいじゃねぇか。今頃陛下が大笑いされてることだろう」

「「す、すいません、団長……」」

「ま、お前らはそうじゃなくちゃ面白くないが……流石に城下町を騒がせた以上はお説教受けとけ。いや、城下町の人もまたお前らか、と思ってるだろうけどさ」

「「……」」


 先程までの元気な様子は何処へやら、カイトの言葉とルクスの無言の圧力に二人はしゅんと項垂れる。その顔がかなり恥ずかしげだったのは、やはり二人も騎士だからだろう。


「そうですね……騎士が城下町の民にまたか、と思われるほどやらかしている事をいい加減二人も理解しておきましょうか。取り敢えず、テントへ。話はそれからです」

「「はい……」」


 こうなっては二人に取れる選択肢はルクスの言葉に従ってお説教を受けるだけだ。というわけでアルとルーファウスの二人はルクスと共に緑色の旗が立て掛けられたテントへ向かっていき、クロードはカイトと共にこちらに戻ってきた。


「よぉ」

「あ、おう……」

「悪かったな、若いのがうるさくしちまって」

「あぁ、いや……なんてからしいというかなんというかだったし……」

「そか」


 未来の自分だ。おそらく今の自分と同じ様な連中が集まっている事なのだろう。カイトは自身の事なればこそ、そう理解していたようだ。というわけでソラの言葉に彼はただそれを受け入れるだけであった。


「で、クロードが呼んだんだって?」

「はい……兄さんの話が聞いてみたかったものですから」

「お前な……まぁ、良いか。そうだ。折角だから皆も訓練に参加してみるか? 前にラシードのおっさんもそう言ってたしな。見る事で掴める物もあるだろうし」

「訓練に?」

「ああ……この世界の魔族の戦い方は分からないでも、何かの取っ掛かりは得られるかもな」

「それは……確かに」


 どうせ今日は一日掛けてこの世界の実力を測るつもりではあったのだ。ソラ達からすればこのカイトの申し出は渡りに船と言えた。というわけで、彼の言葉に有り難く応じさせてもらう事にして、一同は一旦カイトの連れてきたセレスティアとイミナと合流。訓練に参加させて貰う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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