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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2954話 はるかな過去編 ――ミーティング――

 『時空流異門』と呼ばれる時の異常現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代へと飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは当時を騎士として生きていたカイトとその親友にして唯一無二の好敵手と言われるレックス・レジディアと会合。彼らの手引きを受けて一同はカイトの仕える国シンフォニア王国の王都の一角に拠点を手に入れる事になっていた。

 というわけで拠点の整理を行うと共に、ソラと瞬の両名は今後の活動を行うべくこの世界にも存在していた冒険者へと登録を行うと、おやっさんと呼ばれる冒険者から王都の地図を受け取って今後の活動に対する指針を考えていた。


「取り敢えず地図は貰えましたけど……問題はこれからどうするか、っすね……」

「やはり想定外なのはカイトが大精霊達と繋がっていない、という所か」

「そっすね……」


 瞬の指摘に、ソラは盛大にため息を吐いた。あそこまで気に入られているカイトなのでおそらくこの時代でも普通に大精霊達が一緒に居るのではと思っていたソラと瞬であるが、なんとこの時代のカイトは一切大精霊達の支援を受けていなかったらしい。とはいえ、やはりこれに関しては信じ難いものがあったため、ソラは同席してくれているセレスティアに問いかける。


「セレスちゃん……マジでこの時代のカイトって大精霊達の契約者でもなんでもないのか?」

「ええ……一応これでもレジディア王家の姫としてある程度王族の隠された歴史のような物は聞き及んでいますが……一切そういったものは。イミナ、貴方は?」

「私も同様です。おそらく私にもセレスティア様にも伝わっていない時点で、そういった事はなかったのだと」

「それでぶっ飛んだ強さって……あいつマジでなんだったんだよ……」


 この時代のカイトは大精霊達と一切関わりが無いというにも関わらず、この世界におけるトップクラスの戦闘力を有しているのだという。あまりにバカバカしい戦闘力にソラはただただため息を吐くしか出来なかった。そしてそんな彼であったが、すぐに気を取り直す。


「はぁ。取り敢えず。それならもう気にしても無駄って事なんだろう。ってなると問題は、この時代でどうやって大精霊達の場所を確認するか、なんだけど……」

「あはは……すいません。流石に大精霊様の場所は王族であれど知りようがないです」

「だよなぁ……」


 一応期待の目で見たソラであったが、困ったように笑うセレスティアにそれはそうだろうと納得を返すしか出来なかった。忘れがちであるが、カイトは全ての世界と現在過去未来を見回しても彼しかいないと言われる存在なのだ。彼のように大精霊の聖域に繋がる場所を全て知っている、もしくは近くに行けば感知出来るなぞ王族どころか眷属達でさえ出来る事ではなかった。


「どうしよ。兎にも角にもどこかで何かしらの接触は取りたい所だけど……」

「ふむ……」

「それでしたら、属性魔力の収束する地を探せば良いかと。先の大精霊様がどの大精霊様かはわかりかねますが、聖域を探すよりはまだ現実的なのではと」

「「属性魔力の収束する地?」」


 聞いた事がない話だ。ソラと瞬はセレスティアの助言に揃って首を傾げる。これにセレスティアは二人が地球出身なので知らずとも無理はない、と頷いた。


「ええ。どうしても大気中に満ちる魔素も自然の影響を受けて偏りが出てしまいます。森なら風や土属性が。海や湖なら水属性が、という風にですね」

「あー……確かにその流れはあるな……だがそんなものは道理じゃないのか?」

「それはそうですね。ただそれ故にある種の流れも出来上がっており、色々な条件が重なればその属性が過多になる場所が生まれるのです」

「それが、属性魔力の収束する地と」

「ええ。色々と言い方はあるみたいですけどね」


 瞬の問いかけに、セレスティアは改めて頷いた。が、これにイミナが険しい顔で口を挟む。


「……セレスティア様。確かにそれは良い方針かと思うのですが……問題が」

「……わかっています。北の要塞ですね」

「ええ。闇の大精霊様と氷の大精霊様に関しては北の要塞をどうにかしない事にはどうしようもないかと。が、あれは流石に抜けるものでは……」

「そういや……カイト達も何回か北の要塞云々って話をしてましたけど、あれってなんなんっすか?」


 苦い顔で頷き合うセレスティアとイミナに、ソラが問いかける。要塞かつ攻略しなければならない、という言葉から敵の要塞なのだとはわかったが、詳細は聞けずじまいだったのだ。これにセレスティアはそうだったと口を開いた。


「ああ、そういえばお二人はご存知無いですよね……北の要塞というのはこのシンフォニア王国やレジディア王国の七竜の同盟の領地と北の大帝国の国境に魔族達が築き上げた大要塞です。北と南を隔てている山脈があるのですが、その合間。比較的通りやすい場所に関所が元々あったのですが……」

「それを押さえられたのだ。そしてそれに大改造を施して、強固な要塞を築き上げたというわけだな」

「「なるほど……」」


 それは正しい行動だろう。地理的に陸路で進むならそこを通り抜ける以外道は無いというのだ。そこを完全に確保された時点で、人類側はかなり苦境に立たされてしまっていた。と、そんな所で瞬がふとした疑問を得た。


「北には何があるんだ?」

「鉱物資源が眠る鉱山がたくさんあります。それに対して南部側のこちらには優秀な穀倉地帯が」

「つまり北への食料の供給と南への鉱物資源の供給を同時に絶っている……というわけか。凄いな……」

「うわぁ……」


 北側の住人達は南側からの食料が届かずあえぐ事になるし、南側の住人達は北側からの鉱物資源が届かないので武器や防具の修繕が難しくなる。そんな一石二鳥の作戦に、ソラも瞬も思わず顔を顰める。そんな彼らに、セレスティアははっきりと頷いた。


「そういうことになります。なのでカイト様もレックス陛下も揃って北の要塞の攻略に尽力されているのですが……」

「問題がある、と」

「ええ。先に説明した魔族の将軍クラスが待ち構えています」

「将軍クラスか……」


 一応、瞬達もまたセレスティア達からこの世界の魔族に関する簡単なレクチャーは受けている。なので師団長や軍団長より更に上の将軍級が存在する事は知っていたが、師団長でようやく全員が束になって勝てるかどうか――セレスティア達ならなんとか単独でも勝てるが――というのが実情だ。ソラも瞬もあまりに遠すぎる敵の背にため息を吐くしかなかった。というわけで、瞬が一応の確認で問いかける。


「勝ち目は……なさそうか?」

「無いですね。正直、私とイミナが本気で戦っても勝てないでしょう。もし戦うなら姉さんや兄さん……それに加え他の巫女達や対応する使い手が全員勢ぞろいして、その上で可能な限り兵力をかき集めねば戦いにさえならないでしょう」

「もうわけがわかんねぇな……」


 セレスティアやイミナでさえ、セレスティアではソラ達をも上回るトップクラスの実力者なのだ。それを更に上回るレクトールやセレスティアの義理の姉という女傑。そしてその同格と言われる残り六人の英傑とその補佐役達が勢ぞろいして、その上で軍事的にも最大限のフォローをしてようやく対等に戦えるというのである。あまりに遠すぎて、ソラにはどう反応すれば良いかわからなくなってしまっていた。そしてこれに、セレスティアも半ば苦笑気味に笑う。


「ですね……一応、北の要塞攻略に関しては資料を読みましたが……正直あの兵力で勝てたのは異常と言うしかない」

「そんなっすか?」

「ええ……正直、愕然とするレベルにはレベルが違いすぎますね……」


 この時代に飛ばされるまでセレスティアもイミナもこの時代のカイト達とは会ったことがなかったわけであるが、二人も子孫とはいえ祖先の力に関してはどこか誇張表現があるだろうと思っていた。

 が、実際に会ってみれば誇張でもなんでもなく、それどころか後の世に誇張していると思われて下方修正されているのではと思ったぐらいだ。と、そんな現実にただただため息を吐いていたセレスティアであるが、すぐに気を取り直す。


「ああ、いえ……とはいえ、そういうわけなので北に収束する地がある闇の大精霊様と氷の大精霊様に関しては接触のしようがない。北の要塞の攻略がいつ行われるのか、というのまでは歴史書にも殆ど伝わっておりませんし……」

「北の要塞を通らず北に行く方法は無いのか? 例えば海路とか」

「可能ではありますが……あまりおすすめは出来ないのではないかと」


 流石にこの時代の状況を詳しく知るわけではなかったので、セレスティアもあくまでも推測だが、という体でソラの問いかけに答える。そしてそんな彼女がその理由を告げた。


「おそらく、海路に関しては見張られています。魔族達は馬鹿ではない。海路での情報のやり取りは見張られていると考えて良いでしょう。もしそれでも、という場合はかなり南から大きく迂回するルートを取る事になるでしょうが……」

「あまりに日数が掛かりすぎる、というわけか」

「ええ。この時代の船の技術を鑑みると、到底実用的とは言い難いでしょう。無論、山脈を通るルートはあるにはあるのですが……そちらは地脈を介して見張られている。入った瞬間に捕捉され、転移術で強襲されるでしょう」

「完全に詰んでるな……」


 これは闇と氷に関しては後回しにして、出来る事からしていった方が良いかもしれない。瞬はセレスティアの助言を聞きながら、そう思う。というわけで、この後は暫くの間二人の持っているこの時代の魔族の動き等を頼りにして今後の指針を構築していく事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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