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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2945話 はるかな過去編 ――帰還と遭遇――

 『時空流異門』。それは何処とも知れぬ時間軸。何処とも知れぬ場所に飛ばされるという非常に稀な現象。それに巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代に飛ばされる事になってしまったソラ達であったが、そんな彼らは当時を生きていたカイトの親友にして唯一の好敵手たるレックス・レジディアという青年と遭遇。彼との会合を経て、この時代のカイトとの会合に成功する。

 というわけで更に紆余曲折を経てシンフォニア王国の王様であるアルヴァ・シンフォニアと会合したソラは、そこで強襲を受けた砦へと増援に向かったカイトの帰還を目の当たりにする事になる。


「陛下」

「カイト。戻ったな……怪我は……なさそうか」

「この程度で怪我を負っては勇者の名が廃ります」


 万雷の喝采を浴びながら王城に着地したカイトであるが、アルヴァの言葉に出ていった時と変わらぬ様子で頭を下げる。その鎧のどこにも血飛沫の痕跡はなく、本当に戦ってきたのかと思えるばかりであった。しかしこれに、アルヴァは上機嫌に笑う。


「ははは。師団長相手にそう言えるのはお前とレックスくんぐらいなものだ」

「ありがとうございます」


 おそらくこのカイトは自分達の知るカイト並に強い。ソラは戦闘後だからか身に帯びる魔力の尋常ではない様子から、そう理解する。と、そんな彼を横目に、アルヴァはカイトに問いかけた。


「して、どのようなヤツであった?」

「単に先の西での戦いの生き残りでした。被害も目立った程度ではなく、立て直すのにはあまり時間は要しないでしょう。しいて言うのであれば、工兵は多く必要かと。砦の正門が破壊されておりました」

「そうか……追って、工兵達を向かわせよう」


 後にカイト曰く、今回戦ったのは衝撃を発生させる事に長けた魔族だったらしい。広域での破壊は得意だったらしいが、同時に衝撃であればこそ一点集中しなければ人員に怪我を負わせる事は難しかったらしく、この時代の兵士の平均的な戦闘力も相まって被害はさほどではなかったとの事であった。


「はい……ただ、ヤツが何かしらの尖兵である可能性はある。向かわせた騎士はそのままの方が良いかと」

「なるほど……確かに砦の防衛機能に欠損が出ている以上、そこを突かれると厳しいな。それが成し得るまで穴埋めは必要か」

「はっ……」

「わかった。その通りにしておこう」


 どうやらアルヴァは相当カイトを信用し信頼しているらしい。カイトの報告に対して即座に応ずる。というわけで一通り報告と対応が終わった所でアルヴァは即座に騎士達の指示に入るとその場を後にする。そうして今度はアルヴァと入れ替わりで、カイトが残る事になった。


「おつかれ」

「おう……ふぅ。取り敢えずお前の祝いで首一つって所か」

「物騒だなぁ、おい」

「あははは……今のオレ達に求められているのはその物騒さだ。だろ?」

「ま、違いねぇな」


 笑いながらのカイトの問いかけに対して、レックスもまた笑う。が、そこにどこか苦笑の色が乗っていたのは、仕方がない事なのだろう。と、そんな彼にソラが問いかける。


「一つ聞いて良いですか?」

「なんだ?」

「そのさっきの師団長……? それってどんな強さなんですか? 知っての通り、魔族とはまだ会った事がなくて……いや、俺達の時代と世界じゃ普通に居たんで魔族は知ってるんですけど、この世界の魔族ってのがわからなくて」

「ああ、そりゃそうか……そうだなぁ……確かに知っておかないと対処のしようもないか」


 ソラの問いかけに対して、レックスは今後彼らが動くためにも魔族の力量のざっとした基準を理解させるべきだろう、と考える。常日頃レックス達がソラ達を見ておけるわけではないし、何より他国の王族であるレックスはシンフォニア王国に長くは滞在出来ない。カイトも騎士として忙しくしている以上、知っておいて貰うのは彼らにとっても好都合だった。というわけで、彼はそれならと魔族のざっとした話をする事にする。


「えっとな……一般兵でこのぐらいか」

「っ……少し強いっすね」


 冒険者のランクで言えばCの上位層程度かな。ソラはレックスの放つ力の強さを感じながら、そう思う。一般兵でこの程度だ。上の層は相当に分厚い事が察せられた。


「そうだな。魔族の一般兵はこっちの一般兵二人分ぐらいにはあるか。そこから隊長級やら色々とあるんだけど……まぁ、そこらはお前達でも勝てるだろう。で、これが……」

「っぅ!?」

「これが師団長。さっきカイトが戦ったヤツだな。で、この上に軍団長やら将軍やらが居る」

「その上まであるんっすか……」


 それで最終的には勝ったってどんだけなんだよ、この二人は。レックスが放つ力が今の自分達が束になってようやく勝てる程度なのを見て、それが束になっても勝てないと言われるこの二人の実力が如何程なのかソラには測りかねた。と、そんな彼にカイトははっきりと頷いた。


「ああ……まぁ、流石に軍団長やら将軍……最後の大魔王には俺も一人じゃ挑まん。そんな化け物共だ」

「まー、その将軍に挑もうってのが今度の作戦なんですけどね」

「あははは……やるぜ、ダチ公」

「おうさ、ダチ公。激闘になるだろうが……ま、二人ならなんとかなるだろ」

『はぁ……二人だけで挑む風な事を言わないで貰えませんか』

「え?」


 やれやれ。どこか呆れる風を醸し出す声が響いて、それにソラが困惑を露わにする。が、その一方でカイトは楽しげに笑っていた。


「悪い悪い。お前らも一緒だ……ま、八人総掛かりでやるんだ。負けないさ」

『はい……それで例の物は?』

「ああ、あれなら東の第一倉庫に……って、お前今どこだ?」

『あ、失礼しました……よいしょ』


 カイトの言葉を受けて、今度はメガネを掛けた金髪碧眼のエルフが現れる。まぁ、エルフと言っても成人男性ではなく、若干少年に近い年頃と言う所ではあった。見た目の年齢としてはカイトやレックスより数歳年下。高校生程度、という所だろう。そんな彼が隠形を解いて姿を現すなり、相好を崩す。


「兄さん、お久しぶりです。レックスさん。ご成婚、おめでとうございます」

「おう、ありがとう」

「いえ……エルフ達からの進物に関してはまた追って。今は例の物の解析を急ぐべきかと」

「そうだな……カイト」

「ああ。さっきも言ったが、あれは東の第一倉庫にある……少し待っていてくれるか? 陛下の客が居てな」

「そういえば……彼らは?」


 このエルフの少年は話を途中から聞いていた感じらしい。ソラに気付いてはいたものの、それが何者かまでは理解していなかったようだ。そんな彼に、カイトは肩を竦める。


「あー、色々とあるんだけど、取り敢えず陛下の客だ。こっちも東棟に案内しないといけなくてな」

「ふーん……」


 小生意気そうな感じ。ソラがこのエルフの少年に対して思うのは、そんな印象だ。が、メガネの奥の瞳は全てを見通すかのように澄んでおり、まるで自分達が未来から来た事さえ見透かされているかのようであった。


「何者ですか? 風の加護を持つ所を見るに、悪い人物ではない様子ですが。間の抜けた表情ですし、魔族という事も無い。警戒する必要はさほど、という所でしょうか」

「んがっ!」

「あはは……ま、真っ当な状態のヤツじゃない。が、ここでは話せない。後で部屋に来てくれ。詳しく話そう」

「わかりました……どうせ東棟に行くのですから、それで良いです」


 生意気なヤツ。ソラは謎のエルフの少年にそう思うも、彼の方はカイトには懐いているらしい。カイトの言葉には素直に応じていた。


「あはは……悪いな。こいつはサルファ。ハイ・エルフの王子様……という所か」

「……」

「ぐっ……え、えっと……その王子様がなぜ?」

「作戦行動です。それ以上はお答えしかねます」

「そ、そうすか……」


 けんもほろろな返答に、ソラは呆気にとられながらもそう返すしかなかった。というわけで更にサルファというハイ・エルフを加え、ソラは色々とあって放置されている形となっている瞬らと合流。騎士団の棟屋から改めて王城の本丸にある東棟へと向かう事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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