第2938話 はるかな過去編 ――これから――
謎の現象に巻き込まれ、セレスティア達の世界の過去の時代に飛ばされてしまったソラ達。そんな彼らは困惑の中で、この時代に存在していたというかつてのカイトの親友にして好敵手であるレックス・レジディアというセレスティアのご先祖様と遭遇。彼の導きを受けて、この時代のカイトとの会合を果たす事に成功する。
が、当然その彼はソラ達が見知ったカイトとは違いこの時代の存在で、根っここそ同じではあるものの多くの面で違いを感じさせる騎士であった。
そんな彼とレックス、そしてこの時代のカイトの従兄弟叔父であるラシードとの会話を経て自分達が未来人である事を認めるに至っていた一同は改めてレックス達と今後を含めた話し合いに臨んでいた。
「で……この未来人さん達どうすりゃ良いんだ? お前が連れて帰るのか?」
「いや、お前が保護しておいてやってくれよ」
「なんでオレが」
「多分、お前の方の知り合いって様子だから」
ひとまずおおよその状況を掴んだ後。カイトの問いかけにレックスはそう告げる。が、これにカイトはよくわからないという様子であった。
「なんでだ?」
「目線だよ。ソラ達の視線が時折お前に向いてた。未来人、って事を差っ引いてもお前の方が気になるって事はそういう事だろう」
「ふーん……そうなの?」
「あ、えっと……」
「やりやすい口調で良いぞ。どうせそこまで気にしちゃいないし」
「あ、はぁ……」
カイトの言葉にソラは生返事だ。まぁ、彼からしてみれば本来のカイトの姿というだけなのに、全く自分を見知らないという状態なのだ。どんな風に話せば良いかわからなくても無理はなかった。というわけで、カイトの言葉にソラは意を決する。
「えっと……ああ。結構長い付き合い……だと思う。つってもあんま知らないけど……」
「ふーん……その未来のオレ? どんな事してるんだ?」
「どんな事って……これ言って良い……んですか?」
「やめといてくれ。未来が書き換わる事があるか、ってのはわからないが、面倒は可能な限り避けたい」
ソラの確認に対して、レックスは即座に首を振る。これにソラもそうだろう、と思ったようだ。
「そうしておきます……取り敢えず俺たちはあんたと知り合い……うん。知り合いではある」
「そか……レックスは?」
「ただ一度だけ会った事はある、ってぐらい」
「ふーん……」
なにやら色々とありそうではあるが、おそらく教えてはくれないだろう。カイトはソラの返答にそう理解する。何度か言われているが、ソラ達の知るカイトに比べとある理由で知性を鍛えていないだけで素養はあるのだ。おおよそこれで問題なかったらしい。
「まぁ、わかった。そういう事ならそれで良い」
「お、おう……で、俺達はこれからどうすれば良いんだ?」
「どうすれば、って言われてもな……」
正直な所、何がなんだかわかっていないのはカイト達も一緒という所ではあった。と、そんな彼らであったが、ふと瞬が問いかける。
「そういえば……大精霊……様は? お力をお借りする事とかは出来ないのか?」
「大精霊? 大精霊って……あの大精霊か?」
「え? あ、あぁ、そうだが……」
怪訝な顔を浮かべたカイトに対して、瞬は自分達が知る彼と異なる様子に困惑を浮かべる。そして怪訝な様子だったのはカイトだけではなかった。
「大精霊様のお力は確かに借りられるかもしれないが……君達の誰かは契約者なのか?」
「え? あ、いえ……俺達は違いますが……」
「だろう。君たち程度が交わせるほど、契約は甘いもんじゃないはずだ」
はずだ。それはレックスが大精霊の契約について詳しくない事を如実に示す言葉だった。というわけで、瞬が問いかける。
「お二人は違うんですか?」
「違うさ。俺も、カイトも」
「「「え?」」」
「「「え?」」」
レックスの返答にソラ達が仰天し、そんな彼らにレックスらが困惑する。とはいえ、これには若干の勘違いがあった。というわけで、その勘違いをしたレックスが問いかける。
「もしかして……未来で俺達って契約者として伝えられてたりする……のか?」
「あ、いえ……その様には伝わっておりません。ただ……契約者でもなく、あの強さなのかと」
「「「あー……」」」
どうやら誤解が生じていたらしい。それを理解したセレスティアの返答に、カイト達三人はなるほどと納得する。契約者というのは絶大な力を持つ者という認識はエネフィアもこの世界も変わらないらしい。なのでセレスティア達の属する未来では契約者であったのでは、という推測もあったらしい。
「取り敢えず俺達は違うよ……まさか契約者になってた、って事はないよな?」
「オレが契約者になってるんならお前もなってるだろ」
「まぁ、そうだよな」
未来においても過去においても現在においてもカイトが唯一ライバルと認める存在だ。カイトが契約者になったならレックスもまた契約者となっていただろう。
カイトにはそんな確信があったし、レックス自身それなら自分も間違いなくなっているに違いないという確信があったようだ。それに何より、それなら絶対に自身が知らないはずがない。そう思ってもいた。
「やれやれ……いっそ契約者になってくれても良いんだぞ」
「なんでだよ」
「その方が早いし、貴族共を黙らせられる……いっそなんない?」
「どうやって大精霊様の聖域やらを見付けるんだ……」
「そこはサルファあたりが知らないかなー、と思わなくもない」
「あー……確かにサルファかノワあたりなら知っててもおかしくはないか……?」
どうやら契約者にはなっていなくても、心当たりがないわけではなかったらしい。二人は契約者になるならどうするべきか、と話し合う。と、そんな所にラシードが口を挟んだ。
「二人共、一旦は彼らをどうするかを考えてやった方が良いんじゃねぇですか?」
「っと……それはそうだな。取り敢えずカイト。悪いけど、暫く保護してやってくれね?」
「まぁ……そりゃ良いけどさ。ただウチもそんな余裕はないぞ?」
「そりゃタダメシ食わせてやれ、って言ってるわけじゃないし、まさかそんな事は思ってないだろ?」
「そ、それは勿論っす。流石にタダメシ食うってのはあんまうまいもんじゃないんで……」
レックスの問いかけに対して、ソラは大慌てで頷いた。彼も保護してもらえるのなら出来る限りの事はしたいと思っていたし、ただでさえ未来で世話になりっぱなしのカイトにこの時代でまで世話になるのは申し訳なさすぎたようだ。というわけで、そんな様子の一同にレックスが告げる。
「ほら……取り敢えず家の手配とかしてやれれば、あとは自分で魔物の討伐とかの依頼を請け負ってなんとか出来るんじゃないか? 戦う力としちゃ十分だったし。お前、城下町に知り合い多いだろ? なんとか出来ないか?」
「うーん……確かに空き家はいくつかあったなぁ……聞いてみれはするか……」
「良いのか?」
「食い扶持は自分で稼げよ。一応、冒険者の登録手続きとかはしてやるから、それで稼げるだろ」
「冒険者……」
どうやらこの世界にも冒険者という職業は存在しているらしい。カイトの言葉にソラ達は僅かな安堵を浮かべる。ひとまず食い扶持を稼ぐ手段があるだけ有り難かった。と、そんな様子のソラにカイトが問いかける。
「あ……冒険者はわかるか? というか未来にも存在してるのか?」
「あ、ああ。実は俺達未来じゃ冒険者やってるんだ。だからおおよその仕組みはわかる……と思う」
「そうか。まぁ、簡単な仕事ではあるから変わってないだろ。掲示板で依頼を確認して受付に持っていって、それで依頼を終わらせれば良いだけだ……ま、大半が魔物の討伐とかだから大丈夫だろ」
本当に自分達の知る冒険者の仕組みと大差ないな。ソラはカイトの語るざっとした概要にそう思う。まぁ、実際セレスティア達も来て早々に冒険者となり十分に活動できていたのだ。作っているのが世界が違うだけで同じ人である以上、仕組みに大差がないのは当然なのかもしれなかった。というわけでそこらを語った後、カイトはラシードに視線を向ける。
「わかった。取り敢えず知り合いにあたってみるよ。今日は下の客室を使うと良い……ラシードさん」
「あいよ。案内はこっちでやっとく」
「頼みます……誰かさんのせいで盛大なパーティに参加せにゃならんので」
「終わったら久しぶりに城下町で飲み明かそうぜ」
「お前、自分の立場わかってる? 他国の王子様が城下町で飲み明かすって馬鹿か?」
「お前もだろ」
「だよなー」
「「あははは!」」
結局、この二人は似た者同士なのかもしれない。何がなにやらソラ達にはわからなかったが、どうやらこの二人は立場云々を考えねばならない立場にありながら全く気にせず城下町の酒場に出没していたらしい。まぁ、カイトに関しては未来においても普通にそこらに出没するのである意味彼とその親友らしいと言われればそうだった。とはいえ、これにお目付け役と言われるラシードは嬉しそうだった。
「へいへい。まぁ、ウチの連中も騒ぎたいでしょうから、その分の余裕は残しておいてくだせぇよ」
「勿論。全員で飲み明かさないとな」
「へい……っと、すまないな。兄さんら、取り敢えず客室に案内するからついて来てくれ」
レックスの言葉に笑って応ずるラシードであったが、そんな彼が気を取り直してソラ達に告げる。そうして、和気あいあいと雑談に興ずるカイトとレックスを横目に、要件は終わったとソラ達は一旦今日の宿になる『青の騎士団』本拠地の客間へと案内される事になるのだった。
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