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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2927話 闇で蠢く者編 ――報告――

 冬前最後の大依頼をソラと瞬に任せ、単身受け手の少ない面倒だったり厄介だったりする依頼の攻略に臨んだカイト。彼はその道中で殺し屋ギルドからの刺客を差し向けられる事になったわけであるが、それも撃退し更にはそのうちの一人の来歴からついに殺し屋ギルドのしっぽを掴む事に成功する。

 というわけで改めて殺し屋ギルドとの戦いに向け色々と動き出したカイト率いるマクダウェル家なのであったが、他方支度を任せていた冬前最後の遠征隊が出発する日なぞあっという間だった。


「あ、カイト。居た居た」

「ん? ああ、ソラか……どうしたんだ? こんな所まで……」


 殺し屋ギルドへの対策とさらなる情報収集を行うべく数日マクダウェル公爵邸に詰めていたカイトであったが、そこにやって来たソラに小首を傾げる。これに、ソラはカイトの相変わらずの忙しさを理解して思わず苦笑した。


「どうしたもこうしたもないだろ。遠征に出るからその報告と承認貰いに来た」

「え? あー……すまん。忘れてたわ」


 一応重要書類は常に椿によって届けられ、その処理は怠っていない。が、いくつかの話に関してはソラや瞬から直接的に報告する様に手配しており、時間を見付けて冒険部のギルドホームに顔を出してはいた。

 その中に今回の大依頼もあったのだが、カイトはそれを失念し戻るのが遅れてしまったのだ。そこでソラが気を利かせ、書類を持ってきてくれたというわけであった。


「あはは……まぁ、言われてみりゃそりゃそうだろ、って話だけど。やっぱ忙しいんだな、お前って」

「すまん。言い訳がましいが、なにせこれでも公爵様なんでな」

「見りゃわかる……お前の仕事場、相変わらずというかなんというかだわ」


 おそらく自分がこいつに勝てる事は絶対に無いだろう。ソラは書類の山で埋め尽くされたカイトの執務用の机と、それらの処理に必要な無数の書類を魔糸や分身で取ってきては分身をも活用し処理していく姿に思わず頬を引き攣らせる。


「一応聞くけどさ……この書類って全部秘書室通った後の書類……なんだよな?」

「当たり前だ。オレが直接処理する書類なんて上げられる書類の何分の一とかそんなんだ」

「それでこの量かよ……」

「実際には報告書やらも多いから、中を読むだけ。理解するだけというのも少なくない。思う以上に書き物があるわけじゃないさ」

「いや、そっちのが手間掛かるだろ……」


 いっそ中身を検めずハンコを押すだけ、署名するだけなら一分も必要無いのだ。逆に内容を読み込むのなら早くて十数分。長ければ一時間以上要するなぞザラに起きるだろう。自身も運営に携わればこそ、ソラはそれをわかっていた。というわけでそんな彼は気を取り直す。


「まぁ、良いや……取り敢えず遠征の承認頂戴」

「そうだな」

「とぉお……お前マジか」

「あ、すまん。ここに座るとどうしてもな」


 カバンから取り出した書類をソラが持っていこうとした瞬間。書類が浮かび上がって勝手にカイトの手元まで移動していくのを見てソラが仰天。これにカイトがしまった、と少しだけ照れくさそうに笑う。

 彼が言った通り、いつもの癖で魔糸を使って勝手に回収してしまったのであった。というわけで遠征の承認に関する書類にサインをしながら、カイトが問いかける。


「それで、日数としてはどれぐらい掛かりそうなんだ?」

「大体10日ぐらい。まぁ、後は現地の状況を見つつ、って感じかな。ある程度依頼人さんが纏めてはくれてるみたいだし」

「そうか……となると、もう帰る頃には冬か」

「そうだなぁ……あ、そうだ。そういや、さっき雪がちらほら降ってた」

「マジで?」


 ユニオンとの折衝やら殺し屋ギルドへの対応やらで完全に引きこもっていたカイトはどうやら、外の天候はあまりわかっていなかったらしい。一応地下に部屋があるわけではないので外を見れば良いのだが、仕事をしているとそれもままならないものだった。というわけで、サインが終わった後暫くソラから色々な報告を受ける事になったわけであるが、そこでカイトは一つ感慨深い様子でため息を吐いた。


「そうか……やはりもう冬か」

「そうだなぁ……ヒーター類もそこかしこに置かれてたし。あ、そうだ。そういや、全く話変わるけど聞きたい事一個あった」

「なんだ?」


 カイトの言葉にどこかしみじみと応じたソラであったが、そんな彼は何かを急に思い出したらしい。小首を傾げるカイトに問いかけた。


「あれ、どうすりゃ良いの? 礼服……だよな? 多分……」

「何の話だ?」

「いや、お前の誕生日会……マクダウェル家から招待状届いたんだけど。あれ、お前ので良いんだよな? 名前がカイト・フロイライン・マクダウェルになってたから」

「あー……あ、オレもうすぐ誕生日か。マジ実感なかったわ……」

「取り敢えず早いけどおめっと……で、良いんだよな?」

「あ、おう。ありがと……」


 かつて言われていた事なのであったが、カイトの誕生日は地球で言えば12月24日。クリスマスイブだ。そして冒険部というかもともと地球出身の天桜学園の生徒達は誕生日に関しては地球での季節に当てはめ春夏秋冬のその日にしていた。

 というわけで、この話に当てはめるとカイトは本来冬の12月24日となるはずだ。が、マクダウェル公爵家から内々に送られてきた招待状には秋の12月24日となっていたのである。というわけで、本当に数日後に差し迫っていた。


「というか、なんでお前に実感無いんだよ。お前の誕生日会なんだろ?」

「あれオレがタッチ出来ない話なんだよ。祝われる当人が誕生日会の準備をする世界がどこにあるんですか、とかクズハに言われてな。だからオレにも一切報告が無い……いや、流石に予算青天井にしようとしてるのを見た時にゃ予算編成だけは出せ、つったけどさ」

「あー……」


 確かにわからないではない。カイトの言う通り、誕生日というのは他者が祝うものであって祝われる当人が企画するのは話が違う。これに関してはクズハの言い分が正しかったし、カイトとしてもそれを受け入れていた。そして勿論、ソラもカイトの言葉に納得する。


「まぁ、出なくても良い……とは言えんか」

「ったりめーだろ……お前の誕生日会なんて誰が来るか……」

「あっははは……大物は全員揃うぞ」

「だろうなぁ!」


 考えれば考えるほど思い浮かぶ参加者の顔ぶれに、ソラは半ばやけっぱちに声を荒げる。おおよそエネフィアにおける大物と言われる大物が全員揃うのだ。ソラに不参加なぞあり得なかった。


「俺が考えただけでも皇帝陛下に大公二人? 勿論公爵も全員揃うだろ? で、神殿都市の大神官達に……先輩から聞いたけどバーンタインさんも来るんだろ? おまけにクオンさんやらアイナディスさんやら……もう何なんだよ……」

「あはは……まぁ、祝われるオレは気楽なもんだけどさ。そりゃ、名代じゃなく自分が来ないとしゃーないんだろう」

「当たり前だろ、お前……」


 契約者でさえ大精霊を呼べないのに、それが勝手にやって来るのがカイトなのだ。そしてこれはソラも秘書室のコレットから愚痴混じりに聞いた話だが、大精霊達にも招待状は送られていたらしい。

 まぁ、送るも何も当人たちが勝手に回収していった――結果何人かの新人が卒倒したが――が、大精霊相手の招待状を作るとなった時は流石に冗談だろう、とコレットも思ったらしかった。

 とはいえ、そうなると大精霊達の参加は確定。もはやエネフィアの誰もが不参加なぞ口が裂けても言えないし、すべての予定を切り上げてさえ参加する事になっていた。


「とはいえ、だ。隠蔽は楽だろうからそこは良いんだろう」

「なんで?」

「オレの誕生日だぞ? 実は何気にエネフィア全土で祝日扱いにされててな……ああ、そうか。それで遠征隊の出発が26日か。そりゃそうなるわな」

「ナナミに聞いた。すげぇんだって?」

「らしい……本当にらしい、としか言えんが」


 やめてほしいんだが。カイトはかなり恥ずかしげにそう苦笑する。まぁ、春夏秋冬それぞれの季節で一つは盛大な祭りが行われるぐらいにはお祭り好きなマクダウェル領だ。これ幸いと騒ぐだろう事は明白だった。というわけで、そんな自領の様子に嬉しくはあれど小っ恥ずかしい様子のカイトは気を取り直す。


「あー……それでなんだ。それに乗じて今回は色々とあったからマクダウェル家で集まって、としたそうだ。状況考えれば確かに筋は通っているしな」

「あー……」


 もしこれで何もない状況で集まるとなると隠蔽工作は胃が痛かっただろうが、今は邪神だの<<死魔将(しましょう)>>だの色々とある。親交を深めるためにも、としてマクダウェル家に集まる形を取っても不思議には思われなかった。


「ああ、そうだ。それで礼服云々だったな。礼服にしとけ……さっきラエリア帝国のシャリク陛下から当日は間に合う様に到着できそうだ、という返答があった。後、ヴァルタード帝国の方は昨日返答があったな。こちらも参加で確定だ。兄弟両方来るそうだ」

「……マジ?」

「マジ」

「参加したくねぇええええ!」

「あはは」


 とどのつまりエネフィアで大国と呼ばれる国の内、自分達が関わったすべての大国の長が一堂に会する事になるらしい。それを改めて言われ、頭を抱えたソラが絶叫が木霊する。しかも勿論、バルフレアを筆頭にしたユニオンの大幹部達も勢ぞろいだ。プチ大陸間会議の様相を呈していた。

 ちなみに、マギーア王国を筆頭にしたウルシア大陸の各国は不参加だし祝日にはなっていないらしい。まぁ、三百年前にもカイトが関わっていなかった以上、当然ではあるだろう。一応マクダウェル家も招待状を送りはしたが、こういう裏を知らないので不参加だった。


「ま、諦めてくれ。オレは諦めた」

「気楽にしやがって」

「祝われる側だ。気楽にさせてくれ」


 どこか恨みがましい視線を向けるソラに、カイトは笑う。確かに誕生日で祝われる事ぐらい、何も考えずにいたいだろう。これはカイトが正しかった。と、そんな彼が署名を終えた書類をソラに返却する・


「はぁ……っと」

「ほら、終わったぞ」

「おう……はぁ。あー……」

「あはは……ああ、そうだ。すまんがやっぱこっちから出られそうにないから、先輩にも色々報告があるならこっちに来る様に伝えておいてくれ」


 今から気後れしている様子のソラにカイトは笑いながらも、やはり忙しいからかこちらに詰めておかねばならない事を告げる。これにソラもようやく気を取り直した。


「あ、おう。桜ちゃんにも言っとく?」

「いや、桜からは報告が定期的にされてるから問題無い。学園側の処理に関しても椿経由で送られてるしな」

「そか……じゃあ、俺は戻るな」

「すまん。そっちは任せる」


 途中脱線はしたが、本来ソラは報告するべき事を報告して書類にサインを貰いに来ただけだ。彼とて忙しいは忙しいので、終わったらさっさと戻るだけであった。というわけでカイトは再び公爵としての仕事に戻り、ソラはソラでギルドホームに戻るのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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