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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2908話 闇で蠢く者編 ――洞窟――

 冬に入る前最後の大仕事をソラと瞬に任せる事にしたカイト。そんな彼は空いた時間を利用して、いつもの様に受け手が少ない高額報酬ではあるが手間が掛かる上に面倒な依頼を終わらせる事にする。

 というわけで、今回の依頼がマクシミリアン領から流れてきた物であったため、彼は飛空艇にてマクシミリアン領南西部へ移動。いくつかの高額ではあるが手間が掛かるため嫌厭されていた依頼を受注すると、マクシミリアン領の境目にあるとある山々にやってきていた。目的はそこに居る手配された魔物が返り討ちにした冒険者達の遺品の回収だった。そうして手配されていた魔物の討伐を終えた彼であったが、その後はその魔物の巣を目指して再び歩いていた。


「この先……という事だったか。かなり地図とは様子が異なるが……当然か」


 カイトにユニオンから貸与されていた地図はあくまでもこの一帯が『財宝を守る屍竜(しりゅう)』によって荒らされるより前に作られたものだ。なので本来ならカイトが居る場所は深い森の中のはずだったが、『財宝を守る屍竜(しりゅう)』による腐敗の影響で木々は枯れ果て遠くまで見通せる状況だった。とはいえ、そのおかげで山の麓にある洞窟も比較的簡単に見付け出す事が出来た。


「あれか……うっぷ……うっ……あ、無理……こらだべだ……」


 やはり流石は巣という所だろう。漂う腐臭は気分を害する領域に到達しており、旅に慣れて様々な臭いを嗅いでいるカイトも流石に顔を顰めざるを得なかったようだ。というわけで、彼は周囲に風を薄く纏って臭いを遮断して洞窟へと近付いていく。


「……なるほど……食べ残しを巣に持ち帰ってた、ってわけか……それとも百舌鳥の早贄か……ともかく持ち帰ったは良いが寝てる間にでも腐敗の息だかモヤが漏れ出して、この有様か……最悪だな、こりゃ……」


 酸鼻を極める。一言で言えばそんな様子の洞窟の中を少しだけ覗いてみて、カイトは先程の腐臭と同等には顔を顰める。


「どうしよ……流石にこの中に突っ込みたくはないんだが……生体検知でもやってみて、生きてるのが居なけりゃ先に滅菌処理しておくか……うえ……」


 そこかしこに蛆虫は湧いているし、当然人に限らず多数の生き物の死骸が腐り果てているのだ。その中に突っ込んでいく勇気はカイトにもなかったらしい。というわけで、カイトは効果範囲を限定して一旦生存者が居ないかどうかを確認する。


「生体の反応……無し。良かった……洞窟のマッピングをして……取り敢えずこれでよし。後は……火加減に注意して……」


 下手に火力を高くして遺品まで燃やし尽くしては一大事だ。なのでカイトは持ってきた魔道具で洞窟の内部情報を取得すると、ひとまず出入り口付近を火属性の魔術で燃やし尽くす。


「よし……後はこれを地道に繰り返して最奥まで進むしか無いか……はぁ」


 流石にこれは気が滅入る。カイトはそう思いながらも、だからこそ受け手が少ない依頼だと自らを諦めさせる。というわけで、ある程度の範囲に遺品が無い事を確認しては周囲を燃やし尽くしてを繰り返すこと一時間ほど。洞窟の半分ほどに蔓延っていた腐敗した様々な動物達の死骸を燃やし尽くしていた。


「ふぅ……死骸のおかげでどういう道を通っていたか、というのがわかったのは幸いだったな……おかげで無駄な道を通らなくて良かった……この様子だと食った生き物の残骸が道中に落ちてたパターンも多そうだな……後は、入ったは良いが洞窟の中で遭遇してそこで餌食に、も割りとか……」


 やっぱあんまり気分の良い依頼じゃなかったな。カイトはおそらくこの洞窟に自身と同じ依頼で来たのだろう人の死骸を見ながら、そう呟いた。ここまでの道中に比べて彼の独り言が多いのはやはり不快感が強いからなのだろう。とまぁ、そんなこんなで愚痴を言いながらも作業を進めていたわけであるが、その甲斐もあって最深部にようやくたどり着いた。


「ここが、最深部……広いな……そして……お宝発見、と。そして死体やらも沢山発見、と……はぁ。どうすっかな、これ」


 最深部にあったのは、無数の腐敗した死体の山――人が大半だが――とおそらく『財宝を守る屍竜(しりゅう)』と戦う事になってしまった冒険者達が持っていただろう遺品の山だ。


(おそらく食べたは良いが金銀財宝や武器防具の類は消化しきれず、排泄物として排出されたか……それともあの様子だと身体の中に入った異物はそのまま身体から出す方法を持っていそうではあったか。どちらでも良いが……取り敢えずこんだけ遺品と死体が山の様に折り重なると面倒でならんな)


 どうしたものかね。カイトは死体に関してはこの場に捨て置く事で良いと考えていたが、遺品に関しては依頼なので回収せねばならないのだ。となると、どうするべきか少し考える必要があった。


「……ちっ。ものすごい面倒だし、聞かれたら面倒この上ない手だが……概念での選別をやるしかないか。流石にこの中から手作業で死体と遺品を分別してたら日が暮れる……いや、明日の日が昇っても終わらん」


 討伐メインで考えて来たので人手は不要だろうと思ったが、この作業でだけは人手が必要だったかもしれない。カイトは盛大にため息を吐きながらも、もうどうする事も出来ないので諦める事にする。

 というわけで彼はいつぞやも使ったダウジングが取り付けられた杖をシャルロットから借りると、それを応用して遺品と死骸を分別する。


「よし……後はこれを……」


 分別した遺品は汚れを拭ったりする必要はない。なのでカイトは遺品だけを器用に浮かび上がらせると、そのままユニオンから渡された回収用の袋の中に詰め込んでいく。そうしてものの数分で、遺品はすべて袋の中。死体だけが洞窟の最深部に遺される事になっていた。


「ふぅ……最深部の死体に関しての処理は……確か道中同様に全部燃やせだったな……ふーん……」


 やっぱりちょっと何か裏がありそうだよなぁ。カイトはそう思う。今回の依頼に関して冒険者達に望まれているのは特定の遺品の回収と可能な限りの遺品の回収だ。

 そして冒険者の性質上、カイトの様に概念で選別して回収する事はまずなく、貴金属類だけ回収して後は燃やす方が大半だった。貴金属類の回収だけならさほど難しくないからだ。


「一度軍の諜報部に書類の類は届けるか。武器防具やら以外は大半燃やした、という話でも誰にもわからんだろうしな」


 おそらく何かしらの不正の証拠が回収した書類の中に紛れ込んでいるのだろう。カイトは依頼書からそう判断すると、書類に関しては軍に調査させる事を決めてこれもまた分別しておく。というわけで、遺品やらの類をすべて回収した後、カイトは最深部の死骸をすべて燃やし尽くす。


「よし……にしても……来ないな。思いっきり絶好の機会と思うんだが」


 ここで洞窟が崩壊させられると非常に面倒くさいんだが。カイトはそう思いながらも、殺し屋ギルドの刺客が来ない事を訝しんでいた。


「洞窟……破壊するな、って言われてるのか? いや、こんな僻地の洞窟だと崩落しようとマクシミリアン家も気にしないと思うんだがなぁ……しかもオレが戦った後だってのは類推し易いだろうし……」


 なんでだろ。カイトは殺し屋達の考えがイマイチ理解出来ず、首を傾げながら洞窟の中を戻っていく。そうして、十数分。結局警戒――もしくは僅かな期待――をしていたカイトであったが、洞窟の外に出て思わず笑みをこぼす事になった。


「お、出てきた出てきた」

「ほら、ここしか出入り口無いって言ったじゃん」

「いやぁ、良かった良かった。もしここ以外に出入り口あったらどうしようって話てた所だったんだよ」

 洞窟の外で待っていたのは、二人の若い男――もしくは少年と言えるレベルかもしれない――達だ。そんな二人はカイトが出てくるなり顔に喜色を浮かべていた。そんな二人に、カイトもまた獰猛な笑みを零す。


「おやおやおや……お出迎え? いやぁ、デカい歓待を期待したんだが、二人かぁ。ちょっと拍子抜けだな。どうせなら洞窟でも崩せば派手になったんだが」

「そいつはぁ、面白くない。ダメだ……殺しってのは自分の手でやってはじめて面白いんだろうが」

「っと」


 洞窟を崩壊させればよかっただろう。そんなカイトの指摘に対して、若い男の片方は一瞬でカイトへと肉薄。彼の喉にナイフを突き付け、一切の容赦なく切り裂こうとしていた。が、この程度でやられるカイトではない。故に彼はハイキックの要領で襲いかかってきた男の腹を蹴っ飛ばして吹き飛ばす。


「ぐっ! マジか……今のに普通に反応すんのか、お前」

「ふーん……若いとは思ったが。割りと腕は悪くないな。殺し屋ギルドも良い殺し屋を飼ってるもんだ」

「若いって……あんたも俺らとさほど変わんないだろ」

「少なくともお前よりは若くないと思うがな……で、要件はわかってる。殺し屋に喧嘩売りすぎって事だろ?」

「話が早くて助かるよ……ちょっとお前。やり過ぎたんだよ。調子に乗りすぎた、でも良いかもな。あのリトスを捕まえた挙げ句マクダウェル家に引き渡すなんて……ウチの上はカンカンだ」


 先に腹を蹴られた方とは別の男――こちらは完全に少年と言える年頃だった――はカイトの問いかけに笑いながら、そして心底どうでも良いという様子で笑っていた。と、そんな少年の言葉にカイトは少しだけ驚いた様子を見せる。


「え、リトスちゃん。そんな上の殺し屋だったの?」

「そーそー……俺らの上司」

「割りと腕は良かったから俺らもその点は認めてたんだけどねぇ。良い子ちゃんだから上からの評価も良かったし」

「マジでな……ま、一発抱かせてくれるなら、俺は命令に従ってやっても良かったんだけど」


 どうやらやはり殺し屋としての腕前は二人の方が上らしい。カイトは二人の口ぶりから組織としての立場はリトスが上だが、殺し屋としての腕前はこの二人というかこれから来る殺し屋達の方が上と判断する。というわけで、彼はリトスが思った以上に幹部の地位に居た事に驚きながらも、二人に問いかける。


「ふーん……ま、良いや。取り敢えず……ここでやる?」

「もちろん」

「当たり前だろ」

「そ……じゃ、やるか」


 二人の殺し屋の返答に、カイトもまた二人に似た獰猛な戦士の笑みを浮かべる。そうして、カイトはついに殺し屋ギルドの殺し屋達との交戦を開始する事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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