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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2898話 大空遺跡編 ――再起動――

 ソラと瞬の飛空術の実用試験の帰路でカイトが発見した大空に浮かぶ謎の遺跡。それは『星神(ズヴィズダー)』により滅ぼされた数千年前の超古代の文明の遺跡であった。

 そしてその報告を受けた皇帝レオンハルトより遺跡の早期復旧を命ぜられる事になったカイトはその理由に若干気後れしながらも、仕方が無しにそれを承諾。ティナらに再起動の旨を伝え準備を進めていたわけであるが、その中で自身に反応して特異な反応を遺跡が示すのではという推測を受け単身遺跡へと帰還。艦橋を再起動しその推測が正しい事を確認していた。


『よし。これで良い』

「何か気を付けるべき事とかはあるのか?」

『一応は無いが、やはりどうしても偽装工作にも限度はある。遺跡の中では力は使わん方が良いじゃろうて』

「普通に戦っては?」

『それは構わん。お主の普通がどの程度を示すかわからんがな』

「刀一つで戦う分には、って所だ」


 その程度なら問題はあるまい。カイトの返答にティナはそう告げる。まぁ、現状のカイトであれば刀一つで大抵の事はどうにか出来てしまうのだ。大精霊達の力を借りなくてもどうにかなるだろうし、よしんばこの遺跡の防衛機構が再稼働しても刀一つでどうにかは出来るだろう。というわけで、そこらを考えていたカイトがふとティナに問いかけた。


「あ、そうだ……そういえば今交戦って言われてふと思ったんだが良いか?」

『なんじゃ?』

「もしかしてこの遺跡って魔導砲通用しないんじゃね?」

『む? いや、そうか……確かに言われてみればそれはそうじゃな……なるほど。そう考えれば考えるほど面白いのう……』

「いや、面白がってばかりじゃなく。万が一の場合の戦闘方法考えようぜ」


 何度も言われているが、この施設の構造材には吸魔石を特殊な錬金術で合成した素材が使われている。なのでその特性上魔力を吸収してしまうのだ。となるとある意味魔力の塊である魔弾は通用しないと考えて無理はなかった。というわけで自身の指摘に僅かに楽しげに笑うティナに、カイトはそのまま続ける。


「流石にこれだけの規模だ。下手すりゃ前にあったラエリア内紛の超巨大魔導砲でさえ全吸収しちまうぞ。飛空艇の魔導砲なんぞ砂漠に一滴水を垂らすようなもんだ。別の攻撃方法考えにゃ軍が大苦戦だぞ」

『ああ、対応策はさほど問題ない』

「え、マジ?」

『余をなんじゃと思うておる。こういうような場合なぞ想定済みじゃ……まぁ、確かにこの遺跡がそうじゃというのは余も見落としておったが、出発には間に合わせよう』


 それはそれとして言ってくれて助かったがのう。ティナはカイトの指摘に礼を言いつつ、その準備を進めさせる手配を進める事にする。そんな彼女にカイトは興味本位で問いかけた。


「どうやるんだ?」

『簡単じゃ。ちょっと改良した投石機を使う。魔術が通じぬのであれば物理で殴れば良いんじゃ』

「物理で殴れば良い、ってのはまぁわかった。改良した投石機ってのは?」

『単純じゃ。こっちも吸魔石の塊をぶっ放すわけなんじゃが……流石に単純な投石機では使い勝手が悪すぎる。ある程度照準などを合わせられる様にした物での。まー、こんなもん滅多な事では使わぬのでお主は知らんでも無理はないよ』


 実のところ魔銃こそカイトがやって来て以降に開発が盛んになるわけであるが、単に魔力をチャージして魔弾、もしくは光条として放つだけの魔導砲は構造が簡易――筒と魔力と蓄積出来る魔石があれば魔導砲になる――でエネフィアではかなり昔から存在するものだ。

 なので幾度かの戦乱でも技術は失われず、単に石を投げるだけという投石機が使われたのは本当に歴史上稀な事なのであった。というより投石機を使うなら投げた方が早いし確実というのがエネフィアなのだから、当然だろう。


「古くからあるものなのか?」

『あるはある……が、軍のお偉方でさえどれだけがその存在を知っておるか、というレベルじゃ。知っておったら軍の歴史というかエネフィアの戦史をよお知っておると花丸をくれてやろう……お主はその点で言えば勉強不足じゃな』

「うるせぇよ」


 どうやらエネフィアの歴史上には何度か登場してはいたらしい。カイトは楽しげに指摘するティナに少しだけ拗ねた様に返しながらもそう理解する。


『拗ねるな拗ねるな。投石機なぞ特にお主らには意味がなかったし、三百年前には絶対使わんかったじゃろう』

「なんで」

『お主もバランタインの筋肉阿呆も吸魔石の塊じゃろうがバカスカ投げおるからじゃろ。吸魔石投げるための投石機じゃ。吸魔石と一緒に常識まで放り投げる奴があるか、とこの投石機の開発者は文句の一つでも言うじゃろうよ』

「あー」


 そりゃ使わないわ。ティナの指摘にカイトは道理を見て思わず頷くしか出来なかった。先に投げる方が早いと言われているわけであるが、それにも例外が存在する。それは言うまでもなく吸魔石を投げる場合だ。この場合のみ投手の魔力を吸収してしまうので、投石機を使うほどの大きさを普通は個人で投げられないのだ。


「まぁ、良いわ。取り敢えず投石機はあるんだな?」

『あるよ。それを装備に加えさせておく』

「頼む……じゃ、オレは戻るぞ」

『うむ』


 最後脱線――必要な脱線ではあったが――してはしまったが、これでこの遺跡でやるべきことは終わっていた。というわけで、カイトは再びマクスウェルに戻って急ぎで再出発の準備を進める事にするのだった。




 さてカイトが遺跡に再突入してから二日。彼はマクダウェル家が組織した調査隊に同行する形で三度遺跡に足を踏み入れていた。

 といっても、彼がやる事は単純。冒険部が設営した拠点に案内し、内部への入り口や制御室へ案内するだけだ。実際遺跡そのものの再稼働をしていない事になっている以上、これ以上何かを出来る事はなかった。というわけで、彼は制御室に学者達を案内していた。


「ここが制御室です」

「これが……ふむ……」

「興味深いな……立ち上げは……」

「おい、立ち上げはまだするなよ。再稼働はマクダウェル本家から許可が出て……はいるが、最終承認が降りてからだ」

「……わかっている」


 相変わらず軍と学者達は相性が悪いな。カイトは制御室に入るなり好き勝手に行動を始めようとする学者達とそれに呆れながらも制止を掛ける軍のお目付け役達に内心で苦笑する。

 というわけで彼らを横目にカイトはその場を後にして表層部に戻り、表層部に改めて設営されていた軍の拠点に足を踏み入れた。するとそれと同時に、中に居た指揮官全員が立ち上がって敬礼する。


「「「閣下」」」

「ああ……相変わらず軍と学者の先生方は仲が良いな」

「申し訳ありません」

「良いさ。ウチも似たようなもんだからな。というかウチみたく魔術の応酬にならんだけマシだろ。あれはあれで仲が良いんだがな」

「あはは」


 一応この遺跡はマクスウェル近くで見付かっている事もあり、軍でもかなり本家に近い部隊を差し向けている。なのでこの部隊を率いているのはカイトを知る者で構築されており、報告も彼かティナ、クズハらに直接としていた。そもそも皇帝レオンハルトの命令もあったのでそれしかなかった事も大きかった。というわけで、頭を下げる指揮官にカイトは笑って首を振る。


「それで再稼働だが、先の指示通り明後日の朝に承認を下ろす。施設の再稼働は三日後の昼。周囲には通行禁止の信号弾の打ち上げを忘れるな」

「了解。信号弾の打ち上げ後、再稼働を行います」

「頼む。またそれに合わせてオレ達も周辺で密かに待機は行う。万が一の場合には人員の避難を最優先にしろ。その場合も信号弾を打ち上げろ。可能な限りこちらからも支援を行う。が、施設の構造材の関係から遠距離からの転移術での回収はほぼ不可能と思え。十分に注意を払え」

「了解」


 兎にも角にもこの施設には未知の要素が多いのだ。なので注意させるべき事は山のように存在していた。というわけでそこらの伝達後。今度は指揮官から確認が出た。


「閣下。それで一つ質問なのですが……施設の使用の見込みは?」

「流石にそれはまだ未定だ。おそらく月内には、という所だが……流石に陛下の命令から特急でやっても一週間以内は無理だ。流石に物理的にな。後は他の領地の人員にも声を掛けてるから、その面でも若干時間は足りん」

「ではやはりその間は交代でマクスウェルと行き来し休憩を取らせる形で?」

「それで良い」


 今回は皇帝レオンハルトの勅命という事で大急ぎで事を進めている。が、それも別に夜を徹して行え、と言われているわけでもない。なのでなんとか今月中には一度目の試験が出来れば、という所だった。というわけで諸注意やら確認を進めたカイトは後は軍と学者に任せて、自身はマクスウェルへと帰還するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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