表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2904/3940

第2885話 大空遺跡編 ――八個の試練――

 ソラと瞬の飛空術の実用試験に付き合った帰り道に偶然カイトが発見した大空に浮かぶ謎の遺跡。それはルナリア文明より更に昔。もはや情報がほとんど残っていない数千年以上も昔に栄えたとされる超古代文明の遺跡であった。

 というわけで、そんな遺跡の調査を行う事を聞き付けたルークを調査隊に加えたカイトはソラや瞬らを引き連れて遺跡の内部への潜入を実施。風やら雷やらブリザードやらが吹き荒れるエリアを乗り越えて、九個の扉がある部屋へと到着していた。


「……結局、調査結果はほぼ何も無しか」

「そーなるのう。まぁ、もうこうなっては素直に表示されている指示に従うしかあるまい」


 この部屋に到着して半日ほどの調査の結果であるが、これはカイトの述べた通り何も無しという形だった。そしてそうなっては誰もがもはやモニターに表示されている指示に従う以外にこの遺跡を再起動させる方法は無いと結論付けるほかなかった。そんな状況に半ば嫌そうにソラが疑問を呈した。


「てか、本当にこの遺跡って魔導炉とか無いの?」

「台座から遡ってみたが、本格的に魔導炉はなさそうじゃ。あるにしてもここからは動かせまいな」

「やはりこの遺跡は龍脈やらの魔力のみで運用されていたのだろうね。改めて確認してみたが、外周部には火砲などの攻撃を行える武装がほとんど見受けられなかった。『星神(ズヴィズダー)』が見逃したのも、そういう所だと思う」


 まず間違いなくこの遺跡は軍事施設ではなかっただろうね。この二時間で改めて外に調査に出ていたルークがそんな推測を口にする。なお、彼は当初見込まれていた通り単独で先の風が吹き荒ぶエリアを突破出来たため、往復は容易だったようだ。


「となると、この守護者とやらはさほど強くはなさそうか?」

「それは……流石にわかりかねるね。逆の可能性の方が高いと私は思うけれど。魔帝様はどう思われますか?」

「そうじゃのう。余としても同意見で良い。お主らは神殿というものに馴染みが無いのでわからんじゃろうが、神殿の守護者は基本特注品。しかも神殿であるがゆえに各方面口出しがし難いので、軍用品なぞ目ではないぐらいの性能を保有させられる。それはおそらく今も昔も変わるまい」


 であればこの守護者は下手な軍用のゴーレムや使い魔と比較にならないレベルである可能性は十分にあり得るだろう。ティナはルークの問いかけを受ける形で、瞬の問いかけに語る。とはいえ、だからと何も全てが悲観する必要があるわけでもなかった。故に彼女はそのまま続ける。


「とはいえ、それ故にこその利点もある。守護者というに、おそらく何かしらの制限は設けられておるじゃろう。更には対応する属性もわかっておるが故に対策も可能。攻略の目が無いとは思えん」

「制限……例えば?」

「そうじゃのう……例えば殺せぬような結界が展開されておるような事はかなり推測される。まぁ、これは現代の神殿で主流なだけなので当時がそうかはわからんがの」

「今の神殿ってそうなのか?」


 自身の問いかけに答えたティナの返答に、ソラは驚いた様に目を丸くする。これに、カイトが頷いた。


「流石に神殿で守護者を謳うなら、挑戦者は可能な限り殺さないような設定にされている。侵入者なら逆に容赦ないがな。曲がりなりにも神殿、というわけだ」

「なるほどなー……ってことは、挑戦者やら再起動を考える者であるという前提に則れればそのバフが手に入る可能性は高いって事か」

「そう考えて良いだろう。逆に腕試ししたいならそれはそれで良いがな」

「遠慮しとく」

「それが良いだろう」


 この遺跡が依然として未知の遺跡である事に変わりはないのだ。そしてここで話し合っている内容とて推測に過ぎない。なのでソラも笑って首を振るのを見て、カイトもまた笑って同意する。そうして少しの軽い雑談が混じった後、カイトが改めて告げた。


「まぁ、まずは再起動を試みているという認識をこの遺跡に持たせないと駄目だろうな。ティナ、何かそういった事が可能な情報は見付かったか?」

「エテルノの助力もあって、見付かっておるよ……良し」


 カイトの問いかけを受けて、この半日台座の調査を行っていたティナがコンソールを操って表示を切り替える。なお、エテルノの助力もあって、というのはやはり言語の面が大きかったらしい。あれがなければ更に数日は要しただろうというのが彼女の言葉であった。


「まぁ、端的に言えば誰か一人がここに残ってこのコンソールから各方面の支援を行うこと。単純といえば単純じゃな」

「それは誰でも出来るのか?」

「無理じゃのう……色々と端折って話すが、その役目は本来この遺跡の関係者……おそらく神官に類する者たちでなければならなかったわけじゃ。それを偽装し、神官が支援している風を偽装する必要がある。それをしながら各所の試練攻略を支援するとなると、些かルークでも厳しかろうて」

「一度触ってみても?」


 そうまで言われては一度試してみたい。ティナの言葉にルークが少しだけ興味を示す。これに、ティナはルークに場所を譲る。


「良いぞ」

「では……エテルノ。支援を」

『わかりました』


 さすがのルークも自分一人だけでこの超古代の遺跡に取り掛かるほど自惚れてはいなかったらしい。エテルノを取り込んで一体化。本気でこの遺跡の制御を試みる。そうして、数分。彼は満足した様に頷いた。


「なるほど。出来なくはないですが」

「やりたくはあるまい?」

「流石、と思わされるばかりです」


 麒麟児や天才と持て囃されたルークとて、流石に歴史上最高にして最強の魔術師と謳われたティナと同格とは思っていなかった。なのでティナがまるで簡単にしていた事がその実とんでもない化け物じみた技術であると理解したようだ。というわけで、笑いながら問いかけたティナに彼も笑いながら首を振るだけであった。これに瞬が驚きを露わにする。


「そんなに厳しいのか」

「いや、出来なくはないけれどもね。けれど他人の命を預かった上でこれをやる自信は今の私には無いよ……後十年は欲しいかな。主に人生経験の面で」

「上出来じゃ。十年経過してお主に指導者側の意識が馴染めば、このレベルでも十分に対応出来るじゃろう。もし出来ます、なぞ抜かせばはっ倒したわ」


 当人の性能としては十分備わっているが、それがこの状況下で十全に発揮する事が出来るかと言われればそれは別問題。ティナはそれ故にこそ魔術師としてのルークの腕前を認めつつ、この重責は担えないと判断したらしかった。


「あはは……ですがおそらく、この領域になれば対応出来るのは御身かカイト以外はあり得ないかと」

「そうじゃのう……やりた」

「くはねぇよ。オレは前線で切り込んでる。まぁ、お前単騎の補佐ぐらいならやってやるがな」


 ティナの問いかけを遮って、カイトはため息混じりに首を振る。そうしてそんな彼はそのまま問いかけた。


「で? 守護者だ何だと言うという事は、当然チャレンジには条件が存在するんだろ? それともそれも偽装出来たか? オレとしちゃ再起動させるんだから条件無しにしてくれ、と思うんだが」

「残念ながら、神殿という概念と経年劣化などを無効化するために無条件は出来んかったようじゃ。そちらは対処出来んかった。まぁ、完全な機能停止にされるより良かったじゃろうて」


 流石は神殿に関しては一家言ある男。理解が早い。ティナはカイトに対してそう言いながら、更にコンソールを操ってこの守護者への挑戦条件とやらを表示させる。


「一度に挑戦可能なのは二人まで。また挑戦者一人につき挑める守護者は二体まで」

「えー……オレ二体お前二体として……半分はどうやっても残りの面子で、か」

「そうじゃな」


 どれを誰が受け持つかは別にして、カイトとティナによる攻略はほぼ確実に可能と言える。なのでこの二人で半数としても、残るルーク、ソラ、瞬、アル、リィルの五人で残り四体をなんとかしなければならなかった。というわけで、カイトが少しだけ頭を捻る。


「うーん……後一人欲しいな。ソラ、先輩。アル、リィル……ルークの前衛が欲しいな」

「そうじゃのう」

「別に一人でもエテルノも居るから問題は無いですが」

「やめておけ。そうやって油断した奴が遺跡では命を落とす。オレらがそれでも単騎で二体、ってのはオレは属性を設けられた時点で勝利が確定しているし、ティナに対応出来る守護者なんぞ出来るなら『星神(ズヴィズダー)』にも滅ぼされていないだろうという判断だ。実際にやってみて余裕だった、というのなら残る一体も任せるがな。初手は前衛置いておけ」


 おそらく問題はないだろうとは思いつつも、カイトはルークに対して安全策を取る様に口にする。と、そうして彼に苦言を呈した後、カイトは深くため息を吐いた。


「それに、ここでお前に怪我でもされちゃ『サンドラ』側との政治的な問題に派生する。面倒この上ない事になるから、一度目は万全を期しておいてくれ」

「そういう事であるのなら従うよ」


 確かに少し勇みすぎていたかもしれない。カイトの述べた言葉に道理を見て、ルークも素直に従う事にしたようだ。そしてそうなれば、あと一人を考える必要があった。


「まぁ、安牌はルーファウスか。流石にルークに合わせられるとなると、あいつぐらいしか手は無い。ウチで他は回避主体とかになっちまうからなぁ……」

「それか、外からウチの連中を連れてくるかじゃが」

「ラカムやらか? それも手と言えば手になるが……」


 そいつらを駆り出すならそもそも最初から冒険部で請け負わず、マクダウェル公爵家ですべての調査を担えば良いだけの話だ。カイトはそれも手と少し考えながらも、現状はまだ冒険部での調査続行を決める。


「まぁ、流石にあいつらを呼び寄せるとソラ達の成長にもならん。後はあいつらの場合、やり過ぎて遺跡を壊す可能性がある」

「そ、それは否定出来んのう……」


 否定できないんだ。カイトの言葉に半ば呆れながら同意するティナに、一同はそう思う。とはいえ、彼らの戦闘力の高さは折り紙付きだし、それは全員がわかっていた。こういった遺跡で彼らを運用すると壊しかねないのもまた事実だった。


「よし。そうと決まれば外からルーファウスを連れてくる。全員、一旦戦闘準備を整えながら待機。挑戦は一時間後で考えて調整を行ってくれ」

「「「了解」」」


 カイトの指示に、一同が了解を口にする。そうして、カイトは外で万が一のための防衛任務に就いていたルーファウスに状況を説明するべく、一旦来た道を戻って外に出る事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ