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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2877話 大空遺跡編 ――移送――

 カイトがソラと瞬と共に救助要請を発した冒険部の遠征隊の救助に向かった帰り道に見付けた大空に浮かぶ遺跡。それは未発見の遺跡だった。というわけで場所の特殊性から飛竜を中心とした竜騎士部隊を独自に保有する冒険部にて調査を請け負わせる事にすると、彼はその支援が可能なように方々を駆け回って支度を進める事になる。

 というわけで遺跡から少し離れた地上に本拠地を。遺跡の表層部の少し開けた場所に前線基地を設けた冒険部一同は改めて調査を開始。カイトは飛空術を使いルークと共に外周部を調査し八個の意匠を見つけ出すと共に、蔦に覆われていた不活性化した魔石を発見する。

 そしてそれと時同じくして表層部の調査を行っていたソラよりの連絡で内部に通ずる入り口が見付かったという報告を受け、彼はルークを伴って表層部の前線基地に戻っていた。


「それで? 入り口らしいものが見付かったって?」

「ああ……見付かるには見付かったんだけど、その場所が問題でさ……まぁ、見てもらった方が早いか。ちょっと待ってくれ」


 会議用の椅子に腰掛けるなり本題に入ったカイトに対して、ソラは百聞は一見にしかずと提出されたデータを見せる事にする。そうしてカイトの前に設けられたモニターに、その様子が映し出される事になる。


「これは……なるほど。確かにこの可能性は無いではなかったが。まさかドンピシャでそうなってたか」

「どんなのなんだい?」

「わかりやすく言えばこんな状況だ」

「これは……ああ、なるほど。ゴーレムの下敷きになってしまってるのか」


 それ以外に言い様がないな。カイトは楽しげに笑うルークの言葉にこちらもまた楽しげに笑う。先にソラが見付けたようなゴーレムがどうやらこの遺跡の表層部には幾つも見付かったらしい。

 その中の一つが倒れた先に丁度この遺跡の出入り口があったらしく、そこに更に土が覆いかぶさった事で先の目視での調査では見付けられなかったらしかった。


「で、どうするよって話なんだけど……ゴーレム発掘して大丈夫と思うか、って話」

「そうなるよな……結論から言えば大丈夫……だと思う。だと思うでしかないが」

「それはわかってる。そこで断言された方が怖いし」

「まぁな……一応この文明は相当古いみたいだから、ゴーレムが機能停止して相当な期間が経過しているだろう。そこを踏まえて考えた場合、まず動く事はないだろうってのがおおよその結論だ」

「ってことは……普通に撤去しても大丈夫そうか」


 カイトの結論を受けて、ソラはそれならと撤去の準備に必要なものを脳内でリストアップする。が、そんな彼にルークは告げた。


「どうだろう。そう簡単に撤去出来るかな?」

「なんかあるんっすか?」

「これはあくまでも推測に過ぎないけれど……意図的にそうなるようにされた、という可能性は無いかな? その場合、これだけは動かせないようにされている可能性もあるし、これが動く事がすべての起点となる事もある。完全に単なる推論だけどね」

「あー……」

「うわっ……それは最悪っすね……」


 それはあり得るなぁ。そんな様子のカイトにソラもその可能性があり得ないわけではない事を理解。しかめっ面でその場合は最悪すぎると口にする。というわけで、カイトはひとまずの方針を定める事にした。


「ソラ。非常に手間だが、まずは周囲の土をすべて撤去。ゴーレムの状態を確認し、可能であれば埋没している入り口の状況を確認したい」

「それって当然」

「スコップなどは使って良いし、身体強化も大丈夫だろう。但し、魔道具は使用禁止だ」

「ですよねー……まぁ、身体強化を禁止されていないだけまだ楽か」


 カイトの返答にガックリと肩を落としたソラであるが、身体強化などが出来るだけ楽と前向きに捉える。が、そもそもの点をカイトが指摘した。


「てかそもそもお前、指示出して実際の作業はほとんどやらないだろ」

「あ」


 ソラの仕事は指示を出す事と戦闘時に前に立つ事だ。こんな雑事で彼の時間が忙殺されてしまっては指揮官の意味がなかった。というわけで、そんな初歩的な事を指摘された彼ははっとなって、すぐにその手筈を整えるべく動く事になるのだった。




 さてソラが入り口を塞いでいるゴーレムの発掘を指示してからおよそ二時間。やはり手作業かつなるべく刺激しない様に埋没したゴーレムを発掘するとなると若干時間が掛かった様子だが、それでもなんとか作業は終わりを迎えゴーレムの全容が明らかになる事になっていた。


「これは……うーん。どっちか判別出来かねるなぁ。ルーク。専門家としてはどうだ?」

「私は専門家じゃないよ……でもそうだね。魔術師として言わせて貰えば……うん。どっちなんだろうね」

「おい……ティナ」

『余も判断に困る。正直どちらもあり得る……が、高いのは意図的じゃろうのう』


 困った様に笑うルークの返答にカイトは仕方がないと思いながらティナに問いかけ、そんな彼女は意図的にこうされたのだと口にする。というわけで、そんな彼女は改めて現在のゴーレムの状況を再確認する。


『まずじゃが、そのゴーレムの脚部……より具体的に言えば足首以下の部分。これは遺跡と完全に接合しておるが、これに関しては実はさほど珍しいわけではない。遺跡……いや、本来は施設というべきじゃろうが。施設と一体となっておるゴーレム……施設の設備やシステムの一部と捉えても良いじゃろう。そういうものじゃな。得てして防衛システムを担うゴーレムの場合、どこにでも出現出来る、移動出来る様に出来るメリットがある』

「そこに現れる、という形か」

『うむ。まぁ、この場合同時に施設そのものの部材を使うので倒されれば倒されるほど施設そのものの強度が落ちていくため、今ではあまり選ばれぬ方式じゃ。ルナリア文明時代の遺跡でもまぁ、取られてはおらぬ。施設そのものの部材がなくなればその分、施設全体の防御力が結果として落ちてしまうからのう』


 やはりこの点を鑑みれば、これは非常に古い時代の遺跡で間違いあるまい。ティナは現代ではほぼ選ばれない方式を採用している点から、この遺跡が非常に古い時代の遺跡であると結論付ける。というわけで、そんな彼女にカイトが問いかける。


「それでも採用される場合はどういう場合だ?」

『今しがた話した様に、このやり方を採用するのであれば敵にどこから現れるかわからない……それこそ施設内部にも出現出来る様に出来るというメリットがある。更には施設と一体化しておるがゆえにコアも必要ない。逆説的な話ではあるが、施設と一体化しておるという事は施設そのものがゴーレムのようなものでもあるからのう』

「なるほど。施設が生きている限り無限にゴーレムが湧いて出てくる、か……最悪だな、それ」


 どこから現れるかもわからず、しかも施設が停止しない限り無限に湧いて出てくる敵。そんなものは侵入者からすれば最悪の敵だろう。無論無限と言っても限度はあるが、施設の素材と侵入者の体力。どちらが先に尽きるかと問われれば、普通は後者だろう。


『まぁ、そういうわけじゃな……とはいえ、そういうわけなのでおそらくこのゴーレムの一体がここで倒れておるのは意図的になろう。それが緊急的な指示か、それとも退避や放棄する場合にはこうなると定められたが故の物であるかはわからぬがな』


 どちらにしても意図的である事に違いはないだろう。ティナは改めて先の結論に至る事を語る。というわけで、それを受けてカイトが一つ気合を入れ直す。


「そうか……ということはやはりこいつを動かして入り口を出した時点でこの遺跡が復活する可能性はあるか」

『そこは半々という所じゃのう……流石にこの遺跡を作った者たちの想定以上に時間が経過してしまっておる事は明白。本来はそうなっても不思議はないが、今回ばかりはわからぬな』

「そうか……とはいえ、警戒に越したことはないだろ?」

『それは否定せぬよ』


 どちらかわからない以上、警戒に越したことはない。そう言うカイトにティナもまた笑って同意する。というわけで、カイトはソラと瞬に一つ頷きかける。


「ソラ。撤去にゴーサインが出た……脚部の接合を解く際にはオレも警戒に加わるが、お前の方は殊更警戒を頼む。先輩」

「おう」

「ああ……作業開始! 全員警戒を怠るな!」


 やはり万が一が起きた場合に全員を守るのはソラの役目だ。なのでカイトの指示にソラはしっかりと地面を踏みしめ万が一に遺跡の防衛システムが再稼働した場合に備え、瞬は瞬で全体に警戒を促し作業を再開させる。というわけで、更に十数分。入り口を塞いでいたゴーレムの脚部の接合が解かれ、動かせる様になる。


「……何も……動かないな」

「みたい……だな。運べるか?」

「やってくれ」


 今のところ何も動きは見られない。そう判断したカイトの要請を受け、瞬は移送のために待機していた面子にゴーレムの運び出しを指示する。このゴーレムはこの後竜騎士部隊によってマクスウェルに運ばれ、そちらで待機するティナら研究者の手で解析が行われる事になる予定だった。

 というわけで、竜騎士部隊が待機するエリアまで運ぶ間警戒を続ける一同であったが、結局運び出しが終わっても何も起きないままだった。


「終わりか……ティナ。見ての通り、何も起きなかった」

『みたいじゃな……おそらく施設そのものが完全に機能を停止してしまっておるんじゃろう。この様子なら中もどうなっておる事やらという所じゃな』

「それはそれで頭が痛いが……少なくとも防衛システムが働いて攻撃されないだけ調査に集中出来る。よしとしておくか」


 攻撃されながら調査するより、攻撃を考えずに調査出来る方が良いのは当然だ。なのでカイトはとりあえずその点に関する心配がなくなったので良しと考える事にしたようだ。というわけで、警戒を解く様に指示を出しながらカイトは埋没していた入り口を確認する。


「総員、警戒態勢を解除しろ……ふむ。階段か。ゴーレムが塞いでいてくれたおかげか、風化はかなり避けられてるな」

『そりゃ良かったではないか……気を付けろよ。ここが何時、どこの文明の遺跡かまだわかっておらぬ。何が待ち構えているかわからんからのう』

「そのためにオレが居るようなものだろう? ま、頑張りますわ」


 警戒を促すティナに、カイトは一つ笑って気を引き締める。というわけで、ゴーレムの撤去を終わらせた一同は内部の調査に移っていく事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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