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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2874話 大空遺跡編 ――調査開始――

 飛空術を習得し、その有益性を実証するべく即応部隊として動いたソラと瞬に同行することになったカイト。そんな彼はその帰路に大空に浮かぶ謎の遺跡を発見する。

 それは今のところマクダウェル領では未発見の遺跡である可能性が高かったため、竜騎士部隊を独自に持つことから彼は冒険部にてその調査を行うことを決定。方々を駆け回って大急ぎで準備を進めていたわけであるが、それも数日で終わりを迎えていた。


「よし……桜。じゃあ、こっちでの物資の搬送に関する手配は任せる。距離はさほどではないから、万が一の場合は自分で来てくれても大丈夫だろう」

「その必要は大してなさそうな距離ですが」

「それもそうだな」


 桜の言葉に、カイトもまた一つ笑う。今回の遺跡とマクスウェルの距離は中距離の通信機の範囲の中。冒険部が独自に保有している通信機だけで十分だった。更に言えばやろうとすればある程度まで近づけば彼女の場合は魔糸がある。それで事足りる。というわけでそこらの雑談にも近い話を終えた所で、桜が問いかける。


「それはさておき。とりあえず今回は第一陣が表層部の調査。第二陣が本隊として拠点設営と内部調査という形で大丈夫ですか?」

「ああ。表層部の目視での確認では内部への入り口は見当たらなかった。表層部に柱などの構造体が認められた以上、人工物が存在していることは確定。内部に入る方法もあると推測される……まぁ、無い可能性も無いではないが。あの規模で表層部にしかない、というのは中々レアケースになってくる」

「もしなければどうするんですか?」

「ないならないで重要な史跡と言える。あのサイズで内部に何も無い、というのはさっきも述べた通りかなりレアケースだ。その場合はその場合で学者共が飛び付くだろうさ。まぁ、無いならないで依頼は完了。ウチとしちゃ楽な仕事だった、というだけになるがな」


 桜の問いかけにカイトは肩を竦める。とはいえ、彼としては上下にかなりのサイズが見受けられた上、遺跡下部に何かしらの魔力の残滓を感じていたのでその可能性は低いとも考えていた。


「とりあえず本隊側の支度はさっきも言った通り任せた。こちらは第一陣として通信機の設置やら固定具の設置場所の策定やその準備諸々を進めておく」

「わかりました」


 今回調査するのは大空に浮かぶ遺跡だ。なのでその関係からいつもの遺跡調査とは違う点があり、その事前準備も第一陣の調査隊の仕事だった。

 なお、固定具というのは大地との相対位置を固定させて不用意に流れてしまわないようにするための魔道具で、これは流石にマクダウェル公爵家が用意したものだ。その輸送艇の案内やら護衛も冒険部の仕事になるのであった。というわけで、カイトはその後も準備を進めて出立に備えるのだった。




 さてカイトが桜と用意の確認を行って翌日の朝。彼はというと、竜騎士部隊を先導する形で飛空術を使って飛翔。目的地である大空に浮かぶ遺跡を目指していた。


「なんってか……むっちゃ怖いっすね。この光景……」

「何だ、急に」

「いや……なんか後ろから飛竜の群れに追われてるって考えるとちょっと怖くなりません? いや、飛竜達も俺らの大事な仲間なんっすけど……」

「ま、まぁ……わからいではないが」


 ソラの言葉に瞬も後ろをちらりと見て、自分達を追従する形で飛んでくれている竜騎士部隊を見る。今回、竜騎士達だけでは遺跡まで到達出来ないので先導役として彼らが居るわけであるが、見様によっては生身で飛竜の群れに追われているようにも見えなくない。怖くなっても無理はなかった。そんな二人に、カイトはそちらを見ることもなく告げる。


「安心しろ。バカをしない限り飛竜達が襲ってくることはない。本来、竜種は頭が良いんだ。繁殖期を除けば馬鹿なことさえしなければ攻撃されることはない」

「わかってるよ。でもそれでも、って話」

「まぁ、それはわからないではないが……お前なら大抵の竜種は生身でも勝てるだろうに」

「そうだけどさ」


 それでもって話なんだよ。カイトの指摘にソラは同意しながらも、そんな風に告げる。というわけで、そんな雑談を繰り広げながらも飛翔することおよそ数十分。カイト達は遺跡が保管されている結界の境目までたどり着く。


「これは……うん。私も見たことがないね」


 到着して早々、今回の調査に同行していたルークが興味深い様子で目を見開く。どうやらこの結界の術式はルークも知らないらしい。とはいえ、これにカイトは驚きはなかった。


「だろうな。先にユリィ達に聞いたが、この遺跡に生えていた樹木はエネシア大陸の物ではないらしい。であればこの遺跡もエネシア大陸の……より具体的に言えばルナリア文明の物ではないだろう。シャルもウチじゃないわね、と断言してたしな」

「女神が言うのなら確実か……なるほど。興味深いね」


 こんな魔術があるのか。ルークは結界を解析しながら、感心したように数度頷く。とはいえ、いつまでも感心してもいられない。なのでカイトはルークに問いかける。


「感心している所悪いが、そいつを解くことは出来るか?」

「出来るだろうね。少しだけ時間は必要だろうけど」

「頼む。こちらは表層部の調査を行うのと、マーカーを設置して本隊がたどり着けるようにしないといけないからな」

「わかった。同行させてもらった以上、働かせて貰うよ」


 今回、ルークはよく使われる冒険者の協力者という扱いで依頼に含めておいた。なのできちんと報酬も払われる――彼の個人資産からするとはした金だが――ことになっていたので、きちんと働かせるつもりだった。というわけで、そんな彼を横目にカイトは以前『サンドラ』で使った魔術を斬り裂く刀を取り出すと、一瞬だけ意識を集中。結界を斬り裂いた。


「はぁ! よし」

「……別に私が解析しないでも良くないかな?」

「こいつは一時的に斬り裂けるだけだ。解除しているわけじゃない。何よりオレの個人技だしな」


 当たり前であるが、こんな芸当が出来るのは冒険部ではカイトぐらいなものだ。その彼が何度も本隊の出入りに立ち会うわけにもいかないだろうので、当然の話だった。というわけで一同はカイトが開いた裂け目から結界を通り抜けて、中へと入る。


「ソラ。先に目星を付けておいた一角に通信機と固定具の設置の準備を。先輩は周囲の警戒を」

「「了解」」

「よし……瑞樹。竜騎士部隊には結界の内外を警戒させてくれ。通信機が使えることは確認しているから、万が一の場合はそれで」

『わかりました……地上部隊の方があと半時ほどで到着すると報告が入りましたわ』

「了解した。こちらでマーカーを地上にも設置する。地上部隊の野営地設営の指示はそちらで頼む」


 今回、どうしても場所が大空という事があり持ち込める物はかなり制限されている。そして先に言われていた固定具はその性質上地上に設けねばならないため、どうしても地上側にも拠点が必要になっていた。その地上側の拠点の設営道具などは地竜達が運んでいたため、そちらの指揮やら指示やらも必要だった。というわけで、カイトは一旦結界の境目に移動する。


「さて……」


 外周部の探索に表層部の探索。どちらかで何かの答えが出てくれるとありがたいんだが。カイトはそう思いながら、大空に浮かぶ遺跡を見る。所々苔むして蔦が生い茂っているが、一部にはきちんとした石材が見て取れた。その中には何かしらの意匠が施されている物もあり、この遺跡が何かしらの意図を持って作られている事が察せられた。


「……太陽と……いや、太陽ではないか……? だがあちらは……わからんな。モヤ……のようにも見えるが……」


 なんだろうか。カイトは施されている意匠を見ながら、この遺跡がどういうものかを考える。これは古代の遺跡だからというわけではないが、やはり意匠が具現化されていたりで一目でわかるものもあれば人目ではわからないものまで様々だった。と、そんな彼にルークが声をかけた。


「何かわかるかい?」

「わかれば苦労しない……お前の方こそ何かわかるか?」

「あれは太陽……と思うぐらいさ」

「それはオレも思ったがな……それぐらいであとは波? 風? 渦……? 良くわからん」

「まぁ、これからの調査に期待という所かな」


 まぁ、まだ何の調査も出来ていないのだ。一見すると二人が太陽と判断した意匠でさえ、太陽でない可能性はあった。すべてはこれから。二人がそう結論付けるとほぼ同時に、今度は瑞樹から通信が入る。


『カイトさん。地竜部隊がマーカー付近まで到着したと。ただこれ以上はマーカーの情報が定まらずわからない、と』

「了解した。これより仕事に取り掛かる」


 どうやら仕事の時間らしい。カイトはそう言うと、ルークに一つ頷いて降下していく。というわけで、一同は遺跡調査のための準備に取り掛かるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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