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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2870話 大空遺跡編 ――大空に浮かぶ物――

 ソラと瞬の二人が数々の事件を経ながらもその裏で数ヶ月に及ぶ練習を重ねてついに習得した飛空術。その有用性を示すべく即応部隊として動いた二人を監督する形で同行していたカイトであったが、そんな彼は救援の帰路になにかを見つける事となる。というわけでソレイユとティナに支援を要請した彼は二人を連れて上昇すると、一直線にどこかを目指して移動していた。


「何があったんだ?」

「まぁ……時々見付かる物なんだが。見た方が手っ取り早いし、すぐに見付けられる。それにま、こんなのは最初に教えられるより知らない方が面白い」

「「面白い?」」


 さっきからどこか警戒しながらも楽しげなのはそれ故だったのか。ソラと瞬はカイトの反応に首を傾げながらも、こう言うという事はさほど危険性は無いのだろうと安堵する。というわけで、三人は暫く飛翔していくわけであるが、唐突にカイトの姿がかき消えた。


「「カイト!?」」

「すまん。ちょっと待ってろ……はっ」


 かき消えたカイトに仰天したような声を上げた二人に対して、声はすれども姿は見えず状態のカイトがどこからともなく小さな吐息を漏らす。そうして何かが斬り裂かれる本当に小さな音が響いて、彼の姿が現れた。


「なんだ? これは……」

「結界……っすかね。にしちゃぁ、排他的じゃないっていうかなんていうか……」


 カイトにより生み出された空間の裂け目を見ながら、ソラも瞬も困惑を露わにする。見えた先にはカイトが居る以外に取り立てて変な所は見受けられなかったが、なにか明らかに普通ではない様子は見て取れた。


「天然自然の結界だ……いや、より正確に言うのなら結界もどきか」

「結界もどき?」

「力場として結界みたいになっているだけで、完全に結界みたく排他的に他者を寄せ付けないわけでもない。さりとて普通の空間のように普通に入れるわけでもない……いや、詳しい説明は後だ。裂け目が閉じる前に入っちまってくれ」

「お、おぉ……」

「ああ……」


 何が何だかわからないが、とりあえずカイトの指示に従う他二人にはない。というわけで、カイトの斬り裂いた空間の切れ目を通り抜け、結界もどきの中へと二人は入る。そうして、二人は中にあった物を目の当たりにする事になった。


「なんだこりゃ!?」

「巨大な……遺跡か? これは」

「遺跡……か。そうだな。そう言うのが正しいかもしれん。まぁ、遺跡か迷宮(ダンジョン)かは調べてからになるだろうが」


 見えた構造物にソラが声を上げ、瞬は本当に見たままを告げる。見たままを言えば朽ち果てた構造体。但し、空を飛ぶ構造体だ。と言っても例えばレガドのように何かしらの事情で滅んだかつての高度な文明を感じさせるものではなく、例えば地球のマチュ・ピチュのように古代の文明を感じさせるものだった。というわけで、三人はひとまずその苔むし草花が生い茂った地面に降り立つ。


「っと……うん。ティナ。足場はしっかりとしている。どうやら幻影で構築されているわけではないらしい」

『そうか……どこからか何かが流れてきたか、それとも元々あって気付かなんだか』

「それは考えにくいだろう……どこからか流れてきたパターンだな」


 足の裏に返ってくる確かな感触を感じながら、カイトはティナの言葉に一つ笑う。そうしてこれが幻でも偽物でもない事を確認した彼は、改めて大空に浮かぶ遺跡を見る。


「分離したかこれだけだったかは不明だが、少なくとも放棄されてからかなりの年月は経過していそうだ。千……二千……詳しくはわからん。とりあえずこっちに推進装置などはなかったが……」

『浮力に移動力が加算されておる可能性もある。推進装置が無いのであれば、龍脈に乗せて移動しておった可能性もあり得るじゃろうて』

「それはあり得るな……うん。比較的大きめの龍脈が近くを流れている。逆向きに辿る事は出来るか?」

『やっておこう。もしそれが剥離した部分であるのなら、龍脈を辿れば大本が見付かるやもしれん』


 まぁ、剥離した部分でない可能性もあるので無駄足になる可能性もあるがのう。カイトの問いかけに頷いたティナであるが、笑いながらそうも告げる。こればかりは調べねばわからない事だった。


「で、どうする? 運べと言われりゃ運べるが」

「「え?」」


 今さらりととんでもない事を言わなかったか。ソラも瞬もこの遺跡を運べるとのたまうカイトに耳を疑う。が、こんなものはティナにとってはさして不思議のない事だったらしい。


『いや、やらんで良い。マクスウェルからさほど遠いわけではない。それにどのような機構があるかもわからん。下手に動かさんでも……いや、動かさぬように固定はせねばなるまいが、こちらから動かす意味はなかろうて』

「わかった……調査に関してはどうする? 流石にこいつの調査に初手に軍は動かしたくないが」


 いつもの事であるが、未知の遺跡の調査は冒険者が請け負う事が多い。彼らの方が対応力に優れており、被害が減らせるからだ。なので順当に行けばこの遺跡も冒険者に調査を発注する事になるはずだった。


『そうじゃのう……まぁ、ウチで請け負わせるのが一番順当じゃろうて。但し場所柄やらもあるから、動かせる人員は限られるじゃろう』

「竜騎士部隊の行動半径の中で助かった、という所か」

『そうなるのう。ただそれでも限度はあろう。着陸など出来そうな地形はあるか?』

「それはこれから探してみる……少なくとも飛空術で降りられる様子だし、不審者が近付いても防衛装置などが働いた様子もない。先輩達でも反応しない所を見ると、停止しているか存在していないかの二択で良いだろう」


 今回カイト達が見付けた遺跡であるが、残念な事に大規模な人員の輸送などを行えるような飛空艇が着陸出来る場所はなかった。なのでこの時点で人海戦術は使えないし、そうなると小規模な輸送が出来て小回りが利く竜騎士部隊の出番だった。こういった使い分けが出来る点は冒険部の利点と言ってよかった。


『そうか……ソレイユには監視させておるんじゃったな?』

「ああ」

『ならば監視はそちらに頼むとしよう。余はこれからギルドホームに戻って調査の準備などなどを進める事にしよう』

「頼む。こいつを放置は出来んからな……ああ、それと屋敷の奴に頼んでこの遺跡の発見報告などが本当に出ていないか確認させてくれ。調査しているのに再調査は時間と金の浪費だ」

『あいわかった』


 見付けていないなら調査するしかない。だが同時にすでに誰かが見付けていて調査もされていてカイト達が知らないだけなら別に問題はなかった。というわけでその場合は放置する事を決めたわけであるが、それはあくまでも発見済み調査済みだった場合だ。なので現時点では未発見と考えて行動する事にする。


「よし……二人共、話は聞いていたか?」

「ああ……とりあえずウチで調査……するのか? これを」

「ああ。基本未発見の遺跡の調査は遺跡探索を専門とするギルドに依頼が出される。マクスウェル近郊なら普通に考えればウチだな」

「それは疑問はないが……」


 瞬も未発見の遺跡の場合にどういう流れが取られるかはわかっている。わかっているが、それでもこの大空に浮かぶ遺跡まで請け負うのかと若干頬を引きつらせていた。これにカイトも若干苦笑いではあった。


「しゃーない。オレも何ら一切手がなければ別に依頼するか、と思ったが。手がある以上……というか、ウチ並に手段が整っているギルドもまぁ珍しい。ウチが請け負うのがベストだ」

「竜騎士部隊か」

「そ……自前で竜騎士部隊なんて持ってるギルドなんぞエネフィア全体を見回しても珍しい方になる。飛空艇が使えない以上、これはもうしゃーない。下手をすると専門じゃなくてもウチが指名された可能性は高いだろうな」


 どうやら今回ばかりは遺跡探索を専門としているという点ではなく、竜騎士部隊の存在が決め手になったらしい。そしてこれに関しては瞬にもソラにも理解出来る話であった。


「まぁ……これだもんなぁ……普通来れないって」

「ああ……で、これからどうするんだ? 流石に中まで入るとは思わんが」

「流石にな……が、表層部の調査だけはしておきたい。どこに着陸できて、どこに拠点を設けられそうか。それぐらいは調べておかんと部隊の編成や資材の調達も出来ん。が、同時に別行動するのも危険だ。二人はオレに付いて来てくれ。わかっているだろうが、なにか見付けたら即報告を」

「「了解」」


 カイトの指示に二人が即座に了解を口にする。そうして、三人は突発的ではあったものの大空に浮かんでいた遺跡の表層部の調査を開始するのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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