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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第十三章 英雄の再来

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第270話 再会 ――手掛かり――

 すいません。前回の次回予告は誤字でした。『再会』が正解です。

 カイトがアウラと再会した翌日。カイトは朝日によって目が覚めた。どうやら、室内が暗闇で覆われていたのは、夜だったからの様だ。


「あー……無茶苦茶けだるい……天族だと思って油断した……はい?」


 眠るアウラを起こさぬように、カイトが身を起こす。そうして、目に入った光景を見て、愕然とする。そして一度頬をつねり、痛みがあったが、それでも夢と判断した。


「あー、寝ぼけてんな、こりゃ。寝よ……」


 そう言うと、カイトはもう一度ベッドへと倒れこむ。しかし、現実逃避と気付いて、もう一度頬を抓る事にした。


「うん、夢じゃない。いや、まあ、こりゃない」


 改めて頬をつねり、夢では無い事を再度確認して、カイトは周囲を確認する。だが、彼が夢だと思いたいのにも理由があった。そこには、あまりに見慣れた物が多すぎた。

 とりあえず状況の精査を行おうとして、首輪が繋がれていた事に気付いて、まずは魔術で編まれているらしい首輪の解析を行う。


「……高度な魔術で編まれてるな。なら……はっ」


 カイトは小さく気合を入れて、膨大な魔力で力技で鎖を切断する。そうして鎖を切断して、今度は同じ要領で首につながっていた首輪を切断すると、脱がされた服を着る。そうして、室内の確認を今度こそ行なう。


「こいつ、中のセーブデータとか再現できてんのかな。本は……全巻揃ってんな。あ、これ、新刊か? 続き気になってたんよーっと、ラッキー」


 そう言ってカイトは暫し読書を楽しむ。そして、読破したところで、本棚が増えている事に気づく。それから暫く、カイトは本題も忘れてぼんやりと現実逃避を行う事にする。


「ん? 本棚は増えてんな……もういい加減現実逃避はやめるか……おい、アウラ! 起きろ!」


 が、数冊漫画を読み終えると、やはりこのままではいけないと思ったらしい。とりあえず、事情を聞かねば始まらないので、カイトはアウラを揺り動かし、起床を促す。


「うぅん……うぅ? おー。カイト、おはよ」

「ああ、おはよう。それで、この部屋に弁明は?」

「……どこか変?」

「いいや、全然。全くもって、変でない……オレの部屋である事を除いてな!」


 カイトの怒号が、実家にあるはずのカイトの部屋に響き渡る。そう、今現在カイトが居る部屋の間取り、そして調度品は何故か増えている物――尚、これらはカイトの弟妹がカイト転移後に集め、置き場所に困って新たに置いた物――を除いて、カイトの地球にある自宅の私室が再現されていたのであった。彼が現実逃避をしたくなるのは、ある意味当然と言えた。


「おー、良かった、再現出来てた」


 が、そんなカイトに対して、アウラはビシッ、という効果音が似合いそうな勢いでVサインをする。


「何が? いや、どうやった?」


 何が良かったのかはわからないが、とりあえずカイトは遠く離れた異世界の部屋を再現する方法に興味を覚えた。もしかしたら、天桜学園を帰還させる手立てとなるかもしれなかったからだ。


「えーっと……カイトが帰る時に潜ませておいた使い魔から、定期的に部屋の間取りとか内装とか送ってもらった」

「いつの間に! いや、潜ませた! 全然気づかなかったぞ!」


 カイトは勇者として圧倒的な力を持ちつつ帰還して、更には3年強もの月日を自室で起居していたのに、全く痕跡さえ見当たらなかった。

 おまけに近くにはティナも居るのだ。彼女も何も言っていなかった事を思えば、彼女も気付いていたとは、思えなかった。それ故に、カイトは目を見開いて、大いに驚いていた。


「当たり前。活動は周囲1キロ以内に居ない場合、且つ使い魔等の反応が無い場合に限らせた。後……カイト、こまめに部屋は掃除したほうがいいよ?」

「はい、すいません」


 アウラの言葉に、カイトは即座に謝罪した。意外かもしれないが、カイトの部屋は基本的に整理されていない。常にゲーム機は数台出っぱなし、コントローラはそこら辺に放り出している。更に、漫画や雑誌が散乱しているので、多少物が動いた程度では、気付かなかったのだ。

 アウラクラスが使う使い魔であれば、近くにいても休眠状態にされては、気付きようがなかったのである。尚、基本カイトが進んで掃除するのは、年末年始とお盆等の長期休暇でぐらいであった。


「ごめんなさい……基本ユハラとかに任せっきりの癖がついちゃったんです……」


 どこか落ち込みながら、カイトが勝手に言い訳紛いに自白する。基本的に公爵であるカイトは、部屋の掃除を自分ではしない。専門のメイドさんが居るのに、わざわざ自分でする必要が無かったのだ。おまけに、彼女達の仕事を奪う結果にも繋がってしまう。

 その結果、あまり掃除しない癖がついてしまったのである。ある意味、贅沢をしなければならないが故の悪癖だった。


「おー、おねえちゃん、素直な子は大好き」


 そう言ってアウラはカイトの頭を抱きしめ、グリグリと正座するカイトの頭を撫でる。カイトが反省している時の、昔からの癖であった。尚、身体が大きくなった今、顔にかなり柔らかい感触が当たっている。

 そうして暫くその感触を楽しんでいたカイトだが、ふと思い直し、顔を上げた。が、アウラの胸の成長率が良かった為、彼女の胸に埋まる結果になる。


「……って、むごっ! ……ちょ、ちょっと離れて……その使い魔は今も部屋に居るのか!」


 柔らかな感触を楽しんでいたカイトだが、それ以前に聞くべきことが有る事を思い出したのであった。この部屋は、カイトが居なくなった後の状況が再現されている。つまりは、カイト達が居なくなった後の状況も把握出来ている、ということに他ならなかった。


「おー?」


 アウラは首を傾げるが、少しだけ目を瞑って確認を始める。


「うん、居る。と言っても、世界間の時間差で、映像が送られてくるだけだけど」


 目を閉じて暫くした所で、アウラは頷いた。ちなみに、それまでの映像はカイトが居ない映像なので、アウラとしては常に臍を噛んでいたのだが、それでもカイトの現状を資料としては重要なので、全て保存している。多重にコピーまで取って。


「なら、アウラ! 今のオレの部屋の状況はわかるか!? 外の状況は!?」


 そうしてアウラが居る、と断言したので、カイトは身を乗り出して、アウラに更に問いかける。当たり前だが、カイトとて、地球の現状を満足に知る方法は少ない。その少ない物にしても自身の正体の露呈の危険性があったりと様々な制約から使えていなかった。


「待って、映像記録確認するから……カイトの部屋は……うん、最後に見た時と変わって……あ、女の子が入ってきた……ちょっとセミロングのポニーテールの女の子。大体15歳ぐらい。服は……うん。普通の服。時々、入ってくる子。誰?」

「浬か!話しただろ?妹だ……15歳ぐらいだと、そんなに時間は経過していない、か」


 カイトの妹の浬は、カイト達が消える前で丁度中学三年生、つまりは15歳ぐらいで間違いが無い。それにカイトはそこまでの時間が経過していない事を見て取って、とりあえずホッと一息ついた。なので一度落ち着くことにして、更に問いかける。


「服は? 厚着か?」

「ううん、結構薄そう」

「なら、夏あたりか。ありがたい。今は殆ど時間に差が無い状況だったのか」


 服装から、カイトは現在の地球の大凡の季節を把握する。カイト達が転移した当時の地球は5月。まだ薄着には早い次期だ。それを考えれば、少なくとも、まだ地球では三ヶ月程度しか経っていない様だ。此方も丁度夏入りであることを考えれば、現在の地球とエネフィアでは殆ど一年の誤差は無いだろう。


「……あ、なんか変な箱持ってった……このぐらいの。なんか表紙には綺麗な絵が書いてある。時々持ってってる」


 そう言ってアウラは縦20センチ、横15センチ、厚さ2センチ程度の薄い箱を指で示す。それを見て、カイトは溜め息を吐いた。


「あ? 多分ゲームソフトだな。あいつ、中身入れ替えるから面倒なんだよなー。直して返せよ」


 ふと思い出した妹の厄介な癖に、カイトが愚痴る。が、それはどうでもいいと思い直す事にした。


「っと、それは今はどうでもいい。使い魔が居るのはオレの部屋だけか?」

「一応数体放って、カイトの家でカイトが最も居る可能性の高いところに潜ませてる。リビングっぽい所と、台所っぽい所。後は……うん。それだけ」


 何故か後は、と言って、強引にアウラは無かった事にする。少し疑問に思ったカイトだが、その2つぐらいがカイトの家族が通常居る重要な場所なので、スルーする。

 尚、アウラが言い淀んだ場所は、お風呂である。ここだけは、多少のリスクを犯して最高性能の隠密性を有する使い魔を、配備したのであった。湯気の所為ではっきりとした映像が取れないことをアウラは嘆いていたりするが、それは横に置いておくことにする。


「リビングを」

「えっと……さっきの子より更に小さな子がなんか映像見てる。ニュース? だと思う。政治家とか書いてあるから……天城 星矢? 首相って書いてある。なんか、西暦20XX年の夏に起きた台風被害の一回忌に訪れた際の、って」

「ソラの親父さんが総理のままで、西暦20XX年で一年前ってことは……」


 カイトが何に注目しているのかを読み取って、アウラが重要と思われる情報をピックアップする。元々彼女が観察する為だけの物だったので、カイトは映像の共有が出来ないのがもどかしかった。


「あ、映像が変わった。一年前の、7月14日撮影って書いてある」

「やっぱ、三ヶ月ぐらいか……助かった」


 そうしてほっと一息吐いた様子のカイトに、アウラが笑みを浮かべ、更に見えた小さな女の子についてを問いかける。


「おー、おねえちゃん、役に立った。で、この小さな女の子は? 弟さん?」

「いや、女の子なのに弟って……多分、母さんだ。」

「え?」


 その言葉に、アウラは使い魔から送られてくる映像を再度確認する。どう見ても、中学生の浬よりも幼い少女は、下手をすればランドセルを背負っていても大丈夫な見た目であった。確かに、カイトと似た雰囲気はあるが、どう見ても三児の母親には見えなかった。


「え?」

「いや、多分母親」

「こっちの台所で煮物作ってる人じゃないの?」

「え?」


 家には後は父親と弟しか居ないはずだが、とカイトは記憶をしっかりと確認する。そして更に念の為に、その人物の風貌を聞いてみた。

「ああ、成る程。それ、多分大阪のおばあちゃんだ。何故居るかは知らんけどな」

「多分、カイトのお母さんが倒れて少ししてから来たから、そのお見舞いとかだと思う」

「なに! 倒れた!」


 アウラの言葉に、流石にカイトも少しだけ慌てる。自分の知らないところで母親が倒れられるなど、気が休まらなかったのである。


「うん、数ヶ月ほど前の映像で、倒れてた。なんか電話があって、その後すぐに……で、浬ちゃんが帰ってきて、大慌てでどこかに電話してた。それから少ししてちょっと老けたカイトっぽい男の人が来て、大慌てで何処かに連れて行った。それから数日して、男の人に連れられて帰って来たけど、かなりやつれてた」

「それは何時ぐらいだ!」


 身を乗り出したカイトに少しアウラは仰け反ってしまうが、彼女とて家族の事が心配になる気持ちは痛い程理解できた。なので、アウラは記憶を辿って、カイトの問に答える。


「……多分、地球時間で三ヶ月ぐらい前」

「オレが転移してすぐか……オレとティナが消えた、って聞いたから、か?……運んだのは父さんだな。行き先は病院か? ちっ、事情がわからんのが辛いな……あいつに聞いとけば……把握してくれるはずねえか」


 さすがにカイトも向こうから此方へ情報を送る手段は持ち合わせていない。とは言え、今全員無事であることがわかっただけ、儲けものであった。なので、とりあえずは今この時点で全員なんら変わりが無い事を喜ぶ事にした。が、そんなカイトの言った言葉に、アウラが首を傾げる。


「転移してすぐ?」

「アウラが引きこもってる間に、オレこっちに来てたんだよ」

「え?」


 カイトが既に転移していた、という言葉に、アウラが少しだけ愕然とする。100年掛かりで創り出した研究結果が無駄になったのだから、仕方が無い。まあ、その原因も彼女が周囲の情報を遮断して引きこもって居た、というある意味自業自得なので、仕方がないと言えば、仕方がないだろう。


「どっちにしろ話しておかないと行けないし、力も借りたい。ここらで情報をすり合わせよう。」


 そんなアウラに苦笑しつつ、カイトは二人はお互いの持つ情報を共有しあうのであった。




「ここね」


 カイトが消失して暫く。カイトが目覚める少し前だ。日が傾き始めた頃、メルは冒険部の門戸を叩いた。中には多くの生徒達が既に帰還しており、ロビーで依頼達成の報告の最後の確認を行っている。


「ごめんなさい、誰か居るかしら……あ、結構豪華」


 メルもユニオン支部で聞いてはいたが、改めて見ると、冒険部のギルドホームは規模に見合わず、かなり豪華な物であった。まあ、訳あり物件と聞いているので、安かったのだろう、とメルは考える事にした。そうして、キトラのアドバイスに従って、受付に居る派遣されたユニオン職員を探す。


「あれ……かしら?」


 大勢の冒険者達が動き回るロビーの一角に、受付らしき場所を見つけ、メルはそちらへと向かう。


「あの、ここが天桜学園冒険部ってギルドの受付、であってるのかしら?」

「あ、はい。どうされました? 仕事の依頼ですか?」

「あ、ううん。ユニオン支部長から、ここのカイト、って冒険者を紹介されたんだけど……今居るかしら?」


 そう言ってメルは預かった紹介状をミリアに手渡す。受け取ったミリアは、封書の外側の刻印で、本物と判断し、一度預かる。


「あ、マスターですか? ごめんなさい。新しい人を迎えに行くとかで、今出かけてるんです」

「っ……そう、何時戻るかわかる?」


 今すぐにでも会いたいのだが、新しいメンバーを迎えに行っているのならば、仕方が無い。この規模の弱小ギルドであれば、ギルドマスター自身が新しいメンバーを出迎えに行ってもおかしくはなかったので、メルは疑問に思わなかった。


「あ、多分もうすぐお戻りになられると……あ、桜さん!」


 そうして話していると、ミリアは桜を発見する。桜もカイトと同じく、ミースを迎えに行っていたので、丁度帰って来たと思ったのだ。


「あ、ミリアちゃん、あれ?」


 そうして、桜は受付に何処かで見たことの有る女性が座っている事に気づく。


「なんじゃ、知り合いか?」


 桜の横のティナが、桜の様子から知り合いと判断する。そうしてメルも桜の顔を見て、どうやら数カ月前の一件を思い出し、その時色々と疑問に思った事が納得出来たたらしい。


「あ、貴方は……あ、そっか、あの時登録してたのって……あなた達転移してきた日本人だったの」

「あ、はい。えっと、確か、メルさん、でしたっけ?」

「貴方は桜よね?」

「はい。それで、何か御用でしょうか?」


 お互いにどうやら忘れていなかったらしく、それを確認すると、更に桜が問いかける。それにメルは変な名前のギルドだ、と思っていた事などにとりあえずの合点がいき、本題に入る事にした。


「あ、このギルドって変な名前だと思ったら、あなた達のギルドなんだ。うん、カイトって冒険者を探してるんだけど……」

「カイトなら、当分は依頼で出掛けおった。何時戻るかはわからん」

「なっ……それ、どういうこと?」

「だから、依頼じゃ。詳細は明かせん」


 現状、さすがにティナも余裕が無いので、少しだけ棘の有る言い方をしてしまう。だが、これがいけなかった。どこか不機嫌なティナにあてられ、メルにも不機嫌さが伝播してしまったのである。


「何時戻るの?」

「わからぬ、といったじゃろう。冒険者の依頼じゃ。正確な日時が分かる方が可怪しかろう」


 今頼れるのはカイトだけであるメルは居場所も把握していないティナに、更にボルテージを上げる。


「あなた達のギルドマスターでしょ! それぐらい把握しておきなさいよ!」

「だから、依頼で仕方が無い、と言うておろう! 喩えギルドメンバーとて周知の依頼で無い限りは依頼内容について明かせぬことぐらい、常識じゃぞ!」


 珍しく、ティナが焦りで怒声を上げる。それに、周囲の生徒達が注目し始める。


「っつ……わかったわ! じゃあ、また明日来るわよ! その時には何時帰るかを教えて!」


 そう言って、メルは足早に立ち去っていった。それにティナが少し、やってしまった、という感を滲ませながらも、気を取り直してミリアに指示を送る。そもそも、現状では一分一秒が命取りになるのだ。悔やむ時間はなかった。


「……ミリア、明日朝すぐ、情報取得ランクA以上の生徒を集め、執務室に集まる様に指示せよ」


 ティナは若干興奮が収まったのか、落ち着いた様子でミリアにそう言い付ける。

 情報取得ランクとは、冒険部でギルドの情報を得る際に与えられる権限で、高いほど重要な情報を得られる様になっている。最低はEで、最高はカイトとティナ、桜、瞬のSとなっている。ソラ達上層部や、一部第一陣の生徒のランクはAである。

 これは実は冒険者ユニオンでも同様のシステムを採用しており、組織運営にあたりそれらを参考にしたのである。


「あ、はい……ミリアより各メンバーへ。情報取得ランクA以上の生徒は、明日朝、執務室へと集合してください。繰り返します。ミリアより各メンバーへ……」


 ミリアはティナの指示に従い、放送を利用してギルドホーム内に居る、全ての冒険者へと連絡を入れる。


「桜、行くぞ」

「え、あ、はい」


 そうして、周囲の沈黙を余所に、ティナは桜達を連れて、執務室へと入っていったのであった。

 お読み頂き有難う御座いました。

 次回予告:第271話『墓参り』

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