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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2838話 企業暗闘編 ――囮――

 かつて天桜学園が組織として動き出す際の初期費用として、カイトが主導したヘッドセット型とスマホ型通信機の開発。その結果天桜学園と冒険部は順調な滑り出しを開始する事に成功。同時に今もまた色々な所での資金源として重要な役割を果たしていた。

 が、その技術革新により利益を奪われる事になった企業の一つである皇都通信という企業によりカイト、ひいては天桜学園などが狙われる事になり、彼はその対策に奔走する事になっていた。

 というわけで、その対策の一環として古馴染みの冒険者達と接触したりして皇都に居たわけであるが、ユーディトの助言を受けて彼はちょっとした策を講じて釣りを行う事になっていた。


「良し。じゃあ、改めておさらいだ……いや、あの……そこまでガチガチにならないでも良い……ぞ?」

「「……」」


 明らかに緊張しています。そんな様子の暦とアリスの二人に、カイトは少しだけ乾いた笑いを浮かべる。


「そ、そう言われても……」

「は、はい……というか、私で良いのでしょうか……」

「まぁ……加入してある程度期間が経過している以上、何時かは通らないと駄目だからな。というか、暦はもっと前の時点でやらせておかないと駄目だったんだが」

「うぐっ!」


 カイトの指摘に対して、暦が思わず言葉を詰まらせる。先に述べられていた通り、冒険部では本来ある程度の期間が経過した後は新規加入者の面倒が見れるように小規模の遠征を取らせている。その点で言えば、暦はもうすでにやっていないとおかしいのであった。というわけで、返す言葉のない暦にカイトはそのまま叩き込む。


「流石にいつまでもやらずに、ってなるとオレの弟子って事で贔屓にされているという話が出かねん。本来ならアリスは免除でも良いんだが……」

「俺が是非にと頼んだ」

「……」


 今回の席に同席していたルーファウスがどこか胸を張るように告げる。彼としては正しい事をしたと思っている――実際正しいと言えば正しいが――様子だった。というわけで、そんな彼を恨みがましい目で見るアリスに対して、カイトはわずかに肩を震わせる。


「それはそれとして。アリスもヴァイスリッター家の騎士なのだから、有事の際には指揮系統に組み込まれる事にはなるだろう。一度本格的な隊の指揮を経験していても良いだろう。もちろん、不安なのはわかるから二人にしてるし、そこは他の者とくらべておかしいわけでもない」

「父さんも話をしたらそれは願ってもない事だ、とカイト殿にわざわざ自ら礼を述べていた。ぜひやらせて貰っておけ。俺の時なんて一人で全部やれと言われていたから、その時に比べれば全然マシだぞ」

「……」


 それはそうですが、せめて一声自分に相談があっても良いのでは。アリスは兄の言葉に内心でそう思うが、すでに兄に加えて父、そしてカイトの間で話が纏まっているのだ。今更覆す事なぞ出来るわけもなかった。

 ちなみに、ルーファウスは一人だったというがもちろんフォローに年上の騎士が居たし、率いたのも全員経験豊富な騎士達ばかりだ。そういう意味で言えば、アリスの方が難しい事をさせられると言っても過言ではなかった。


「……取り敢えず逃げられないのはわかりました。というか、カイトさんが出てきている時点で逃げ場なんて無いでしょうし」

「あははは。ま、流石にそこらはな……で、暦。今回の物は剣士としての修行にも役立つ。宗矩殿も言われていたが、自らの剣だけに生きても剣の道は極められん。他者を知る事……即ち他者の動きを見極めその行動理念を知る事もまた、剣の道に進む上で必要な事だ。それで言えば他者を率いる事は正しくその部分を鍛える役割を担う。これもまた剣の道の修行と言えるだろう」

「は、はぁ……」


 そう言われればそう思えるが、なにか詭弁を弄されているような気がしないでもない。暦はそう思うし、実際カイトも若干詭弁を弄している様子が無いではなかった。とはいえ、これも修行と大真面目に言われれば暦としてはやるしかなかった。


「で、もちろん二人にはフォローも出す。万が一の場合、具体的には手に負えない魔物が出た場合でも安心はして良い……まぁ、ぶっちゃければ……おーい」

『はいはーい』

「こんな塩梅でソレイユがぶっ飛ばしてくれる。戦闘面では安心して戦え……てか近すぎるぞ!?」


 カイトが手を振ったのに合わせて、屋上に待機してくれていたソレイユが彼の鼻先を掠めるほどに至近距離を通る形で矢を射る。そんな様子に声を荒げたカイトに対して、ソレイユが笑う。


『このぐらいヨユーだし!』

「やめろ! お前が良くてもオレがこえぇよ!」


 自身がどう動こうと鼻先を掠めるレベルの至近距離を的確に射抜いてくるソレイユに、カイトが再び声を荒げる。そうして少しの間二人がじゃれ合うわけであるが、いつまでもそんな事はしていられない。というわけで、気を取り直した彼が話を進めた。


「はぁ……まぁ、そんな感じで正確無比な狙撃が守ってくれるから安心してろ。もちろん、それ以外にも色々とフォロー出来るようにはしているし、下準備の方はこちらで全部やっている。それに関しての手配はまた別の話になっているからな」

「つまりは……現地の指示だけ、という形ですか?」

「それと共に依頼の達成に必要な知識をしっかりと仕入れておいて、依頼の達成が出来るようにしておく事だな」


 アリスの問いかけに対して、カイトは今回の二人に対する指示を下す。しかし彼はとはいえ、と告げる。


「まぁ、もし二人が今後も指揮系統を担いたい、大規模作戦においての指揮やソラや部長連がやってるような遠征の指揮を担いたい、というのなら全部の下準備からもしてもらうが。そこの下準備を行うのも仕事になってくるからな」

「「遠慮しておきます」」

「おい……」

「あはは」


 カイトの言葉に対する二人の反応に、カイト自身は笑いルーファウスは呆れ返る。とはいえ、カイトとしても二人にそこまでは求めていないし、アリスの父であるルードヴィッヒもまだ早いとストップを掛けるだろう。これで良かった。


「そうだろうし、それで良い。が、二人共今の戦闘力を考えても戦力の中核にはなれる。そうなると、自分ひとりだけ戦っていれば良いわけではない。周囲を守るためにも、というわけだ」

「「……」」


 確かにそう言われればそうだ。カイトの言葉に二人はなるほどと納得する。というわけで、納得を示した二人にカイトは改めて今回の依頼内容と要点を告げる。


「で、今回の依頼内容だが希少な薬草の収集だ。その特異性から、この薬草に関する情報が書かれた資料は個人では手に入りにくい。なのでその資料を持っている可能性が高い、もしくは手に入れられるだろうウチに依頼が出された形となる。資料に関してはウチ、もしくはマクダウェル家の書庫にて確認しろ。書庫への立ち入りについてはすでに許可を取っている。ただ全部ゼロから調べると時間が掛かり過ぎるから、今回は資料の名前だけは二人にメモを渡しておく」

「あ、ありがとうございます」


 カイトから探すべき資料のメモ書きを渡されて、暦が一つ礼を述べる。そうして資料のメモを渡した後、カイトは更に注意点を述べる。


「で……先に述べたと思うが、現状ちょっと揉め事が起きている状況だ。襲撃が万が一起きた場合には、身を守る事だけに注力しろ。そちらに関しては誰が攻めてきても大丈夫な増援は用意してある」

「「はい」」


 暦もアリスも現在冒険部が通信機の開発に関する件で揉め事を抱えている事は聞いている。なのでその点に関しては別口でも増援を手配していたし、それこそがユーディトの話だった。


「良し。じゃあ、二人はこれから3日かけて今回の依頼についての準備を行ってくれ。体調管理に各個人の戦闘の確認……そういった物すべてだ」

「「はい」」


 やれとなれば後は腹をくくるしかない。二人はそういう性格ではあった。というわけで、カイトの指示を受けた二人は早速手配に入る事になるのだった。

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