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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2733話 合同演習編 ――次へ――

 皇帝レオンハルト主導で行われていた合同軍事演習。それも残り一時間という所でカイトは積極的に攻勢に出る事から全体の観察に回る事にして、指揮官の立場から色々な物を観察していた。

 というわけで、その夜。彼は表向き今回実際に動いた五公爵で反省会を行う体で集合。彼とレヴィが確認した有望株の品評会を行っていた。


「と、いうぐらいか。各陣営共に有望株はそれなりには出てくるようになっている」

「ふむ……」

「後は、どうやって調略するかという所かしら」

「ま、それについては各々おまかせという事で」


 リデル公イリスの言葉にカイトは笑う。結局、彼に出来る事は有望株を見出すこと。そこからどうやって自陣営に調略するか、については各々が考えるしかなかった。これにハイゼンベルグ公ジェイクが同意した。


「そうじゃのう……ま、それはそれとして。バルフレア殿。どちらの塩梅としちゃどうじゃ?」

「ああ、まずは演習に参加させて頂いて礼を言う」


 今回は別に夜会のように皇国の裏事情などを話し合う場ではない。なのでこの場にはバルフレアとレヴィも招かれていたのだ。というわけで、頭を下げたバルフレアが続けた。


「おおよそこちらの陣営の問題点は見えた。それを早急に修正し、遠征隊を構築しようと思う」

「うむ。改めてになるが、皇国は今度予定されている遠征隊に関しての協力は惜しまない。ただ人員の供出はできんのはご了承願いたい」

「いや、マクダウェル公をお借り出来ている。その時点で戦力を供出して頂いているようなもの。それ以上は貴国の防衛にも穴が生ずる。やむを得ないでしょう」


 ユニオンが今回の演習に全面的に協力してくれたのは、あくまでも遠征に向けた予行練習の兼ね合いもあるからだ。そして皇国もまたユニオンが主導する遠征に関して、協力を惜しまない事を明言していた。

 それ故に皇国が選ばれたと言っても良かっただろう。カイトが参加出来るのが現状皇国か教国――ルーファウスの縁がある――しかなかった事も大きい。


「ご理解いただき感謝する……で、そちらから見て今回の演習はどうじゃった?」

「まず今回の演習だが……」


 ハイゼンベルグ公ジェイクの促しをきっかけとして、バルフレアが今回の演習で見えた全体的な問題点を指摘する。そうして、それをきっかけとして全員が諸侯ら、冒険者らに見えた問題点を列挙し、それに対する対応を話し合う事になるのだった。




 さて合同軍事演習から明けて一日。演習の後始末を近衛兵団に任せる――これは打ち合わせ済み――と、カイトは冒険部を率いてマクスウェルに帰還。ティナに旗艦艦隊などの修繕を任せると、自身は取り急ぎ瞬らの次の指南を行う事になっていた。


「というわけで、目下の課題はやはり飛空術だろうな。全体的に対空戦闘に厳しい所が多い」

「っぱ、それだよな……」


 カイトの言葉にソラは深くため息を吐いた。何度も言われているが飛空術の有無は機動力に直結する。部隊を率いるのならそこまで重要ではないが、個としての戦闘を行わねばならなくなると途端に重要になる。そろそろ本格的な習得を考えねばいけない頃だった。


「そういえばソラ。お前、金色になったら飛べていないか?」

「え? ああ……神使の力を使うと自動的に飛翔の概念が副次的に付与されるみたいっすね」


 まぁ、飛空術と違うっぽいんでなんかよくわからないんっすけど。ソラは瞬の問いかけに対して、そう答える。そんな彼はそのまま深い溜息を吐いた。


「はぁ……でもまぁ、そうなるかー……とりあえず飛空術かぁ……」

「まぁ、お前の場合は魔導書を探してからの方が良いだろう。魔導書次第では使う飛空術も変えないといけなくなる」

「そっかぁ……まぁ、とりあえずオークションからか」

「そうなるな」


 兎にも角にもソラは魔導書を手に入れないと次に進めない。というわけで、それに向け彼は準備をするだけだ。そしてそうなると、こうなる。


「ソーニャー。ソラの昇格試験の手配、どうなってるー?」

「問題なく手配が終わっています。また昇格の基準に照らし合わせても、十分に昇格も可能でしょう。ああ、それと一緒に瞬さんの手配も終えておきました」

「あ、俺もか?」

「はい……どうせ単なる申請だけですので」


 まぁ、ここらはやはりソーニャはユニオン職員として慣れているのだろう。そしてソラが昇格するなら程なくして瞬もまた昇格の手続きを行うだろう事は目に見えていた。ならば彼女としてみれば別々に手配を掛けるよりも一緒に手配を掛けてしまった方が楽だったのだろう。


「そうか……それならまずは二人共一気に昇格で良いだろう。別に問題はなかったんだよな?」

「はい。瞬さんはそもそもウルカでの活動実績で昇格に必要な功績は十分でした。ソラさんの方も先の<<子鬼の王国(ゴブリン・キングダム)>>を鑑みれば十分に事足りるかと」

「良し……じゃあ、二人はこの後即座に支部に行って昇格試験を受けてくること」

「そうか。わかった」

「おーう」


 ここまで外堀が埋まってしまってはもうしょうがない。ソラも瞬もそんな様子でカイトの指示を受け入れる。とはいえ、それで終わりというわけではなく、昇格試験に関しては魔導書の話が出たから話したというだけだ。話す事はまだいくつもあった。あったのだが、そこで瞬が切り出した。


「ああ、そうだ。カイト。昇格試験の後、少し時間は大丈夫か?」

「ん?」

「いや、バーンタインさんから更に上を目指すなら魔導書を一冊は持っておくべきだ、と言われてな。それもあってルークに話を聞きに行きたいんだ」

「ああ、そういうことか」


 現在瞬の近辺で一番魔術に詳しく、話が聞きやすいのはルークだろう。ティナは非常に多忙だし、瞬としても武術やルーンの世話をしてくれているカイトにこれ以上の世話は頼みにくかったようだ。カイトとしては後進の育成の一貫なので良いのだが、自分の伝手を頼みたいのならそれはそれで良しだった。


「わかった。それに関しちゃどうせソラもライサさんの所に行くだろう? 二人共、それぞれ必要な手配を掛けると良い」

「すまん」

「悪い」


 カイトの言葉にソラも瞬も一つ頭を下げる。というわけで、昇格試験の後についての話を切り上げて、三人は一旦今後を見据えての話に戻る事になるのだった。




 さてカイト達が冒険部の問題点の洗い出しと対応を話し合う会議が終わってから一時間ほど。昼も良い塩梅に過ぎた頃だ。ソラと瞬の二人は連れ立ってユニオンのマクスウェル支部に足を伸ばしていた。理由は勿論、昇格試験を受けるためだ。


「では、今後もより一層のご活躍を期待しております」

「ありがとうございます」


 ユニオンの受付の激励に、ソラは一つ頭を下げる。そうして窓口を後にしたわけであるが、ほぼ時同じくして瞬もまた窓口を後にした。というわけで、ほぼ同時に窓口を立った事に気付いた瞬が僅かに目を丸くして口を開く。


「ん? ああ、お前も手続き終わったのか」

「うっす……あ、手続きって事はそっちも大丈夫だったんっすね」

「ああ。資料が完璧だったから楽で助かりました、だそうだ」

「あはは」


 瞬の言葉にソラも一つ笑う。結論から言ってしまえば、どちらも昇格試験に関しては問題なく通過だった。と、そんな彼が告げる。


「でもまぁ、昇格試験って言うからどんなのかと思ったら。筆記試験も一切無し。抜き打ちでなにかしらされるんじゃないかなー、とか思ったんっすけど……」

「さ、流石にそれはしてこないんじゃないか……?」

「いや、ユニオンも大組織っすから、昇格試験で何かしらされる事があってもおかしくないんじゃないっすかね」


 どうやらソラが二の足を踏んでいたのは、そこらの抜き打ちがあるのではと勘ぐっていたからだそうだ。そして実は正しくその通りではあった。


「勘が鋭いね、小僧」

「カリンさん……どうしたんっすか?」

「いや、仕事が終わったから終了の手続きをしにきただけさ」


 どうやらカリンが来たのは偶然だったようだ。まぁ、彼女は基本ユニオンの支部で依頼を請け負っている。なのであまり出会う事はなかったのだが、今日は偶然依頼の完了報告とソラ達の昇格試験が重なったのだろう。というわけで、そんな彼女にソラが問いかけた。


「で、勘が鋭いってどういう事っすか?」

「ここだけの話だよ? 実はランクA以上ってのはどうしてもユニオンとしても実務的な試験は出来ないから、裏でしっかり調査されるのさ。問題ありってなったら降格処分もあり得る」

「「降格?」」


 聞いたことがない。ソラも瞬も顔を見合わせて目を丸くする。とはいえ、これにカリンは笑った。


「あはは……どうしてもユニオンって組織は目が届かない所はあるからね。他人の功績を自分の物みたいに言ってくる奴が年数人居るのさ。それでも実力がランク相応ならお目溢しがされるんだけど、分相応の奴も居るからね。依頼人と揉める前に厳重注意、って形で降格処分があるのさ。年に一人か二人ぐらいしかそんなバカはいないけどね」

「それで昇格の時に功績が複数個求められたりしてるんっすか」

「そういうこと。それらを洗えばどっかしらにボロが出るからね。ま、お前さんらには関係無い話さ」

「そうっすねー」


 カリンの言葉にソラも笑う。彼は今回の申請にあたって嘘の功績を並べ立てたりはしていない。なのできちんと評価されての昇格だと思っていた。


「ま、とりあえずおめでとさん。偶然通りかかっただけだからなにかはしてやれんが、今度そっち行った時にでも飯奢ってやるよ」

「「ありがとうございます」」


 カリンの言葉にソラも瞬も笑って頭を下げる。そうして、彼らはこれからも問題ない行動を心がける事にして、支部を後にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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