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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2732話 合同演習編 ――高みの見物――

 皇帝レオンハルト主導で行われていた合同軍事演習三日目の午後。長く続いた戦いも残り一時間を切る事になっていたのであるが、『神』の召喚を終わらせ再びエドナと共に遊撃兵として動いていたカイトは冒険部との合流ではなくそのまま遊撃兵として行動する事を決める。

 というわけで、そんな彼が陽動として<<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>が取り付いていた防衛側の最終防衛ラインを切り崩した事により、作戦は攻略側の最終目標となる都市部への輸送艇の突入と要救助者の確保の段階へと移行する。


「ふぅ……流石にここまで切り崩せば、後は大丈夫かな」


 輸送部隊の突入から数分。最終防衛ラインに大穴を空けたカイトは輸送部隊の護衛を<<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>の隊員や諸侯らに任せると、そのまま大穴を埋められないように遊撃を続けていた。

 とはいえ、それも攻略側に所属する諸侯らが最後の一押しと突っ込んできた事により彼が居なくても問題無い状況になっていた。というわけで、そんな彼にエドナが問いかける。


『次はどうする?』

「ま、これだけやれば後は高みの見物ってので良いんじゃね? あんまり目立ちすぎるのもよく無いしな。てか、別に目立ちたいってわけでもないし」


 あくまでも皇国の目に狂いはないのだ、と示せる程度で良い。カイトは自身が他国に向けて喧伝される立場である事をわかっていた。そして同時に本来の正体がバレてはならない立場である事もわかっていた。なので彼はある程度活躍しつつも目立ちすぎない程度で活動を終わらせるつもりだった。


「んー……」


 後は両軍奮戦してくれる事を期待するだけか。カイトは上空から見下ろしながら、両軍の交戦状況を確認する。特に今は<<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>とレジスタンスの戦士達が思い切り戦っている事もあり、それを物ともしないような戦いは限られていた。それを見たいのだ。


『どう?』

「もう少し、派手にやってくれる奴が居てくれれば見付けやすいんだがね。そうも言っていられんか」


 やはり<<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>もレジスタンスの面々も派手に戦っている――敢えて目立つようにやっている所も多いが――ため、見栄えのしない玄人好みの戦いを繰り広げる者たちを探すのは一苦労だった。と、そんな観察を続ける彼の所へ念話が届けられる。


『カイト』

「レヴィか……どうした?」

『いや、戦いはこの調子で終わりになりそうなのでな。貴様が最後の最後で仕出かさないか気になった』

「やってほしいか?」


 現状のカイトはただ武器を編んで攻撃しているだけで、彼当人としては完全にフリーと言って良い。そしてエドナと組み合わせれば彼単騎で市庁舎への突撃も出来た。無論、出来るだけでやりたいとは思っていなかったが。


『やめておけ。私とハイゼンベルグ公を同時に相手取って戦いたいなら話は別だが』

「爺は嬉々として出てきそうなのが、頭の痛い話だ」

『だからやめておけ、というわけだ』


 言葉に反して楽しげに笑うカイトの返答に、レヴィもまた少しだけ笑って首を振る。


「ま、やらんよ。オレとしちゃこのまま高みの見物と洒落込んで、有望株を見付けておきたい」

「そのつもりなら結構だ」

『あら』


 まるで一切の気配もなく現れたレヴィに、エドナが僅かに驚いた顔を見せる。ちなみに、当然周囲からは見えないように次元と位相はズラしている。


「何だ。来たのか」

「高みの見物と言えば悪いが、物は言いようだ……やはり全体を見るには高いところからの方がよく見える。それと、ハイゼンベルグ公には許可は取っている」

「っと」


 レヴィから投げ渡された小型の通信機を受け取ると、カイトはそれを耳に付けて起動させる。すると、ハイゼンベルグ公ジェイクの声が聞こえてきた。


『カイト』

「おう、爺か……そっちの塩梅はどうだ? こっちはやることもないんで、高みの見物と洒落込んでる」

『こちらもじゃ。市街地戦になればなるほど、派手な攻撃はできんからのう。残り一時間で何かをしようにも、出来るほどの時間も残されておらんじゃろう』

「まー、そうだわな……で、どうした?」


 わざわざ通信機を寄越してくるぐらいなのだ。何か用事があるのだと理解するには十分だった。


『そちらにリストを送る。可能であればそれらも見ておいてくれんか』

「おいおい……この乱戦状態の戦場でオレにそれをやれと?」

『できんのか?』

「まぁ、居場所がどこらかわかれば出来るがね」

『無論、それは送るとも』


 カイトの返答に対して、ハイゼンベルグ公ジェイクは軍事演習の運営としての機能を利用――万が一があると困るので出来るようにはしている――してカイトへとデータを送る。


「……りょーかい。ま、直に見て後で品評会しますか」

『うむ』


 今回の演習の目的は二つ。一つは皇国がこれだけの軍事力を行使できる、というある種の諸外国向けのもの。もう一つは皇国内で眠っている芽を探す事だ。特に今回はユニオンが全面協力してくれているおかげで普段よりも探しやすかった。


「レヴィ。市街地側任せて良いか? 万が一の時にそっち居た方が良いだろう」

「そうしよう……何よりそちらにはエドナも居るだろうしな」

「そういう事……じゃあ、行くか」


 カイトはエドナの機動力を活かして、レヴィは魔術師としての力を使って使い魔を密かに飛ばす事にしたようだ。というわけで、二人はそこで分かれて目ぼしい戦士の確認に動く事にするのだった。




 さてカイト達が高みの見物と洒落込んでから更に一時間。市街地戦にもつれ込んでいた戦いであるが、カイトはこれに積極的には関わらず目ぼしい芽がないか確認していた。が、それも戦いの終了と共に終わりを迎えていた。


「っと……リストの半分と少しぐらいは確認出来たかな?」

『こうやってると、昔が懐かしいわね』

「あはは……ま、飛び降りないで良い分だけ楽で良いがね」


 エドナの言葉にカイトは戦いが終わってなお戦おうとする者たち――流石にすぐには終われないため――を見守りながら、小さく笑う。


「まぁでも、昔とは違って為政者側として戦いを見守る事が多くなった……いや、本当は昔もこうやっていなければならなかったのかもな」

『……』


 もしあの時為政者としての視点を持ち合わせる事ができていれば。カイトはタラレバだと思いながらもそう思う。


『……多分、持ってたらもっと目の敵にされていたと思うわよ?』

「そうかもな……ま、良いか。とりあえずソラ達と合流しよう。そっちまで飛んでくれ」

『了解』


 カイトの要請を受けて、エドナが虚空を蹴る。まだ散発的に戦いは続いているが、流石にどこかで切り上げてくるだろう。そうなると高みの見物をしていると悪目立ちしかねなかった。というわけで、ソラ達が居る最前線も最前線のど真ん中の真上まで移動する。


「まだ戦い中か……信号弾も何発か上がりはしたが、流石にこんな前線だと届きにくいか」


 最前線だったからか、どうしても数々の魔術が飛び交い爆発や閃光、轟音が轟いている。冒険部もまだ戦いが続いていたようだ。なのでカイトは余っていた武器を降り注がせて、強制的に戦闘を終わらせる事にする。


「なんだ!?」

「っ! 敵っ……カイトか!」

「はーい! そこまでそこまで! タイムアップ! 先輩も解除!」

「っと! ふぅ……そうか。終わりだったのか」


 武器の雨と共に手を鳴らして声を張り上げ注目を集めるカイトの言葉に、瞬が<<原初の魂(オリジン)>>を解除。カイトから投げ渡された回復薬を口にする。そんな彼の言葉にカイトは頷いて、後方のマクダウェル家の旗艦の上方を指さした。


「ああ……戦闘終了の合図も上がっている」

「……そうか。おい! てめぇら、終わりだ! 終了の信号弾が上がってる!」


 カイトの様子と背後――防衛側でも同じく信号弾が上がっていた――で上がった信号弾に相手方のギルドも演習の終了を伝達。それに伴って両軍腰を下ろして撤収が可能になるぐらいの体力を回復させる事にする。と、そんな所でソラへと相手方のギルドの幹部らしき男が声を掛けた。


「いやぁ、お前さん強かったなぁ……小僧と侮って悪かった」

「あ、いえ……こっちこそびっくりしましたよ。いきなり横から飛び出してくるもんですから」


 まぁ、今回はあくまでも演習だし、倒されたからと死ぬわけでもない。しかもソラ達はどうやら実力もしっかり示したようだ。なので相手方も認めてくれており、どこかスポーツマンシップのような様子があったのはある種当たり前ではあったのだろう。というわけで求められた握手にソラが応ずる。


「ああ、あれが完璧に決まったからちょっと侮っちまった。リカバリ、上手かったぞ」

「あ、ありがとうございます」

「うぐっ……」

「あはは……先輩。もう少し前だけじゃなく周囲も見るようにな」


 少し離れた所で僅かに息を呑んだ様子を見せた瞬に、カイトが笑いかける。おおよそ瞬が最前線を突き進んでいき、まんまと相手方の罠に引っかかったというわけなのだろう。そこにソラがリカバリを掛けて、という流れが見て取れた。


「そうしよう……ん? そういえばお前はどこに居たんだ?」

「ああ、オレは上で輸送部隊の支援を行ってた。あの時点から合流も難しかったし、した所で突破出来てもここぐらいだっただろうしな」

「ああ、一瞬戦局が大きく動いたのはお前だったのか……」


 やはり戦場の一箇所から見ているだけではどうしても見える範囲に限りがある。なので上の艦隊戦に動きがある事が見て取れても、自分達の戦いだけで手一杯だったようだ。


「そういうこと……機動力を活かして遊撃をしてた」

「そうか……そう考えるとやはり飛空術は有用か」

「だな」


 飛空術があれば戦場を自由自在に動き回れるし、何より離脱もし易い。もちろん、増援もやりやすくなるだろう。瞬は改めて飛空術の有用性を認識したようだ。


「っと……そうだ。二人共しばらく休んでおけ。後はこっちで撤収の用意を整えておこう」

「そうか……すまん」


 カイトの言葉に瞬が一つ礼を口にして、そのまま有り難く休ませてもらう事にする。というわけで、その後は瞬とソラはカイトの後始末を任せて少し休ませてもらう事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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