第2716話 合同演習編 ――再出撃――
皇帝レオンハルト主導で行われていた合同軍事演習三日目。そこでカイトは重特機を駆って防衛側を大きく切り裂き、更に重特機をパージして以降は魔導機を駆って防衛側の大型魔導鎧の戦団と交戦を行う事となる。
そんな彼は大型魔導鎧の戦団との戦いをアベル率いるブランシェット家の獣人機部隊の手を借りてなんとか勝利すると、前線を彼らに任せ自身は撤退。空母型飛空艇へと魔導機を着艦し、補給と修理を受ける事となっていた。その合間にティナから報告を受けた彼は政治的な要因を鑑みて午後からは冒険部のカイトとして動く事として、冒険部に合流していた。
「ん?」
「カイト?」
「おう……オレも午後からはこっちに復帰だ」
午後からはどうするべきか。そんな様子で話をしていたらしいソラと瞬に、カイトは片手を挙げて自らも復帰する事を明言する。そんな彼に、ソラが問いかけた。
「あのデカいの? はもう良いのか?」
「流石にあんなデカブツを一日中単独のパイロットが動かせるわけじゃないからな。一応、稼働時間延長のために色々と方策は行っているが……それでも限度がある」
「あー……やっぱお前でも無理なのか」
「いや、オレは出来るが普通は出来ないからオレもやらない、ってだけだが」
「あ、そういう……」
カイトの返答にソラはなるほどと納得するしかなかった。というわけで、疑問に答えた所でカイトが逆に問いかける。
「で、現状どうするつもりなんだ?」
「とりあえずは<<暁>>に足並みを揃えて動こう、とは思っている。その後は可能ならギルド同盟との合流を目指したいが……」
「難しいだろうな」
瞬からの報告にカイトはため息を吐いて首を振る。これに、二人もまた頷いた。
「だろうな」
「ああ……ってなわけで、一旦はアル達との合流を目指そうと思う」
「アル達というよりも、バーンタインさんだが……」
ソラの言葉に続けて、瞬が総司令部から送られてきた地図を提示。バーンタインが居る場所まで自分達の所から一直線に線を引く。それを見ながら、カイトが呟いた。
「流石のバーンタインも<<黒焔武>>の後だとあれだけの冒険者を相手には堪えたか」
「みたいだ……で、ピュリさんにも確認を取ったが、やはり<<暁>>はバーンタインさんとの合流を目指すらしい。それを考えれば、そこと足並みを揃えるのが一番だと思う」
「……そうだな。現状だとウチが単独で動いてもたかが知れている。そして<<暁>>も本家筋しかいないから、戦力を欠いている事は欠いている。どちらも足並みを揃えた方が良いだろう」
どうやら合格点は貰えたらしい。ソラも瞬もほっと胸を撫で下ろす。そんな彼らに、カイトは問いかけた。
「とはいえ、流石に道中は厳しいだろうな。ソラ、魔力と体力の回復度合いは?」
「全快……は流石に言えないけど七割は戻ってる」
「先輩は?」
「同じぐらいだ」
ほぼほぼどちらも全力を出し切った後だ。回復薬等で急速回復をさせはしたが、それも限度がある。ソラも瞬もバーンタインにほぼ全ての力を譲渡していたため、戻るのにはかなり時間が掛かりそうだった。
「ふむ……先輩。<<鬼島津>>は?」
「準備が出来るのなら、か」
「そうか……ならソラ。オレとお前で先輩の支援を行う。先輩は最前線のバーンタインと合流するまで体力と魔力を温存だ」
「俺で良いのか? ソラの方が良いと思うんだが……」
現状、瞬とソラの間に実力差はほぼ無いと言って良い。なので瞬はバーンタインの消耗具合から盾になれるソラを残して、自身が前に立った方が良いのではと思ったようだ。が、これに反論したのは他ならぬソラだった。
「いや、さっき休憩の合間に聞いてたんっすけど、どうにも今の俺だと太陽の力を受けすぎて消耗が一気に早まっちまう可能性があるらしいっす。後、シャムロックさんがこっちへの力の供給きっちまったらそれで終わるんで……」
「流石にそんな事はされないと思うがな」
『それは我も思うが……時折訳のわからぬ事をされる。あり得ないわけでもない』
「それは否定出来んな……それに何より、シャルの影響が出る可能性はある」
<<偉大なる太陽>>の発言にカイトは笑いながらも、決してあり得ないと言い切れるわけでもなかったらしい。そしてそれは彼も想定には入れていたし、シャルロットの影響も考えられた。だからこその瞬であった。
「それで俺になるのか」
「そうだな……とりあえず先輩は<<鬼島津>>の準備を行いながら、前進。ソラとオレで強敵は切り伏せる。それでバーンタインとの合流を目指す。その後は先輩が主軸となり一旦アル達を収容。そこからは流れで、という所か」
「流れねぇ……」
「何か考えられる可能性はあるか?」
カイトの改めての指示を受け、瞬がカイトへと合流後の事を問いかける。これに、カイトはため息を吐いて首を振った。
「あー……ぶっちゃけると一つしかない。その後は地獄だ」
「「地獄?」」
「あのな……オレにバーンタインっていう旗が立ってるんだ。レジスタンス時代の猛者達が狙わないはずがない。なんだったらおまけにアルとルーまで居るんだ。来てください、って言っているようなもんだろ」
「「あ……」」
カイトの指摘にソラと瞬は思い切り顔を顰める。勿論、彼らもある意味では目立つ旗だ。狙われない道理がなかった。
「まぁ、そこから先はガチで頑張って戦いましょう、って塩梅だ。あ、抜けられる奴は抜ける形で。そろそろ都市部取りに行かにゃな」
「それもあるのか……やる事が多くないか?」
「多いが、やらにゃしゃーないんだからやらにゃならん」
瞬の問いかけにカイトは苦笑気味に肩を竦める。まぁ、お互い切れる手札は全て切りきった。後はお互いの増援だけで、それも午後には姿を見せる。そこから一気に決めきるしかどちらも手はなかった。
というわけで、方針を定めた後。三人は更に少しの小休止を挟んで、行動を開始する事にする。といっても、流石に即開始となるわけではなく<<暁>>に提携を申し入れ。足並みを揃えてからとなる。そしてそうなると、<<暁>>との連携の主軸は瞬だ。なので彼はピュリの所を訪れていた。
「なんだ。叔父貴も戻ってたのか」
「あ、はい……どうにもこれ以上あのデカい魔導機を使うのは色々な観点からマズイ、とか」
「あー……あいつは明らかに並の兵士じゃ長時間使えそうにないからねぇ」
納得。ピュリは瞬から聞かされた事情に納得を示す。と、そんな彼女は上空を飛び立ったカイト専用の魔導機の存在に気が付いた。
「ん? それなら今飛び立ったあいつには誰が乗ってんだ? あれ、確か内々に聞いた話だと叔父貴専用機って話だけど」
「え? あ、本当だ……カイト。少し良いか?」
『ん? なんだ?』
「今飛び立ったお前専用機。誰が乗ってるんだ?」
『ああ、あれはホタルとアイギスだ。専用機が最後まで出ないまま、ってのも見栄えがわるいからな』
「あ、なるほど」
カイトからの説明に納得した瞬はそれをそのままピュリへと伝達。ひとまず疑問が解決された事もあり、彼女もそれについては気にしない事にする。
「で、親父と合流するわけなんだけど……合流した後は結構地獄だ。気合い入れていきなよ」
「はい」
ピュリの言葉に瞬は改めて気合を入れる。なぜ地獄かは先にカイトからも言われたばかりだ。それでもバーンタインと合流すると決めた以上、覚悟を決めるしかなかった。
「うし。良い気合だ……おし。とりあえず打ち合わせ通り、私が一発打ち込む。そっからはそっちに任せる。勿論、ウチのも動くけどね」
「はい」
前線まではまだかなりあるが、バーンタインはアルやルーファウスらと共に完全包囲されている状況だ。なのでピュリが一撃を打ち込んで包囲網を突き崩し、それを耐えた猛者をカイト達が斬り伏せバーンタイン達と合流する。それが作戦だった。
「良し……じゃあ、叔父貴に連絡してくれ。こっちも準備は万端だってな」
「わかりました……カイト。<<暁>>側も準備が出来た」
『わかった……支援部隊が先に出る。上は気にしないで良い様に出来るだろう』
「支援部隊?」
おそらくこちらに自分が来ている間にカイトが整えたのだと思うが。瞬はカイトの言葉に小首を傾げる。これにカイトが教えてくれた。
『リィル達だ。あちらも復帰して、一時的に引いていた魔導機部隊と共に再度出る。そちらが上の艦隊やらに対応してくれる事になっている』
「そういうことか」
それは安心出来る。瞬はカイトの言葉に僅かに笑みを浮かべる。というわけで、彼女らの支援に恥じぬ様に瞬は改めて気を引き締め、カイトの号令を待つ。その一方、前線に立つカイトはというと弓を手にしていた。
「なんで弓? こっから結構近接ゴリゴリになりそうだけど」
「それはわかってる。今はまだ使わない。だが、合流するなら包囲の向こう側もなんとかしないといけないからな。そこらを踏まえ、ってわけ」
「あ、そっか……バーンタインさんとかが引こうにも逆にも敵が居るもんな……」
「そういうことだな。その際に撤退出来る様に、こいつが必要なんだ。牽制するためにな」
やはりカイトは色々な手札を持っている事が利点と言えるだろう。この状況下ならこれを使う、という手札を幾つも持っていたが故に敵に予想がされにくいのだ。すると必然対策が立てにくくなり、防がれにくくなるというわけであった。
「良し……」
「そういや、お前用意しておく必要あるのか? 魔力で大抵の物編めるよな?」
「編めるし、こいつは編んでるものだが……編み上げるまでにタイムラグはある。先に準備しておいた方がラグが少ないんだよ。異空間から取り出すだけで良いからな」
「へー……でもよく考えりゃそりゃそうだよな……」
カイトの指摘に今更ソラもそれはそうだと納得したらしい。そうして百本ほど矢を編んで異空間に転送した所で、カイトは作業に一区切り付けた。
「こんなぐらいで良いか……最初の分だけだしな。ソラ。お前の方の準備は良いな?」
「おう」
「よし……じゃあ、行くか」
「おう」
「総員、出撃準備! ティナ。支援部隊を」
『わかった』
カイトが号令を下すと共に、冒険部と<<暁>>のバーンシュタット家による連合が一気に隊列を整えていく。今回、ピュリが後ろに下がっている事もあって前線の指揮はカイトとソラに預けられる事になっていた。そんな彼の合図と共に、リィルを筆頭にした魔導機が一斉に飛び立っていく。
「良し……では、出撃だ!」
「「「おぉおおお!」」」
カイトの号令に合わせて、一同が鬨の声を上げる。そうして、カイト達は一路最前線で包囲されるバーンタインやアル達との合流を目指して突き進む事になるのだった。
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