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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2713話 合同演習編 ――対大型――

 皇帝レオンハルト主導で行われる合同演習三日目。それは最初から重特機と<<黒焔武(こくえんぶ)>>という二つの切り札を切ってきた攻略側が一転して攻勢に出るという二日目とは真逆の状況になっていた。

 というわけで、重特機を駆っていたカイトは交戦開始から今までの経過時間からこれ以上の重特機の使用は危険と判断。交戦中だった<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>艦隊の一隻へと重特機をぶつけるという一見すると暴挙に出ていた。が、その直前だ。眼前にまで迫った戦艦型飛空艇を見て、アイギスが告げる。


「前面装甲パージ! マスター! 行けます!」

「おっしゃ! 例によって例の如く、切り札行くぜ!」


 カイトは重特機の動きを自由落下に任せながら、魔導機の胴体部に仕込まれている魔導砲に火を入れる。そうしてホタルの手によって魔導機と重特機の接続が解除されていくのを知覚しながら、胸の魔導砲を解き放った。


「っぅ……敵艦撃破確認!」

「おっしゃ! 離脱!」

「イエス! 魔導機、緊急離脱! ホタル、外装部は!?」

「問題ありません」


 アイギスの問いかけに、ホタルが応ずる。そして次の瞬間。コア部に格納されていた魔導機が離れて、真っ二つに折れた飛空艇の合間を抜けて地面に着地する。そしてそれと同時だ。落下しつつあった重特機が唐突に全身の飛翔機に火を入れて飛び上がる。


「どうやったんだ?」

「マスターの残していた魔力を使って吹き飛ばしました。重量については魔導炉停止直前に遅延型の重力低減を展開。飛翔から着陸までは……」

「ああ、それぐらいで良い……とりあえず問題無いんだろうからな。まぁ、後の回収はティナに任せておくか」


 密かに地面に着地したカイトは、混乱する<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の艦隊を尻目に地面を強く踏みしめる。


「デカい機体はやはり戦いにくいな。こっちの方が良いや」

「どうしても大きいので反応するまでに僅かなタイムラグがありますからねー……まぁ、それ以前に想定する戦場が宇宙のあれを惑星上で使おうとした時点で駄目なんですけどね」

「そうだな」


 そんな事を言えば魔導機も大概だがな。アル・アジフは内心のツッコミを口にせず思うに留める。とはいえ、大きさであれば重特機の大きさは戦艦を上回っている。なのでそれを隠れ蓑に着地した魔導機にアウィス達が気付いたのは、カイト達が着地して数秒後だった。


「っ! 団長! センサーに反応あり! 反応は先の巨大魔導鎧と同様!」

「何!? だが奴は飛び立ったはずだ!」

「そうですが、反応が残っています! 場所は三番艦があった直下!」

「っ! まさか!」


 そういうことか。アウィスは重特機と魔導機の関連性を知らなかったが、それでもここまで至れば彼の脳裏にはその可能性が浮かんでいたようだ。がばっと顔を上げて後ろを振り向く。が、その瞬間だ。カイトの行動を読んでいたマクダウェル艦隊が、<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の艦隊に向けて横から攻撃を仕掛けた。


「っ! 被害は!?」

「損害無し! 障壁で防げました! 敵艦……っ、マクダウェル家の旗艦艦隊です!」

「旗艦を出してきたのか!? っ、下の大型は向こうに突っ込むなら無視! が、一応対地攻撃を行って牽制はしておけ! 兎にも角にもマクダウェル艦隊との交戦を行う! 連戦だが、気合い入れて行けよ!」

「「「おう!」」」


 もしここでカイトを狙って後ろを振り向けば、その瞬間にマクダウェル艦隊に後ろから攻撃を加えられて手酷いでは済まない被害を負う事になる。アウィスはそれを理解すればこそ、カイトではなくマクダウェル艦隊を正面に据える事にしたようだ。

 そしてそれは正解だった。カイトの狙いは都市部。このまま一気に突っ込んで、突破口を切り開くつもりだった。<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>は眼中になかったのだ。


「マスター。砲撃が来ます」

「わかってる。が、こっちのが速い」

「イエス!」


 どんっ。魔導機が地面を蹴って加速すると同時に、彼らが居た場所に向けて<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の艦隊からの対地攻撃が降り注ぐ。そうして炸裂する魔弾の爆発を追い風として、魔導機が更に加速。一直線に敵の防衛網へと切り込んだ。


「っ、大型!? いや、例のマクダウェル家の新型か!」

「てめぇら、抜かるなよ! マクダウェル家の新型だ!」

「ちっ! この系譜……あの大陸間会議の時に壊された奴の新型か!?」

「となると……敵のエースか! あのデカいのの腕も納得だ!」


 一直線に単騎で突っ込んでくる魔導機の姿に、防衛側の大型魔導鎧の編隊は敵のエースの接近を理解する。どうやら幾度にも渡る魔導機の活躍の中核に居た事により、カイトの専用機はエース専用機として開発されている物かそれに類する物と判断されたようだ。まぁ、間違いではないだろう。


「マスター。前方に敵影多数……どうしますか?」

「どうする? 聞く意味あるか?」

「ノー。全てマスターにお任せします」

「あいよ……与し易いのは?」

「マーカー、出します」


 急速に詰まっていく両者の間で、アイギスとカイトは即座に話し合いを終える。というわけで、その数秒後。外装を展開した魔導機と大型魔導鎧の集団が激突する。その中でもカイトが狙うのは、旧世代機と言われる性能が低い機体だ。


「はぁ!」

『っぅ! やはり性能差は歴然か!』


 前々から言われていた事だが、そもそも魔導機の性能は現行の大型魔導鎧を数段上回る。それが旧世代機との間でなら尚更だ。なので接敵と同時に振りかぶられる大剣に、大型魔導鎧の一機があえなく撃破された。


『が、数はこちらが圧倒的に有利! 旧型は全機、距離を取れ! 旧型では到底追い付けん! 第五世代機以降で接近戦を仕掛けるぞ!』

『『『了解!』』』


 どうしても接近戦は性能が物を言う。故に性能が低い大型魔導鎧では相手にならず、敵の指揮官は性能が低い機体には遠距離戦を。現行や次世代機となる第五世代機以降で接近戦を仕掛け、数の有利で性能の不利を補おうというつもりだった。


「マスター。敵が散開しました。背後に三。左右にそれぞれ二。前面に五」

「あいよ……悪い腕じゃないな」


 指揮官の判断力は高いし、現行機種や次世代機ならまだしも旧世代機ではどうあがいても魔導機の相手にならない事は理解している様子だ。情報収集も怠っていないのだろう。

 更には自分に与えられた機体の性能と役割もしっかり把握しているらしい。最前線ではなく、中団に位置する構えを見せる指揮官機にカイトは称賛を送る。


「可能なら、あの指揮官機を潰したいが……」

「イエス……ですが、おそらく無理かと」

「だな……真っ当に戦うぞ」

「イエス」


 可能なら集団の頭を潰して指揮系統を破壊した後、各個撃破を行いたい所だったんだが。カイトもアイギスもそう思うが、残念ながら相手も精鋭らしい。前線に立つ大型魔導鎧の集団を抜けない事を理解して、堅実に戦う事を決める。そうして、数瞬。僅かに訪れた空白が、カイトによって切り裂かれる。


「はぁ!」

『っぅ! 重い!』

『堪えろよ! おぉ!』

「っ、アイギス!」

「イエス!」


 自身の一撃を防がれた直後に放たれる剣戟に、カイトではなくアイギスが応ずる。そうして肩部に接続された大剣が動いて、横合いに放たれた剣戟を防ぐ。


『!? 動くのか!?』

「はっ!」

『ぐっ!』

「おぉ!」


 打ち合っていた一機を押し出す様にして弾くと、カイトはそのまま肩部に接続した大剣で動きを止めたまた別の一機を正面に捉えて持っていた大剣で薙ぎ払う。が、その直前。大剣に魔弾が激突し、軌道を逸れて間一髪大型魔導鎧の退避が間に合った。


「ちっ……アイギス」

「イエス」


 がたんっ、と何かが外れる音が鳴り響いて、肩部に接続されていたもう一振りの大剣が一瞬だけ宙を舞う。その柄をカイトは手にとって、大剣二振りの双剣士として、今度は弾いた一機に向けて距離を詰める。


「おぉ! っぅ!」

「申し訳ありません! 敵接近!」

「あいよ!」


 襲いかかろうとしたと同時に訪れた後ろへの衝撃であったが、どうやらアイギスが背後からの敵の急接近を受けて強引に制動を仕掛けたらしい。これにカイトは即座に意識を切り替えて、背後から迫り来る敵を正面に捉えた。


『っ!?』

「お生憎様だ!」


 どうやら背後の大型魔導鎧はこのタイミングで自分を正面に捉えてくるとは思っていなかったらしい。見えるコクピットの内側のパイロットの目が大きく見開かれているのが、カイトにもはっきりと見えた。


「はぁ!」

『ぐっ!』


 まぁ、そもそも攻めかかろうとしたのは向こうで、カイトも強引に制動を仕掛けられた後に攻撃を放ったのだ。流石に仕留めきれるわけもなく、カイトも攻撃に攻撃をかち合わせるのが精一杯だった。とはいえ、それでも現行機種と比べても性能差は歴然で、一撃でパイロットの顔には苦悶の色が浮かぶ。


『やはり最新鋭の機体には敵わねぇか!』

「はぁ!」

『くっ!』


 出力を増した魔導機に押されて弾かれて姿勢を崩し、大型魔導鎧のパイロットが苦悶の声を漏らす。絶体絶命。本来ならばそんな状況だ。が、そこに。更に別の機体がカイトの背後から襲いかかった。


「ちっ。数が多すぎるか」

「マスター。左腕魔導砲を」

「わぁってる」

『っ!』


 だんっ、と放たれた魔弾に撃たれ、先に姿勢を崩した一機が大きく吹き飛ばされる。その間にもカイトは背後から襲いかかってきた一機を正面に捉えて、右手の大剣で剣戟を防いだ。


「ふっ!」

『っ、やはり双剣士か!』


 ここまでの戦いでカイトの動きからは明らかに双剣に慣れというものが見て取れた。故にどうやらこの大型魔導鎧のパイロットもカイトが双剣士なのではと疑っており、即座に放たれる二撃目に自ら距離を取っていた。


「アイギス」

「イエス」


 腕をクロスさせるような動きで大剣を肩部に再接続したカイトの後を引き継いで、アイギスが大剣をしっかりと固定。一旦折り畳んでマントの様にして背後からの攻撃を防ぐ盾として使える様にしておく。

 今回は敵に完全包囲されている事から、背後からの攻撃を防げる様にしたようだ。その一方、カイトは刀を顕現させて腰に帯びる。


『何!?』

「残念だが、双剣士でもあるが刀使いでもあってね!」


 距離を取って再度攻撃に転じようとしていた所に、刀使いとしての動きを見せるカイトに先の大型魔導鎧のパイロットが目を見開く。そして、直後。カイトが居合い切りを放って大型魔導鎧諸共パイロットを切り伏せる。


「はぁ!」

『っ! やはり性能差はどうしようもないか!』


 連携は悪くないのだが、如何せん一機一機の絶対的な性能差が存在している。その上にカイトの技量とて侮れない。これに加えてアイギスまで居るので不意打ちも出来ないと来たのだ。指揮官の顔に苦味が浮かぶのも無理はなかった。


『が、まだ数はこちらが圧倒的有利! 一斉に攻めろ! 攻めればまだ勝機はある!』


 まだたかだか一機が撃破され、一機が大きく吹き飛ばされただけだ。前者は流石に無理だが、後者は暫くすれば復帰してくるだろう。なので指揮官は数的優位が取れている間に一機に攻めきる事にしたらしい。総攻撃の指示を下す。

 そうして、正面からは特に近接戦闘能力の高い機体が。左右と背後からはそれぞれ一機ずつが攻め掛かる。そこに更に指揮官機を筆頭にした旧型機による砲撃も加わって、もはや逃げ場なぞ無い状況だった。


「アイギス!」

「イエス! ブレード・ウィング展開!」


 カイトの指示を受けて、アイギスが閉じていた大剣を開いて翼の様に展開する。そうして刀身に宿る魔刃を横目に、カイトは僅かに身を屈める。


『『『おぉおおおお!』』』


 雄叫びを上げて迫り来る大型魔導鎧に対して、カイトは機を見定める。そうして魔弾を両手で編み上げた障壁で防ぎ、数瞬。大型魔導鎧の集団がカイトを捉えた。


「ここだ!」

『ぐっ!』

『きゃあ!』


 魔刃を左右に展開して左右から迫り来る大型魔導鎧二機を牽制。内一機は当たりどころが悪かったのか、魔刃によって大型魔導鎧の脇腹あたりを串刺しにされていたようだ。全壊とはならなかったが、半壊程度の損害を与える事に成功する。そうして二機を弾いてから、彼はそのまま前に出て近接戦闘能力の高い一機と激突する。


『おぉおおおおお!』

「っ! はぁ!」


 振りかぶられる両手剣に、カイトもまた刀を振るって迎撃する。そうして一瞬だけ訪れた膠着であるが、その瞬間を狙い澄ます様にして魔弾が飛来。これにアイギスはウィングとして展開していた大剣を閉じて背後に移動。マントの様にして背後からの攻撃を防ぎ、更にその衝撃をカイトが利用する。


『ぐっ! 正気か!?』

「生憎、正気で戦闘なんざやってられねぇよ!」

『ちっ!』


 自身が撃たれる衝撃さえ攻撃力に転じたカイトに、大型魔導鎧のパイロットが苦悶の色を滲ませる。まぁ、いきなり出力が増したような物なのだ。仕方がないだろう。というわけで顔を顰めた彼であるが、そこをカイトが見逃すわけがなかった。


「はぁ!」

『ぐっ!』

「アイギス!」

「イエス! 胸部装甲展開! チャージ良し!」


 打ち合っていた大型魔導鎧を押し倒したのを見て、アイギスはカイトの意図を理解したらしい。胸部の装甲が開いて内側の魔導砲の砲口が顔を覗かせる。これにカイトが続けて指示を飛ばした。


「そのまま反動で飛ぶ! 空中戦の用意も頼む!」

「イエス! ホタル! 出力の調整お願いします! 絞って最低限の出力で敵機を撃破します!」

「了解」


 せっかく出力の調整に長けたホタルまで居るのだ。それを利用しない道理はない、とホタルがアイギスに出力の調整を移譲。自身はカイトの戦闘面の補佐につきっきりになる事にしたらしい。

 そうして、次の瞬間。押し倒した大型魔導鎧へと巨大な光条が直撃。その反動を利用して、カイト達が大空へと舞い上がる。


『っ! 逃がすな! あの機体はこちらの艦隊の脅威になる! ここで仕留めきる! 更に空中の戦団にも伝達! 増援を求めろ!』


 やはり追ってくるか。カイトは飛び上がった魔導機を追う様に飛び上がってくる大型魔導鎧の集団に驚きはなかった。そうして、戦闘は再び空中へと移り変わるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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