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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2635話 合同演習編 ――開始前――

 皇帝レオンハルト主導で行われる合同軍事演習にマクダウェル公、冒険部ギルドマスター両方の立場から参加する事になったカイト。そんな彼はラエリア帝国からの要請を受けて観覧に参加する事になったシャーナと会合。とりあえずのご機嫌伺いを終わらせると、その足でそのままラエリアから来たという軍の要人との会合を持つ事になっていた。とはいえ、それもカイトは夜の帳が下りた頃には一息入れられる状況になっていた。


「はぁ……ふぅ」

『疲れておるのう』

「そりゃ朝から昼までは視察。昼から夕方までは冒険部のミーティングと後進の育成。夕方から今まで今度は軍の高官やらとの会合……こうもなる」


 ティナの指摘に対して、カイトは改めて今日一日の自分の流れを思い出す。無論、これ以外にも皇帝レオンハルトの出迎えも行ったし、明日行われる予定の皇帝レオンハルトとシャーナの会合――正確には横に控える軍の将軍だが――に警備員に扮して同行するなどの明日からの支度にも追われている。疲れるのは当然だった。


「正直、冒険部のギルドマスター業務だけでも忙しいってのに、この上でマクダウェル公としての仕事までやってると到底時間が足りん。書類仕事をするためだけの分身を作っても、まだ手が足りないからなぁ」

『段々とお主の一番忙しい頃に近づいておるからのう……いや、二足のわらじを履いておる分、かつてより忙しいやもしれんか』

「昔はマクダウェル公だけで良かったが、今は冒険部のギルドマスターとしての業務まであるからなぁ」


 どちらかだけで良いのであれば、おそらく今よりも随分と忙しくなくなるだろう。が、どちらもしているからこそ忙しいのであった。そんな当たり前の話に、ティナも同意した。


『そうじゃのう……余の様に使える物をデチューンしてなんとか出来るわけでもない。お主には負担が掛かり続けるか。それをなんとかしようと思えば引退しかないが……』

「今はまだ出来んなぁ……」


 やはり最低でも一年は自分がギルドマスターとなって色々と差配して、土台だけは完成させてしまわねば。カイトは改めて気合を入れる。


「しゃーない。気合い入れてもう暫くやりまっかね」

『そーせい』

「おう」


 とりあえず今日は自分のやる事は無いし、マクダウェル公として公に動けない彼は開始まで待つだけといえば待つだけだ。というわけで、彼はティナとの通信を終わらせると軽くワインを傾ける。


「良い月だ……明日からは満月……ちっ。惜しいな」


 夜戦が主体になれば本領発揮出来たんだが。カイトは双子の満月をワインに浮かべながら、僅かに笑う。と、そんな優雅な一時を過ごすからだろう。女神が舞い降りる。


「下僕にも関わらず、随分優雅なものね」

「良い月だ。ワインが似合う……ぶどうジュースでも良いがね」

「喧嘩売ってる?」

「ははは……はぁ」


 こくん。カイトはワイングラスを傾けて、酒を飲む。今更だが、シャルロットはあまり酒は得意ではないらしい。格好つけて飲む事はあっても、カイトの様に飲めるわけではなかった。


「良い月だ。一つ踊りたくなるね」

「踊る?」

「明日にしておこう……まだ早い」

「そうね」


 一つ問いかけはしたものの、シャルロットとしても今この時が踊るタイミングではないとわかっていたようだ。今日はまだ満月一歩手前。踊るべき時ではなかった。


「夜攻めてくる事はあるかねぇ……」

「無いでしょう……貴方と私が居て、夜攻めて勝てるとは思わない」

「そうなんよねぇ……」


 これはエネフィアに限らず地球でもそうなのだが、戦士によっては昼と夜で出せる力が異なる事がある。これにはカイトも当てはまっており、意外な事にカイトは夜の方がかなり強かった。まぁ、これは単に最強が更に強くなるというだけなので、昼だろうが夜だろうが最強に違いはなかった。


「真っ昼間の戦いだが……面白い戦いになれば良いんだがね」

「なるわ……お兄様まで参加されるのだもの」

「さいっこーだね」


 シャルロットの言葉にカイトは笑う。これはその通りで、実は今回の演習にはシャムロックとシャルロットの二人も参加予定だ。そしてそうなれば神使の中でも選りすぐりの戦士が参加する予定で、敵側の戦力は十分以上だと言い切れた。


「じゃ、明後日からは張り切って行きましょう」

「ええ……無様は晒さない様になさい」

「はい、我が女神」


 シャルロットの言葉に、カイトは神使として優雅に腰を折る。そうして、二人は今暫くは月を見ながらのんびりと夜を過ごすのだった。




 さて明けて翌日。カイトはほぼ集合した諸侯達の統率を行いながら、同時に各方面に物資の不足が無いかなどのチェックを行っていた。というわけで、そうなるとイリアとのやり取りが必然増える事になっていた。


「わかった。物資の搬送は問題無しと」

『ええ……多分、イリスの方も問題は無いと思うのだけど。ここまで大規模な物資の輸送に関してはあの子は初めてだから少し心配ね』

「それについては手は出してやるなよ。引退してるんだから、お前が出すのは筋が違う」

『そうね……やるべきは背を見せること……というか、なんで親でもなんでもないあんたにそれ言われるのよ』

「まぁ、そりゃそうなんだけどね」


 イリアの指摘は尤もだ。が、そんな所で冗談を言っていられる状況でもなかったのでカイトもイリアもすぐに気を取り直す。


「まぁ、そりゃ良い。とりあえず準備だ準備。物資搬送に関しては手筈通り西側から輸送を行ってくれ」

『わかってるわ。基本は飛空艇による輸送だけど……本隊の到着と同時に陸路による大規模輸送も到着する様にしているわ。私が参加するのもそのタイミングね』

「つっても、お前とは普通にやり取りするんだけどな」

『それは仕方がないわ。今回は演習。そこらの綿密な調整はしとかないと、本番で痛い目に遭うもの』

「まぁな」


 イリアの言葉に応じながら、カイトは一つ頷いた。今回はあくまでも演習だ。しっかりと連携が取れる様に、そこらの打ち合わせや連絡は適時行う予定だった。


「ま、それはともかく。補給物資に関しては任せる。流石にこっち前線でバルフレアやらの猛者相手にしながら補給線の維持は出来ん」

『出来たら正直あんたの正気を疑うわ』

「そんなんで正気を疑われても困るわ……」

『正気で出来る事じゃないわよ』


 まぁ、なんだかんだこの二人も長い付き合いだ。こうやって真面目なやり取りの中にも雑談が入ってしまうのは仕方がない事だろう。というわけでそんな他愛もない事を話しながらも打ち合わせは終わり、イリアは補給物資の集積地に向かう一方。カイトは今度は冒険部の準備に勤しむ事になる。


「ソラ。ユニオンとの調整は?」

『問題無いよ。後、<<(あかつき)>>の人が来たけど、先輩に応対して貰ってる。協力体制を築くのに、って話らしい』

「それで良い。今回のオレ達はラエリア内紛における第一陣と同じ役目だ。向こうも数で応戦してくるから、生半可な兵力だと到達前に削り切られる」

『だよな……こっちはこっちで打ち合わせやっておくけど、何か話しておく事とかは?』

「今の所は昨日のミーティング以外は何も無い。あれば適時連絡する」


 やはり今回の演習の巨大さから、冒険部の上層部。特に実働部隊を率いるソラと瞬の二人――本来はカイトもなのだが彼は別が忙しすぎるので二人に割り振った――も相当に忙しくなってきたようだ。ギルド同盟とのやり取りは勿論のこと、同盟外の申し出も多く寄せられておりその調整やらに相当忙しい様子だった。


「あ、そうだ。そういえばルードヴィッヒさんとは?」

『ああ、挨拶はしたよ。といっても通信機越しで、直にはまだ会ってないけど……』


 カイトの問いかけに、ソラはルーファウスの父であるルードヴィッヒについて言及する。前に言われていたが、今回の演習の教国からの使者は彼になっている。教国からの支援で助けられた関係上ソラも話しておかねばならなかったのである。


「そうか……オレの方もまた話はするつもりだが、何か言われていたか?」

『いや、お前忙しいって伝えたらそうだろう、って納得されてた。また夜会の折りに話せれば、って』

「そうか」


 どうやら向こうが気を遣ってくれたか。カイトはルードヴィッヒの言葉に内心で感謝を示す。とはいえ、それはどうでも良いと言えばどうでもよかった。なので彼は続ける。


「ああ、ルーファウスとアリスには必ず演習前にお父君に顔を見せる様に、と告げておいてくれ。始まると疲れが出るし、演習中に下手に抜けるわけにもな。一応、夜会では会うだろうが」

『もう言ったよ』

「そうか……それなら良い」

『おう……そういえばお前の方は何やってる所なんだ?』

「陛下とシャーナ様の謁見に護衛に扮して参加する用意してる。後、バルフレアとの調整もやってるし、と色々やってる」

『戻れそう……に無いよなぁ』

「ねぇなぁ」


 どうやらソラはできれば戻って手伝ってほしかったらしい。が、カイトの立場上それが叶わないだろうというのは彼も薄々勘付いていたらしく、がっくりと肩を落としていた。


「代わってほしけりゃ代わるが?」

『嫌。絶対お前の方が忙しい』

「正解。確定でオレのが忙しい。まぁ、それでも最盛期に比べれば諸侯とのやり取りを直にやらない分だけマシはマシだがな」

『その代わり冒険部の仕事あるけどな』

「そーなんよね」


 ソラの指摘にカイトは半ばやけっぱちに笑う。というわけで、ソラと現状の確認と自身が下す必要がある判断について判断を下し、次の指示を飛ばしとするとあっという間に時間は経過していた。というわけで、シェリアが現れた。


「カイト様。ご準備のほどは」

「あ、おう。終わってる。ソラ、シャーナ様が出られる時間になったみたいだ。後についてはお前に任せる」

『おう。あ、そうだ。ユニオンからの連絡で、会合の時間決まったって。通信機に詳細送っておくから、そっち確認してくれ』

「あ、わかった。助かる」


 やはりユニオンとしてもここまで大規模な作戦はかなり珍しい事態だ。なので有力株のギルドマスターを集めて会合を開こう、とバルフレアが言っていたのである。

 それにカイトも参加する事になっており、日時についてはバルフレアが調整していたのだ。というわけで、その時間の調整結果に関しては通信機に送られてくるデータを確認する事にして、先にシャーナの護衛を行う事にする。


「シャーナ様」

「カイト……そちらの陛下の準備が整ったとか」

「はい。お手数ですが、ご同行を」

「わかっています……といっても、単に記者向けの写真を撮るというだけでしょうが」

「そうですが……それもまた仕事かと」


 写真を撮られラエリア帝国も今回の演習に興味を持っていると民衆に示すのもまた、為政者として必要な仕事だ。喩えそれがお飾りであったとしても、である。

 というわけで、カイトはシャーナを伴って皇帝レオンハルトの居る皇国軍の旗艦へと向かう。今回は演習ということで、基本的に皇帝レオンハルトはこちらに居るのであった。


「おぉ、シャーナ殿。よく来てくれましたな」

「陛下。お久しぶりです」


 基本、エネフィアでは王の上下関係は在任期間と年齢で決まる。なのでシャーナは在任期間は短いが年齢の面から若干上になっていたのであるが、シャーナの性格上どうしても応対は丁寧になっていた。

 というわけで記者向けの短いやり取りをカイトは見守る事になるのだが、その間に彼は通信機で暗殺者などの状況を確認していた。なんだかんだ護衛の仕事もきっちりこなすのであった。


「シャーナ様狙いの暗殺者は?」

『現在時点では確認されていません』

「そうか」


 今回、カイトが警戒していたのはシャーナの暗殺だ。基本マクダウェル家の最奥に匿われているシャーナを狙う事は不可能に近い。なのでもし暗殺者が狙うのであればこういった公務で外に出るタイミングしかなく、しかも今回は皇帝レオンハルトと揃うのだ。どちらか片方だけでも、と考える不届き者が居ても不思議はなかった。


「警戒は怠るな。陛下もシャーナ様も共にいつ誰から狙われても不思議のない方だ。最後の守りとしてオレは控えるが、何事もなければそちらの方が良い事に変わりはない」

『了解。引き続き警戒を行います』


 今回、カイトがこの場に参加するのは第一にはシャーナとの関係性の既成事実化を狙うこともあったが、万が一の場合にシャーナ、皇帝レオンハルトの両方を守る事が出来る札として有益だったからだ。というわけで、カイトはその後も二人の会談の間護衛の役目を果たすべく動く事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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