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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2623話 合同演習編 ――最後の一人――

 合同軍事演習の開催に伴う準備により、皇都エンテシアに呼び出されそちらでユニオンやらとの調整に携わる事になったカイト。そんな彼はバーンタインと皇帝レオンハルトとの会合の段取りをしたり、バルフレアと皇帝レオンハルトとの予定の調整を行ったりと忙しない日々を過ごしていた。

 そんな彼であるが、それと共に私人として進めていたクラルテからの依頼――イリア関連でない方――をイリアに嗅ぎつけられた事により、夜半に彼女からの来訪を受け苦言を呈される事になっていた。


「はぁ……相変わらずあんた良い酒取り揃えてるわね」

「趣味だからな」


 クラルテに関する話が終わった後であるが、その後は少しの酒盛りをしていた。と言っても当然宴会の様にガヤガヤと飲むのではなく、味わう様に飲んでいた。


「そういえば……結局浬ちゃん達の事はどうなったの?」

「終わってねぇよ。あっちはあっちで学生で隠れて動いてる身だぞ。時間の流れの差やらがあるから、調整も難しい」

「あー……そういえばそれは失念してたわね……」


 カイトの返答にイリアはそこは忘れていた、と顔を僅かに顰める。というわけで調整はまだ暫くは終わらないだろう、と彼女も納得した所でユリィとアウラが顔を出した。


「お話終わったー?」

「あら、ユリィにアウラも」

「終わった?」

「見ての通り、終わったわね」


 アウラの問いかけにイリアが肩を竦める。どうやら二人共この時間のイリアの訪問とあって何か重大な出来事かも、と思い遠慮していたようだ。が、そろそろ終わっただろうと来たのだろう。というわけで、その後は二人を含めた四人で静かに飲む事になるのだった。




 さてイリアの来訪を受けた翌日の朝。カイトは結局アウラの部屋で泊まっていったイリアらが朝から仕事に出る一方で、偽装のため軍服に身を包んだ彼もまた仕事として空港へ向かっていた。理由は言うまでもなく、バルフレア達を出迎えるためだ。


(……あれか)


 カイトは以前の『リーナイト』における総会でも見た飛空艇船団が近づいてくるのを見て、あれが<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の船団なのだと理解する。


(飛空艇の性能は……かなり高そうだな。ワンオフ……か。あの中央の飛空艇はウチの系譜が感じられるが……)


 やはり飛空艇を主軸にしたギルドというだけの事はあり、飛空艇は完全に一品物として作成されているものばかりの様子だった。性能も一般的な飛空艇に比べれば段違いに高い様子らしく、今回の定刻通りの到着もそれ故だと察せられた。と、そんな飛空艇船団は空港の一角に案内されると、中心の一隻からバルフレアが颯爽と舞い降りた。


「よう」

「おう……時間通りに到着か。というより、少し早いぐらいだな」

「やっぱ<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の飛空艇は違うわ。乗り心地で言えばカリンの所のも良いが、こっちも悪くない。武装面も並じゃないしな」

「やはりワンオフなのか?」

「全部、そうらしい」


 カイトの問いかけにバルフレアは後ろを振り向いて頷いた。そうして、彼が教えてくれた。


「確かあの旗艦はマクダウェル製だったはずだぜ」

「そうか。それでウチの系譜に似た様子があったのか……というか、お前一人か?」

「アウィスには先に軍の案内役と話しておく、って言っておいた。あいつもギルドの統率あるしな」


 今更であるが、<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>のギルドマスターはカイトの事を知らないままだ。一応八大ギルドの長なので気付く事は出来る才覚は持っているのだろうが、関わりが無い以上気付ける要素がない。無論、カイトもバルフレアも必要もないのに明かすつもりはなかったので、先にバルフレアは降りてカイトと話をしよう、と思った様子だった。


「<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の総数はどんなもんだ?」

「確か五百人ぐらい、だったと思う……正確な数は知らん」

「ま、そりゃそうか」


 所詮は他所様のギルドだしな。バルフレアの返答にカイトも聞いてみただけ、というような様子があった。それにもし本当に知りたければアウィス当人に聞けば良いだけの話でもある。というわけで、そこらの話を軽く交わした所で、バルフレアが問いかけた。


「で、こっちどんなもんだ? まだ到着してない奴は?」

「フィオとジュリウスの二人はすでに現地入り。バーンタインも先日到着して、皇帝陛下との謁見は終わらせている。後は<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>のギルドマスターがどうするか、という所だが」

「ああ、会うってよ」

「わかった。それで調整を行う」


 ユニオンとしても皇国としても最低限バルフレアさえ謁見すれば問題はない。なのでアウィスに関しては出ても良いし、出なくても良かった。が、やはり八大ギルドの長。謁見出来るのであればして欲しい、というのが皇国側の申し出であり、時間は空けられる様にしてくれていたのであった。


「で、預言者は?」

「ああ、あいつなら……」

「私ならここに居るが」

「だ、そうで」

「あいよ」


 今回、ユニオンから守勢側の軍師としてレヴィが招かれているのは今更だろう。なので彼女も皇国としては謁見して欲しい、と打診していて、彼女側も構わないと言っていた。というわけで、カイトが今回案内するのはこの二人だけだった。と、そんな話をしていると彼らの横にタラップが降りてきて一人の若い男が現れた。


「っと……バルフレア。少し良いか?」

「おう……っと、こっちは」

「カイム・アマツです」

「おう……軍人か?」


 軍で使っている偽名で名乗ったカイトに、若い男は僅かに不思議そうに小首を傾げる。


「ええ……何か?」

「いや……軍の奴にしちゃ、異常に強いなって思ったんだが……ああ、アウィス・グライスだ」


 どうやらこの男が八大ギルドの一角である<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>のギルドマスターなのだろう。カイトは手を差し出したアウィスの手を握りながら、そう思う。

 風貌としてはアイナディスが言及した通り若い男で、年の頃としては三十前後。下手をすれば二十代もあり得るだろうというような若さだった。


「ありがとうございます……それで先ごろユニオンマスター殿から伺いましたが、皇帝陛下との謁見に同意して下さるとの事でしたが」

「ああ。親父と二人で謁見させてもらいたいが……問題は?」

「大丈夫です。こちらもその予定で動かせて頂きます。お時間については追ってユニオンを通してご連絡させて頂きます」


 この親父は実父の事だな。カイトはアイナディスから聞いていた<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の状況を思い出し、そう理解する。

 どうやら<<天駆ける大鳳バード・イン・ザ・スカイ>>の先代はまだ冒険者を引退したわけではないらしく、後進の育成を兼ねて代替わりをした所だったらしい。


「わかった……で、バルフレア。親父が問題なけりゃ先に旗艦以外をエンテシア砦に移動させて大丈夫かって」

「ああ、それなら俺もウィザーも問題ないよ。こっちにはユリィも居るから、船ならなんとかなるし」

「ああ、そうか。あの人、マクダウェル家だったか」


 バルフレアの返答に、アウィスはユリィが皇国に居る事を思い出す。というわけで、そんな話をしたバルフレアがカイトに問いかける。


「確か今ユリィ、皇都に居るんだったな?」

「いらっしゃると聞いています」

「そか……あいつも演習に参加するはずだから、そっちと一緒に行くわ。ここまでありがとな」

「わかった……ああ、そうだ。俺達は基本こっちの飛空艇に待機してるから、連絡ならこっちに寄越す様にしておいてくれ」

「わかりました」


 バルフレアとの話し合いを終わらせたアウィスが、最後にカイトへとそう告げる。そうして一旦はギルドの統率やらで戻ったアウィスを見送って、カイトがつぶやいた。


「随分若いな。三十……届いてるか?」

「まだだったと思う。確か」

「若いな……さっきの親父は実父の事だろう? 怪我とかで引退か?」


 やはり冒険者だ。怪我で戦えなくなって後進に跡目を継がせる、というのは割りと頻繁に起きている。なのでそれ故か、と思ったらしいのだが、これにバルフレアは首を振る。


「いや、先代ならまだピンピンしてるぜ。ただ前の総会の時に歳も歳だから、って代替わりを表明。去年の暮れに正式に代替わりして、今年からは裏方になってるみたいだな」

「なるほどね……組織としちゃ妥当な感じか。腕も中々の物だろうしな」


 どうやら本当にアウィスは最若輩だったらしい。とはいえ、それで侮れるかと言うとそうではなく、貫禄こそないものの身のこなしにはランクS冒険者のそれが見て取れた。

 他にもカイトの内在する魔力の多さにも気付いていた――流石にあれだけでカイトが勇者カイトとは気付けなかった様子だが――様子だし、十分将来性はありそうだった。そう思うカイトに、バルフレアも同意した。


「ああ……多分、後十年もすりゃ八大の長の貫禄が身に付くと思う」

「か……」

「その話はとりあえずおいておけ。カイト、貴様も時間がなかったと思うんだが」

「っと……そうだったな」


 レヴィの指摘に、カイトは気を取り直してこの話題を終わらせる。そもそも彼が来たのはアウィスの判断を確認するためと、バルフレアとレヴィの二人を皇城へ案内するためだ。というわけで、彼は踵を返して空港の外へと向かう事にする。


「こっちだ。外に馬車を用意させている」

「馬車か」

「なんで残念そうなんだよ」

「いや、なーんか珍しいものでもお前の所で開発してないかなー、って」

「あっても皇都にゃ持ってこねぇよ」


 バルフレアの言葉に、カイトは笑って肩を竦める。というわけで、カイトはバルフレアとレヴィの二人を皇城へと案内。その後はすぐにアウィスの謁見の手筈を整えつつ、エンテシア砦に向かう支度を行う事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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