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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第98章 演習編

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第2582話 様々な強さ ――魔武闘――

 皇国主導で行われる合同軍事演習に備え、最終調整を行った冒険部一同。そんな中でソラはカルサイトからの指摘により、自分の苦手とする間合いへの対応を考える事になる。

 というわけでカルサイトの助言から更にカイトへと相談を持ち掛けた結果いくつかの武器の提示を受けると共にオーアへの相談を促され、なんだかんだあって彼はカイトと共にオーアの研究室に居た。


「うーん……本当に色々と作ってるんっすね」

「私らからすると趣味にも近いからねー。後は総大将がこんなのどう、とかで勢い出てやって、ってのも少なくない。ここにあるのは大半そんなんかね」


 次は何を試させそうか。乱雑に置かれている様にソラには見える棚の中から、オーアはソラに合いそうな武器を見繕う。


「へー……うおっ。なんかでかい拳出た」

「ああ、そりゃ前にあんたに見せたロケットパンチの改良型。魔力で出来たでかい拳を発射するって奴だ……威力はピカイチなんだが、同時に反動もピカイチでねー。あんま総大将にゃ受けなかった」

「威力の割に反動がデカい。リコイルの調整ミスってるだろ、それ」

「あはは」


 否定はしないんだ。カイトの指摘に笑うだけのオーアにソラはそう理解する。というわけで、そんな彼女にカイトが改めて指摘する。


「そいつぶっ放した後を考えりゃ、もうちょい反動は抑えて欲しい。次に繋げるのにワンテンポかツーテンポ遅れちまうからな。ソラにやるにしてもそこらは抑えろ。仕切り直しの武器に仕切り直しの効果が薄いんじゃ意味がない」

「そりゃ勿論、再調整はするさ。威力落として反動も落として……色々とやる」

「それなら良いがな」

「なんかこう……奇を衒わないのとか無いんっすか?」


 カイトとオーアのやり取りに対して、籠手を外して返却しながらソラが問いかける。これにオーアは首を傾げた。


「奇を衒わない……? ああ、んー……無い?」

「オレに聞くなよ」

「いや、でもさ。ここらの奴って基本総大将がアイデア出したり、そっから私らがこういうの作ってみるかー、で作ってみただけの試験品も多いだろ? だから奇を衒わないのって皆無と思った方が良いだろ?」

「あー……たしかにウチだもんなぁ……」


 最先端の技術の結晶と言えば聞こえが良いが、言ってしまえば技術的にできる様になったので作ってみよう、で作られた物がここの大半だ。言ってしまえば試作品や実験機。奇を衒うつもりで作ったわけではなくても、結果的にそうなってしまう事が多かったようだ。


「そういうこと……てなわけで基本私の所に来た限りはこういう明らか試作品とか作ってみたで作った奴あてがわれるのは覚悟しとけー……まぁ、わかってるだろうけど」

「……そっすね」


 言われてみればその通りだ。ソラは今まで自身がオーアと関わる中で経験してきた数々の出来事を思い出して、何を今更変な事を言ったのだろうと自省する。彼女というか<<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>技術班を頼った時点で、一般的になっている物が出てくるわけがなかった。


「で、いくつか触ってみてなんか良いのあったか?」

「あ、そっすね……一番最初の組み合わせ。特に右腕の魔銃は有り難かったっすね」

「あれかー……たしかにありゃあんまり奇を衒ってないっていうか……一回魔導機に取り付けてるのをダウンサイジングして魔導鎧に接続できるか、ってやってみただけだからねー。一番取り回しは良いか」

「うっす。あれ、反動もあんまでしたし、連射力も十分なんで足止めぐらいにゃなるかなって」

「ふーん……」


 オーアとしてはあんまり面白くない結論ではあったが、今回はあくまでもソラが万が一の場合に頼る物だ。なのでオーアとしても今回はそっちの方が良いかと思ったようだ。


「……まぁ、良いか。わかった。それならそいつ改良して籠手に搭載してやるから、そいつ外しとけ」

「うっす」

「で、急場凌ぎに関しちゃそいつで良いんだろうけど……今度は急場凌ぎの次をどうするかだね。こいつはじっくり育てていく札だけど……間合いの不利ねぇ……」


 とりあえず急場凌ぎが出来る手札は決まった。となるとその次になるのだが、ソラと共にオーアもどうするかと考える。と、そんな彼女がふと口を開いた。


「……そういや、あんたいっそ逆に何も持たないってのは考えてないのか?」

「何も持たない? 素手ってことっすか?」

「そ、素手。逆転の発想」


 ソラの確認に対して、オーアははっきりと素手を明言する。実際、何も持たない相手への対応として同じ間合いを有するというのは悪い話ではない。そして元々ソラは体格もあったし、体術にも適正はありそうではあった。が、これにソラは難色を示す。


「まぁ……たしかにそいつは考えたんっすけど……まず勝てはしないだろう、ってのと仕切り直しやるには手札として弱いかなー、ってのが難点っすね」

「あー……まぁ、たしかに極めるって考えなきゃキツいか……魔武闘あたりならなんとかなるかもだけど」

「魔武闘? なんすか、それ」


 聞いた事無い名前だ。オーアの言葉にソラは首を傾げる。これに彼女はカイトを指さした。


「総大将がティナと一緒に開発してた武術。動きに合わせて魔術を使って攻撃するっての……結局あれ、完成したのか?」

「へー……って、なんでそんな嫌そうなんだよ」

「いやまぁ……魔武闘はたしかにあるっちゃあるんだけどさ。一応、完成はある程度目処が立ってるし……」


 オーアの言葉を受けて見たカイトの顔であるが、それはなぜかしかめっ面だ。どうやら乗り気ではないらしい。とはいえ、ソラからすると興味を抱いているわけで、気にせずそのまま問いかける。


「どんなのなんだ? その動きに合わせて魔術を、って」

「んー……まぁ、やるけどさ」


 どこか不承不承の様子ではあったものの、カイトは求めに応じてくれたらしい。彼の両手足がわずかに光り輝く。


「魔武闘ってのは魔術と体術の併用だ……だからこうやって手を動かしたり足を動かしたりするのに合わせて魔術を構築し……」


 くるりと一回転する動きに合わせて帯状の魔術式を構築。それを引っ張る様にして、カイトは腕を引いた。そうして、拳を思い切り突き出す。


「はっ!」


 どんっ。カイトの突きに合わせて、突風が吹きすさぶ。そうして更に腕を引いて回し蹴りなどを繰り出す動きに合わせて魔術を構築。踵落としに合わせて雷撃が迸る。


「こんな感じで追撃になる感じか」

「え、すげぇじゃん……なんで嫌そうなんだ?」

「これ使うならちょーぜつ面倒な相手が関わってくるから、そこ覚悟しとけ、って言わないといけないから」

「超絶面倒な相手?」


 何なんだろうか。カイトの発言にソラは首を傾げる。そんな面倒な相手が居るのか。そう思ったのだ。


「姉貴」

「姉貴?」

「スカサハ。オレの体術の師匠」

「……スカサハってあのスカサハ? 確か最近先輩も弟子入りしただか一門に入っただか言ってた……」


 今更言うまでもない事だが、スカサハはケルト神話に名を記す女傑だ。なのでソラとは一切関係はなく、瞬が居るので話には聞いているがその程度だ。詳しく知らなくても無理はない。


「そ……先輩はフリンの弟子だからケルトの一門になる。実のところ、そういう面で見れば先輩はウチでもイギリスに縁が深い人物になるな」

「へー……」


 言われてみれば確かにそうなのかも。ソラは改めて現在の瞬の状況を教えられて、わずかに驚いた様に目を見開く。が、それを理解して彼は思わず笑う。


「でもおかしいよな……先輩って日本でも有数の古い一族の出なんだろ? んで、酒呑童子の生まれ変わりって話だし……なのに先輩自身はイギリスに縁が深いのか」

「そう言われれば確かにおかしいな」


 血統としては源氏の棟梁の血を継いでいるし、酒呑童子という鬼の一族の血も引いている。由緒正しい日本の血統だ。にもかかわらず、当人はケルトの一門に属するのだという。そんな奇妙なつながりに二人は楽しげに笑っていた。


「ま、そりゃ良い。魔武闘は現状、姉貴の手も借りてようやっと完成に近い段階に漕ぎ着けたんだ。的に攻撃をぶつけると同時にルーン文字を相手に叩き込む、っていうのとこの魔武闘はすごい相性がよくてな。というか、体術とルーンの相性が良すぎるんだよ。こうやって激突の瞬間に魔術を叩き込めるから、二重に追撃出来るんだよな」

「うわ……マジかよ」


 通常の物理攻撃による第一撃。その次に続く魔術による第二撃。更にトドメとばかりにルーン文字による第三撃。三段構えの攻撃にソラは思わず顔を顰める。が、ソラはそこではたと気がついた。


「……でもまだ完成してないんだよな?」

「そ……これに今は気を組み合わせる方法を考案中」

「うわぁ……」


 もう確実に自分の手に負えない領域になっている。ソラはカイトからの情報に再度顔を顰める。


「まぁ……たしかに使えれば悪くない手ではあるから、やりたいならご自由に。その代わり確定で姉貴に絡まれる事になるけどな」

「……それつまり、俺もケルト? ってのの一門になるってこと?」

「それは無い。これはあくまでもオレとティナ、姉貴が合作だからな。そして元々はオレ達が作ってたものだから、ケルトは無関係だ……が、使えるとなってあの姉貴が興味を見せないはずがない。ちょっかいは出しに来るものと思え」

「ふーん……」


 やはりソラはスカサハと絡みが無いからだろう。カイトがなぜそこまで嫌な顔をしているのか、いまいちわからなかったようだ。


「……でも一つ思ったんだけどさ。なんでわざわざ体術と魔術を組み合わせようなんて思ったんだ? 相性ってあんま良くないだろ? というか、良かったらそもそも誰かがやってるわけだし」

「ああ、それは簡単で武闘を舞に見立てる事による儀式効果を発生させて、魔術の威力の底上げを行おうって腹積もりだったんだ」

「あ、なるほど……」


 舞と魔術的な儀式が密接な関係にあることはソラも知っていた。なので体捌きをそれに近付ける事で儀式的効果を持たせる事で魔術の威力の底上げをしつつ、素手の攻撃力の増強もしてしまおうとしたのであった。というわけで、カイトが更に教えてくれた。


「だから本当は魔武闘も武術の武じゃなくて本当は魔舞闘。舞う方の()だったんだ。さっき回ったのも舞の一環に見立てたわけだな。それが紆余曲折あって武術の方になって、魔武闘ってなったわけ」

「へー……」


 やはり世界最高峰の戦士達が作っているというだけあって、武術としては相当高度な領域にあるらしい。ソラはカイトからの解説に感心した様に頷いていた。


「え、で、教えてくれんの?」

「……まぁ、使いたいならだが」


 別にカイトとしても秘密にしているわけではないし、そうであるならオーアが教える事もなかっただろう。というわけで、別にソラが良いのならそれも一つの手と承諾する事にしたようだ。というわけで、ソラは一旦カイトから魔武闘を教わる事を選択肢に入れる事にしてサブ武器の選択に入る事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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