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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第97章 魔女達の集合編

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第2527話 魔女達の会合 ――ジーマ山脈――

 マクダウェル公爵家にて農業政策に携わるアンブラからの情報により、ティナの母ユスティーツィアの従姉妹にして現<<魔術師の工房ウィッチーズ・クラフトワークス>>ギルドマスターのティエルンの母であるフィオルンがマクダウェル領西部のジーマ山脈と呼ばれる山に居る事を掴んだカイト。

 そんな彼は別の理由でジーマ山脈へ向かう事になっていたアンブラの護衛としてジーマ山脈へと向かう事にする。というわけで、出発から数時間。小型の飛空艇はその機動力を活かして進み続け、ジーマ山脈近郊に設けられた魔導学園の施設前に降り立っていた。


「おーし。じゃあお前らー。さっさと荷物降ろしちまって明日からの調査が出来るように準備まで終わらせちまえー」

「「「はい!」」」


 アンブラの指示に、学生達が揃って応ずる。基本カイト達の役目は実地研修を行う学生達の万が一の場合の護衛や危険地帯に向かわないように監督する役目だ。なのでここらの荷物運びなどは全部学生がやる事になっていたし、カイト達にはカイト達の仕事がある。


「アイギス。周辺の状況はどうだ?」

『現在スキャニングを実行中。後五分お待ち下さい』

「わかった……ティナ。結界は?」

『問題はなさそうじゃな。元々魔導学園の教員が作っとるという話じゃったが……』


 今回アンブラ達が宿泊するのは魔導学園がジーマ山脈に持つ簡易の宿泊施設だ。元々アンブラを筆頭にした地質学の生徒や軍学科の生徒がジーマ山脈での実地研修を行う際に使っていた物なのだが、それ故に設営こそ業者に頼んだが結界などの専門的な部分については自前でなんとかした――それが可能な技術力は十分にある――らしい。が、今回の一件で出る際にユリィから一度見て欲しい、と頼まれていたのであった。


「良い腕か?」

『良い腕……ではあるかのう。ま、教育たらばここら出来て不思議はない程度の腕前じゃ。天才、とまでは言わぬがな。奇を衒わず、基本にしっかり忠実に。おそらく学生達に説明する事も踏まえて構築しておるな。変な癖をもたせておらぬ。基本をしっかりマスターしておる者が拵えておるよ』

「そうか」


 基本をしっかりとマスターしている事こそが教員として何より大切なのかもな。ティナの称賛の色合いが乗った解説にカイトはそう判断する。というわけで施設の結界は問題なさそうだ、と判断したカイトは一度周囲を見回す。


(場所としては……ジーマ山脈の南側麓か。カルマの出現もまずなく、ジーマ山脈で一番安全な領域……軍基地も遠くないから実地研修を行う際の簡易拠点としては最適な場所か)


 <<千里眼(せんりがん)>>の魔眼を使って周囲を俯瞰して確認するカイトであるが、そんな彼の目には少し遠くの軍基地――と街――が見えていた。

 ジーマ山脈近郊で実地研修を行い不測の事態があった場合、この軍基地から救援が駆けつける事になっているのが基本だった。そして今回の案件から、この軍基地に人員も手配していた。


「オレだ……魔導学園の施設に到着した」

『おーっす。大将、アンブラの奴がなんかまた見付けたって?』

「みたいでな。詳しく聞きたいか?」

『結構です。姐さんからも話出た時点で断った』

「ですよねー」


 自身の連絡に応じた<<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>オペレーターが即座に拒絶したのを受けて、カイトも笑って同意する。カイトもこの物質がどうすごいのか、危険なのか、と聞かれても答えられないので即座にティナに振るつもりだし、このオペレーターも長いのでそうなる事が目に見えていた。その時点で拒絶するのは当たり前だろう。


「ま、良いわ。一応今回何も起きないと思うが、もし万が一思った以上の量が埋蔵されてるってなった場合となんかヤバそう、って場合はそっちから来てもらう事になる。ティナの用意してた魔道具類は?」

『全部積んでるよ……まぁ、姐さんもお主らに何かしてもらう事は無いじゃろうが、とは言ってたから人員もそんな来てないしな』

「だな……ま、一応万が一の事があったらすぐに動いてもらう事になる。そこだけ頼むわ」

『うーっす』


 カイトの言葉にオペレーターは軽く応ずる。二人共言っているが、<<無冠の部隊(ノーオーダーズ)>>が出るのは万が一虚数域の物質の埋蔵量が非常に多く、このまま放置しておけないとなった場合のみだ。

 が、自然界で虚数域の力が働く事はまず無いだろう、というのがティナの見立てで、単に今回は存在していないだろう、という予想に反して存在してしまったという事から準備しただけであった。


「よし。こっちはオッケだろ。アイギス、そっちは終わったか?」

『イエス。スキャニングの結果ですが、基本周囲に敵影はなし。魔物はほぼほぼ居そうにないですねー。ただ山間はやっぱり危険ですので、学生は行かない事をおすすめします』

「そっちは行くつもりもないだろうし、行く予定も無いな」


 今回はあくまでも実地研修。安全な場所でのみ行う予定だし、ここから行く予定のエリアもすでに何度となく魔導学園の生徒――それも軍学科ではない――が赴いた事のあるエリアだ。道中を含め魔物が出ないように結界などの安全策は何重にも施されており、問題が出るようにはなっていなかった。


『それが良いかと……で、その上でホタルからの報告です』

「聞こう」

『イエス……山脈のいくつかのポイントで簡易の拠点を発見。映像と写真の両方を取得していますが、いかがしますか?』

「確認する。こっちに回してくれ」

『イエス』


 カイトの返答を受けて、アイギスはホタルから報告として上げられていたデータを彼に転送する。というわけで、数分後。カイトのウェアラブルデバイスにデータが送られてきた。


「ふむ……発見地点としては?」

『添付の地図をご確認ください。それぞれAから記載があるかと』

「これか……山間部にいくつか、北部に一つ、西部に一つ……ふむ……」


 この中にフィオルンが居る拠点があれば良いんだが。カイトは写真を見ながらそう考える。


(多くはハンターギルドの冒険者達による遠征隊の拠点か……ここらは素材としても豊富に取れるから、定期的に遠征部隊が組まれているとは聞いていたが)


 写真で見える限り、基本的には冒険者達を中心とした遠征隊がいくつかの所に拠点を構えている様子だった。山間部には貴重な薬草も自生しているらしく、街からそこそこ離れているが同時に離れすぎてもいないので冒険者達がよく遠征に来て貴重な薬草や鉱物資源を採取しに来ているらしかった。


「ふむ……今回は見た所薬草を取ってる冒険者が多そうか?」

『イエス。拠点の中に摘んだらしい薬草が積まれているのや、薬剤師によって小分けされているのが見て取れるかと』

「か……」


 アイギスの補足にカイトもまた同意し、再度写真の確認に戻る。そんな彼に、アイギスが更に付け加えた。


『確か現在、薬草の需要が高まっているので比較的多くの遠征隊が組まれているとユニオンからマクダウェル家への報告にあったかと』

「聞いている。以前の天覇繚乱祭(てんはりょうらんさい)から『リーナイト』に掛けて、ユニオンを筆頭にした被害は馬鹿にならない領域だ。今度の遠征も踏まえ、ユニオンから薬草の高価買取が行われているからな。そうでなくても各国色々と被害を受けている。薬草の需要は今後暫く高まることこそあれ、低くなる事はない」


 おかげで転売だなんだへの対策が面倒でならん。カイトは為政者としての側面からそんな苦言を呟いた。一応マクダウェル領では最大手であるヴィクトル商会が不当な転売を見張ってくれているので目立った被害が出ていないが、それでも儲かるとなると手を出そうとする不届き者が出てしまうのが世の常だ。

 命に直結する物資である以上、しっかりとした取締が必要だった。とはいえ、こんな話はどうでも良いので彼はすぐに気を取り直す。


「まぁ、それはともかくとして……魔女ティエルンは鉱物系や宝石を用いた魔術の専門家だ。こういった物に参加しているとは思えんが……」

『アンブラさんからの報告でも洞窟で採掘をやっていた、っていうお話ですしねー』

「まぁな……そしてその坑道もここから近い所だ、って話だ。関係は無いとは思うがね」


 ジーマ山脈では基本山間部は薬草などの植物類の採取が多くなっており、鉱石などの採掘であれば外側から作られた坑道や洞窟から山の中に入るのが基本だった。今回アンブラに話をしてくれたという学者仲間は南部の洞窟の一つでティエルンと出会った、という事だった。

 なので山間部の拠点は無関係だろうと思っていたが、そうでない場合や万が一揉める事のないように先に情報だけは欲しかった。


「アイギス。ホタルには適度な所で戻るように伝えてくれ。どっちかってと南部での情報が欲しいしな」

『イエス。南部での発見の報告はまだ上がっておりませんが……』

「相手はエンテシアの魔女だ。上空からある程度隠せる技術力があって不思議はない」


 流石に冒険者達も居るのであまり威圧しすぎても困る。なのでホタルにはあくまでも上空から目視できる程度で良いと告げている。そして相手がティナと同じエンテシアの魔女である事もあり、ホタルでも対応出来ない可能性があったので周辺の確認程度の指示に留めておいたのであった。


「はてさて……まだ居てくれると良いんだが」

『それはばかりは出たとこ勝負ですねー』

「だな……まぁ、まだ暫く作業を行わないといけない、って事だったから居るとは思うんだがね……」


 そればかりは読めんな。カイトは少しだけ苦い顔でエンテシアの魔女でも随一の行動派であるというティエルンについて考える。最低限何か痕跡が残っていれば良いのだが、と思うばかりであった。


『そういえばマスター。街で待機している人に聞き込み行って貰うのはどうですか?』

「あ、それは確かにアリだな。街に戻ってるならそれで良いし……アイギス。通信機を再度あっちに繋いでくれ」

『イエス』


 アイギスの提案を採用する事にしたカイトは再度指示を出すべく通信機を起動させる。そうしてその後も彼は学生達が明日からの実地研修に備えて各種の準備を行う傍ら、ティエルン捜索のための手配を続ける事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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