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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第96章 冒険者達編

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第2522話 冒険者達 ――帰還――

 冒険者カルサイトからの要請を受けて『アダマー』で暗躍していた<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>という双子大陸を拠点とする非合法組織の構成員達の討伐に乗り出していたカイト。

 そんな彼は<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の狙いの一つだったソーラと再会を果たすと、ひとまずは現状のすり合わせを行うべくラダリアとラエリアの国境にある迷いの森での別れからの後についてを聞いていた。


「ってな具合で色々と転々としながら金稼いで、皆でこっちに来たのが一ヶ月ぐらい前。そっからはお前やソラに語った通り、って所かな」

「そか……はぁ。まさかあの研究所の流れがまだ完全には断ち切れてないとはな」


 めんどくせぇ。ソーラの話を聞いたカイトは最終的な結論として、そう判断する。言うまでもないが彼がこれを座視していられる道理はない。対処はしなければならなかった。そしてそれは彼だけではなかった。


「カイト。勿論だけど、私達抜きで話を進めるってのは無いわね?」

「あははは……やると」

「思うから言ってんでしょうが。あんた前科多すぎんのよ」

「たはは……わーった。必ず報告はするよ」


 ドスの利いたルーナの声にカイトは降参とばかりに諸手を挙げて応ずる。実際、彼の事だ。本当に一人で<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>まで壊滅させかねなかった。


「事後、じゃなくきちんと経過報告」

「いえっさー……まー、兄貴。兎にも角にもそうなってくるとウチとしても座視は出来ん。その件についてはこっちでも対応はさせて貰う」

「わーるい」


 そもそもの話として、ソーラがカイト達を頼ろうと決断したのもそこらがあった。今更言うまでもないが、少年兵のまとめ役が彼だというだけであの研究所で人体実験されたのは彼だけではない。

 彼だけの事で終わらない可能性があったからだ。というわけで、今回の一件はかつて少年兵だった者たち全員に関わる事でもあったのだ。というわけで、そんなソーラが問いかける。


「で、それで。こっから俺達はどうすりゃ良い?」

「まぁ、兄貴達の判断次第って所だが……現状を鑑みりゃエネシア大陸の西部は若干ヤバそうかもな」

「かねー……一応、逃げられるかもって考えで大陸渡っちゃみたものの、って感じだし……」


 ソーラとしてもカイト達に迷惑を掛けないで終われるのなら、という考えがあったらしい。カイトの指摘に彼もまた苦い顔で同意する。組織の規模がどれぐらい、というのはカイトにもソーラにもわからない事だ。なので想定より影響範囲が広くても仕方がない所ではあっただろう。


「まぁな……まぁ、昔から知られていた話だが、エネシア大陸は西部の方がアニエスや双子の影響が強い。近いからな」

「そうだったっけ」

「あんたオレが船で西から来たって言ったら驚いてたろ……普通は東部から渡るって」

「そんなことあったなー」


 カイトの指摘にソーラはそういえば、と笑う。彼にしてみればまだ十数ヶ月前の事なのだろうが、忘れていた様子だった。


「ま、それはともかく……一応今は飛空艇で皇国から渡るルートも開拓されているが、遠いことは遠い。影響範囲にはない」

「何より、ウチの場合早期警戒機やらなんやらが整いすぎてて攻めらんないってのもあるでしょうしね」

「そういう事だな」


 自身の言葉に続けたルーナにカイトも一つ頷いた。各種の警戒網や<<熾天の剣>><<暁>>といった強大なギルドが拠点を保有していたり、統治者であるマクダウェル家そのものも尋常ではない戦闘力を有している。

 <<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>といった非合法組織が手を出しにくい土壌がこれでもかと揃っていた。というわけで、ソーラも改めてマクダウェル領の地理を思い出したらしい。一つ彼が問いかけた。


「そういや、今お前らって東の果てに居るんだっけ」

「ああ。エネシア大陸最東部にウチはある」

「もうちょい近くしてくれたら楽だったんだけどなー」

「言ってくれんなよ。色々と事情があって東の最果て治めてるんだから」


 ソーラの冗談めかした言葉にカイトが笑う。というわけで、ひとしきり本題が終わった事で少しの雑談となるわけであるが、カイトが気を取り直す。


「っと……そういうわけじゃないな。ひとまず兄貴達のこれからだが……それについちゃそっちに任せるよ。こっちに来ても良いし、地道に色々とやってても良い」

「あっははは。それで<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の奴らが俺ら逃してくれるなら良いんだけど……」

「そうはいかないだろう」


 ソーラの指摘にカイトは一つ首を振る。一応色々と手配はしようと思うが、如何せん相手が巨大組織過ぎる。組織規模としては先にソラが対応したラグナ連邦の<<黒き湖の底(ブラック・ラグーン)>>をも上回るかもしれないのだ。

 しかも今はその<<黒き湖の底(ブラック・ラグーン)>>も壊滅しており、<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>が空いた穴に入り込んでも不思議はない。エネシア大陸にまで大きく影響が出ていても不思議はなかった。


「だよなー……どうするのが一番安全?」

「そうだな……まぁ、マクダウェル領に来ておくのが一番安全だろう。少なくとも<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>が艦隊を差し向ける事は出来んからな」

「っぱ、そうなるかー……」


 あんまり頼みたくはなかったんだけど。そんな様子はありながらも、ソーラも実情は理解していたらしい。カイトの返答に苦い顔はしつつも、そうしかないのだろうという様子も見て取れた。


「悪いんだけど、頼んで良い? 俺一人ならなんとでもなるんだけど、流石に他の奴らがなぁ……」

「兄貴一人でもやべぇだろ。あんたは組織を甘く見すぎだ」

「いや、逃げるぐらいは出来んのよ。黒龍化があるし」


 カイトの苦言に対して、ソーラは自分だけならなんとかなる理由を口にする。かつては忌避していた黒龍化だが、それを使える様になった彼はかつてとは比べ物にならないほどの戦闘力を有している。なので確かに逃げようとすれば逃げられないではなかった。それについてはカイトも忘れていたようだ。


「あー……そういや確かにそれがあったか。でもまぁ、確かにあんた一人がどうにかなる、って話か」

「そ」

「だわな……ま、そこらはオレも似たようなもんだからわかるっちゃわかるが……そうだな。それは横にしても、兎にも角にもマクダウェル領に来るのが一番安全だろう。領主もオレだし、他にもあの頃の奴らも大勢居るしな」

「皆元気してる?」

「元気元気……あんたボコ確定してっけど」

「なんで!?」


 懐かしいなー、という風を醸し出していたソーラであるが、最後に続いた言葉に仰天する。が、これは当たり前だった。


「あんたが便り一つ送らないからでしょ……とりあえず全員で一発ずつ殴るから」

「ま、そこは諦めろ……それはともかく。戦力としてもウチが一番安全だ。それは明言して良い」

「かー……悪い。世話になるわ」

「そうしてくれ。こっちの精神上としてもそっちのが有り難い」


 下手に自分達の目の届かない所で色々とやられても、今回みたいな偶然でもなければ即座の介入なぞ不可能だ。ならいっそマクダウェル領で活動して貰っておいた方が良かった。というわけで、諦めて世話になる事を承諾した彼にカイトもそれを受け入れる。


「で、それなら俺どうすりゃ良い?」

「そうだな……ひとまず<<太陽の牙>>としての活動は一旦停止して貰って大丈夫か? 一旦痕跡消しておきたい」

「お、おぉ……まぁ……大丈夫だけど……え? 出来るの?」

「そりゃ、この船自体がオレの保有してる物だからな。どこで誰をどう降ろしたか、とかなんて誰にもわからん。暫くの時間稼ぎにはなる。後はそっからマクスウェル支部と本部に事情通して<<太陽の牙>>の情報を停止させりゃ、他の支部からは調べられなく出来る」

「……」


 あれ、思った以上に弟分がとんでもない存在に成長してる。ソーラはカイトの語る方針に思わず頬を引きつらせる。それに、同じ様に頬を引きつらせるソラが告げた。


「今のカイト、そんな感じっすよ」

「みたいだな……兄貴ヅラしたいし、もうちょっとガンバっかねー……」

「その頑張るはきちんと考えてにしなさいよ」

「おう」


 ルーナの指摘にソーラは一つ頷いた。というわけで、彼の承諾を受けてカイトはこの方向性で決定とする。


「よし……じゃあ、兄貴達もこの飛空艇に乗ってくれ。そこからはマクダウェル領へ移動。一旦はウチで匿う。で、手配が終わった頃合いで次について話すか」

「今の所なんか考えあるのか?」

「んー……そうだな。特別考えちゃいないが……ひとまずウチに協力してくれる、ってのも手か」

「ギルドやってんだっけ?」

「ああ。ソラがそのサブマスターだな。他にも数人居るけど……どうにせよ、ウチは今エネフィアの人員も登用してるから、あんたらが協力してくれてても不思議はない。規模としちゃでかいギルドだから、色々と依頼も舞い込む。食い扶持には困らんと思うぞ」


 ソーラの問いかけにカイトは一つ自分達の現状を語る事にする。まぁ、マクスウェルでは最大規模のギルドだし、規模であればマクダウェル領でも有数のギルドではある。これ以上となると後は<<暁>>などの各所に支部を有するような大ギルドになってくるので、単独のギルドとして考えれば最大と言っても過言ではなかった。


「へー……俺そこらは調べてなかったけど、そんなでかいギルドになってたのか」

「元々の母数が大きかったからな」

「へー……いや、そういう事なら良いよ。協力させて貰う。世話になるし、世話になったからな」


 カイトの言葉を受け、ソーラは最終的なジャッジを下す。ここらの大まかな方針は一応彼が決めて良いらしく、相談や報告は必要だがおおよそ彼の決定が決定として良いらしかった。


「良いのか?」

「おう。世話になるからな。なら世話になった分は返さないと」

「すまん……となると、ソラ」

「おう。何?」


 唐突に話を振られ一瞬ビックリした様子のソラだったが、カイトの問いかけに彼の方を向く。そんな彼に、カイトが指示を出す。


「兄貴達のフォローはお前に任せる」

「え゛? お前やんないの?」

「今のオレにそんな余裕はねぇよ……それに別に何かする、ってわけじゃなくて大規模な作戦とかに兄貴達が参加した場合はお前の隊に加えろってだけだ。それに何より、オレの下だと目立つだろ」

「「あ、なるほど」」


 確かにそれはそうだ。カイトの指摘にソラもソーラも揃って納得する。カイトは皇国では有数の冒険者として有名だ。何かと目立つ。そこにソーラ達が加わればせっかく痕跡を消したのに意味がなくなってしまうのであった。というわけで、そんな二人の理解に一つ頷いた。


「そういうこと。ま、戦士としてなら兄貴達の方が上だ。冒険者としてならリリアナ? とやら達の方が上だろうしな。そこらも学んどけ」

「おう……世話になります」

「あはは。こっちのセリフだよ」


 自身に頭を下げるソラに、ソーラは一つ笑う。と、そうして今後の活動について決まった所で、唐突に声が割り込んだ。


「それなら、俺もソラの小僧に協力させて貰っても良いか?」

「カルサさん……怪我の治療とか終わったんですか?」

「おう。すまねぇな、何から何まで世話になっちまって」


 入ってきたのはカルサイトだ。別に彼は呼んだわけではないので、彼の側で理由があって来たのだろう。というわけで、彼は勝手知ったるという様子で空いていた椅子に腰掛ける。


「で、世話になっちまったから何か出来ねぇかって思ってたんだが……まぁ、せっかく手が空いたからソラとトリンの小僧の面倒でも見てやっか、ってな」

「まぁ……こっちとしちゃ貴方ほどの冒険者に協力してもらえるのは良いんですが……ソラも大丈夫だよな」

「ま、まぁ……でも良いんっすか?」

「おう。それに、トリンの母親の事やら兄貴の奴が何か色々と忘れてる可能性もありそうだからな。暫くはお前らのフォローしてやる」

「あー……」


 一応、自分の死後はカイトに対応を一任する、とは遺していたブロンザイトであるが、彼もやはり人の子だ。うっかり忘れていたり、色々と事情があり予見出来ていなかった事もないではない。そういった事もあり、暫くはそのフォローのためにソラとトリンと共に居る方が良いと判断したようだ。


「すんません。世話になります」

「おう……ま、元々は兄貴がやっちまった事も多い。お前も俺も、文句は兄貴に言う事にしようぜ」

「あはは」


 相変わらずの豪快さで笑うカルサイトに、ソラもまた笑う。こうして、彼は図らずもソーラ達<<太陽の牙>>の面々とカルサイトという腕利きの冒険者達を指揮下に加える事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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