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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第96章 冒険者達編

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第2520話 冒険者達 ――追い打ち――

 冒険者カルサイトの要請を受けて訪れていた『アダマー』にて裏ギルドとの交戦を終えたカイト率いるユニオンの増援部隊。そんな増援部隊を率いていたカイトは裏ギルドやユニオン内部の内通者からの連絡を受けて自分達と時同じく『アダマー』に到着していたらしい<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>という双子大陸最大の非合法組織の手勢との戦闘を終えていた。


「ふぅ……とりあえずこれで全部終わりか」

「お疲れ様」

「っと……トリン。お前もお疲れさま」

「ありがとう」


 どうやらトリンもまた戦闘がほぼほぼ終わった事で総指揮を切り上げ、飛空艇に撤退していたらしい。というわけで、ソラが一つ問いかけた。


「それで一個聞きたいんだけど……現状、どんなもんなんだ? <<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の本隊は?」

「本隊だけど、これは目に見えた話でユニオンの本隊とカイトさんによって壊滅状態っぽいね。若干逃げてるらしいけど……後は本隊が追う事になるかな」

「そりゃそうか」


 なにせカイトである。本命はあっという間に捕らえられたらしい。そして本命が合流できない事を悟った海岸からの本隊はほぼほぼ烏合の衆だったようだ。


 「まぁ、本来は南から陽動しつつ裏をかく様に北から本命が『アダマー』入り。ソーラさん達を捕縛して本隊と合流して海から撤退というルートを取る予定だったんだろうね」

「なるほど……俺たちは海岸で動く大部隊に注目させられて、ってことか」

「そういうこと。そうして南に目を向けさせてる間に『アダマー』に入って、ってわけだね」


 そもそも今回はカイト達だって<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>が大部隊を動かして海から迫ってきているという一報を聞いて、南に戦力を展開させていた。ここで北から強襲されればこちらの敗北は必然だろう。

 故にここまでは、<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の目論見通り事は運んでいたのだ。が、こういう状況を一人で覆せる男がここには一人存在していた。


「ほとほとカイトってヤバいよな……何がヤバいって敵の本命一人で潰しちまえる所が」

「あ、あははは……ね。しかもこれを自分で描けてしまうから、もう手が付けられないったりゃありゃしないよ」


 作戦とは全容を知っている者が増えれば増えるほど、露呈の可能性は高くなるのだ。ならばカイト一人しか全容を知らねば漏れる事はなかった。無論流石にそれは彼もしない――負担が大きすぎる為――が、最悪それが出来てしまうというのは恐怖以外の何者でもなかった。というわけで呆れとも畏怖とも取れる言葉を述べたトリンであるが、即座に気を取り直した。


「それはともかく、だ。北から来るはずだった本命は事もあろうに『アダマー』到着前に全滅……艦隊は撤退したそうだけど……戻りも難しいだろうね」

「そうなのか?」

「カイトさんがそう安々逃してくれてると思う?」

「いや、思わね」


 あのカイトである。本気になれば自分で動く事も出来るし、それこそ安牌な札であればホタルに行ってこいと言えばそれでおしまいだ。そのホタルにしたって行かずとも超長距離による狙撃だって出来る。と、そんな事を話していると、案の定の指示が訪れた。


『ソラ。聞こえてるなら甲板まで来い。次の指示を出す』

「っと……俺? しかも甲板?」

「あー……なるほど……となると……あっちも折り込み済み。いや、向こうから申し出があったかな……?」

「どういうこと?」

「大国が動いた、っていう事だよ。まぁ、聞いた方が早いんじゃないかな」


 何かを察したらしいトリンが半笑いを浮かべ促すのを受けて、ソラはそれもそうだとカイトの待つ甲板へと向かう事にする。というわけで辿り着いた甲板ではカイトとホタルが立っていた。


「おう、来たか」

「おう……で、次の指示って? 終わったんじゃなかったか?」

「終わりは終わり。大捕物は完了だ……が、逃げた奴を逃がす道理はない。ちょっと理由があって泳がせただけだ」

「トリンもそうじゃないか、って言ってたな」


 どうやらトリンの言った通り、カイトはあえて艦隊を逃していたらしい。というわけで、ソラにもここから行われるのがその追撃なりなのだと理解できた。


「で、俺は何しろって?」

「狙撃だ……せっかく用意してきたんだ。お前も手伝え」

「え……あれ使うの? 確かに練習したけどさ」

「おう……アールドゥ近郊の公海上にヴァルタード帝国の艦隊が待機してくれてるんだ。戦闘員はほぼこちらで拿捕。後は機動力さえ削いでくれればこちらで対応する、ってヴァルタードの帝王陛下から話が来てたんだよ。<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の船なんて拿捕してもアールドゥ政府も対応に困るからな。あちらさんもすんなり受け入れたよ」


 ソラが来たのを見てカイトが甲板のスイッチを押し込むと共に、何かが動き出す音が鳴り響く。それを聞きながら、カイトはソラへと現状を語ってくれる。それを受け、ソラが驚いた様子を見せる。


「マジか。えらくすんなり受け入れたんだな」

「<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>は双子大陸の非合法組織だ。基本はヴァルタード帝国が対応を行ってるし、組織の規模を鑑みてもアールドゥ政府だけでは手に余る事になるだろうな」

「結局、ヴァルタード帝国に引き渡す可能性が高いってわけか。それならいっそ、最初からヴァルタード帝国の艦隊を受け入れて恩を売る事にしたってわけか」

「そういうことだな」


 理解が早くて助かる。カイトはソラの出した結論に一つ頷いた。トリンはそこらの外交的な損得勘定とアールドゥ王国の国力などを鑑みて、その結論に達していたのであった。ここらの国力云々の話はソラではまだ厳しい。彼が答えにたどり着けていなくても無理はないだろう。

 と、結論が出たのに合わせたかの様に甲板の一部が開いて下から巨大な大砲を思わせる魔銃が三門せり上がってきた。それを見て、カイトが指示を飛ばす。


「アイギス。三番を飛空艇の炉心に接続。一番、二番は独立状態で運用する」

『イエス。一番、二番独立。三番魔導炉へ接続状態で起動……炉心安定状態良し。一番、二番接続解除』


 がたんがたん。一番と二番と呼ばれた巨大な魔銃が音を立てて僅かに下にズレる。その片方をカイトが。余ったもう片方をホタルが手にする。そうして残った一つが、ソラが運用する事になっていた。というわけで、ソラは学んだ通りの手順でそれを手にする。


「やっぱでっかいよなー、これ」

「そりゃ、『試作型対超弩級戦艦特式魔導砲』……合ってる?」

『イエス。マザーからの資料によるとそれが正式名称ですねー』

「オッケー……横文字も覚えにくいがここまで漢字が連なるとそれはそれで覚えられねぇよ……」


 アイギスの返答を聞きながら、カイトは『試作型対超弩級戦艦特式魔導砲』とやらを抱えて首を振る。というわけで、そんな彼にアイギスが告げた。


『あ、マザーから長けりゃ『特式魔導砲』で良いぞ、というメッセージ来てますよ』

「よし。それで今後は統一しておこう。どーせこんなバカデカ兵器。ウチしか運用しないだろうしな」

『しないと出来ないは大違いですけどね』


 ということはつまり他の軍はしようとしても出来ないってわけか。カイトとアイギスの軽口にソラはそう思う。なお、実際には出来ないではないが、取り回しが悪いのでやらないが正解らしい。

 それを聞いたソラはそれはそうだ、と納得しか出来なかった。だがそれでもカイト達が運用する以上、そこには利点があればこそであった。


「アイギス。弾着観測射撃を実行しろ」

『イエス……弾着観測射撃を行います』


 カイトの指示を受け、ホタルが飛空艇前方に取り付けられた魔導砲を回転。南西に砲口を向ける。そうして、数秒。数秒間隔で魔弾が発射される。


『……着弾点確認。誤差修正。情報集約。照準への補正を実施……データアップロードを開始します。第一次補正完了。第二次弾着観測を行います』


 再度、飛空艇の魔導砲が火を吹いた。そうして再度の情報の補正が行われ、それらが繰り返されること数度。必要な分の情報が整った。


『マスター。照準の補正は完了しました。後は目標をセンターに入れて引き金を引くだけです』

「猿でも心が病んだ少年でもできる簡単なお仕事だな」

『イエス……いえ、心が病んでる少年には引き金引かせないであげてください』

「あはは……さて。アイギス。ドローンとの映像をリンクさせてくれ」

『了解。一番二番三番。すべて接続を開始します』


 軽口を叩きあったカイトとアイギスであるが、仕事は忘れていなかった。というわけでカイトの指示を受けたアイギスが飛ばしていたドローン型の魔道具から送られてくる情報を『特式魔導砲』へと転送。それを受けて、ソラも仕事に取り掛かる事にする。


「ソラ。使い方はわかってるな?」

「おう。ヘッドマウントディスプレイを装着して、後は照準に敵を捉えて引き金を引く。それだけだよな?」

「それだけだ。ま、予行演習の時は単独運用かつ中長距離を想定してたが、やる事は変わらん。それに今回は飛空艇からの補佐ありでの運用だ。楽で良いだろ」

「まな」


 ソラがカルサイトの支援に動くより前に練習していたのは、実はこの『特式魔導砲』の使用に関してだった。今回は使われなかったがこの飛空艇には実は物資の輸送を行える電磁カタパルトが搭載されており、万が一の場合は『特式魔導砲』をそれで送りつけて飛空艇の艦隊を迎撃させるつもりだったのである。というわけで、三人は並んで『特式魔導砲』を構える。


『マスター。四番、五番による映像回しますか?』

「艦隊か?」

『イエス。流石に小型過ぎて気付かれてない様子です』

「そうか……映像は不要。到着までの予測時間をHMDに表示させてくれ」

『イエス……到着予測をHMDに表示させます』


 カイトの指示を受けて、ヘッドマウントディスプレイに艦隊が狙撃可能ポイントに到着するまでの時間が表示される。更にその横には狙撃可能な時間も表示されており、これ一つで十分だった。

 勿論、それ以外にも照準などもしっかり表示されており、本当に後は照準を合わせて引き金を引くだけだった。というわけで、その数分後。三つの『特式魔導砲』から放たれる光条によりアールドゥ近郊の公海上にて狙撃され、<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の艦隊は完全に航行不能に陥る事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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