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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第96章 冒険者達編

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第2512話 冒険者達 ――調査再開――

 賢者ブロンザイトの実弟であるカルサイトからの要請を受けて、『アダマー』で暗躍する裏ギルドの構成員達の調査に乗り出していたソラ。

 そんな彼は現地で協力者として確保出来たかつてのカイトが世話になったソーラという元少年兵、現冒険者が率いる<<太陽の牙>>というギルド。先代と先々代がブロンザイトに世話になり一方的だがトリンを見知っていたパトラという若い女性冒険者が率いるギルド<<翠玉の輝き(すいぎょくのかがやき)>>の二つを現地での協力者として確保する。というわけで、この二つとの情報共有を終えて翌日。彼は改めて調査を開始する事にする。


「とりあえず今日も単独で行こうと思うけど……どう?」

「うん、そうだね。そっちの方が良いよ。思ったより早々に協力者が得られたし、向こうから接触があるかもだし……そうなると誰かは残っておいた方が良いだろうしね」


 ソラの問いかけに対して、トリンは一つ頷いてその提案を了承する。せっかく協力者が得られているのだ。そこから何か情報が得られる可能性が無いではない。というわけで、トリンがその役目を担う事になったようだ。


「頼む……じゃあ、また今日も今日とて出かける事にするよ」

「うん。今日の予定としては?」

「とりあえずユニオンから紹介された中で一番遠くの鍛冶屋に行こうと思う……まぁ、ウチがあんまり使う見込みは無いだろうけどさ」

「だろうね……けど調査対象の行動範囲には含まれているから調べておかないとね」

「おう」


 トリンの指摘にソラは一つ頷いた。というわけで、この日も再度ソラは一人外に出て、引き続き鍛冶屋や道具屋などの冒険者が主に利用する所を探っていく事になるのだった。




 さてソラが調査を再開してから数日。結局の所初手で協力者が得られた後は大した情報もなく、ユニオンから紹介された鍛冶屋と道具屋すべての調査を終わらせていた。というわけで、紹介された店のすべてを調査し終えた日の夜。ソラはいつもどおりカイトとの定時連絡を行っていた。


『って、具合か……けーっきょく一番最初にソーラさんやパトラさんと知り合えたぐらいで後はなーんも。一応、宿は大通りから外れた所に取ってるっぽくて目撃証言が何個かあったぐらいかな』

「あはは……まぁ、そんなもんだろうな」


 どこかげんなりとした様子のソラに対して、カイトは笑って頷いた。結局の所初手で情報が得られたのだってかなり運要素の強い話ではあった。なので成果が得られないという事はカイトにとっては想定内の話で、気落ちした様子のソラに対してカイトは特段気にした様子はなかった。


『ふーん……で、そっちはどんなもんなんだ? カルサイトさんから何か情報入ってないのか?』

「それか……少し待て」


 ソラの要請を受けて、カイトはカルサイト側からの報告を取り出す。


「まずカルサさんだが、あちらに襲撃が仕掛けられたということはない。監視とかも現状見当たっていない」

『無いの?』

「向こうとてこちらが組織として動き出したぐらいは察知してるだろう。下手に監視でも付ければそれこそ監視見付けてくださいね、になっちまう。戻ってきただろう事は承知で放置しか現状取れる手がない。勿論、こっちと戦争やるつもりなら気にしないんだろうけどな」

『あ、なるほど……』


 そもそも俺達が単独で動いているのだって囮の側面もあるんだっけ。ソラはカイトからの返答にそんな事を思い出す。


「ただやはり何ら情報も無しではないらしい。お前らが表立った情報を手に入れてくれていたのなら、カルサさんは裏に繋がる所を調べてくれていた。そこでいくつかの噂話は耳にしている」

『ヤバそうな話?』

「に決まってるだろう」


 ソラの問いかけにカイトは少しだけ笑う。なにせ相手は裏ギルド。犯罪者も少なくないどころか、大半が犯罪者と思って良い。やばくない話なわけがなかった。というわけで、笑ったカイトは話を続ける。


「……まだ確定情報じゃないが、『アダマー』のスラム街で鋭利な刃物で突き刺されたような死体が見付かっているらしい」

『スラム? そんなのあるのか……』

「冒険者が多くなると必然として治安が悪化してしまう事がある……マクダウェル領にスラムがない、ってのは実はすごい事なんだぜ?」

『そういや……聞いた事ないな……』


 やはり治安が悪い都市だと必ず聞くのがスラムだ。が、マクダウェル領においてそういったスラムの噂はソラも今まで一度も聞いた事がなく、今更だがこれが非常にすごい事なのだと理解したようだ。


「ま、どうしても人間金持っちまうと甘い汁を吸いたくなるもんだ。ってなると腐敗を生み、腐敗が退廃を生み……そうなって結果スラム化が起きちまう、ってのは珍しい話じゃない。この『アダマー』もその例にもれず、というわけだ。特にここの場合迷宮(ダンジョン)があるから、冒険者が多い。不思議はない」

『へー……そういや、確かに街の外にはあまり行かない方が良い、とか言われたっけ……』


 一応冒険者として来ている以上、定期的にユニオン支部に顔は出す様にしていた。内通者が居る可能性はわかっていたが、そちらの方が自然に見えるからだ。そこで鍛冶屋や道具屋を見て回っている事を述べた所、街の外にはあまり行かない方が良いと言われたのであった。


「だろうな。ちょうど街の外がそういったスラムになる事が多い……お前がわかるかはわからないが、三百年前だとラエリア……当時の王都ラエリアか。その外には四つもスラム街があったぐらいだ」

『あのラエリアに?』

「ああ」

『へー……』


 カイトからの情報にソラは意外そうに目を見開く。と言っても流石にこの帝都ラエリア――旧王都ラエリア――のスラムは戦争の集結に伴い順次整理され、今はもう無い。とはいえ、そんな事を言うために話したわけではない。


「まぁ、それは良い。そんなスラムだと当然、街の衛兵などが立ち入らない事も少なくない。ある種の不法地帯だ……なんで殺人やらも頻繁に起きる」

『まんまスラムのイメージそのままだな』

「スラムのイメージそのまま、というよりもスラムだからな」

『そりゃそうか』


 カイトの指摘にソラが一つ笑う。というわけで、ひとしきり雑談にも似た話を繰り広げた後、カイトは改めて本題に戻る。


「で、カルサさんはそんなスラムに行ってもらってたんだ……お前らだと揉める原因になっちまうからな」

『どして』

「お前らみたいに明らかスラムには無縁そうな冒険者を嫌う奴は少なくない。下手に喧嘩買われても困るし、情報も集めにくい」

『あ、なる……』


 ソラとトリンの二人とカルサイト。このどちらがより冒険者らしいか、と言われればソラ自身カルサイトと言うだろう。これは仕方がない話だがソラはサブマスターという事もあり、身だしなみはある程度気にしている。

 そういった所は見る者が見ればすぐに分かる形で現れており、そしてそれにこそスラムの住人達は目ざとかった。が、他方そういった場所にも慣れているカルサイトは旅装束が基本なので衣服も明らかに冒険者という感じで、スラムの住人達もそこまで気にしないらしかった。


「で、そんなスラムでの話だが……どうやら最近になり鋭利な刃物で刺殺されたと思しき死体がいくつか見付かってるらしい」

『刺殺……それって』

「ああ。カルサさんが襲われた敵の得物と合致している……殺された中にはかなりの借金を背負っていた元冒険者も居るそうだ。それを殺している事から高確率で同一人物だろう」

『やべぇな……』


 高ランクの冒険者を殺せる、ということは裏返せば下手人もまた高ランクの冒険者に匹敵する腕を持っていないとならないのだ。そういった腕利きの殺し屋が何人も居るとは思えず、ソラもこれが同一人物なのだろうと推測する。


「ああ……そろそろお前らも裏ギルドに勘付かれていても不思議はない。スラムの方面には近付くなよ」

『行くつもりはそもそもなかったけど……気を付けるよ』

「ああ」


 ソラの返答にカイトは一つ頷く。元々スラムに行く予定は彼らの予定にはなかったが、危険である可能性が高いとわかっている以上手を出す道理はない。

 なので今まで通りソラ達には町中で裏ギルドの情報を集めてもらうだけだった。というわけでその後も少しのやり取りを行った後、通信を終わらせたカイトは椅子に深く腰掛ける。


「さて……ああ、オレだ。状況は?」

『奴ら、本格的にユニオンと戦争するつもりらしい。増援が出たそうだ』

「<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>、か。またでかい組織の幹部の娘がいたもんだ」


 流石にカイトは<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>を知っていたし、その組織の規模も理解していた。なのでミネアの事は正直驚きだったようだ。


「向こうがもし動いた場合、即座に介入する。<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の娘を保護できれば<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の情報が何か得られるかもしれん。何より、相手さんもこんな大部隊を繰り出してくるんだ。何かあるんだろうな」

『でなけりゃこんな増援掛けないだろ』

「まぁな」


 オペレーターの言葉にカイトは楽しげに笑う。当たり前だが、カイト達は『アダマー』近辺に待機しているが情報網は広く有している。今回であれば事の次第からユニオン本部も支援体制を組んでおり、双子大陸の情報も手に入れる事が出来たのだ。とどのつまり、この増援が掛かったというのは双子大陸からの事だった。


『だが大丈夫か? ソラの小僧……別に腕が悪いわけじゃないが、流石に役不足だぞ?』

「そのためにオレ達が居るんだろ……それにどうせどっかじゃ戦う事になる。向こうも安々娘は奪われたくないらしいからな……それにぶっちゃけ、マクダウェル領でバトりたくないし」

『あっははは。総大将の場合はそりゃそうか』


 実のところ、カイトがこちらである程度ケリをつけようとしているのはそういう所があったらしい。ここである程度追手を片付けて一旦ユニオンとしてミネアを保護。そこで情報を断たせてからマクスウェルへ連れ帰るつもりだった。

 そうでないとマクスウェルまで<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>が来てしまう可能性があったからだ。そうなると為政者として今度は対応しなければならないので面倒だった。


「当たり前だろ……ま、そういうわけだからここで一旦は終わらせておく。引き続きユニオンからの連絡があれば報告してくれ」

『あいよ』


 カイトの指示にオペレーターは一つ頷いた。というわけで、更に数日の間カイト達も<<白い影の子供達(ホワイト・シャドウ)>>の動きを待つ事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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