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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第96章 冒険者達編

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第2509話 冒険者達 ――単独行動――

 冒険者にして賢者ブロンザイトの弟であるカルサイトから支援の要請を受け、『アダマー』という街へとやって来ていたソラとトリンの二人。

 そんな彼らは少しの事情から<<太陽の牙>>というギルドを率いる事になっていたソーラという青年と会合を行い、裏ギルドの狙いが彼ら<<太陽の牙>>である可能性が高いという情報を入手。街の外に待機するカイトへとそれを報告し、彼から引き続きの調査の指示を受ける事となっていた。

 というわけで、その指示を受けて改めて今後の方針を定めたソラであるが、そこでの話し合いにより彼はそこから数日は単独行動を取る事になっていた。


「うっし……準備はオッケーと」

「武器とかも大丈夫?」

「おう。ティナちゃん謹製の対結界対封印の魔道具も持ってるから、万が一こいつが取り出せなくなっても対応出来る」


 ソラは改めて自分の懐に忍ばせた魔道具を確認し、いつでも<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>を取り出せる事を確認する。相手は裏ギルドだ。非合法な魔道具をいくつも所持している可能性は予め想定しており、それに対して数々の準備を行っていた。これも、その一つだった。


「よし……あ、昨日話し合ってたけど、昼には一旦こっちに戻ってきてね。流石に初日はそっちの方が自然だから」

「わかってる。とりあえず12時から13時ぐらいには戻る」


 トリンの言葉にソラは一つ頷いて、一旦はここから三時間で回れる範囲で回る事にする。というわけで、彼はいくつかの確認事項を確認し、宿を後にする事にする。


「よし……とりあえず武器屋と鍛冶屋見て回らないとな……」


 トリンを残し宿屋を後にしたソラであるが、まずここからの流れを口にして再確認する。通常の冒険部であればマクスウェル近郊で活動する場合にはギルドホームに鍛冶場があるので鍛冶屋や武器屋を頼る事は無いのだが、長期で外に出る事を想定するのなら話は変わる。

 冒険者である以上、必ず見ておかねばならない点だった。そしてそれは冒険部のみならず他のギルドでも同様で、鍛冶屋は酒場と並んで冒険者の情報が集まる場所だった。


(えっと……武器屋と鍛冶屋の内、ユニオンが紹介してくれる所は五つ……全部武器屋と鍛冶屋が併設されてる所だったっけ。確かトリン曰く、ここまで多いのは『アダマー』とかの冒険者が多く居る街ぐらいだ、って事だったな……)


 どこへ向かうかを考えながら、ソラは一旦先程の話を思い出す。当たり前だが鍛冶屋も武器屋も冒険者がよく使う事がわかっている以上、宿屋と同じくユニオンでも斡旋してくれていた。なのでまずはそこを回って情報収集をする予定だった。


(とりあえず近場から回ってくか……)


 どこをどういう順番で回るか、というのは今の所決まっていなかったらしい。というわけでソラは手近な所から確認する事にしたようだ。そうして、方針を定めた彼は一人鍛冶屋巡りを開始する事にするのだった。




 さてソラが宿屋を後にしてから二時間ほど。彼は二つほど鍛冶屋を見て回り、一旦は小休止を挟んでいた。と言っても小休止を挟んでいる理由は疲れたからではなく、トリンと相談する為だった。


「とりあえずそんな感じ……か」

『なるほどね……うん。一つあたりがあっただけ良しじゃないかな』

「かー……」


 とりあえず回った鍛冶屋であるが、偶然にも二つ目で今回調べているギルドの一つが利用している事がわかったらしい。


「どうしよ。とりあえず張っとけばどこで泊まってるか、とかはわかると思うけど……」

『うーん……そこまでリスクを冒す必要は無いと思うよ。相手も腕利きだからね。流石に気付かれちゃうと面倒になっちゃうから……』

「それもそうっちゃ、そうなんだよな……」


 これがカイト等の潜入工作にも長けた人物なら、話は変わるんだろうけども。ソラは内心でそう思いながら、トリンの言葉に応ずる。こればかりは仕方がない所があるだろう。そしてそこらはわかっていたし、彼らがわかっている以上カイトがわかっていない道理はなかった。


『とりあえずカイトさんに報告して、人員を派遣してもらうのが良いと思うよ。下手にギルドが動くよりユニオンの調査員が動いた方がバレた時も話がしやすい。よしんば相手があたりだったとしても、それはそれで良いからね』

「か……りょーかい。とりあえずそんな感じ……ひとまずそっちからカイトに報告上げといて」

『わかったよ』


 一応定時連絡は行う予定になっているが、こういった風にソラ達だけでは動けない部分については適時連絡を取ってカイト率いる本隊から人員が派遣される事になっていた。というわけで改めて鍛冶屋巡りに勤しむ事になるのであるが、そこでふと彼は気になる事がありトリンへと問いかける。


「そういやさ。ソーラさん達から情報って仕入れちゃマズいのか?」

『<<太陽の牙>>から?』

「おう。よく考えたら彼らが味方っぽいってのははっきりしてるだろ? で、俺達より長くここにいてるから、多分俺達より情報持ってないかな、って」

『あー……確かにそれはそうだね。ただもしかしたら<<太陽の牙>>に内通者が居る可能性もあるから怖いといえば怖いんだけど……』


 どうだろう。ソラの相談内容にトリンは少しだけ考える。


「でも可能性は低くないか? 今の所その非合法組織? 先手は打ててないみたいだし……動くなら大陸を渡る前に動いとかないと流石にキツイだろ?」

『そうだね。それについては一理ありだ。だから僕もそんな可能性は低いかな、とは思ってる……でも居た場合が面倒だからね』

「それはそうだけどさ……」

『んー……そうだね。とりあえず現状情報が足りなすぎるから、話してみて損はないんじゃないかな。あ、話すならソーラさんとリリアナさん達だけでも良いかもしれない』

「あ、なるほど……」


 現状、<<太陽の牙>>において尤も親しいのはカイトという共通の知り合いが居るソーラと副団長であるリリアナ。今回の一件の中心人物の一人と言われるミネアだ。

 リリアナとミネアについては状況から早急な確認が必要とカイトが裏取り調査を進めてくれているらしかったが、カイト曰く別に調べていた限りではこの二人は裏ギルドや組織に内通している可能性は非常に低いとの事であった。


「まぁ、ソーラさんなら話せると思うし、一応今日は休みになってるって話だから一度聞いてみるよ」

『そうだね。これについては僕より君の方が良いだろうし』

「よし……じゃあ、一旦帰るよ。飯食ってからの方が向こうとしても失礼にならないだろうし」

『りょーかい。僕も少し早めに下に降りておくよ』


 これで次の方針は決まった。そう決めたソラは通信を終わらせると、腰掛けていたベンチから立ち上がって一度宿屋に戻る事にするのだった。




 さて再度ソラがトリンとの間で相談を終えてしばらく。二つ目の鍛冶屋から戻って宿で早めの昼食を食べた彼は一度小休止を挟むと昼を少し過ぎた頃に改めて行動を再開。ソーラ達<<太陽の牙>>が寝泊まりしている『青のさざなみ亭』へと足を運んでいた。


「ってことなんっすけど……取り次いで貰えないっすかね」

「……少々お待ち下さい」


 受付にて来意を告げたソラの要請を受けて、宿屋の受付は一度ソーラ達に内線を繋いでくれる事になったらしい。残念ながら一昨日話した相手が今日は居なかったので再度紹介の話からしなければならなかったが、なんとかなったようだった。というわけで、しばらくするとソーラが上から姿を見せた。


「おーう……おはよー」

「お、おはようございます……す、すんません、おつかれの所……」


 やって来たソーラであるが、非常に眠そうに目を擦っていた。つい先程まで寝ていたらしい。ちなみに、本来今日は休日ではなかったそうなのだが、昨日急遽ソラ達との間で状況をすり合わせる必要が出てしまった為、ギルド全体で休みだった所をリリアナ達含め臨時で動いてくれたらしい。そのかわり、<<太陽の牙>>は今日全員非番になっているそうだった。


「いや、良いって……ふぁー……おはよー」

「おはようございます。今日はいつもより眠そうですね」

「まなー……あ、そうだ。とりあえずソラが来たら普通に取り次いでくれて良いよ。そいつ俺のダチのダチなんだ」

「あ、わかりました。他の子にもそう言っときますね」

「おーう……」


 どうやらソーラはもう宿屋の受付と親しくなっていたらしい。受付の言葉にひらひらと手を振って応じていた。というわけで、そんな寝ぼけ眼の彼と共に一旦は宿屋に併設されているレストランへと入る。そうして飲み物――流石に迎え酒はしなかったが――を一杯口にする頃には目も覚めたようだ。


「ふぁー……昼まで寝てて怒られないってマジ幸せな時代だ。冒険者やるまではそんな事なかったからな」

「どんな生活だったんっすか、その頃って」

「んー……休みってが基本なかったけど……朝起きたらとりあえず研究所に専属でついてる兵士から戦闘技術学んで、昼は魔物の弱点とか学んで……夕方ぐらいになると流石にちょっと時間が出来たからガキ共の面倒見て……その繰り返しかな。外に出てたらそうじゃなかったけどさ」

「はー……」


 大変そうだ。ソラは感心した様にそう思う。なお、わかろうものだが外に出るというのは戦場に出るという事だ。当然訓練も何もなかった。というわけで、そんな事を話しながらひとまずは雑談を兼ねた話し合いを行う事になる。


「お前そういや飯食ったの?」

「あ、うっす……まぁ、動いてたんで軽めにっすけど」

「そか」


 それで軽めのものなのか。ソラが頼んだのは若い冒険者が昼に選ぶにはかなり軽めの内容――サンドイッチ――だった事を受け気にしたソーラであるが、ソラの返答に納得したようだ。

 一方の彼は体質等もあるからか朝からガッツリ行ける様子で、豪快にステーキを注文していた。というわけで、お互いに注文した物が届くまでにソラは今回の来意を告げる事にした。


「ああ、裏ギルドに繋がってる奴らか……それは俺達もユニオンの内通者が見付かった時点で探しててさ」

「うっす……そう思って、そこらの情報欲しいなと」


 どうやら案の定ソーラ達もユニオンに内通者が居た事に勘付いた時点で増援として差し向けられた内通者を探していたらしい。問いかけに少し思い出す様に真剣な顔を浮かべていた。というわけで、少し考えた後。彼はソラへと告げた。


「……夕方もう一回来てくれるか? そこまでの間にウチで持ってる情報洗い出してみる」

「すんません。こっちもそれまで一旦鍛冶屋とか道具屋とか回って情報集めますんで……」

「おう……ま、とりあえずその前に飯だな」

「あはは」


 ソーラが方針を決めるとほぼ同時に運ばれてきたステーキに、ソラは一つ笑う。そうして、一旦二人はレストランで食事を行う事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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