第2508話 冒険者達 ――活動再開――
冒険者にして賢者ブロンザイトの実弟であるカルサイト。そんな彼からの要請を受けて裏ギルドが暗躍しているという『アダマー』という街にやって来たソラとトリン。
そんな二人はユニオンの紹介制度を利用して裏ギルドに内通しているギルドの候補であった<<太陽の牙>>と会合。そこで<<太陽の牙>>のギルドマスターがかつてカイトが世話になったソーラという青年である事を把握。彼らから事情を聞く事となっていた。というわけで、そこで得た情報をカイトに共有した後、二人は一旦そこで今後の話を行っていた。
『とりあえず、ソラ。お前はそのまま現地で裏ギルドの連中を探ってくれ。流石にこのまま回収したら話がよりややこしくなりかねない』
「回収して引き上げ、とかにはしないのか?」
『それもプランの一つではある……が、今回はカルサさん側の事もあるから、裏ギルドの情報はある程度欲しい。それに兄貴達狙いなら兄貴達が滞在する間は裏ギルドの連中も動くに動けないはずだ』
「今動いてないのは準備中、って所かな?」
そもそも裏ギルドの連中とてソーラ達の腕はわかっているはずだ。ソラはそこらを考えながら、カイトへと一つ問いかける。これにカイトも一つ頷いた。
『だろうな。カルサさんの襲撃からまだ一週間も経過していない。兄貴達がこっちに来たのが半月前……流石に相手の力量やここが双子大陸でない上、内通者だったユニオンの職員も殺しちまってる。耳聡いギルドは軒並み裏ギルドの介在を警戒してる。そこらとバトるのなら兎も角、普通は襲撃出来るもんでもない』
「そだよな……でもなんでユニオンの内通者殺したんだろ」
『潰しが利く程度だったのか、それともシリアルキラーだろう。殺しが趣味っていうヤバい奴……大方捕まったから情報吐かれる前に殺しちまった、ってでも言ってるんだろう。判断としちゃ間違っても無いしな』
ソラの疑問に対して、カイトは大方そんな所だろうと答える。とはいえ、たしかにそう考えれば筋は通っている。なのでソラもそれを前提として、一つ気を引き締めた。
「ってことは……ガチで普通に町中での戦闘もあり得るか」
『ありがたくない事だがな……十分に注意しろよ。殺しのプロだと更に厄介だ』
「わかってる……万が一の切り札はいつでも取れる所に置いてる」
『そうした方が良いだろう』
ちりん。ソラは少し弾く様に耳に装着したイヤリングの中にある<<偉大なる太陽>>を鳴らす。相手が厄介そうである事ぐらい、最初からわかっていた。そして本来はソーラ達の協力なぞ考えていなかったのだ。それを考えれば、現状はかなり好転していた。
「おう……あ、そうだ。そういえばカルサイトさんはどうすりゃ良い?」
『ふむ……確かにそうだな。それについてはこっちから連絡を送っておこう』
ここで取れる手は二つ。ソラ達が自分でカルサイトに接触するか、カイトを経由してカルサイトに接触するかだ。が、別に黒龍と呼んでいた冒険者が自分達の知り合いかもしれない、というのは元々言っていた事だ。なのでその程度の事を伝えるためにわざわざリスクを冒す必要も無いだろう、とカイトは判断したようだ。
「りょーかい……で、こっからだけどとりあえずどうすりゃ良い。当初の予定だった黒龍はソーラさんって確定したし、なんだかんだ狙いも多分そうだ、って所までは掴めただろ?」
『そうだな……まぁ、さっきも言ったがここで撤退は無しだ。間違えちゃならんが、オレ達の今回の仕事は裏ギルドに繋がっているギルドのあぶり出し。そしておそらくまだ居るだろう内通者のあぶり出しだ』
「やっぱまだ居そうなのか」
『流石に一人しかいないのに殺しはしないだろう……まぁ、さっき言ったシリアルキラーならやりかねんけどな』
ここらは本当に出たとこ勝負というか蓋を開けてみないとわからん。ソラの言葉にカイトも少しだけ呆れた様に、それでいて困った様に首を振る。
「結局はそこなのか」
『そういう事だな。採算性を考えて動けるなら居る可能性は高いし、採算性を考えない奴なら居ないでも不思議はない。相手の組織の規模から考えれば、居ても不思議はないとは思うが……ま、そっちについてはお前が考える事じゃない。カルサさんがやる事だ』
「か……」
元々この件はカルサイトが動いていた事だ。なので勝手も彼の方がわかっているだろう、とソラも思ったようだ。カイトの指摘に対して彼も下手に自分が動くべきではない、と素直に受け入れる。というわけで、そんな彼にカイトは改めて指示を下す。
『で、そうなってくるとお前らの仕事は今のまま裏ギルドに所属するギルドのあぶり出しで良い。まぁ、正確に言えば内通者に協力して動くだろうギルドのあぶり出しだ。とどのつまり、昨日と同じく地道にギルドを観察して雰囲気はどうか、とかの情報収集だな』
「結局それなのね……」
『わかっていた事だろ……まぁ、こっちも何か情報があればそっちに送るし、ある意味お前らが囮に近いのは囮に近い。お前らの動きに合わせて何か動きを見せればこちらで対処も出来る。とりあえずは動いて相手の動きを誘発してくれ』
「りょーかい」
兎にも角にも動かねば相手も動きを見せられないのだ。ソラもそれを理解していたわけであるが、やはり自分達を囮の様に使わねばならないからか少しだけ気が重かったようだ。というわけで、更に二人は少しの間もし相手が動きを見せた時等についての話を行い、今日の報告を終わらせる事にするのだった。
さてカイトとのやり取りからしばらく。ソラは一旦トリンとの間で相談の時間を確保していた。
「という感じになるって」
「まぁ、それが妥当だろうね」
「おう……とりあえずこっからどうする?」
引き続き裏ギルドの調査を行う、というのは決まっているが、それに対してどう動くか、というのは現場の判断に任せられている。そして現場はソラとトリンの二人しか居ない。なので基本は二人でここからの事を相談するしかなかった。というわけで、ソラからの相談を受けたトリンが少しだけ考える。
「そうだね……とりあえず今日は迷宮の攻略を行ったから、ひとまず急いで別のギルドと接触するのは避けた方が良いだろうね。探っています、っていう印象をあからさまに与えかねないから」
「そか……ってなると、基本は外堀から確認してく方が良いか」
「そうだね……『アダマー』に居る冒険者がどうなのか、というのを事前調査している体を装うのが良いと思う。サブマスターとしてそこらの調査に来ている、というのが一番自然だからね」
トリンの助言を受け、ソラはここからの流れで確認するべき点を口にする。直接的な接触の内、一番最初に取れる手である迷宮の調査の為、という手札はすでに切ったのだ。再度切るならトリンの言う通り日にちを空ける必要がありそうだった。となると、別口で探る必要があった。
「ってことは、武器屋とか鍛冶屋とか冒険者が一番利用しそうな所とか、酒場とかの情報が集まりやすい所の調査か」
「そうなるね」
「そっか……んー……トリン。そう言えばこの部屋の結界とかはどうだった?」
「ああ、それについては確認したけど、何か細工をされている形跡はなかったよ。多分、まだ向こうには僕らの事はバレていない」
「そか……んー……」
トリンの報告に、ソラは少しだけ方針を考える。そうして数分。どうするべきか考えた彼であったが、最終的な結論を下した。
「トリン。明日明後日とお前報告書書いてる感じ出して貰って良い? 俺一人で動いてみる」
「大丈夫?」
「んー……ぶっちゃけるとちょっと不安だけど、一応サブマスターとして来てるし、お前の本来の役目は俺の補佐。ってことは、どっちかが現地で情報を集めて、それを報告書として記載していく、ってのがギルド……ウチとしての流れとして一番自然だと思う。そこで常にツーマンセルやってたらなんか違和感ってか……」
「んー……確かにそれはあるかもね。警戒して常に二人で、というのは確かにおかしいといえばおかしい……けど新しい場所だから警戒している、という感じでも通せると思うよ」
ソラの指摘が正しいものであるとしながら、トリンはこう考える事も可能と口にする。とはいえ、これについてはソラも理解はしていた。
「そりゃ、俺もわかってるけど……ここから動く所は基本は一人でも問題無い所だろ? 酒場以外だけど」
「それは確かにね」
「そ……ってなると、一旦お前には報告書書いて貰ってて、って感じで一人で行ける所は行っておいた方がギルドとしても妥当なんじゃないか、って思った」
「んー……まぁ、それはそうだね。色々と言い訳が出来ないわけじゃないけど……」
現状、裏ギルドが介在しているかもしれないと聞けばこそ警戒している。が、この話はまだ一般にはなっておらず、おそらく聞いているのは『アダマー』で手広くアンテナを張っているギルドだけだ。
まだ来たばかりのソラ達がそれを知っていて警戒している、というのは中々におかしいものがあった。というわけで、トリンも最終的にはこのソラの指摘と現状の彼の力量等を鑑みて、これを受け入れる事にしたようだ。
「……そうだね。わかった。じゃあ、僕は一旦明日からは待機しておくよ。せっかくだからそのまま報告書も作っておくけど……どうする? せっかくだから君が明日から手に入れた情報も書いておく?」
「あはは。それは頼む……ま、せっかくだからウチとしても役立つ情報は手に入れておいて損は無いしな」
トリンの問いかけに笑いながら、ソラは一つ頷いた。そうして、二人は明日からの流れを決めると、一旦貰った地図を見ながらどこを確認するべきかを改めて考える事になるのだった。
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