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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第96章 冒険者達編

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第2504話 冒険者達 ――ひとまずは――

 ブロンザイトの弟にして冒険者であるカルサイトの要請を受け、『アダマー』という街で暗躍するという裏ギルドの調査に乗り出していたソラとトリン。

 そんな二人はかつてカイトが少年兵だった時代に世話になったソーラという青年と再会すると、彼が現在率いているというギルドの面々の紹介を受ける事になるのであるが、そこで同時に彼らが何かしらのトラブルを抱えている事を知る事となる。というわけで、お互いの事情を話し合う為にも『アダマー』にある迷宮(ダンジョン)へと潜入。一旦そこでソラは自身の実力を<<太陽の牙>>の面々に示していた。


「はっ!」


 二階まででひとまずの実力を示した事で、ソラとソーラの両名を主軸として一行は進む事になっていた。というわけで、ここでのソラは彼本来の役割である盾として一行を守る役目だった。


「おら……よ!」


 ごぉん。そんな轟音と共にソーラの持つ身の丈ほどもある大剣が振り下ろされ、オーガを一刀両断に切り捨てる。さすがは巨大な竜と戦う為に作られた大剣。オーガ程度ならあっけなく真っ二つだった。


「す、すごいっすね、その大剣」

「昔俺が使ってたのより使いやすい」

「あ、そういやなんかそんなの昔使ってた、って聞きましたね」

「おう。どうにもカイトが遺品って事で持ってって、そこで誰かに渡した、って聞いてる」


 この時ソラは詳しい話は覚えていなかったのでわからないのであるが、これは椿の大剣の事だ。そして勿論、ソーラに至ってはほぼほぼ興味がなかったのか聞き流した。というわけで両者共にそんな感じ、という様子で話を飛ばす。とまぁ、そんな雑談が出来るぐらいには中階層までは余裕が見えていた。


「……大体ランクA相当……か?」

「そうだと思います」


 リリアナの問いかけに、杖を持つ女性が一つ頷いた。女性の年の頃は二十歳前後だろう。今回の<<太陽の牙>>は全員で五人。ソーラ、リリアナが物理的なアタッカー。この女性はサポーター、具体的にはゲームで言う所の所謂ヒーラーやプリーストに相当するらしく、怪我の治療は一手に引き受けてくれていた。


「意外だな……もう少し弱いかと思ったんだが」

「いえ……確か昨日調べて貰ったのですが、どうやらミニエーラの一件に彼も関わっていたそうです」

「……あれか」


 それなら納得できようものだ。ソーラと共に敵を殲滅していくソラを見ながら、その強さの遠因を察する。というわけで前線の二人が十分に戦える様に弓矢で支援をしながら、リリアナは先の女性ヒーラーに問いかけた。


「どう見る?」

「……わかりません。団長がなぜあの方々に頼ろうとしているのか……」

「まぁ……そもそもソーラには謎が多いのも事実だが。いや、そんな事を言ってしまえば、それを担ぎ上げた私達はどうなんだ、というツッコミの一つも入るか」

「あはは」


 元々ソーラ自身、色々とあってリリアナらと行動を共にしていると言っている。なのでリリアナ達にはリリアナ達の事情があっても不思議はなかった。と、そんな事を話す二人に軽装備の男が問いかける。


「それよりリリアナさん。そういえば噂で聞けば、あの天城って奴。神剣を持ってるって噂あったんですが……」

「神剣を?」

「ああ、そういえばそんな眉唾な噂もありましたね」


 驚愕に包まれるリリアナに、女性ヒーラーはそういえばと頷いた。そんな彼女にリリアナが問いかける。


「そうなのか?」

「ええ……眉唾な噂ですけど。ただミニエーラでの一件からそんな噂がちらほらと聞こえているそうです」

「ふむ……いや、だがしかし、今持つのは神剣ではないな。上等な拵えの剣は使っている様子だが……いや、彼の実力を考えれば相応の品か」


 しばらくじっくりとソラの持つ片手剣を観察したリリアナであるが、少なくともこれがそれではない事を明言する。それもそのはず、今回ソラは裏ギルドが相手である可能性を踏まえ、切り札である<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>はいつもどおり隠していた。が、やはりあくまでも自分の見立てなので、リリアナは最後の一人に問いかける。


「ナージャ。君の意見を聞きたい」

「……見た所、私からも神剣には見えない。が、あの耳のイヤリングから明らかに異質な力が視える」


 リリアナの問いかけに答えたのは、フードを目深に被った女性だ。ただしこちらは顔もほぼわからず、体格もゆったりとしたローブから察する事は出来なかった。

 声からすると女性の様子だが、年頃なども不明だ。武器は杖でパーティでは魔術による攻撃や先の女性ヒーラーの補助として補助魔術を掛ける事が役目だった。後に彼女らに聞けば今回はソラとトリンが加わる事から、バランスの良いパーティ構成にしたとの事であった。


「なるほど……あれか。神剣だと思うか?」

「わからない……けれど、間違いなく逸品と呼べるだけの品が封じられている事は事実だ」

「そうか」


 少なくともナージャの目を誤魔化せるほどの品ではある。それがわかっただけ収穫と言えるだろう。基本何も考えていないようなソーラを横目に、リリアナはそう考える。そうして、彼女は改めて先の女性ヒーラーに問いかけた。


「ミネア……とりあえず腕は信じられそうだが」

「そうですね……」


 ソーラと並び戦闘を行うソラを見て、ミネアという名だったらしい女性ヒーラーは少しだけ考える。どうやらソーラの足手まといにならない程度の腕はあるらしい。そう判断する。そうして、しばらくの後に結論を下した。


「……多分、話して大丈夫だと。お二人共賢者ブロンザイトの弟子ですし、ソラさんはあの通りの腕を持っている様子ですし……」


 昨日調べた時点でトリンの名はすぐにわかった。なのでミネアはトリンがブロンザイトの最後の弟子として界隈ではそこそこ有名であった事から、知略も武力も共に信頼するに値するだろうと判断したようだ。


「そうか……ならひとまず、次の階層を突破してからか」

「はい」


 これが吉と出るか凶と出るか。それはこの場の誰にもわからない事だ。というわけで、一同は改めて目の前の事に集中する事にして、迷宮(ダンジョン)の攻略に取り掛かる事にするのだった。





 さてそれから更に一時間。昼を少し過ぎた頃の事だ。一同は十階層のボス部屋に辿り着いていた。


「っと! やっぱきっついな!」


 現れたのはオーガやオークといった巨大な魔物より更に巨大な魔物。十数メートルはあろうかという巨大なゴブリン種の魔物だった。名は『ギガント・オーガ』。先に『子鬼の王国(ゴブリン・キングダム)』で現れた巨大なゴブリン種の手前に位置する個体だった。

 しかも身の丈に合った片手剣――流石にサイズからソラ達からすれば大剣にしか見えないが――を装備し、それを振るうのだ。一撃でも直撃すれば即死だった。そんな攻撃を、ソラは真正面から受け止めていたのである。


「ソーラさん! こっちで補佐してますけど、そう何発も受け止められませんよ!」

「わーってる! ふぅ……」


 ふぅ。トリンの声に対して盛大に深呼吸を繰り返して、ソーラは魔力を蓄積させる。無論、防いでいるのはソラとトリンだけではなく、他の面々も彼へ攻撃が届かない様に牽制を行っており、見様によっては防戦一方だった。


「はぁー……<<屠竜大剣(とりゅうたいけん)>>解放」


 ソーラが大剣のグリップを握り込む。すると大剣に備え付けられていた機構が展開して、刃の真横に設けられた魔力の噴出孔を露わとした。そうして魔力が巨大な刃となり伸びていき、ついには数十メートルの『ギガント・オーガ』の身の丈をも上回る巨大な魔刃と化した。


「零式じゃ、自分でやれって言われてたんだけど……便利になったもんだ」


 轟々と迸る魔刃へと両手で支える様に構え、ソーラは真正面から『ギガント・オーガ』をしっかりと見据える。それに対して『ギガント・オーガ』が気づかぬはずがなく、ソラ達の牽制を一切無視して彼へと向かう。


「……」

『オォオオオオオオオ!』


 どしんどしんと地響きを響かせながら迫りくる『ギガント・オーガ』に対して、ソーラはしっかりと地面を踏みしめて大剣を構える。その姿は堂に入るもので、かなりの慣れが見え隠れしていた。そうして、両者の距離がお互いの得物が届く距離となった瞬間。両者同時に得物を振るった。


「はぁ!」


 超巨大な魔刃と巨大な片手剣が激突する。そうして勝利したのは、言うまでもなくソーラの魔刃だった。そうして金属が砕け散る音と共に巨大な片手剣が砕け散り、そのままソーラは容赦なく魔刃を振り下ろす。それを受け『ギガント・オーガ』は袈裟懸けに切り裂かれ、その反動で洞窟の壁に激突する。そこにソーラが声を上げる。


「……ふぅ。ナージャ!」

「承った」


 ナージャがソラ達の支援の傍ら編み上げていた魔術を展開。洞窟の壁に激突した『ギガント・オーガ』の直上に巨大な魔法陣が展開される。そうしてその中から巨大な火球が射出され、『ギガント・オーガ』を消し炭とした。


「ふぅ……こんなもんか」


 ソーラは魔刃を生み出していた機構を格納させ、数度振るって大剣を背負う。どうやら彼はカイト達から貰った初期費用で大剣を背負える専用の装備を買ったらしく、背中に当てるだけで鞘が展開されて大剣は自動で格納されていた。


「ソラ、トリン。二人共ありがとな」

「うっす……でもこのぐらいじゃソーラさん達なら楽勝じゃないっすかね」

「そうでもないさ……な、カマル」

「そーだな。正直な話、ここに来てからの中で今日が一番俺は楽だった」

「そうなんっすか?」


 カマル、というのは先にリリアナにソラが神剣持ちである噂がある事を告げた軽装備の男性だ。彼は役割としてはスカウト。斥候だ。なので迷宮(ダンジョン)にある罠等を見極める役目を負っていたのであるが、軽装備である事からこういった場合には囮として前に出る事も少なくなく、肝が冷える事は多かったようだ。


「そーなんよ。どう? このままマジでウチ入らない? 俺ともう一人居る奴で団長の支援やってんだけど、かすっても即死だろ? 肝が冷えるのなんのって」

「あはは」


 リリアナに対しては敬語なだけで、ソーラやソラに対しては友達のような感覚で話してくれていたようだ。ソラもそんな彼の冗談に楽しげに笑う。と、そんな事を話していると中ボスを倒した報酬がドロップし、それを回収。改めて先に進む事にするのであるが、そこでソーラがソラとトリンに告げた。


「この先に少し小休止出来る場所があってさ。そこでお互いの事情を話そう」

「とりあえず……大丈夫って判断されたって事で大丈夫すか?」

「おう……ま、そこらも詳しくは先で、って事で」

「うっす」


 せっかく休める場所があるというのにそこを有効活用しない道理はないだろう。ソラもそう納得し、ひとまず次の階層にあるという休憩所へと向かう事にするのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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