第2502話 冒険者達 ――黒龍――
ブロンザイトの弟カルサイトの要請を受け、彼が追っていた裏ギルドの内通者に関する事件への協力を行う事になったカイト以下ソラ、トリンの三名。
そのうちカイトは流石に名前が大きくなっていた事と内通者がかなり大きな裏ギルドに通じていた事から後方支援かつ敵が大部隊を繰り出してきた場合に備え本隊を率いる事にする一方、ソラとトリンは『アダマー』という迷宮で栄えた街に入り現地で活動するカルサイトの支援として動いていた。
というわけで、『アダマー』に到着して一日。二人はユニオンの紹介制度を利用して、カルサイトが裏ギルドの構成員と睨んでいたギルドの一つである<<太陽の牙>>というギルドと接触していた。
「「「ん?」」」
ソラとトリンの二人が近づいてくるのを見て、<<太陽の牙>>の面々が怪訝そうな顔をする。人数としては十人にも満たないほどの少数だったが、ソラには誰も彼もが最低でも冒険者の平均層を上回る力量を持つ腕利きと考えられた。そんな事を観察するソラに対して、パーティ用の席の中央に腰掛けた女性と見紛うばかりの男が口を開いた。
「俺達になんか用?」
「あ、うっす……えっと、ユニオンの紹介制度で紹介されて来たんっすけど……間違ってたらすんません。ソーラさんですか?」
「俺がそのソーラだ」
ソラの問いかけを受けて、先に口を開いた女性と見紛うばかりの青年が自分がそうだと明言する。それを受け、改めてソラは一度だけ彼の顔をじっと確認する。
「……」
「……なんだよ」
まぁ、話しかけるなりまじまじと自分の顔を見るのだ。ソーラならずとも他の面々も少しだけ警戒した素振りを見せる。が、その一方でソラはやはり、と安堵を浮かべる事になった。
「あ、やっぱそうだ。ソーラさんっすよね、カイトの知り合いってか……カイトが兄貴って呼んでた」
「はぁ? カイトってどのカイトだよ。いや、まぁ、知り合いに居るっちゃ居るけどよ」
「あ、いや……俺がわかんなくてもしょうがないっす」
そりゃ覚えてないだろうし、あの頃から顔も随分変わっちまったからな。怪訝そうながらも少しだけ警戒を解いてくれたソーラに、ソラは笑って首を振る。そもそも会ったのは一度だけだし、話したのもほんの僅かだ。というわけで、彼はその時の事を語る事にした。
「えっと……ラエリアの南の森で会ったんっすよ。その時少し話したの、覚えてませんか? ほら、ソーラさん、俺の事聞いて似た名前だなー、って笑ってたじゃないっすか。その時のソラっすよ」
「ソラ……ソラ……ん?」
どうやらソーラも言われて何か思い当たる節があったらしい。今度は彼の側がソラの顔をまじまじと確認する。それに、彼の近くに座っていたエルフの女性が僅かに警戒を解いて問いかける。
「知り合い……そうか?」
「ちょい待ち……後少しで出てきそうなんだよ。いや、待てよ……確かあの時……あー! お前、あの時のか! そうだ、カイトもソラって言ってた! あいつの所のサブマスターの! 確か飯用意してくれてた!」
「そうっす、それっす! お久しぶりです!」
ぱんっ。合点がいったとばかりに手を叩いて喜色を浮かべたソーラに対して、ソラもまた喜色を浮かべる。そうして頭を下げた彼に、ソーラが嬉しそうに問いかけた。
「久しぶりだな! いやぁ、あの時はろくすっぽ話が出来なくて悪かったなぁ!」
「いやぁ、ありゃあの時はしょうがなかったっすよ」
「あはは……あれか? カイトも近くにいんのか?」
「あー……いや、まぁ、そこらは色々とあるんっすけど……まぁ、近くには居ないんっすよ」
「そっかぁ……っと、おーい! こっちの椅子二つ借りるなー!」
「あ、はーい!」
カイトが居ない事を残念がったソーラであるが、彼は過日の人懐っこい笑顔を浮かべ近くにあった空席を二つ借りてソラ達へと席を勧める。
「っと、せっかく来てくれたんだ。飲もうぜ」
「あ、っどもっす」
「おう……そっちは?」
「あ、こっちは今俺の補佐をしてくれてる奴で……」
「トリンです」
ぺこ。ソラの促しを受けたトリンが席に座って一つ頭を下げる。それにソーラも一つ頷いた。
「おう、トリンな……にしても見違えたな。全然気づかなかった」
「いやぁ……色々とあったもんで」
「ソーラ。知り合いなのか?」
「あ、おう。前にマクダウェルに知り合いが居るって話したよな? その知り合いがやってるギルドのサブマスターがこいつなんだよ」
先のエルフの女性に問いかけられたソーラが、ソラ達の身の上を話す。そうしてソラが自分のギルドマスターの知り合いである事を理解すると、<<太陽の牙>>の面々も完全に警戒を解いてくれた。
「そうか……ああ、悪かった。私はリリアナ。弓兵だ」
「あ、ソラ・天城っす」
このリリアナというエルフの女性がサブマスターらしい。彼女を筆頭にソラとトリンは一通り<<太陽の牙>>のギルドメンバーの紹介を受けつつ、軽く酒に付き合う事になる。
「っぷはぁ! って、感じが俺達のギルドの構成員だ」
「ギルド作ったんっすねー。なんかちょっと色々と旅しながらマクスウェル目指すってカイトから聞いてたんっすけど」
「ああ、それは変わらないんだけどさー。まぁ、色々とあってさ。ちょっと途中で出会ったこいつらと組んでるんだ」
どうやらソーラが西へ向けて旅をしているのは変わらないらしい。それにどうやらリリアナらが加わった事により、ギルドを結成したようだ。そこらについて何があったかは定かではないが、ひとまずここでは関係の無い話だったのかソーラは一転ソラへと問いかける。
「で、ソラ。お前らは今何やってんの?」
「まぁ、ウチは相変わらずっすよ。地球に向けて帰る方法探してるってか……まぁ、カイトにおんぶにだっこって感じは変わってないんっすけど」
「あはは。あいつらしいよなぁ……」
「ソーラ……そのカイトというのが、言ってたマクスウェルで協力してくれそうな方ですか?」
「あー……おう。それが言ってたカイト」
ソラから聞くカイトの状況に笑ったソーラであるが、そんな彼は仲間の女性の問いかけに一つ頷いた。これに、ソラが首を傾げる。
「なんかあったんっすか?」
「んー……確かカイト近くに居ないんだよな?」
「……まぁ。あー……そっすね。どこか話せる場所とかってないっすか?」
「うん? あー……」
どうやらお互いに訳ありらしい。ソラの様子からソーラもそれを察する。というわけで、そんな彼にリリアナが一つ提案する。
「ソラくん……だったな? それなら明日、迷宮に来てくれるか? あそこなら誰かに聞かれる事なく話せるはずだ。ちょうど君はそれで来た様子だから、周囲も怪しまないだろう」
「お、それ名案……どう?」
「あ、そうっすね。確かにそれが良いかも……トリン、どう思う?」
「そう……だね。それが一番良いと思う」
どうやら向こうにも事情がある様子だし、こちらもこちらで彼らの協力が得られる可能性が高まったのだ。お互いの現状をすり合わせる為にも、一度きちんと話をしておく必要がありそうだった。
というわけで、両者明日迷宮で話をする事で合意したわけであるが、そうなるとここで話す事はない。無いのであるが、せっかく顔見知りが来たのだ。何も話さずハイおしまい、はあまりに味気ないのでそのまま飲み会に参加させてもらう事になる。
「なんと……君達はあのブロンザイト殿の弟子だったのか」
「ブロンザイトさんが身罷られたとは聞きましたが……」
「それでなんか顔変わった、って思ったのかー」
やはりソーラが気になっていたのは、ソラの顔立ちが記憶にあるのとはかなり変わっていた所だ。なのでそこらの事情を語りながら話をしていた。それ以外にもソーラがあれからどうしたのか、等も勿論話していた。
「え……あれソロったんっすか?」
「いっや、俺もヤバいかなー、って思ってたんだけど、カイトがやれた、っていうじゃん? ならやってみるかなー、ってやったんだけど……前より弱かったぞ」
「あー……そういやカイトから今の魔物は三百年前よりかなり弱くなってる、って聞いた事ありますね」
「っぽいな。俺もそんな感じ感じてた」
「それでも、貴様が一人であれを倒せるのはおかしいぞ……」
どうやらソーラの戦闘力の高さは仲間内でも印象に残っていたらしい。この様子だと全員腕利きは腕利きであるものの、ソーラは頭一つ飛び出た戦闘力を持つ様子だった。というわけで、この日は結局夕方から夜まで飲み明かし、気兼ねなく休む事になるのだった。
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