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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第95章 神の書編

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第2453話 魔術の王国 ――ダウジング――

 魔術都市『サンドラ』に招かれ、体験授業を受けていたカイト。そんな彼は三日目の放課後となりシレーナの要請を受けてマグナス六賢人の子孫にして彼女の父であるレーツェルとの会合を行うこととなっていた。

 そうして会合も終えた彼はその対価としてシレーナに案内され、ティナらと共に『サンドラ』でも有数の書店へと訪れていた。そこは店員さえ蔵書数を把握していないような超巨大な書店となっており、カイトは書店の案内に従ってダウジングを頼みにユリィに頼まれた教本を探し求めていた。


(とりあえず……教本はこんなもんかな。去年刊行の物が比較的見付かってよかった……後は他の科目が無いか、って所だが……流石にダウジングで探して見つからない以上、これ以上は諦めた方が良いか)


 専用の袋にユリィに頼まれた各種の教本を入れながら、カイトは満足げに頷いた。流石はシャルロットの神器である杖で増幅し、なおかつその神使である彼によるダウジングだろう。三十分ほどで十数冊も教本を見付け、おおよそ十分だろうと思われた。


「……ふぅ。にしても……」


 本当に人気が無いな。カイトは用意されていた椅子に腰掛け、周囲を見回して苦笑を浮かべるしかなかった。もともと相当な広さがあることはわかっていたが、それにしたって広すぎる。店員一人見当たらなかった。


(まぁ……そりゃそうなんだろうけど。魔術師の中には人付き合いがとことん嫌い、ってのも居るしなぁ……万引対策の結界はエネフィアでも有数の領域。店員が目視で常駐するよか遥かに良いってわけか)


 ある意味これも顧客の需要に応じた結果の一つなのかもしれない。カイトはこの三十分で一度も誰とも出会わなかったことを受け、そう思う。


(兎にも角にもこりゃ何があっても不思議じゃない。下手すると神殿都市の大図書館並に色々とありそうだな……)


 こうやって色々と集めると集めるでトラブルまで色々と集まっちまうからなぁ。カイトは神殿都市で起きるトラブルのいくらかを思い出し、盛大にため息を吐いた。どうしても魔導書という条理から外れた存在が集まるのだ。

 それに合わせて厄介事も山のように集まってしまうのである。そこと同じ様に魔導書も蔵書されているであろうこの書店だ。同じ様にトラブルも山のように起きることはあっただろう。


(……ま、そりゃ良いか。そこらに対処出来なきゃ死ぬだろうし、流石に本屋でそうはならないようにしてるだろ)


 どうせこんなことを考えた所で意味はないし、こちらは客だ。万引防止の結界が展開されている以上、それ以外にも各種の安全措置は取られていることが想像に難くなかった。

 というわけでカイトは小休止を終えて立ち上がり、自身の購入はこれで終わらせ、ダウジングを頼りに瞬の所へと向かうことにするのだった。




 さてカイトがユリィのお使いを終わらせて瞬の所へと向かったわけであるが、一方の瞬はというとダウジングを頼りにすることは出来ないので地道に書棚を見ていた。


「むぅ……」


 書棚の本を適当に手にしては中身を改めている瞬であるが、やはり芳しくはないようだ。そもそも彼の場合、地球時代からこうやって学術的な本を手にとって調べ物をする、ということをしてこなかった。

 そういうのはマネージャーやトレーナーの役目だからだ。なのでここに来て改めて彼は自分を補佐してくれていた数々の存在のありがたみを理解していた。


「……むぅ……」


 あれでもないこれでもない。瞬は初心者向け、と書かれている本を見付けては手にとって、としていたわけであるが、どれもしっくり来ない様子だった。と、そんな所にコツンコツン、と何かを叩く音が響く。


「ん?」


 なんだろう。響く音に首を傾げ、瞬が周囲を見回す。が、見えるのはやはり巨大な本棚と飛空術を使えない者たち向けのはしごだけで、人影一つなかった。と、そんな本棚の陰からカイトが姿を現す。


「ああ、ここに居たのか」

「ああ、なんだ。カイトか。急に音が鳴るものだからなんだと思った」

「ああ、すまん。杖を使って歩いていたからな」


 こればかりは仕方がないことだが、巨大な杖を持ってダウジングをしながら歩いているのだ。必然杖で地面を小突いて歩くことになってしまい、音が鳴っていたのである。


「杖……そういえば何なんだ、それは」

「ああ、ダウジングで杖を使ってな」

「ダウジング……その振り子か?」

「ペンデュラムは見たことないか?」

「ああ」


 仕方がないか。カイトは不思議そうな瞬の顔を見てそう思う。実際、ダウジングなぞ高校生男子が普通に生きていてお目にかかることは早々無いだろう。特に瞬の場合は魔術的な要素は一切関係なかった。余計、お目にかかることはなかっただろう。


「そうか……こいつが振れた方向に目的の物がある、って失せ物探しでよく使われる魔術だな。精度はお察しだが……割と悪いわけでもない。実際、この広い書店の中で先輩も見付かっただろう?」

「そうなのか……それで地図にダウジングをご使用ください、って書いていたのか」

「まぁな……で、先輩はダウジングは出来ないだろう、と思って手伝いに来てやった」


 ダウジングの便利さを理解した瞬の言葉に、カイトは笑いながら少しだけペンデュラムを揺らす。それに瞬が礼を述べる。


「そうか。すまん……試しになんだが、そのダウジング? 簡単なのか? 俺のイメージだとダウジングというと二つの折り曲げた針金を使ってやるようなイメージがあるんだが……」

「ああ、L字ロッドを用いたロッド・ダウジングだな……ロッド系はやれる奴はやれるらしいんだが、オレは出来た試しがない。あまりやりたくもないしな」

「お前でか」


 基本多彩さが売りのカイトだ。その彼で出来たことがない、というのは瞬にとって驚きだったらしい。が、これにはきちんとした理由があった。


「ロッド系は使い勝手が良くないんだ。ロッド系は杖とかでの増幅も出来ないし、本気でやろうとすれば専用の刻印を刻んだ専用のロッドを使うそうだが……それ故にロッド系はペンデュラムに比べ費用が嵩む。更に言えば両手使うL字ロッド。あれは特に使い勝手が良くない」

「良くない? なぜなんだ?」

「両手塞がるからに決まってるだろ」

「あー……」


 カイトや瞬といった近接戦闘を行う者にとって、両手が武器以外で塞がってしまうのは致命的な欠陥にも等しい。その面がデメリットとなり、カイトの酷評に繋がっていた。そんな酷評をしたカイトであるが、気を取り直して本題に入る。


「ま、そりゃ良いわ。とりあえずオレがやってるのはペンデュラム・ダウジング。こっちだと一番一般的なダウジングだな。ティナも基本、というかこれしか使わん。やり方もさほど難しいものじゃなくて、なりたての冒険者が失せ物探しの依頼を受けた場合とかで使っていたりする」

「あー……そういえば時々町中で子供の冒険者らしい奴が何かをやっているのを見たが……あれはダウジングをしていたのか。振り子を持って何してるんだろう、とは思ったが……」


 カイトに言われ、瞬はマクスウェルの街で見た光景を思い出したようだ。得心したように頷いていた。


「そういうことだな。ランクEの冒険者が町中で失せ物探しを行う時にはよく使われていたりする程度には簡単だ……まぁ、ここまで本格的な刻印やらが施された物を持ってるのは魔術師としてもそれなりの力量を持つ奴だから、地道に何度も反応を調べてやるしかない。見覚えがあったのはそれ故だろう」

「ふむ……俺でも出来るのか?」

「出来るぞ……そうだな。魔術を学ぶのなら覚えておいて損はない」


 カイトはそう言うと、異空間の中から初心者用のカスタマイズがされたペンデュラムを取り出す。それを、瞬に差し出した


「これを使うと良い。初心者向けの練習用だ……別に要らんからやる。なんかの折りに手に入れたみたいなんだが……なんで持ってたのかもわからなくてな」

「わからない? 買ったわけじゃないのか?」

「さぁ……気付いたら持ってたから、多分どっかで野垂れ死んでた奴の物をパク……頂いたかどっかで落ちてたのを拾ったんだろう」


 カイトは少し困り顔で笑いながら、瞬の問いかけにそう告げる。勿論、何かの折りに買った可能性やおまけとして付けられていた可能性もあるが、そこは本当に覚えがないらしい。少なくとも誰かに貰ったというわけではないことだけは確かだ、とのことだった。


「良いのか?」

「構わんよ。三百年前だしな……それに経緯を考えりゃ多分元の持ち主はくたばってるだろう」

「そうか……この輪っかは?」

「そいつがダウジングを補助してくれるんだ」

「なるほど……」


 瞬はペンデュラムの振り子として取り付けられたクリスタルの周囲に取り付けられた輪っかを見て、そこに簡素な魔術的な刻印が刻まれていることを理解する。勿論、この魔術が何を意味しているかは彼にはわからなかったが。


「とりあえず慣れるまでは魔道具としてそいつを使ってみると良い」

「やり方は?」

「探したい物をイメージして、そいつを使え……ま、何かを言うより前にやってみた方が早い。鎖の先にある輪っかを中指に通すんだ」

「こう、か……良し」


 なんだかこうしてみると魔術師になったみたいだな。瞬はどこか不思議な気分を得ながら、ペンデュラムを下に垂らす。そうして数秒。振り子がどこかを指し示すことはなく時間だけが過ぎゆく。


「……難しいか?」

「いや……それ以前に何をイメージすれば良いんだ?」


 カイトの問いかけに瞬は困ったように問いかける。何を探したいか、はわかっても何をイメージすれば良いかがわからなかったようだ。これにカイトはたたらを踏む。


「あ、あー……えーっと……そうだな。イメージするのは刻印の教本だ。それも簡単な物……そんな概念を思い浮かべるんだ。勿論、思い浮かべる物が具体的であればあるほど本当は良いんだが……」

「なるほど……」


 カイトの助言に瞬は目を閉じて、本をイメージしてそこに更に刻印魔術と簡単な物であるというイメージを行う。すると動いていないはずの中指に取り付けられた振り子がひとりでに揺れ動き、くるくると回り始めた。これに指先の感覚で気付いて、瞬が目を開く。


「これは……あ」

「イメージが途切れたな。基本は反応が固まるまではイメージし続けるんだ。慣れるまでは難しいが……慣れればすぐに出来るようになる」

「そうか……」


 もう一度。そんな様子で瞬は目を閉じて、再度意識を集中する。そして再度くるくると振り子が揺れて、しばらくすると一定の方向に振れが固定。更に少しして、わずかに傾いた状態で固定された。


「……はぁ。これで良いのか?」

「そうだ……が、流石に反応が薄すぎるな。探すには難しいだろうが……確認してみると良い」

「とりあえずこの方角に従えば良いのか?」

「そういうことだな……あ、変に手は動かさないように注意しろ」

「ああ」


 カイトの再度の助言に瞬はなるべく手を動かさないように注意しながら、振り子の指し示す方角へと歩いていく。そうしてたどり着いた一角であるが、そこには確かに刻印魔術に関する教本はあった。あったが、やはり所詮は初心者。精度が悪かった。


「あるにはあるが……この書棚から探さないといけないのか」

「あはは……まぁ、初心者だとこんなものだろう。流石に時間も時間だ。ここからは変わろう」


 流石に瞬に完璧なダウジングは求めるべくもないだろう。そう判断したカイトは杖の先に取り付けたペンデュラムを用いてダウジングを行う。すると、振り子が揺れ動き明らかに引っ張られているかのようにペンデュラムが斜め上に持ち上がった。


「……これか」

「これは……『初めての刻印魔術』……?」

「初心者向けの教本……だろうな」

「そ、そうだろうが……子供向けか?」

「まぁ……どちらかと言えば魔術師の卵向けなんだろう」


 困ったように笑う瞬に、カイトもまた少し困ったように笑う。見付かったのは二人の言う通りかなり簡単に書かれている教本だ。読みやすいは読みやすいかもしれないが、簡単すぎる様子もあった。故にカイトが告げる。


「まぁ……これでも大丈夫かもしれんが流石に魔術のいろはも無い子供向けか。初手は良いだろうが、もう一冊探しておくべきだろう」

「そうか……」

「じゃ、もう一回ダウジングで探してみろ。次はこいつが反応しないように袋に入れておけ」

「わかった」


 カイトの助言に従って、瞬はひとまずこの教本を袋に入れておく。そうして、この後もしばらくの間二人は刻印魔術の教本を探すべくダウジングを用いて探索を行うことになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「まぁ……これでも大丈夫かもしれんが流石に魔術のいろはも無い子供向けか。初手は良いだろうが、もう一冊探しておくべきだろう」 「か……」 「じゃ、もう一回ダウジングで探してみろ。次は…
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