表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第95章 神の書編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2461/3944

第2432話 魔術の王国 ――談話――

 魔術都市『サンドラ』から数年先を見越しての研究に協力して欲しい、という要望を受け天桜学園の生徒として『サンドラ』を訪れたカイト。そんな彼は先代の生徒会長のルーク、今代の生徒会長のシレーナとの出会いを経て、一旦はシレーナに案内されて自分専用に設けられた個室に入って一休みしていた。


「ティナ……シレーナの腕はどう見えた?」

『まぁ……こちらについては余よりお主の方が見えておろうて』

「そこばかりは、か」


 ティナの指摘にカイトは一つ頷いた。前に言われていたが、シレーナの得意分野は精霊学。そして言うまでもなくカイトは精霊学において権威にも等しい扱いを受けるのだ。彼女の魔術の腕は今回ばかりはカイトの方が見抜ける要因が多かった。


「まぁ……流石ヘクセレイ家と言うべきか。精霊に気付ける奴はほぼ居ないんだろうが、常時三体の精霊が張り付いてたな。あれは懐かれてる」

『どんなのじゃった? 流石に余にも見えぬものは見えぬのでな』

「どんなの、と言われると……まぁ、小精霊か。ただ普通の小精霊じゃなくて、ある程度成長してるから自意識的な物を持ち合わせるようになった領域……だろう。はてさて、その自意識的な物を認識出来るかはわからんがね」


 おそらく出来そうではあるが。カイトはそう口にしながらも、ここはお手並み拝見としておくことにする。なお、魔術においては天才的なティナが見えない、というのは権限の問題だ。

 一応ティナも才覚の関係で居るな、程度はわかるがそれがどの程度の存在でどのような姿形をしているかまでは見切れないのである。というわけで、カイトの返答を受けたティナが少しだけ口惜しげに告げる。


『やはり精霊に関してはお主か契約者にしか見えぬのが多いのう』

「こればかりは権限の関係が出てきちまうからな。才能云々じゃどうしようもない」

『しゃーないのう。ま、それでも見えるだけ余も特異は特異と言うた方が良いんじゃろうが』


 カイトの返答に同意したティナであるが、そもそも姿を露わにしていない精霊を見切れる時点でおかしいのはおかしいのだ。なので彼女もそれで良しとしておく。なお、彼女の述べた契約者は大精霊との契約者ではなく、従属させている小精霊の契約者だ。


『というか、よー考えたらお主。精霊達には懐かれんのか?』

「懐かれるが」

『大丈夫なのか?』


 何を今更、とばかりに返答したカイトに、ティナは少しだけ懸念を口にする。これにカイトは笑った。


「ま、問題はないわね。引き寄せられるってぐらいだ。流石に中位の精霊になると完全に自意識を手に入れてオレの存在も気取る(けどる)だろうが……あの領域の小精霊ならまだ大丈夫だ」

『なら良いか……流石に精霊相手は余もお主も分が悪いからのう』

「流石に、システム側の存在はな」


 小さくとも精霊なのだ。その力は弱かろうと、システム側に属する。殺すことは困難を極めるし、今のように存在にも気付けない事が多い。カイトもティナも小精霊だから、と侮ることはなかった。


「で、その上で聞けば魔術師としてはどう見えた?」

『そちらに関しては悪うはなかろうな。まぁ、精霊魔術の使い手の腕の良し悪しは従属させる精霊の良し悪しになるので余がはっきりと言うことは無いじゃろうが……精霊魔術以外であればまぁ、名にし負うヘクセレイ家のご息女で良かろうて』


 称賛には値するがあくまでも称賛には値する程度、というわけか。カイトはティナの驚嘆も感嘆も無い単なる称賛をそう理解する。とはいえ、これは彼女の述べている通りあくまで精霊を度外視したあまり意味のない想定だ。一応使えないわけではないので確認した程度だった。


「そうか……ま、偽装はバレるだろうが正体ぐらいはばれないようにしときゃ十分か」

『それで良かろ』


 姿を偽る魔術を使うのは冒険者にとってさほど珍しいものではない。例えばカイトのように低度の偽装を施して魔導書を隠すために使ったりすることもある。これは安全な例ではあるが、危険なものだと魔眼を封じていたり厄介な代物――例えば禁書の類など――を封じていたりすることもあった。

 故に下手に冒険者の偽装を解き明かそうとして自滅した者は数知れず、最低限の常識があれば冒険者の偽装を安易に解除しようとはしなかった。


「さて……ふぅ」


 ティナとの軽い相談を終わらせて、カイトは改めて休息を取る。一応、シレーナによると案内はお昼12時30分からとなっていた。少し遅めの昼食として学生達と時間をずらし混雑を回避。その後学生達が授業に入った頃に各階層の案内を、というわけらしかった。なので時間としては一時間ほど間があった。というわけで、カイトは暇もあったので荷解きを魔糸で行いつつ、自身は適当に部屋の中を確認する。


「部屋にあるものは……ベッドに机に衣装棚に……まぁ、普通の学生専用の部屋という所か」


 テレビのようなモニターは見受けられないが、学生の部屋にテレビを備え付けているというのもおかしいか。カイトは別に見たい番組があるわけでもなく、特に興味も無くそう判断しておく。

 何より娯楽が欲しければ地球から持ち込んだ――正確には不意な転移によりティナがデータベースを持ち込んでしまっただけだが――物も山程ある。暇つぶしには困らなかった。


「……流石に監視は無いか」


 学生の部屋を見張るというのも不思議なものだろう。一応留学生用の部屋として用意されているので可能性は無くはないかな、と考えていたカイトであったが、流石に考えすぎかと判断する。

 それにやろうとすれば『サンドラ』の魔術師達は普通に千里眼などの魔眼を使うことが出来る。わざわざ禍根に成りやすい盗撮などを行う意味はなかったのだろう。


「ま、適当に時間潰しておくか」


 やるべきことが無いわけではないが、強いてやらねばならないことがあるわけでもない。なのでカイトは一旦は休憩することにして、昼を待つことにするのだった。




 さてカイト達がサンドラ教導院に到着して数時間。ひとまずの荷解きを終えて彼は指定された談話室へと向かうことにする。そうしてやって来た談話室ではどうやらルークとそのお付きのエテルノ、シレーナが居るだけだった。


「ああ、来たね」

「私が一番最初……だったみたいですね」

「そうだね。まぁ、実際時間としてはかなり早い方さ」


 カイトの言葉にルークは一つ頷いた。別にカイトとしても時計を見て早めに出るか、と考えたわけではなく単に談話室を確認しておきたかったので早めに出ただけだ。こういった談話室は学生達が滞在する各階にいくつか設けられており、カイト達が指定されたのは彼らに用意された一角の一番近い所だった。


「そうですか」

「ああ……ああ、座ってくれて構わないよ。立たれたままも居心地が悪いからね」

「有り難く」


 ルークの指示に従って、カイトは空いている椅子に腰掛けさせて貰う。談話室の広さだが、おおよそ三十人程度が入っても余裕のある大きさだ。中心には暖炉があり、大きめのテレビ――どれも消灯していたが――がいくつかあるなど懇談するには十分な広さと設備が見受けられた。というわけで腰掛けたカイトへと、シレーナが告げる。


「この談話室は基本的には土日祝に加え、放課後に解放されます。またテレビも同様の時間でのみ使うことが出来ます。なお、消灯時間は夜の10時ですから、それ以降は使えないので注意してください」

「わかりました……寮長やそれに類する監督などは?」

「そういうものはいません。あくまでも生徒の自主性に任せられます。ですが門限は存在していますので、その点だけは注意してくださいね」


 カイトの問いかけにシレーナは共同生活でのルールを説明する。そうして、そんな彼女が告げた。


「ああ、ですが一応個別に自分の部屋に色々な物を持ち込むことについては生徒の自主性を尊重する、ということで止められはしません。なのでラジオやテレビなどについては、各自で用意して頂ければ……と言っても、貴方達だとそんなことは無いでしょうが……」

「ですね。流石に二週間ほどの滞在でそんな物を買っても後で苦労するだけですし」

「でしょう……まぁ、せいぜい旅人用の小型端末を用意するか否か、ぐらいですかね」


 カイトの返答にシレーナは笑う。カイトの場合はシレーナの指摘同様にスマホ型の通信機があり、画面は小さいが信号さえ飛んでいれば一般的な放送は閲覧も可能だ。それ以外にもウェアラブルデバイスもある。大抵はなんとか出来た。


「で、その上で一応無いとは思いますが……もし自分で持ち運べない重量物や配送して貰うことになった場合などには学生証を提示してください。それでこちらに運んでくれます」

「わかりました……その場合、何か注意点などは?」

「一点。守衛室に申請し、自分の氏名と配達の内容を伝達しておいてください。検閲が入るわけではありませんが、いきなり来ても業者の方が入れませんので」


 当然か。カイトはシレーナの説明に特に疑問無く受け入れる。こういうのは不意に冒険者として活動しないといけなくなり、取り寄せで日数が掛かる場合にあり得ることだ。シレーナもそれを想定して話をしていた。と、そんな話をしているとルークがどこか苦笑気味に口を挟む。


「まぁ、そういうルールや規則は皆が集まってからで良いじゃないか。どうせ彼らにも説明しないといけないのだしね」

「あ……それもそうですね」

「うん……そうだ。カイトくん」

「なんですか?」


 シレーナの返答に一つ頷いたルークであるが、そのまま話をカイトへと振る。そうして、彼が問いかけた。


「君は魔術師としては何を専門としているんだい?」

「魔術師として、ですか……魔術師として、であれば基本は精霊魔術でしょうか」

「ほぅ……」

「へぇ……」


 カイトの返答にルークもシレーナも少しだけ目を細め興味を覗かせる。シレーナも得意とするのが精霊魔術だ。それはルークも熟知しており、気になるのも当然だろう。

 無論カイトも最初から想定していたしこれ以外と告げても良かったが、シレーナの兄のゲンマの情報が欲しいこともあり敢えて同じにしておいた。というわけで、案の定興味を隠しきれなかったシレーナが口を開く。


「私も、精霊魔術を得意としているんです」

「それは……お手柔らかに、と」


 僅かに挑戦的な視線を向けるシレーナの言葉に、カイトはそう告げておくだけだ。どうやらシレーナは存外勝ち気らしい。そんなことを考える彼に、シレーナが問いかける。


「では講義もそれを中心として?」

「そのつもりです。まぁ、それ以前にカリキュラムを見て、という所ではありますが」

「それもそうですね……ああ、その様子だと当校の授業については聞いている、と考えて大丈夫ですか?」

「一応は、ですが……」


 シレーナの問いかけにカイトは少しだけ不安さを見せつつ頷いた。これを受けて、シレーナがさっとおさらいをしてくれた。


「では、さっとだけ。当校での授業は必須科目以外は決められたものではなく、各自が自身の適性などを選んで取得する単位制となります。どうしても、魔術は分野が多く当人の性質や血脈などによる如何ともし難い物が存在してしまい、一律でこの授業を、というのが難しいためですね」

「特に君やシレーナの精霊魔術なんかはそれに当たるだろう……まぁ、君に言う必要は無い事だろうけどね」


 シレーナの言葉に続けて、ルークが補足を入れる。というわけで学年による必須科目以外はその都度その都度で教室が指定されることになるそうだ。と、そんなルークが少しだけ意外感を見せる。


「でも珍しいね。魔導書を持っているのだから精霊魔術はあまり使わないと思ったのだけれど」

「まぁ……確かに珍しいらしいですね。ですが冒険者という立場上、あまり精霊魔術に頼れる状況ばかりでもないので」

「なるほど……確かにどうしても精霊に頼り切りになっても駄目ですね」


 確かに精霊魔術は使えない状況は存在している。シレーナは自身も精霊魔術を使いこなせばこそ、それを理解していた。そしてカイトもまたそれを理解しており、それ故にティナへの問いかけだった。というわけでそこからは暫くの間、他の面々が来るまで魔術についての話を繰り広げることになるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ