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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第95章 神の書編

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第2419話 魔術の王国 ――相談――

 魔術都市『サンドラ』からやって来たスオーロという男。彼の話を受けたカイトは『サンドラ』と天桜学園との間での交換留学に向けた研究を行いたい、という『サンドラ』側の要請を話し合う事にしていた。というわけで、彼は天桜学園側に連絡を取る前にティナに連絡を入れていた。


「ティナ。オレだ」

『うむー。話は届いておるぞー。というより、お主が鍛錬に出ておったんで余の方に連絡が入った、という感じじゃな』

「なんだ。それならお前の方で対応してくれても良かったのに」

『ヘクセレイ家の長男坊が来たとあってはお主に通さざるを得まいて』


 カイトも述べていたが、ヘクセレイ家は『サンドラ』の中でも重要な家の一つだ。一応は評議会の使者とは言われていたが、その家がある以上無下にはできなかった。


「長男?」

『うむ。そこらはマクダウェル家のデータベースにも乗っておるからのう。先に見といた』

「そうか……得意分野とかは?」

『詳細に言えば使い魔と契約し使役する系統じゃ』

「召喚術師の一種か」

『大別すればそれじゃな』


 召喚術師、と言ってもいくつもの分野に分かれてくる。なのでスオーロは厳密には召喚術師と言えないらしいのだが、大別すればそうなるようだ。そしてであれば、とカイトは告げる。


「使い魔を同行させて居なかったのはこちらへ敵意が無い事を示すためか……どんな使い魔だ?」

『そこの記録は無い。サリアに聞けばわかると思うが』

「別に良いだろう。流石にヘクセレイ家の使い魔がヤバいとは思えん……別の意味でヤバいだろうがな」

『ま、そうじゃな。ヘクセレイ家は古来より魔術師として名のある家じゃ。異界の何かしらと契約するにしても、高名な使い魔と契約出来る媒体なぞごまんと持ち合わせておろう』


 戦いたくはないな。カイトはスオーロが召喚術師であると聞いて、そう判断する。が、それならと彼は判断した。


「まぁ、それなら彼が今回の下手人はありえんか」

『魔導書はいらんじゃろうからな。異界の何かしらが欲しいとは言うじゃろうが……危険な橋を渡ってまで手に入れたい物はよほどでなければあるまいて』

「それをオレ達は……持ってないか」

『無いのう』


 一応無いわけではないが、それにしたって奪うと皇国と『サンドラ』の戦争になりかねない案件だしなぁ。カイトは唯一スオーロが興味を示す可能性があるだろう地球とつなぐ通信機を思い出し、僅かに苦笑する。というわけで、彼が今回の一件の裏で画策している者に関わりはないだろう、と判断した。


「まぁ、良いか。ついでだ。他の兄弟について教えてくれ」

『よかろう。まず次期ヘクセレイ家当主と目される長女ツァイト。時空間魔術の研究者。現在教導院にて研究職として活動中……ここ暫く姿は見せておらん上、『展覧会』には一度しか参加した事はないのう』

「流石に外れか」

『うむ。次、次男ゲンマ。容疑者の一人』

「一人?」


 何かおかしな事になっているような。カイトはティナの言葉に首を傾げる。が、これにティナはため息を吐いた。


『あの後調べてみたんじゃが、どうやら件の卒業生が奪われたのが件の一人というだけで、他にも似た様な事例が起きておるようじゃ。その交友関係の一人に、ゲンマもおるというわけじゃな』

「なるほど……確かに今回の一件。個人による突発的な犯行とは思いにくい。誰かが組織的な隠蔽工作を行っている可能性はあるか」

『そういう事じゃな。ヘクセレイ家がその隠蔽を行っておる可能性は十分にあろう』

「そうなると面倒だな……せいぜいゲンマ一人が、という筋であって欲しいが」


 流石にカイトとしても『サンドラ』の評議会でも有力者であるヘクセレイ家と大事にしたくはない。一応こちらには背後に魔族領と皇国が控えているのでなんとかは出来るが、あまり大事になりたくないのもまた事実だった。それにティナもまた同意する。


『じゃのう……最悪は手打ちもあり得よう。穏便に済ませたい、という場合じゃが』

「まぁ……最悪魔導書を取り戻せるのならそれも手か。別に叩き潰す必要がある、ってわけでもないからな」

『まぁのう。後は魔族領側から掣肘しておけばよかろうて』


 所詮これは他人の喧嘩だ。そしてこちらとしても利用させて貰ってしっかり利益は得るつもりだ。なので最悪は利益を認めさせる対価として今回の下手人達を適当に痛めつけるだけで終わらせ、魔族領側から掣肘させておく、というのも大人な対応といえば大人な対応と言えるだろう。

 国力としては魔族領の方が『サンドラ』より上だ。なので魔族領から強めの抗議が入れば流石に『サンドラ』側も動かざるを得ない。禍根を断つ事が出来るわけではないが、多少は効果がありそうだった。


「ま、それはその時考えよう……で、このゲンマの得意分野は?」

『鉱物等を使った宝石系の魔術じゃな』

「それで、その顔か」

『そういう事じゃのう』


 どこか神妙な面持ちのティナはカイトの言葉を認め頷いた。そうして、彼女がその理由を口にする。


『宝石魔術を使う者は存外誇り高く、こういった後ろめたい事はやらぬのが多い。それどころか嫌う者も少なくなく、このゲンマという男もこの噂に対しては不快感を露わにしたとの事じゃ』

「宝石魔術を扱う者は優雅であれ、か。地球でも似た様な風潮はあるな」

『宝石という物を扱うからこそ、じゃな。まぁ……邪悪に落ちる者はそれ故にとことんまで落ちるがのう』

「両極端に、か」

『うむ』


 誇り高い者はどこまでも誇り高く。誇り無き者はどこまでも下賤に。宝石魔術を学ぶ者の性とも言える結末にティナはどこか冷酷に頷いた。が、それ故にこそと彼女は告げる。


『が、もし前者であればこのゲンマという男は強い力となってくれよう。まずこの男を見極める事を初手とするのが良いじゃろうて』

「了解……この三人がヘクセレイ家の子息か?」

『いや、もう一人お主と同年代の者がおる。次女シレーナ。得意分野は精霊魔術。現在教導院七年生』

「一番無いか」

『無いのう。精霊との契約は当人に後ろめたい事があればあるほど、難しくなる。分野的に後ろめたい事は出来ん』


 どうやら次女は信頼して良い相手らしい。カイトは少なくともシレーナというらしい少女の事は覚えておく事にする。そうしてこの後も暫くの間『サンドラ』の有力者達について話をしながら、二人は戦略を構築していく事にするのだった。




 さてカイトとティナが今回の招聘の裏で暗躍する者たちへの対策を立てていたわけであるが、それも一時間ほどすると天桜学園側との間で時間の調整が終わり簡易の会議が開けるようになっていた。


『まぁ……数年後を見据える、と言われれば私としては君に任せるとしか言いようがないのだが』

「あはは……そうですね。確かに数年後を見据えて動くのなら、今回の話は受けて損のない話だと思います。特に『サンドラ』は世界中から留学生を受け入れており、それに向けての研究も盛んに行われている。土地そのものの排他性や統治機構に若干の難はありますが……」

『それも目を瞑れる程度、と』

「そういう事です」


 桜田校長の言葉に、カイトは一つはっきりと頷いた。先にカイトもティナも言っているが、『サンドラ』は基本的に魔術師達の街だ。

 なので魔術が上手い者は偉いという風潮があり、魔術師として優れていれば他国の者でも優遇されるし、逆に魔術師としての才能がなければ自国民でも冷遇される。その点に名家も平民も無く、平民から今に続く家を興した者も少なくない。その点では全ての民を平等に扱っている、と言っても良かった。が、だからこそカイトは前提を告げる。


「とはいえ……だからと目を閉ざしてばかりで良いわけでもない。魔術師としての適性に優れた者が行くべきでしょう。私はそれ以外の点が重要なので来てくれ、という事でしたでしょうが」

『それ以外?』

「体面上の問題です。流石に今回の一件で天道さんを送るわけにもいかない。向こうとしてもそれは困る。対応ができないですからね。が、一応どちらも今後を考えれば重要視したい……あちらは地球の文化風習や更に先に待つ地球の魔術師との交流。こちらは優れた魔術師との伝手。となると、重要視している事を示すためにも最低限冒険部の幹部となるわけです」


 教師の問いかけにカイトは今回の一件で自分が望まれている理由を語る。そうして、彼は更に続けた。


「その上で考えれば、ギルドとしてのサブマスターが最適……ではこの中で適役はというと、必然魔術師として最も適性のある私となるのでしょう」

『『『なるほど……』』』


 僅かに苦笑するカイトに、教師達も思わず納得して苦笑を浮かべる。まず桜が論外なのは先の通りだし、では残るソラや瞬はというとどちらも魔術師として優れているとは言い難い。結局、消去法でカイトが最適となってしまうのであった。そんな彼に、灯里が笑う。


「小器用だったのが悪かった、というわけねー」

「そういう事……んん。まぁ、三柴先生の言う通りというわけではあります。結局、変な偏見を生まない事等を鑑みた場合、私は必須条件になってしまうわけです。後は三柴先生も、ですね」

「え゛」

「残念でした。さっき模擬戦やってた所見られてぜひにー、だそうです」

「うぇ……」


 楽しげに告げられた言葉に、灯里は嫌そうに顔を顰める。とはいえ、これで引率役は決定的だった。


「まぁ、そういうわけですので引率役は三柴先生で固定。同行する生徒はこちらもまた私が固定。後は選定という所でしょうか……ん?」

「マスター。会議中すいませーん。教国のヴァイスリッター兄妹がお話だそうですー。今回の一件に関わりがある、とかで」

「ルーとアリスが?」


 なんだろうか。カイトはわざわざ会議中に取り次いで欲しい、と言うような状況に理解が及ばず首を傾げる。とはいえ、そういう事であれば入って貰う方が良いと判断。二人を会議室に招き入れる。


「「失礼します」」

「ああ……二人共、どうした? 『サンドラ』に関係がある、との事だが」

「ああ……実は先ごろフロル・ザフラという方がアユル枢機卿の所に来られていた」

「ザフラ……『サンドラ』評議会にその名があるな。マグナス六賢人のザフラ家か?」

「ああ」


 どうやら別口でアユルにも使者が行っていたらしい。カイトの言葉にその通り、とルーファウスが頷いた。そうして、彼が告げる。


「教国側にも連絡がすでにあったらしく、もし天桜学園から使節団が送られる場合はそれに同行して欲しい、との事です」

「なるほどね……」


 教国と『サンドラ』の間で直接的な交戦はここ二百年ほどはなかったが、同時に交流がなかったのもまた事実だ。が、昨今の融和により教国と『サンドラ』の間で交流が持たれるようになっており、その一環として今回の使節団に同行して欲しい、と教国から要請があったというわけなのだろう。

 そしてであれば、カイト達が人員を選定する場合そこも加味して人員の選定を行わねばならなくなる。会議中にでも言ってくれた方が良かった。


『どうする? 基本使節団の人選は君に素案を任せたいが』

「同行に異論はありません。が、色々と考えたい事があるので、この場での結論は避けさせて頂ければ」

『君がそれで良いのであれば、我々としても異論はない。元々人員は冒険部から、という事だったからね』


 カイトの提案に天桜学園側も一つ頷いて同意を示す。どうせなら、といろいろと彼にも思う所があったらしい。というわけで、一旦人員の選定はカイトに一任される事となり、会議はお開きとなるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。


 ※謝罪

 プロット段階ではゲンマを長男。スオーロを次男としていましたが、逆に変更したの忘れてました。すいません。

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