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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第93章 古き世界より編 

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第2348話 神葬の森 ――会議――

 天桜学園に建造中の研究施設に導入する機材の視察のため、リデル領リデル郊外で行われていたコンベンションに参加していたカイト率いる冒険部一同。

 そこで四日に渡るコンベンションにて購入を考えるべき機材のリストアップを終わらせる事になるのであるが、その裏でカイトは先代のリデル公にして現リデル公イリスの母であるイリアと再会。旧交を温めていた。

 そうしてリデル領でのあれこれを終わらせたわけであるが、コンベンションも終了して翌日の朝一番の便でリデル領を後にしたカイトはマクスウェルに戻ると椿らに頼んで調整して貰っていた会議を即座に開く事にしていた。


「というわけで、大規模な遠征隊を組む事にする。残留は桜と魅衣で頼む」

「私と……魅衣ちゃんだけですか?」

「ああ……一応楓も補佐に残すが、基本三人だと思ってくれ。もし他に必要なら申し出てくれ。その時考える」


 どうやらかなり大規模な遠征を考えているらしい。先にリデル領で説明を受けていたソラと瞬以外、アル達なども揃って驚きを浮かべていた。とはいえ、これは勿論理由があっての事であるわけで、カイトはそれを全員に伝える事にする。


「なるほど……確かに今のままじゃかなり手狭だったもんね」

「そういえば少し疑問だったのですが……軍だとどのぐらいのスペースが個人に割り当てられるんですの? 確かアルフォンスさんは軍の特殊部隊所属だったと記憶しているのですが……」


 どうやらアルが苦笑したくなるぐらいには現状はおかしい状況らしい。それを察した瑞樹が彼へと問いかける。そんな問いかけに、アルは少し悩みながらも答えた。


「そうだね……一応僕らが使っているのは最新鋭の飛空艇なんだけど……今の飛空艇の居住区の部屋を相部屋にしてる感じ……かな。流石に飛空艇の限られたスペースじゃ個室は難しいからね。あ、でも……確か今建造している新型の中には個室がある物もある、って話じゃなかったっけ」

「む? そうじゃの。現在建造中の大型艦は余が設計の不備などを修正。再設計したものじゃ。それに伴い操縦系統の簡略化などにより、人員にもかなり余裕が出来た。空間にも余剰が出来たので、一つの部屋こそ若干狭まったが個室を設けられるぐらいには居住空間の拡張は出来た」


 アルの問いかけに対して、設計者であるティナが一つ頷いて説明する。今回の会議はあくまでも冒険部の幹部会議という所で、出向となっていて関係のないルーファウスやアリスは不参加だった。

 一応アルも本来はマクダウェル公爵軍からの出向なので参加出来ないのだが、流石に経歴やマクダウェル家の事もあり参加していた。ちなみに、彼が不参加の場合はリィルが代役となっている。それはさておき。そんな彼の問いかけに答えたティナであるが、彼女は一つ頷いた。


「まぁ、確かに今の飛空艇がかなり手狭になっておるのは事実じゃな。飛空艇を新たに用立てる事は急務の一つと言えよう。無論、今後の遠征を考えても二つ以上飛空艇を要する遠征に出せるメリットは大きかろうて」

「と、いうわけだ。生活の改善は遠征隊の士気向上にもつながる。急な話ではあるが、飛空艇の購入に関しては現実的に話し合って良いと判断した」


 ティナの同意にカイトは改めて飛空艇の購入に関する意義を語る。とはいえ、これについては全員が若干ではあるが薄々勘付いていたり感じていたりしていた事ではあったので、特別異論が出るような話ではなかった。というわけで、カイトは更に話を進める事にする。


「というわけで、だ。手狭になってきた以上は新しい物を用立てるしかない。飛空艇の購入を、というわけだな」

「ふーん……あ、そうだ。一つ思うんだけど、ホームの改修とか増築とかは考えてないの? 結構人も増えてきたから、ホームもかなり空きが少なくなってきたと思うんだけど」


 カイトの説明に納得した魅衣であったが、それ故にこそこれを思ったらしい。かつては空き部屋の方が多かったギルドホームは今では空いていない部屋の方が少なく、この調子で所属が増えれば遠からず満員となる事が見えていた。

 そして実際、増える見込みはこれからも当分続くと思われていた。というわけで、これにカイトはため息を吐いた。どうやら認識はしていたらしい。


「それなぁ……今の所は考えていない。まぁ、幸いな事にマクスウェルには長期滞在や永住が可能な施設は多い。冒険者向けの物もな。足りなくなったらそっちを斡旋する方向で考えてるよ」

「不動産みたいな事もやるわけ」

「あっははは……そうだな。冒険者で不動産……だが珍しい話じゃないんだ。これについては向こう側からも話がある事ではあるからな。確か……賃貸の話は先輩だったか?」

「ああ、あの話か」


 どうやらカイトの問いかけに瞬は何の事か理解したらしい。一つ頷いた。というわけで、そんな彼に今度はソラが問いかける。


「なにかあったんっすか?」

「いや、知り合いの冒険者に部屋を借りたいんだが紹介してもらえないか、と聞かれたからカイトに相談したんだ。そこでギルドから部屋を斡旋するのはそこまで珍しい話じゃない、と聞いた」

「全員実感は無いと思うが……部屋を借りる上で重要な要素の一つに保証人の存在があってな。家賃滞納とかがあった場合、とりっぱぐれる事の無い様にというわけだな」

「「「あー……」」」


 カイトの言葉にティナと桜を除く全員――桜はカイトの補佐で知っていた――が納得する。そもそもこの場の全員が地球では寮生活や実家住まいだ。部屋の賃貸契約なぞした事はない。どうすれば良いのかもさっぱりだった。


「というわけで、ギルドが保証人になってくれるから普通に貸すより業者としても良い。その代わりとして、ギルドメンバーへは家賃などに色を付けて得になるようにもしてくれる。向こうは安定した収入。こっちは安価で拠点を確保出来る、ってわけだ」


 なるほど。それならどちらも持ちつ持たれつで得がある、というわけなのだろう。一同はそう理解する。よしんばその入居者で問題が起きたとしても、ギルドであれば解決も比較的しやすくなる。普通なら冒険者では借りられない部屋でも、ギルドに所属していれば借りられる部屋は非常に多かった。というわけでそれを語ったカイトはその上でと告げた。


「それでも手狭になってきた、というなら別支部も考える。マクスウェル内だがな」


 そうなのか。一同はカイトが語る話をそんなもの、として心の片隅に留めておくだけにする。これは先にカイトが言った斡旋でさえ借りられる部屋が足りなくなってきた場合だけだ。支部ともなると何年先の話か、という所であった。


「っと、話が逸れたな。これについては話した通り、飛空艇の購入については前向きに検討する、という形だ。なので今回の依頼の受諾においてもそれを前提とした大規模な遠征になる。そこの所は各自注意をしておいてくれ」

「「「了解」」」


 カイトの言葉に、一同は声を揃えて了解を示す。実際、新たな飛空艇の必要性は全員が共通認識として持っていたので、異論もなかった。

 というわけで、この後は更にいくらかの話し合いが行われる事になる。その中でもやはり一際重要だったのは、研究施設の件である。カイトはその件についての報告の詳細を改めて桜から聞いていた。


「……良し。とりあえず研究施設の設営の報告はわかった。そちらについては引き続き頼む」

「はい……ああ、そうだ。そういえば機材の搬送は何時ぐらいになりそうですか?」

「一応、来週のはじめに灯里さんとティナを筆頭にした技術班の意見を集約。来週末にはメーカに連絡を取って相見積。最終的な判断は今月中という所か。施設の完成には十分に間に合わせられると思う」

「そうですか……わかりました。では、それに合わせて本稼働が出来る様にこちらも支度を進めておきます」

「頼んだ」


 桜の返答にカイトは一つ頷いて、後は彼女に任せる事にする。実際、天桜学園との折衝も含めれば一番手慣れているのは彼女だ。彼女に任せておけば安心は安心だった。

 そして補佐に万能キャラに近い魅衣も置いているし、経理面に長けた楓もいる。楓と桜は幼馴染なので相性もよく、戦闘と統率の両面から十分な体制と言えた。そうして研究施設の現状を再確認した一同は、更にいくらかの議題を行って正味二時間ほどで会議を終えるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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