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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第92章 コンベンション編

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第2343話 コンベンション ――散会――

 天桜学園で建設中の研究施設に導入する機材の購入の参考にするために訪れていたリデル領リデル郊外でのコンベンション。そこで研究施設向けの機材の視察をティナらに任せたカイトは、瞬とソラの実働部隊を率いる二人と共に冒険部専用で使う飛空艇の参考にするべくそちらの視察を行っていた。

 というわけでその一環としてソルテール家が主導するソルテール公社の新製品のデモンストレーションを観覧したカイト達であるが、結論から言えばカイトからは概ね称賛という評価が下されていた。


「まぁ、そんなものか。安定性はかなり高い……欲を言えば飛翔機をもう少し少なくできれば、という所ではあったんだが……」

「あはは……手痛いね」

「あはは……流石にヨイショばかりは出来んさ。太鼓持ちになっちまう」


 流れで一緒に自身の解説を聞いていたテオの言葉に、カイトは笑って明言する。今回、確かにソルテール家からの敵意を逸らそうという目的でカイト達はこのデモンストレーションに来たわけであるし、実際この後カイトの評価を聞いていたテオが父のソルテール侯にそれを報告し、概ね称賛が得られていた事でソルテール侯も気を良くした。

 が、これはあくまでも正当な評価として下す必要があり、太鼓持ちではだめだった。というわけで、そこらの機微はわかったのかテオもまた頷いた。


「そうだね……でも飛空艇について本当に詳しいね」

「そうでもない……マクダウェル領もマクスウェルの空港の近くに居るとなにかと飛空艇は見る。そうなると、どんな飛空艇があるかと大体はわかる。じゃあ、後はそこから共通点を探して色々と考えれば、自然わかるものさ」

「それは……いや、無理じゃないかな……?」


 カイトの返答にテオは少しだけ苦笑を滲ませる。だがこれに、カイトは首を振った。


「そうでもない……共通項がある、という事はどこかになにかの道理はあるのさ。例えば今のソルテール公社の飛空艇だって外側に飛翔機を配置しているが、それそのものは取り立てて珍しい配置というわけでもないだろう? じゃあ、その道理とはなにか。それを推測すれば良い。それが正解か否かは知らんよ。単に筋が通るのであればこう、というだけだ」

「……え、もしかして今の解説……全部当てずっぽうなのかい?」

「当てずっぽうと言えば当てずっぽうだ……が、的外れとは思わんよ」


 仰天した様子のテオに、カイトは笑ってしかし首を振る。これは当然ではあったが、飛空艇はまだ黎明期の技術だ。故に多くの内容が一般には伏されており、地球の様に飛行機の飛ぶ理論やエンジンがその位置に取り付けられている理由を調べて出て来るわけではない。そしてカイトはそれを知り得る立場でもない。推測と言ってしまえばそれまでであった。


「さっきも言ったが、道理はどこかしらに存在している……例えば、周囲の人の顔にもな」

「……」


 まさかそれさえ手がかりにしていたのか。テオは内心で僅かな畏怖をカイトへと抱く。彼らの周囲には軍の高官や技術士官達も多く、彼らは飛空艇の理論などを把握した上でここに来ている。

 その彼らもまた、カイトの解説には耳を傾けていた。カイトの解説に道理を見たが故の反応だ。これは裏返せば、決して的外れの事を言っているわけではない、と言ってよかった。


「ま、ここらの正誤については後でお父上にでも聞いてくれ。そっちの方が本来は詳しく知れる立場だろう。誤っていたならお慰み。正解だったのなら、オレは自慢して良いんだろうな」

「そうするよ」


 恐らく父さんに伝えておいた方が良いだろう。テオは今の会話の流れでそう判断する。この推測が正しいのならその推測が可能な彼が称賛した、という事はすなわち自社の製品が認められて良い水準だと客観的に言えるからだ。ソルテール侯が喜ぶ可能性は高かったし、実際に正鵠を射た解説にソルテール侯はカイトへの評価を高めていた。というわけで、カイトの事をしっかり認識したテオはその上で一つ問いかける。


「それで、どうだったかな。ウチの製品は」

「さっきも言ったが、良い品ではあるだろう。安定性は高いから、高所での作業適性は高い。耐久度がわからないが……軍用のモデルなら耐久度も十分だろう。大型の輸送で最も問題になるのは山岳地帯などへの輸送だ。それに対応した新機軸の飛空艇の第一弾として、十分な性能があると言えるだろう。後はその他のスペックをどの程度魅力に感じるか、だが……そこばかりはオレにはなんとも言えんな」

「そうか……ありがとう。良い話を聞けたよ」


 最後に改めて称賛の言葉を聞き届けたテオがカイトへと一つ礼を述べる。最終的な結論としては、カイトとしてはこれしかなかったようだ。そうしてカイトの総括を最後として、周囲の軍の高官や企業のお偉方もそれぞれ自分達の興味がある所へと散っていく事になるのだった。




 さてソルテール公社のデモンストレーションも終わり暫く。カイト達も少しソルテール公社が出しているオプション一式を確認した後、目的は達成したと一同は散会する事になっていた。


「とりあえず、サンキュ。助かった……飛空艇は情報が足りないからなぁ……」

「ま、それはそうだろう。飛空艇はまだまだ黎明期。隠されている技術だ。わかるのも限度があるだろうさ」

「って、わけだなぁ……まぁ、それはさておいても色々と解説してくれて助かった。おかげでウチが買う飛空艇もいくらか絞れた。後はこっちでオプションやらとの兼ね合いを調べて、買うの選ぶわ」


 カイトの同意に対して、イングヴェイは再度感謝を述べる。ここから先はカイト達がなにかを言える事でもないし、言う必要がある事でもなかった。


「そうしてくれ……で、これで終わりで良いか? ソルテール家の前に姿は見せられたしな」

「ああ……お前さんがソルテールの令息と話してくれたおかげで、ソルテール侯も俺の事も目には入ってただろう。今はそれで十分だ」


 下手に近づきすぎても、今度はアストール家が面倒になるしな。イングヴェイは小声でそう呟いた。必要なのはある程度の緩和で、媚びを売る事ではない。というわけで彼も目的は達せられたとその場を後にする。そうして彼が去った後、カイト達も散会する事にした。


「よし……じゃあ、オレ達も後は各自別々で良いだろう」

「そうか……にしても本当に色々とあったな」

「コンベンションはそういった色々とを見るための所だからな」


 感慨深げかつ驚いたような様子を見せる瞬に、カイトは一つ頷いた。やはり彼らもまだ飛空艇に触れて少ししかない。なので見知らぬ飛空艇が沢山あった様子で、勉強という意味でも有益だったようだ。というわけでそんな瞬が問いかける。


「で、これからどうするんだ?」

「さっきも言ったが別々で良い。特にこれから二日はこっちはもう見ておきたい物も特にはないからな」

「後二日あるけど、そっちは良いのか?」


 カイトの言葉にソラが問いかける。後二日、一応コンベンションは残っており、ティナらは明日からも参加予定だ。なので必然としてカイト達も残る事になるのだが、何をすれば良いかはわからなかった。


「まぁ、見たければ、か。一応すでに販売されている新製品や、もう公にしても問題ないような新技術が明日からは紹介される。が、こっちに関しては特別知っておく必要はそこまで無いな」

「そうかぁ……じゃあ、本当に後は気になった物を、か」

「そうだな。それ以外にももし必要なら技術班の呼び出しに応じてやっておいてくれ。こっちはティナや灯里さんと共に色々と商談も見える所と話す事も出て来るからな」

「あー……」

「りょーかい」


 カイトの言葉に瞬は少しだけ気後れした様子で、ソラはいつもやっているからか特段気にする事なく頷いた。というわけで、それを最後にカイトはソラや瞬と別行動を選択。一旦会場の外れへと移動して、通信機を起動させた。


「ティナ。こっちは大凡飛空艇の確認が終わった。これで大凡ここでの行程は終了だな。そっちは?」

『そうか……こちらもちょうどデモの一つが終わった所じゃ。次の所はどうするか、と考えておる所じゃのう』

「デモか……何か良いのはあったか?」

『空間隔離に使える実験室を作るための機材が幾つか、という所かのう。空間隔離を行える研究室は一つは必須じゃ。しかもこれについては早めに用立てる必要があるからのう……とりあえず良いのを手当り次第に見繕っておる』


 カイトの問いかけにティナは昼から今に至るまでで見繕った数々を思い出す。今後転移術の研究を行う上で空間や次元の隔離が必須となる事はすでに上層部全員が把握している。なのでその研究室は最優先で用立てるべき、となっていて全てに優先してその予算が割り当てられていた。


「そうか……まぁ、これについては研究所の立ち上げと同時に導入したい。帰って速攻で会議だ」

『わーっておるよ。これらも用立てるのは時間が掛かるからの』

「だな……じゃあ、また後は任せる。こっちはこっちで色々と見ておく」

『うむ』


 カイトの返答にティナも一つ頷いた。そうしてティナに改めて研究施設へ導入する機材を任せて、カイトは改めて冒険部で使えそうな物資が無いか確認していく事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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