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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第92章 コンベンション編

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第2326話 コンベンション ――ウェポンパック――

 リデル公イリスに求められて、リデル家が開発した魔導鎧用のウェポンパックのデモンストレーションに参加する事になったカイト。彼は幾つかの挙動を取りながらその性能を各地の貴族達の軍に所属する高官達へと披露する。

 そうして彼の無茶な挙動に対応出来る事に軍高官達が納得と理解を示した事でデモンストレーションは終わりとなり、今度は更に突っ込んだ性能やメンテナンス性に関する質疑応答の時間となっていた。というわけでそうなると彼の出番もまた終わりとなり、彼は着ていた魔導鎧を脱いでいた。


「ありがとう、マクダウェル公。おかげで売上が伸びそうね」

「お役に立てたなら何より……ま、これでなんとか各地の軍高官達にはウチとリデル家が関係を持っている事を印象付けられたか」

「ええ」


 カイトの言葉にリデル公イリスは上機嫌に頷いた。今回の最大の目的はこのリデル家とカイトが関係性を保有している事を示す事だ。そしてこれで、五公爵すべてとの間でカイトは関係性を保有している事が公的に認識されたと言って過言ではなかった。というわけで、今回の最大の目的を終わらせた彼へとリデル公イリスが問いかける。


「それで、これからどうなさるおつもりかしら」

「どうするねぇ……特段考えているわけじゃあないが、職業柄武器の類は見て回るつもりだ」

「ウィンドウ・ショッピング中心という事かしら?」

「さてね……そこばかりはなんとも言い難い。が、高額商品は買えん……そもそも高額商品を見繕うために来てるからな」


 リデル公イリスの問いかけにカイトは僅かな苦笑を滲ませる。そもそもの話として、今回カイトは同伴に近い形で来ている。ソラや瞬が個人で買う分には止めないが、カイト個人で今欲しい物は特にはない。

 冒険部という組織としてはティナらが見繕う事になっており、そちらに口出しはしないのがカイトのやり方だった。というわけで、そんな事を口にするカイトにリデル公イリスもそういえばと思い出したようだ。


「ああ、そういえばそうだったわね」

「そういうわけ……流石に魔導鎧の類はウチで作ってるのに買ったら怒られるし、ティナが拗ねる。更に言えば、専門家抱えてるのに買うわけにもな」

「そう……残念だけど、マクダウェル公の立場なら仕方がないかしら」

「そう考えてくれ。流石にな」


 リデル公イリスの納得に対して、カイトは僅かに笑う。こればかりは彼にも彼の立場があり、組織がある。何でもかんでもお付き合いだから、と買えるものでもなかった。

 というわけで、更に少しの雑談を繰り広げ、あまり不審に思われない程度で会話を切り上げて今回のコンベンションの裏の目的は終わりとなるのだった。




 さてリデル公イリスとの雑談から少し。カイトは魔導鎧をアラム達に返却すると、再度ソラらと合流してウェポンパックの確認に動いていた。


「とまぁ、そういうわけで少し話はズレてしまったが、こういうのがウェポンパックというわけだ」

「やっぱ良いよなー、ああいうの……今までウェポンベイがなかったから手は出してなかったけど……」

「なかったのか?」

「うっす。前にお師匠さんと旅する時にされた改造でウェポンベイも増設して貰ってたんっすよ」


 瞬の問いかけに対して、ソラはあの旅路で発覚した色々な増設部分の一つを語る。今までソラもウェポンパックがある事はわかっていたが、それを取り付けるウェポンベイがなかったので手が出せなかったのだ。というわけで、そんな彼はかなり悩んでいる様子だった。


「どうしよ……飛翔機はバカ高いけど、こっちのウェポンパックは割と買える値段なんだよな……今後の拠点防衛を考えりゃ、買っておいて損は無いだろうし……というか、必要だよなぁ……」


 やはりソラは指揮官としての勉強を積んで部隊を率いて行動する様になり、拠点防衛の必要性を再認識していたらしい。そういった拠点防衛に使うウェポンパック――先にカイトが使ったウェポンパックも拠点防衛にも使われる――に興味を覚えている様子だった。


「んー……なぁ、カイト。何かおすすめのウェポンパックとかってあるか? いや、飛翔機除いてだけど」

「そうだなぁ……そう言ってもやっぱりどんな用途で使いたいか、に応じて話が変わってくるというのが事実ではあるが。何に使いたい?」

「何に、か……」


 カイトの問いかけに、ソラは少しだけ思考を巡らせる。そもそもウェポンパックの最大の利点は用途に応じて使い分けられる事だ。なので用途を考えない事には先に進めなかった。


「マルチに使える物ってのは無いんだよな?」

「あるにはあるが……恐らくお前の考えているマルチとは意味が違うだろう」

「どんな?」

「複数のウェポンパックを組み合わせたマルチ・ウェポンパックだ。マルチタスクを行うための物じゃない……具体的にはガトリング、ランチャーなんかを組み合わせて更に攻撃力の増加を図ったような形だな」

「あー……そっちか……」


 カイトの指摘の通り、ソラはどうやら様々な業務を行うためのウェポンパック――例えば一つで索敵や防御などをこなしてしまえる物――を想像していたらしい。とはいえ、勿論この意味でのウェポンパックもあるにはあった。が、それを知ればこそカイトは苦い顔で一応の言及を行った。


「まぁ、確かにそういったマルチタスクをこなせるウェポンパックはあるにはある。が、とんでもなく高い。勿論、メンテナンス性や操作性も大きく悪化する……あまりおすすめはされんよ。一応、ティナが仕立てた事はあるが……操作性が大幅に悪化しちまって受けは良くなかった」

「ティナちゃんが作って、かぁ……」


 それは難しそうだ。カイトの助言にソラは思うようにいかないものだ、と苦い顔だった。こういった魔道具の開発においては世界最優と言われるティナだ。その彼女が無理だった時点でどうしようもないと言っても良いかもしれなかった。


「ま、一応あいつもその操作性の悪化は懸念してたらしく、対応策も考えてはいたが……概ね魔導機での搭載になったな」

「どういう事だ?」

「複座機化だよ。ほら、さっき魔導鎧の話をした時、妖精族用のコパイ機能がある魔導鎧がある、って話したろ?」

「ああ、あったな」


 そういえばその時にも武器を大量に搭載しすぎて扱いきれなくなって補佐を頼んだって言ってたっけ。ソラはカイトの言葉でそんな事を思い出す。


「そういう事だ。ウチに合流したオーアが保管してた魔導鎧にあったコパイ機能を見たティナがそれを更に発展させた物が現代のコパイ・システムだ……一応、使い魔で代用する事は可能だからそれで行っている奴はいるが……それだけの自律性を有する使い魔を使える奴が近接戦闘を主体で戦う事は稀だな」

「だろうなぁ……俺は絶対に無理だし……」


 ソラの魔術師としての腕前だが、これはあくまでもランクA相当の近接戦闘主体の冒険者のそれと同等と考えて良い。簡易な使い魔は作れても、そんな自律性を有する使い魔の作成は不可能に近かった。

 冒険部で近接戦闘主体でありながらそういった使い魔が作れるのは魅衣だけだろう。桜でさえ厳しい――時間をかければ作れるだけの才能はある――ものがあった。


「そうだろう……それを考えれば、マルチ・ウェポンパックは購入しない方が良いだろう」

「……なぁ、話を聞いていて思ったんだが、そう言えばさっきお前は複数のウェポンパックを接続していなかったか?」


 カイトの結論に対して、話を横で聞いていた瞬が不思議そうに問いかける。が、これに答えたのはソラだった。


「あー……いや、あの程度だと流石に問題無いと思いますよ……勿論、それでも複数になりゃなるほど操作性は悪化するんで、やっぱだめなんですけど」

「そういう事だな……それにさっきのウェポンパックは二つだ。腕部のはウェポンパックじゃない。そして背面のガトリング型にせよ、脚部のランチャー型にせよやったのは狙いは付けずただ撃つだけだからな。まだ操作は簡単な方だ。これにマルチロックオンシステムを搭載したウェポンパックを複数載っけると、もう手に負えない」

「そういう事か……あ、そうか……だからタレットモードの時には外部からの補佐が入っていたのか……」


 どうやら色々と難点はあり、それに対応するために色々な対策が打たれているらしい。瞬はソラとカイトの解説に納得する。というわけで、彼の納得を横目にカイトとソラは再度話を進める。


「まぁ、そういうわけで。マルチタスクに行える物は操作性が悪化してしまうから、お前も使えないだろう。オレも正直使いたくはないし。実際、ユリィもあんまりやりたくない、って言ってるしな」

「そっかぁ……なら諦めるか。でもさっきみたいに単に撃つだけの物をいっぱい……って、そっか。そのときゃ単一のウェポンパックか。単に少し操作性が悪いだけの……」

「そうだな」


 どうやらソラは自分で言っていて自分で理解したらしい。そんな彼にカイトは笑う。というわけで、ソラの疑問が解決出来た事で改めて各種のウェポンパックを見る事にするのだが、そのためにも改めて要望を洗い出す必要があった。


「で、改めてだが……何をしたい? いや、もしくはどういう物が欲しい?」

「そうだなぁ……とりあえず主眼は拠点防衛任務で使う事だよな。今後も俺が出る上での基本は部隊での行動だろうし」


 カイトの問いかけに、ソラは現状彼自身が一番多い活動状況を口にする。部隊での行動はギルドに所属している冒険者では一般的で、ウェポンパックにはそれに対応している物やそれを主眼として運用する物も多かった。


「ふむ……メインは拠点防衛任務用と……攻撃と防御どっちだ?」

「そりゃ、攻撃……防御もあるのか?」

「シールドを展開する物がある……まぁ、珍しい物にはなるが。基本は動かさないから、設置型の魔道具を使う事の方が多いからな。一応、移動しやすいメリットがあるから、敵の攻撃を受けながら部隊を移動させる事に使ったりする。後は範囲を絞って自身を守って突撃したりするのにも使われるな」


 驚いた様に問いかけるソラの問いかけに、カイトは一応そういう物がある事を明言する。それに、ソラは感心した様に頷いていた。


「はー……色々とあるなぁ……」

「それが、ウェポンパックの利点だからな。逆にこういう用途で使う物が無い、という方が珍しいだろう。少なくともオレは使いたい用途があるのにそれに対応したウェポンパックが無い、と聞いた事はない」

「へー……まぁ、それはそれとして。やっぱり攻撃用で良いよ。流石にウチで動くなら野営地設営するだろうから結界の展開は大丈夫だろうし、馬車にせよ竜車にせよ結界を展開する魔道具は欠かさず持っていくし」


 カイトの解説を受けたソラであるが、改めて自身が想定する用途を明白にする。というわけで、そんな彼の要望にカイトは更に話を進めた。


「魔物の群れを相手にするのと、単独の強大な魔物を相手にするのだとどちらだ?」

「群れだな。単独なら先輩居るし、俺には<<偉大なる太陽(ソル・グランデ)>>もあるし」

「だろうな……良し。そうなると……基本はタレット型を併用出来る方が良いだろう。些か値は張るが……ウチの場合は司令部を設けたり、オペレータを用意する事も多い。拠点からの補佐を受けられるからな」

「なるほど……確かにな。後はどんな攻撃をするか、か」

「そういうことだ。それに関してはどういう事をしたいか、というので別れてくる。例えば確実に敵を殲滅していきたいならランチャー型。制圧射撃ならガトリング型とかな。またタレット型ならどれだけの時間を離れる事が出来る様にするのか、というのも確認しておかなきゃならない点だ」


 ソラの言葉に頷いたカイトは、更に突っ込んだ話を行う。そうして、その後も暫くはソラの助言を行いながら、三人はウェポンパックの調査を行う事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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