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影の勇者の再冒険 ~~Re-Tale of the Brave~~  作者: ヒマジン
第92章 コンベンション編

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第2321話 コンベンション ――ウェポンパック――

 天桜学園として建造している研究施設に導入する設備の購入の検討を行うため、リデル領にて行われるコンベンションに参加する事にしたカイト。そんな彼はリデル領リデル郊外に設けられていたコンベンションの会場へと入っていた。そうして開幕を待つ事になるのであるが、リデル公イリスによる開幕の挨拶の後。参加者達の大移動が始まっていた。


「じゃあ、オレ達も各自移動して見たい所へと向かってくれ。何かあったら通信機で連絡を取ること」


 午前九時。リデル公イリスの開幕の挨拶の終わりと同時に、カイトが冒険部各員に向けて号令を下す。今回はあくまでも冒険部としての参加であるが、それ故にこそ教師もすべてカイトの指揮下に加わる事になっていた。それはさておいても彼の号令により各自散っていく事になるのであるが、カイト、ソラ、瞬の実働部隊を率いる面子はそのまま少し残って話をしていた。


「ソラ。お前はなにか見たい物があるか?」

「そっすね……とりあえず一度冒険部で使うような武器の類を見てこようかな、と思ってます」

「武器か……確かに必要か。何か興味があるものはあるか? 俺もそこらは見ようと思うが、一緒に回る意味はさほど無いだろう。被らない様にしておこう」

「あ、うっす……っと、それならカイト。お前はなにか見ておくつもりの奴とかあるのか?」


 瞬の問いかけを受けたソラであるが、どうせなら、とカイトへと話を振る。ついでなので彼の考えを聞いておきたい所もあった。そんな問いかけに、カイトは告げる。


「そうだな……基本、オレは外に向かうつもりだ」

「外……という事はあれか? 魔導鎧とかそっち系?」

「そうだな。基本ギルドでの管理になる物を見ておくつもりだ」

「まぁ……ここらはお前の方が良いよな」


 外にある物は基本的には高額商品になるため、購入する場合はカイトの裁可が必要となってくる。そして冒険部で一番冒険者について把握しているのは彼だろう。なので彼が外を見て回るのは当然と言えた。


「というより、俺達が見ても……な。俺には飛空艇の良し悪しなぞわからん。魔導鎧であればソラならわかるかもしれんが……」

「あー……どうなんでしょ。俺も一応魔導鎧は使ってるっちゃ、使ってますけど……完全ワンオフの奴になりますからね。一般品とかになるとどうだか、って所っすね。更に言うと中型や大型はもう全くっす」


 瞬の言葉にソラは少しだけ困った様に肩を竦める。というより、冒険部では大型魔導鎧も中型魔導鎧も一切運用していない。なので誰もわからなかった。


「だが通常の魔導鎧ならまだわかるだろう。俺よりは、だが」

「それはそっすね……けど、カイト。そういや大型とか買わないんじゃなかったか?」

「買うつもりはない。が、市場の調査はしておかないと敵となった時に面倒だからな。ワンオフは強いが、取り回しがすこぶる悪い。市販品を使っている冒険者は思う以上に多い」

「あー……そういや、そんな事お師匠さんも言ってたな……確かに俺も一回見ておいた方が良いかなぁ……」

「ふむ……それは確かにそうかもしれんな……」


 基本的に対人は考えない冒険部であるが、今後もあり得ないと言い切れるわけでもない。現に先のラエリア内戦では戦ったし、あの戦いでは大型魔導鎧も動員しているギルドもあった。考慮に入れておかねばならないだろう。というわけで、そんなカイトの指摘にソラも瞬も思い直したらしい。


「……カイト。すまないが、解説を貰えるか? 流石に俺では何がどうなんだ、と言われてもわからん。が、わからんからと知らないのは話が違うだろうからな」

「……そうだな。わかった。最初に外を回っておいて、別行動はそれからにしておこう。ソラ、お前はどうする?」

「あー……俺も一緒に行くよ。確かに見とかないと、ってのはそうだろうからなぁ……」


 カイトの問いかけに、ソラもまた同行を明言する。というわけで三人は連れ立って外に設けられている飛空艇や魔導鎧などの戦闘用の商材が取り扱われている区画へと移動する。そうして移動した所では、ソラや瞬が思う以上に人が多かった。そんな様子を見て瞬が驚いた様に口を開いた。


「これは……多いな。冒険者はこんな多いのか?」

「いや、七割ぐらいは各領地の軍人だ。ここは軍に向けて卸される物もあるからな。特に今回はリデル家が主催しているコンベンションだから、各地の有名貴族の軍に所属する高級軍人も多い」

「なるほど……ああ、そうか。それで軍服が多いのか」

「そういう事だな」


 ぱっと見ただけで感想を口にした瞬であったが、改めてしっかりと行き交う人々の様子を見て納得したようだ。そんな彼にカイトは更に続ける。


「そう言っても、恐らく今年は例年以上に多いだろう。ブースとしても例年に比べて広めに設けられているそうだ」

「現状が現状だから、か」

「ああ。だから今年はこういった兵器の研究開発を行う企業や研究所はかなり力を入れたらしい」


 ソラの言葉にカイトは一つ頷いた。マクスウェルにまで要請が入らないだけで、細々とした<<死魔将(しましょう)>>達によるものと思われる事件は各地で起きているという。

 それはソラも少し前の大陸会議で言われていた事を覚えており、同様に各地の貴族達もそれを把握しているものだと思われた。軍備の増強を行うべく動いているのである。そんな光景を見ながら、ソラがふと思うことを口にする。


「でも不思議なんだけどさ……一体<<死魔将(しましょう)>>達って何を狙って動いてるんだ? ほそぼそとした動きは見えてる、ってのは聞くけど……なんか思ったより大々的に動いてないっていうか」

「いや……『リーナイト』にせよ天覇繚乱祭にせよ、かなり大々的に動いていたと思うが」

「あ、いや……そりゃそうなんっすけど……なんってか……お師匠さんに聞いてた三百年前よりあんま派手じゃないなー、って……ほら、三百年前はほぼ数年で全世界壊滅って感じだったらしいんで……」


 瞬のツッコミに対して、ソラは慌てて自身の言葉に補足を行う。三百年前は一度打って出ればあっという間に世界征服一歩手前だ。入念な準備がされた上で動いていたのだと、ソラにそれを教えたブロンザイトは判断していた。そしてだからこそ、ソラには今の現状が不思議でならなかったらしい。


「ふむ……確かに三百年前は一気になんだったか?」

「一気に、とは言わんが……まぁ、割と早々に各個撃破されたのは事実だな。だからソラの疑問は尤もではあるんだが……流石にそれがなぜか、と言われても情報が足りなすぎてわからん。一応、重要物資やらが狙われていたりする事は掴んでいるが……」

「なんかあんのか?」

「わからん事が多すぎる。地球以外の異世界にまで手を出されちまってるから、何でもありなんだ……想像が出来ん」


 ソラの問いかけに対して、カイトは呆れ混じりの困り顔で首を振る。


「もう無茶苦茶だ。異世界にまで行かれると手札がなんでもありだ。かといって、どこに行ったかはわからんからどうしようもない。向こうが本格的に打って出るまでは待ちしかない……被害が馬鹿にならんのは承知でな」

「各国はそれを承知しているのか?」

「承知はしているさ。承知はな……が、どうしようもないんだから、こうやってカウンターを持っておくしかない、って判断だ」


 瞬の問いかけにカイトは深い溜息を吐いた。とはいえ、彼の言う通りどうしようもないのだから、各地の軍人がこうして最新兵器を求めて来ているのである。無論、それは彼らだけではなく冒険者達も一緒だ。というわけで、瞬が気を取り直して問いかける。


「それも、そうだな……どんなものがあるんだ? いや、それより見ておいた方が良いものはあるか?」

「そうだなぁ……まぁ、安牌はウェポンパックか」

「ウェポンパック?」

「ウェポンパックかぁ……」


 どうやら瞬はわからず、ソラはなるほどと理解出来たらしい。が、どこか困った様子が彼にはあり、そんな様子に瞬が問いかける。


「知っているのか?」

「うっす……一応確認なんだけど、魔導鎧用のウェポンパックだよな?」

「それであってるよ」

「だよなぁ……」


 どうやらソラは理解は出来ていたが、それ故にこその苦味だったようだ。そんな彼を横目に、カイトが瞬へとウェポンパックとやらを語る。


「ウェポンパックは魔導鎧に接続して使うオプションだ。用途は様々だが……例えば局地戦に対応したカスタマイズなどを行うための装備もある」

「雪原や高原という具合か?」

「そういうことだな。例えばオプションの飛翔機ユニットがそれに該当する。近年開発された一体型より取り回しは悪いらしいが、割と古くからあるものだな」

「そんなものもあるのか」

「ああ。基本ベースの魔導鎧に拡張性を持たせる事で局地戦に対応出来る様にしよう、という考えだ」

「なるほど……」


 確かに考えとしては妥当なもので、必要がなければベースだけで良く費用は抑えられる。そういった事から、冒険者には特に人気があるそうだった。


「だが、なぜソラはそんな苦い顔なんだ?」

「高いんっすよ、あれ。一応、俺の鎧にも拡張性を追加してもらった、ってか勝手に追加されてるんっすけど……市販品のオプションにも互換性持たせておいたから急場で必要なら買っちまいな、ってオーアさんに言われたんでカタログ見たんっすよ。そしたらべらぼうに高いのなんのって」


 一応、ソラは冒険部の中では特に冒険者としての装備のコストが掛かる側の人員だ。こればかりは彼が自身にタンクとしての役割を課している以上、仕方がない。

 無論、彼は冒険部でも恐らく最硬の防御力を有しているわけであるが、その結果の装備の高騰である。オーアらが勝手に改造したりその実験体となる事を了承する代わりとして維持管理費の幾らかは必要が無いとはいえ、素材の費用などは彼が出資しており、あまりオプションに費用は掛けたくないのであった。


「高いのは仕方がない。プリンタと一緒だ。本体安くしてオプションで利益を稼ぐってやり方だ」

「わーってるよ。だけど俺の場合オプションだけだからなぁ……」

「あはは……」


 苦い顔で深くため息を吐いたソラに、瞬は笑う。こればかりは瞬にはわからない悩みだった。無論、今後も関係はない話ではあった。そして彼と同じくカイトもまた笑う。


「あはは……ま、そこらはお前が考えろ。必要なら買えば良いし、必要無いなら用立てする必要はない。オレがなにか言える事じゃない」

「わかってる……わかってるから悩んでるんだろ。もうちょっと安くならないかなぁ……」

「さぁなぁ……そこばかりはオレには何も言えんよ。まぁ、それを考えるためにも見ておいて損はないだろう」

「おーう」


 どうやらソラは若干だが気後れが生じてしまったようだ。カイトの言葉にどこか気だるげに頷いた。というわけで気を取り直した三人は魔導鎧用のウェポンパックがある区画へと移動する。そしてやはり色々な場所での戦闘が想定され、そして各メーカで様々な考案がされているからだろう。多種多様なウェポンパックが展示されていた。


「凄いな……こんなあるのか」

「ベースこそ各社バラバラだが、ソラの鎧の様に拡張機能に互換性を設けているのが基本だ。だからキメラ構成も可能だ」

「キメラ?」

「メーカごちゃまぜの構成だ。例えばヴィクトルの魔導鎧にサンドラ商会のオプションだと、ヴィクトルとサンドラのキメラと言うわけだ。ベース・ヴィクトルのキメラ、と言う事もある」

「なるほど……キメラにしてなにか利点があるのか?」

「やはり各社で得意分野が異なっているし、求める用途も異なる。特化した構成を組んだり、逆に安定した構成を行ったりする事が出来る。拡張性を存分に活かせると言って良いだろう」


 やはり瞬は魔導鎧とは縁がないからだろう。こういった魔導鎧を使う者たちであれば常識的に把握している事でも知らない事が多く、勉強になっていたようだ。


「そうか……そこらはやはり知っておかないと、か」

「そうだ。冒険者で完全に脳筋でやれるのは本当に一部だけだ……とりあえずどこのメーカがどう優れているか、だけでも知っておいて損はないぞ」

「そうだな……良し。しっかり見ておこう」


 やはりどうしても費用の面が頭をちらつくソラに対して、瞬は純粋に知識を得る事を主眼として動ける。なので彼の方は真面目に取り組む事にしたようだ。そうして、それから暫くの間三人は各社にどのような特徴があるか、というのを確認しながら見て回る事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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